メルクマニュアル18版 日本語版
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ベリリウム症(ベリリウム中毒症)

急性ベリリウム症(ABD)および慢性ベリリウム症(CBD)はベリリウム化合物および製品からの塵や煙霧の吸入により起こる。ABDは現在ではまれである;CBDは全身に,特に肺,胸腔内リンパ節,皮膚に肉芽腫の形成がみられるのが特徴である。CBDは進行性の呼吸困難,咳,疲労を引き起こす。診断は病歴,ベリリウムリンパ球増殖試験,および生検による。治療にはコルチコステロイドを用いる。

病因と病態生理

ベリリウムへの暴露が一般的な病因であるが,多くの産業で病因としての認識が低い;これらの産業にはベリリウム鉱業と抽出,合金の製造,金属合金の機械加工,電子機器,電気通信,核兵器,防衛,航空機,自動車,航空宇宙,およびコンピュータや電子機器のリサイクルなどがある。

ABDは,びまん性の肺実質への炎症性浸潤および非特異的な肺胞内水腫を引き起こす化学性肺炎である。他の組織(例,皮膚や結膜)が侵されることもある。ABDは,多くの産業で暴露量を減らしたので現在ではまれであるが,1940〜1970年には一般的であったし,ABDからCBDに進行した例が多かった。

CBDは,ベリリウムおよびベリリウム合金を使用する産業では依然として多くみられる。細胞媒介性の過敏症である点で,大半の塵肺症とは異なる。ベリリウムは,抗原提示細胞によって,主にHLA-DP分子との関連で,CD4+Tリンパ球に提示される。次に血液,肺,または他の器官のT細胞がベリリウムを認識して,増殖し,T細胞のクローンを形成する。これらのクローンは続いて腫瘍壊死因子-α,IL-2,インターフェロン-γなどの前炎症性サイトカインを放出する。それらが免疫反応を増幅し,その結果ベリリウムが沈着した標的臓器に単核細胞の浸潤および非乾酪化肉芽腫を形成する。平均すると,ベリリウム暴露者の2〜6%にベリリウム感作(in vitroでのベリリウム塩に対する血中リンパ球の増殖が陽性であることにより定義される)が生じ,ほとんどが疾患へ進行する。ベリリウム金属および合金の機械製作工など,特定の高リスク集団ではCBDの有病率は17%を超える。秘書や警備員など,その場に居合わせて暴露した労働者にも感作や疾患が生じるが,頻度はより低い。典型的な病理学的変化はびまん性の肺,肺門,および縦隔リンパ節の肉芽腫性反応で,組織学的にはサルコイドーシスとは区別ができない。単核細胞および巨細胞を伴った肉芽腫形成も早期に起こりうる。多数のリンパ球が,気管支鏡検査下の肺の洗浄(気管支肺胞洗浄[BAL])から得られた細胞の中に見つかる。これらのT細胞は,in vitroでベリリウムに暴露すると,血球と同じ程度に増殖する(ベリリウムリンパ球増殖試験[BeLPT])。

症状,徴候,診断

CBDの患者はしばしば呼吸困難,咳,体重減少があり,極めて多様なパターンの胸部X線像を示すが,通常はびまん性の間質性硬化影を示す。患者は潜行性に進行する労作性呼吸困難,咳,胸痛,体重減少,寝汗,疲労を訴える。症状は,最初の暴露から数カ月以内に出現することもあれば,暴露が止んで40年以上経過して出現することもある。無症状のままの人もいる。胸部X線像は正常であるか,結節状,網状,または淡いすりガラス様のびまん性浸潤影を示し,サルコイドーシスにみられるパターンに似た肺門リンパ節腫脹をしばしば伴う。粟粒状のパターンが生じることもある。高解像度胸部X線はX線より感度はよいが,画像検査が正常でも生検で疾患が証明された例もある。

診断は,暴露歴,該当する臨床症状,および血液および/またはBAL液を用いたBeLPTの異常所見による。BAL液によるBeLPTは極めて感度と特異度が高く,CBDとサルコイドーシスや他のびまん性肺疾患との鑑別に有用である。

予後

ABDは致死的なこともあるが,患者がCBDへ進行しなければ,通常予後は極めてよい。CBDはしばしば進行性の呼吸機能障害を引き起こす。早期の異常には,安静時および運動時の気流閉塞およびABGでの酸素化の低下がある。一酸化炭素拡散能(DLco)の低下および拘束性障害が後に現れる。肺高血圧および右心不全が症例の約10%に起こり,肺性心による死亡を伴う。ベリリウム感作からCBDへの進行は,職場の医学的サーベイランスで最初に発見されてから年に約8%の割合でみられる。ベリリウムの破片または塵の侵入が原因の皮下肉芽腫性結節は,通常切除されるまで存続する。

治療

CBD患者の中には,疾患の進行速度が比較的遅いため,治療を全く必要としない者もいる。治療はコルチコステロイドを用いるが,その結果,症状の改善と酸素化の改善が得られる。治療は一般に,重い症状およびガス交換の異常,または肺機能もしくは酸素化の加速度的な低下が証明された患者においてのみ開始する。肺機能異常の症状がある患者には,プレドニゾン40〜60mg,経口にて1日または1日おきに1回,3〜6カ月投与し,投与後,肺の生理機能およびガス交換を繰り返し測定し,治療法の奏効性を記録する。投与量はその後,症状および客観的所見の改善を維持できる最低レベル(通常約10〜15mg,1日または1日おきに1回)まで徐々に減量する。コルチコステロイドによる治療は,通常,生涯を通じて必要である。メトトレキサートの追加(10〜25mg,経口にて週1回)が,CBDにおいても,サルコイドーシスで観察されたのと同様のコルチコステロイド減量効果を示すという事例証拠がある。

ABDでは,肺はしばしば浮腫および出血を来す。重症患者では機械的人工換気が必要とされる。

多くのサルコイドーシスの症例とは異なり,CBDの自然寛解はまれである。末期のCBD患者では,肺移植で救命できることもある。O2補給療法,肺リハビリテーション,右心不全の治療薬などの他の支持療法が必要に応じて行われる。

予防

ベリリウムへの暴露を予防する基本は,産業による塵埃を抑えることである。暴露は,感作およびCBDのリスク軽減には,実現しうる最低レベルまで下げなければならない―できれば現行のOSHA基準の10倍以下のレベルが望ましい。血液によるBeLPTおよび胸部X線を用いた医学的監視は,直接または間接の接触を問わず,暴露労働者全てに推奨される。疾患(急性,慢性ともに)を早期に発見し,罹患した労働者はさらなるベリリウム暴露から遠ざけねばならない。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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