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門脈肺高血圧症

執筆者:

Mark T. Gladwin

, MD, University of Maryland School of Medicine;


Andrea R. Levine

, MD, University of Maryland School of Medicine

レビュー/改訂 2020年 9月
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門脈肺高血圧症は,門脈圧亢進症に伴う肺動脈性肺高血圧症のうち,他に二次的な原因がないものである。

肺高血圧症 肺高血圧症 肺高血圧症は,肺循環における血圧の上昇である。肺高血圧症には二次性の原因が数多く存在し,中には特発性の症例もある。肺高血圧症では,肺の血管が収縮かつ/または閉塞する。重症の肺高血圧症は,右室への過負荷および右室不全を引き起こす。症状は,疲労,労作時呼吸困難であり,ときに胸部不快感および失神がみられる。肺動脈圧の上昇を証明することで診断がつ... さらに読む は, 肝硬変 肝硬変 肝硬変は,正常な肝構築が広範に失われた 肝線維化の後期の病像である。肝硬変は,密な線維化組織に囲まれた再生結節を特徴とする。症状は何年も現れないことがあり,しばしば非特異的である(例,食欲不振,疲労,体重減少)。後期の臨床像には, 門脈圧亢進症, 腹水,代償不全に至った場合の 肝不全などがある。診断にはしばしば肝生検が必要となる。肝硬変は通常,不可逆的と考えられている。治療は支持療法である。... さらに読む の有無にかかわらず, 門脈圧亢進症 門脈圧亢進症 門脈圧亢進症とは,門脈内の圧力が上昇した状態である。原因として最も頻度が高いものは,肝硬変(先進国),住血吸虫症(流行地域),および肝血管異常である。続発症として,食道静脈瘤や門脈大循環性脳症などが生じる。診断は臨床基準に基づいて行い,しばしば画像検査や内視鏡検査を併用する。治療としては,内視鏡検査,薬剤,またはその両方による消化管出血の予防のほか,ときに門脈下大静脈吻合術または肝移植を行う。... さらに読む に関わる様々な病態を有する患者に生じる。慢性肝疾患の患者において,門脈肺高血圧症は 肝肺症候群 肝肺症候群 肝肺症候群は, 門脈圧亢進症のある患者において,肺微小血管が拡張することにより生じる低酸素血症である;呼吸困難および低酸素血症は立位で悪化する。 肝肺症候群は, 慢性肝疾患の患者において,典型的には門脈圧亢進症を合併している場合,肺内微小動静脈の拡張により引き起こされる。その機序は不明であるが,肝臓における血管拡張物質の産生増加またはクリアランスの低下によると考えられている。血管拡張が起こると血流量が換気量を上回り低酸素血症に至るが,こ... さらに読む よりも発生頻度が低い(発生率はそれぞれ3.5%,12%)。

BMP9(bone morphogenetic protein 9)シグナルの異常に肺高血圧症の発生との関連が報告されている。BMP9およびBMP10は肝臓で産生され,BMP2受容体のリガンドである。門脈肺高血圧症の患者では,進行した肝疾患を有する対照患者と比べて,BMP9の値が有意に低下していることがわかっている。門脈肺高血圧症の患者を門脈肺高血圧症のない進行した肝疾患患者と比較したところ,BMP10の値に差は認められなかった(1 総論の参考文献 門脈肺高血圧症は,門脈圧亢進症に伴う肺動脈性肺高血圧症のうち,他に二次的な原因がないものである。 肺高血圧症は, 肝硬変の有無にかかわらず, 門脈圧亢進症に関わる様々な病態を有する患者に生じる。慢性肝疾患の患者において,門脈肺高血圧症は 肝肺症候群よりも発生頻度が低い(発生率はそれぞれ3.5%,12%)。 BMP9(bone morphogenetic protein 9)シグナルの異常に肺高血圧症の発生との関連が報告されている。BMP... さらに読む )。

主症状は呼吸困難と疲労である。胸痛および喀血も生じうる。患者は肺高血圧症に一致する身体所見および心電図異常を有し,肺性心の所見(頸静脈拍動部位の上昇,浮腫)を呈しうる。三尖弁逆流がよくみられる。

門脈肺高血圧症の治療は肝毒性のある薬剤および抗凝固薬の投与を避けるべきという点を除き, 肺動脈性肺高血圧症 治療 肺高血圧症は,肺循環における血圧の上昇である。肺高血圧症には二次性の原因が数多く存在し,中には特発性の症例もある。肺高血圧症では,肺の血管が収縮かつ/または閉塞する。重症の肺高血圧症は,右室への過負荷および右室不全を引き起こす。症状は,疲労,労作時呼吸困難であり,ときに胸部不快感および失神がみられる。肺動脈圧の上昇を証明することで診断がつ... さらに読む の治療と同じである。β遮断薬は門脈圧亢進症でしばしば使用されるが,門脈肺高血圧症では血行動態不安定を招くため,これも使用を避けるべきである(2 総論の参考文献 門脈肺高血圧症は,門脈圧亢進症に伴う肺動脈性肺高血圧症のうち,他に二次的な原因がないものである。 肺高血圧症は, 肝硬変の有無にかかわらず, 門脈圧亢進症に関わる様々な病態を有する患者に生じる。慢性肝疾患の患者において,門脈肺高血圧症は 肝肺症候群よりも発生頻度が低い(発生率はそれぞれ3.5%,12%)。 BMP9(bone morphogenetic protein 9)シグナルの異常に肺高血圧症の発生との関連が報告されている。BMP... さらに読む )。患者によっては血管拡張療法が有益となる。基礎にある肝疾患は転帰を決定する主な要因である。門脈肺高血圧症は肝移植の相対的禁忌であるが,これは処置に伴う合併症の発生率および死亡率が高いためである。しかしながら,移植を受けた患者の一部では,特に肺高血圧が軽度である場合に肺高血圧が改善する。血管拡張薬による治療の試行後,平均肺動脈圧が35mmHg未満の患者で肺移植を考慮する施設もある。

総論の参考文献

  • 1.Rochon ER, Krowka MJ, Bartolome S, et al: BMP 9/10 in pulmonary vascular complications of liver disease.Am J Respir Crit Care Med201 (11):1575–1578, 2020.doi: 10.1164/rccm.201912-2514LE

  • 2.Galiè N, Humbert M, Vachiery JL, et al: 2015 ESC/ERS Guidelines for the diagnosis and treatment of pulmonary hypertension: The Joint Task Force for the Diagnosis and Treatment of Pulmonary Hypertension of the European Society of Cardiology (ESC) and the European Respiratory Society (ERS): Endorsed by: Association for European Paediatric and Congenital Cardiology (AEPC), International Society for Heart and Lung Transplantation (ISHLT).Eur Heart J 37(1): 67-119, 2016. doi: 10.1093/eurheartj/ehv317

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