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機械的人工換気の概要

執筆者:

Bhakti K. Patel

, MD, University of Chicago

レビュー/改訂 2020年 3月
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機械的人工換気には以下の種類がある:

適切な手法の選択および使用には呼吸力学の理解が必要である。

適応

気管挿管および機械的人工換気の適応は極めて多彩であるが(気道管理が必要となる状況 気道管理が必要となる状況 気道管理が必要となる状況 の表を参照),一般には,気道の確保または十分な酸素化もしくは換気の維持が困難であることを示す徴候が臨床的または臨床検査により認められる場合に,機械的人工換気を考慮すべきである。

考慮すべき所見としては以下のものが含まれる:

  • 呼吸数 > 30/分

  • 吸入気酸素分画(FIO2)> 0.60で,動脈血酸素飽和度を > 90%に維持できない

  • pH < 7.25

  • PaCO2 > 50mmHg(慢性で安定している場合を除く)

機械的人工換気を開始するかどうかの判断は,臨床の状況を全体的に考慮した臨床判断に基づいて行うべきであり,単なる数値的な基準に基づくべきではない。ただし,患者が危機的状況になるまで機械的人工換気を遅らせるべきではない。

呼吸力学

正常では,吸気により胸腔内に陰圧が生じ,それにより大気と肺胞との間に圧較差ができて,気流が生まれる。機械的人工換気の場合,圧較差は空気を送る側の(陽)圧の増加により生まれる。

最高気道圧は,気道入口部(Pao)で測定され,人工呼吸器上に常に表示されている。この値は肺にガスを押し入れるために必要な総圧力を示し,吸気抵抗(抵抗圧),肺と胸壁の弾性収縮力(弾性圧),および呼吸開始時の肺胞圧(呼気終末陽圧[PEEP]― 気道圧の構成要素 吸気ホールド操作による,機械的人工換気中の気道圧の構成要素の図解 吸気ホールド操作による,機械的人工換気中の気道圧の構成要素の図解 の図を参照)などの圧から成る。したがって:

equation

抵抗圧は回路抵抗および気流によって生じる。機械的人工呼吸下にある患者では,人工呼吸器回路,気管内チューブ,および(最も重要なことに)患者の気道内で,気流に対する抵抗が生じる。(注:これらの要因が一定のときでも,空気の流量が増加すると抵抗圧が上昇する。)

吸気ホールド操作による,機械的人工換気中の気道圧の構成要素の図解

PEEP = 呼気終末陽圧。

吸気ホールド操作による,機械的人工換気中の気道圧の構成要素の図解

弾性圧は,肺および胸壁の弾性収縮力(弾性),ならびに送気ガス容量によって生じる。一定のガス量に対して,肺の硬さが増大したり(肺線維症において),胸壁もしくは横隔膜の可動域の制限が生じることで(例,緊満した腹水または重度肥満において),弾性圧が上昇する。弾性はコンプライアンスの逆であるため,弾性が高いとコンプライアンスは低くなる。

肺胞内の呼気終末圧は正常では大気圧と同じである。しかしながら,気道閉塞,気流制限,または呼気時間の短縮によって肺胞が完全に空にならないとき,呼気終末圧は相対的に大気よりも陽圧となることがある。この陽圧は内因性PEEPまたはautoPEEPと呼ばれ,人工呼吸器の操作や,口にぴったりフィットさせ呼吸時に陽圧を加えるマスクによって生まれる外因性(治療的な)PEEPからは区別される。

最高気道圧が上昇(例,> 25cmH2O)した場合,吸気終末ホールド操作により,吸気終末圧(プラトー圧)を迅速に測定し,抵抗圧および弾性圧がそれぞれどの程度寄与しているかを判断すべきである。この操作では,吸気の後で呼気弁を閉じたまま余分に0.3~0.5秒間待ち,呼気を遅らせる。この間は気流が止まるので,気道圧は最高値から下がる。その結果測定された吸気終末圧から,PEEPを引いた値が弾性圧を示す(測定時,患者は吸気筋または呼気筋の自発的な収縮を起こしていないと仮定する)。最高圧とプラトー圧の差が抵抗圧である。

抵抗圧の上昇(例,> 10cmH2O)は,気管内チューブのねじれもしくは分泌物による塞栓,または気管内の腫瘤もしくは気管支攣縮の存在を示唆する。

弾性圧の上昇(例,>10cmH2O)は,以下による肺コンプライアンスの低下を示唆する:

人工換気を受けている患者における内因性PEEP(auto PEEP)は,呼気終末ホールド操作により測定できる。吸気の直前,呼気用のポートを2秒間閉じる。気流が停止し,抵抗圧が除去される;その圧が呼気終末の肺胞圧(内因性PEEP)を反映する。正確な測定ができるかどうかは人工呼吸器を装着した患者の呼吸が完全に非自発的であるかどうかに依存するが,内因性PEEPの測定のみを目的とした神経筋遮断薬の使用は認容されない。内因性PEEPを同定するための非定量的な方法は,呼気流量記録を調べることである。呼気流量が次の呼吸まで持続する,または患者の胸部が次の呼吸が始まるまで静止を保てないならば,内因性PEEPが存在している。内因性PEEPが上昇すると,吸気による呼吸仕事量の増大および静脈還流量の減少などが起こり,後者の結果心拍出量低下および低血圧を来すことがある。

内因性PEEPの存在が証明されれば,気流閉塞の原因(例,気道の分泌物,弾性収縮力,気管支攣縮)の検索を迅速に行うべきである;しかしながら,気流閉塞のない患者でも,分時換気量が多い(> 20L/min)だけで内因性PEEPが生じることがある。気流制限が原因の場合,吸気時間を短縮させる(すなわち,吸気流量を増やす)か呼吸数を減らすることにより,呼吸サイクルで呼気の占める割合を増大させることで,内因性PEEPを軽減できる。

機械的人工換気の方法およびモード

人工呼吸器には以下のモードがある:

  • 従量式(volume cycled):呼吸のたびに一定の量を送気する(圧は可変)

  • 従圧式(pressure cycled):呼吸のたびに一定の圧で送気する(送気量は可変)

  • 従量式(volume cycled)と従圧式(pressure cycled)の組合わせ

補助/調節換気(A/C)モードは,患者が自発呼吸を開始するかどうかに関係なく,最低限の呼吸数を保つ換気モードである。圧および容量は圧-容量曲線に直接リンクしているため,人工呼吸器が圧または量のどちらで制御されているかに関係なく,一定の量が与えられれば特定の圧が決まり,またその逆も真である。

人工呼吸器で調節可能な設定はモードによって異なるが,以下のものがある:

  • 呼吸数

  • 1回換気量

  • トリガー感度

  • 流量

  • 波形

  • 吸気時間/呼気時間(I/E)比

従量式(volume cycled)による換気

従量式(volume cycled)による換気では,設定された1回換気量を送気する。このモードには以下のものがある:

  • 量規定換気(V/C)

  • 同期式間欠的強制換気(SIMV)

その結果生じる気道圧は一定ではなく,呼吸器系の抵抗および弾性,ならびに選択された流速によって変化する。

V/C換気は,完全な機械的人工換気を行う上で,最も単純かつ効果的な方法である。このモードでは,設定された感度閾値を超える吸気努力が起こるたびに,トリガーが生じ一定の1回換気量が送気される。患者が人工呼吸器をトリガーする頻度が低ければ,人工呼吸器は送気を開始して,必要な最低呼吸数を確保する。

SIMVもまた,患者の吸気努力に同期して設定された回数および容量の呼吸を送る。V/Cとは対照的に,設定された呼吸数を超える患者の呼吸努力は補助されないものの,吸気弁が開いて呼吸は可能となる。このモードは,V/Cのように完全な機械的人工換気によるサポートを行うわけでもなく,機械的人工換気からの離脱を促進するわけでもなく,患者がより快適に過ごせるわけでもないのにもかかわらず,相変わらず人気が高い。

従圧式(pressure cycled)による換気

従圧式(pressure cycled)による換気では,設定された吸気圧で送気する。このモードには以下のものがある:

  • 圧規定換気(PCV)

  • プレッシャーサポート換気(PSV)

  • 密着するフェイスマスクを介した非侵襲的な方法(数種類が利用可能)

したがって,1回換気量は,呼吸器系の抵抗および弾性によって変化する。このモードでは,呼吸力学的変化により分時換気量が変化しても気付かれないことがある。このモードは肺の拡張圧力を制限するため,理論的には 急性呼吸窮迫症候群 急性低酸素血症性呼吸不全 (AHRF,ARDS) 急性低酸素血症性呼吸不全は,酸素投与に反応しない重症の動脈血低酸素血症である。これは,気腔への体液貯留または虚脱(例,左室不全による肺水腫,急性呼吸窮迫症候群)に起因する血液の肺内短絡,または血液を右から左へ循環させる心内短絡によって引き起こされる。所見には呼吸困難および頻呼吸などがある。診断は動脈血ガス測定および胸部X線による。通常,治療には機械的人工換気が必要となる。 (... さらに読む 急性低酸素血症性呼吸不全 (AHRF,ARDS) (ARDS)の患者に有益な可能性がある;しかしながら,V/Cに比べて臨床上の明らかな優位性は証明されておらず,またPCVにより送気される量とVCにより送気される量が同じであれば,拡張圧も同等となる。

圧規定換気は,従圧式のA/Cである。設定した感度閾値を超える吸気努力が起こるたびに,一定の吸気時間の間完全なプレッシャーサポートを行う。最低限の呼吸数は維持される。

プレッシャーサポート換気では,最低呼吸数は設定されない;全ての呼吸は患者によってトリガーされる。患者の吸気流量がアルゴリズムによってあらかじめ決められたレベルを下回るまで,人工呼吸器は一定の値の圧を加え続けて患者を補助する。したがって,患者の呼吸が長いまたは深いほど,1回換気量は多くなる。このモードは,患者に一定量の呼吸仕事量を課すことにより,患者を機械的人工換気から離脱させる目的で一般的に用いられる。しかしながら,このアプローチが他のアプローチと比べて,機械的人工換気からの離脱に有効であることを示した研究はない。

非侵襲的陽圧換気(NIPPV)

NIPPVは,鼻または鼻と口の両方をぴったり覆うマスクを介して陽圧換気を行うものである。標準的なぴったりフィットするフェイスマスクに耐えられない患者のための代用品として,NIPPVを行うヘルメットが研究されている。これは自発呼吸のある患者に使用するので,主にPSVのモードで利用されたり呼気終末圧を送るのに使用されるが,容量コントロールも可能である。(非侵襲的陽圧換気 非侵襲的陽圧換気 非侵襲的陽圧換気(NPPV)は,侵襲的な人工エアウェイを用いない換気補助である。これは,自発呼吸のある患者に対し,鼻または鼻と口の両方をぴったり覆うマスクを介して行われる。気道は保護されておらず誤嚥の可能性があるため,十分な意識レベルおよび気道防御反射がある患者でなければならない。 ( 機械的人工換気の概要も参照のこと。) NPPVには以下の種類がある: 持続陽圧呼吸療法(CPAP)... さらに読む も参照のこと。)

二相性陽圧換気を用いた非侵襲的陽圧換気(NIPPV)
動画

NIPPVには以下の種類がある:

  • 持続陽圧呼吸療法(CPAP)

  • 二相性陽圧換気(BiPAP)

CPAPにおいては,追加の吸気サポートを行わず,呼吸サイクルを通して一定の圧力が維持される。

BiPAPの場合,呼気気道陽圧(EPAP)と吸気気道陽圧(IPAP)の両方が設定され,呼吸は患者によってトリガーされる。

いずれのモードでも,気道は保護されておらず誤嚥の可能性があるため,十分な意識レベルおよび気道防御反射がある患者でなければならず,手術や病棟からの移動を必要とする場合は,処置が長くなることから適応とならない。意識が障害された患者および大量の分泌物がある患者は,よい適応とはならない。血行動態が不安定な患者,およびイレウスや腸管の通過障害,または妊娠など胃内容排出障害の所見がある患者でも,NIPPVは避けるべきである。そのような状況において,大量の空気が胃に流入すると,嘔吐および生命を脅かす誤嚥を引き起こす可能性がある。また,胃への空気流入を避けるために,IPAPは食道入口部の圧(20cmH2O)よりも低く設定しなければならない。

気管挿管 気管挿管 人工エアウェイを必要とする患者の多くは,以下のような気管挿管による管理が可能である: 経口気管挿管(口腔から管を挿入する) 経鼻気管挿管(鼻から管を挿入する) ほとんどの場合,経鼻気管挿管よりも経口気管挿管が望ましく,喉頭直達鏡またはビデオ喉頭鏡により施行される( ビデオ喉頭鏡を用いた経口気管挿管を参照)。経口気管挿管は,経鼻気管挿管よりも通常手早く施行できるため無呼吸および重症(critically... さらに読む による従来の機械的人工換気への切替えの適応には, ショック ショック ショックとは臓器灌流が低下した状態で,その結果細胞の機能障害および細胞死を生じるものである。関係する機序は,循環血液量の減少,心拍出量の減少,および血管拡張(ときに毛細血管床をバイパスする血液のシャントを伴う)である。症状としては,精神状態の変化,頻脈,低血圧,乏尿などがある。診断は臨床的になされ,血圧測定およびときに組織灌流低下のマーカ... さらに読む または度重なる 不整脈 不整脈の概要 正常な心臓は規則正しく協調的に拍動するが,これは固有の電気的特性を有する筋細胞によって電気パルスが生成・伝達され,それにより一連の組織化された心筋収縮が誘発されることによって生じる。不整脈と伝導障害は,そうした電気パルスの生成,伝導,またはその両方の異常により引き起こされる。 先天的な構造異常(例,房室副伝導路)や機能異常(例,遺伝性のイ... さらに読む 不整脈の概要 の発症,心筋虚血,ならびに心臓カテーテル室または手術室といった気道制御および完全な換気サポートが望まれる場所への移動などがある。

人工呼吸器の設定

人工呼吸器の設定は,背景となっている病態に応じて個別に行うが,基本原理は次の通りである。

1回換気量および呼吸数により分時換気量が決まる。換気量が大きすぎると過膨張のリスクがある;換気量が小さすぎると 無気肺 無気肺 無気肺は,肺組織の容量減少を伴う虚脱である。無気肺が広範囲に及ぶと,呼吸困難または呼吸不全を起こすことがある。肺炎を発症することもある。無気肺は通常症状を伴わないが,低酸素血症および胸膜性胸痛を呈する症例もある。診断は胸部X線による。治療として,咳嗽および深呼吸の維持,ならびに原因そのものの治療がある。 以下によって,肺胞のような開放気腔が自然に虚脱しようとする力に対抗している:... さらに読む 無気肺 が生じる可能性がある。呼吸数が多すぎると,過呼吸により呼気時間が不十分となりautoPEEPが発生し, 呼吸性アルカローシス 呼吸性アルカローシス 呼吸性アルカローシスは二酸化炭素分圧(Pco2)の一次性低下で,重炭酸イオン(HCO3)の代償性の減少を伴う場合と伴わない場合とがある;pHは高値または正常範囲に近い。原因は呼吸数の増加,呼吸量の増加(過換気),またはその両方である。呼吸性アルカローシスには急性の場合と慢性の場合とがある。慢性型は無症状であるが,急性型ではふらつき,錯乱,錯感覚,筋痙攣,および失神が生じる。徴候には過呼吸または頻呼吸および手足の攣... さらに読む を来すリスクがある;呼吸数が少なすぎると,分時換気量が不十分となり 呼吸性アシドーシス 呼吸性アシドーシス 呼吸性アシドーシスは二酸化炭素分圧(Pco2)の一次性上昇で,重炭酸イオン(HCO3)の代償性の増加を伴う場合と伴わない場合とがある;pHは通常低いが,正常範囲に近いこともある。原因は呼吸数および/または呼吸量の減少(低換気)であり,典型的には中枢神経系疾患,肺疾患,または医原性の病態に起因する。呼吸性アシドーシスには急性と慢性がある;慢性型は無症状であるが,急性型(増悪型)は頭痛,錯乱,および眠気を引き起こす。... さらに読む を来すリスクがある。当初,6~8mL/kg(理想体重)という低容量の1回換気量が急性呼吸窮迫症候群(ARDS)患者に推奨されていた(コラム「 ARDSにおける人工呼吸器の初期管理 ARDSにおける人工呼吸器の初期管理 ARDSにおける人工呼吸器の初期管理 」を参照);ただし,こうした低容量の1回換気量は一般に,肺の構造が正常な特定の患者(1 人工呼吸器の設定に関する参考文献 機械的人工換気には以下の種類がある: 非侵襲的,様々な種類のフェイスマスクを使用する 侵襲的, 気管挿管を伴う 適切な手法の選択および使用には呼吸力学の理解が必要である。 気管挿管および機械的人工換気の適応は極めて多彩であるが( 気道管理が必要となる状況の表を参照),一般には,気道の確保または十分な酸素化もしくは換気の維持が困難であることを示す徴候が臨床的または臨床検査により認められる場合に,機械的人工換気を考慮すべきである。 さらに読む , 2 人工呼吸器の設定に関する参考文献 機械的人工換気には以下の種類がある: 非侵襲的,様々な種類のフェイスマスクを使用する 侵襲的, 気管挿管を伴う 適切な手法の選択および使用には呼吸力学の理解が必要である。 気管挿管および機械的人工換気の適応は極めて多彩であるが( 気道管理が必要となる状況の表を参照),一般には,気道の確保または十分な酸素化もしくは換気の維持が困難であることを示す徴候が臨床的または臨床検査により認められる場合に,機械的人工換気を考慮すべきである。 さらに読む , 3 人工呼吸器の設定に関する参考文献 機械的人工換気には以下の種類がある: 非侵襲的,様々な種類のフェイスマスクを使用する 侵襲的, 気管挿管を伴う 適切な手法の選択および使用には呼吸力学の理解が必要である。 気管挿管および機械的人工換気の適応は極めて多彩であるが( 気道管理が必要となる状況の表を参照),一般には,気道の確保または十分な酸素化もしくは換気の維持が困難であることを示す徴候が臨床的または臨床検査により認められる場合に,機械的人工換気を考慮すべきである。 さらに読む ),例えば,手術中に機械的人工換気を受けている患者にも適している(4 人工呼吸器の設定に関する参考文献 機械的人工換気には以下の種類がある: 非侵襲的,様々な種類のフェイスマスクを使用する 侵襲的, 気管挿管を伴う 適切な手法の選択および使用には呼吸力学の理解が必要である。 気管挿管および機械的人工換気の適応は極めて多彩であるが( 気道管理が必要となる状況の表を参照),一般には,気道の確保または十分な酸素化もしくは換気の維持が困難であることを示す徴候が臨床的または臨床検査により認められる場合に,機械的人工換気を考慮すべきである。 さらに読む , 5 人工呼吸器の設定に関する参考文献 機械的人工換気には以下の種類がある: 非侵襲的,様々な種類のフェイスマスクを使用する 侵襲的, 気管挿管を伴う 適切な手法の選択および使用には呼吸力学の理解が必要である。 気管挿管および機械的人工換気の適応は極めて多彩であるが( 気道管理が必要となる状況の表を参照),一般には,気道の確保または十分な酸素化もしくは換気の維持が困難であることを示す徴候が臨床的または臨床検査により認められる場合に,機械的人工換気を考慮すべきである。 さらに読む )。その他の患者(例,外傷,意識障害,重度のアシドーシスのある患者)では,それよりわずかに高い1回換気量(例,8~10mL/kg)から開始される場合がある。肺疾患を有し機械的人工換気を受けている患者の適切な1回換気量を決定する際は,実際の体重よりも理想体重が用いられる:

equation

感度を調節し,人工呼吸器をトリガーするのに必要な陰圧の値を設定する。一般的な設定は−2cmH2Oである。設定値が高すぎると(例,−2cmH2Oよりマイナスの値であると),衰弱している患者は呼吸をトリガーすることができない。設定値が低すぎると(例,−2cmH2Oよりゼロに近い値であると),人工呼吸器がオートサイクルに入り過換気を引き起こす可能性がある。 autoPEEP 呼吸力学 値が高い患者では,気道内を十分陰圧にするのに足る深い吸気を行うのが困難なことがある。

I:E比(吸気時間:呼気時間比)は,吸気に費やされる時間と呼気に費やされる時間の比である。I:E比は一部の換気モードで調節可能である。肺の力学的機能が正常な患者での初期設定は,通常1:3である。 喘息 喘息 喘息は,様々な誘発刺激により引き起こされ,部分的または完全に可逆的な気管支収縮を生じさせる気道のびまん性炎症疾患である。症状および徴候には,呼吸困難,胸部圧迫感,咳嗽,および喘鳴などがある。診断は病歴,身体診察,および肺機能検査に基づく。治療には誘発因子の制御および薬物療法があり,吸入β2作動薬および吸入コルチコステロイドが最も多く用いら... さらに読む または COPD 慢性閉塞性肺疾患(COPD) 慢性閉塞性肺疾患(COPD)は,毒素の吸入(しばしばタバコ煙)に対する炎症反応によって引き起こされる気流制限である。比較的まれな原因として,非喫煙者におけるα1-アンチトリプシン欠乏症および様々な職業曝露がある。症状は数年かけて発現する湿性咳嗽および呼吸困難であり,一般的な徴候には呼吸音の減少,呼気相の延長,および喘鳴などがある。重症例で... さらに読む 慢性閉塞性肺疾患(COPD) (慢性閉塞性肺疾患)増悪の患者では,autoPEEPの程度を制限するため,1:4またはそれ以上の比にすべきである。

換気モードの中には吸気流量を調節できるものもある(すなわち,流量またはI:E比のいずれかが調節可能で,両方同時に調節することはできない)。吸気流量は一般に約60L/minに設定すべきであるが,気流制限のある患者では,autoPEEPを制限するため呼気により長い時間を割けるよう,最大で120L/minまで上げられる。

FIO2(吸入気酸素分画)は最初は1.0(100%酸素)に設定し,その後,十分な酸素化を維持するのに必要な最低値まで下げる。

PEEPは人工呼吸器のあらゆるモードで利用できる。PEEPにより呼気終末の肺容量が増加し,呼気終末に閉鎖する気腔を減少させる。5cmH2OのPEEPを加えることで機械的人工換気を受ける患者のほとんどが便益を得られ,気管挿管,鎮静,麻痺,および/または仰臥位にしばしば伴う無気肺の発生が抑えられる。心原性 肺水腫 肺水腫 肺水腫は,肺静脈性肺高血圧と肺胞内の液貯留(alveolar flooding)を伴った重度の急性左室不全である。所見は,重度の呼吸困難,発汗,喘鳴,ときに泡沫状の血痰である。診断は臨床的に行われ,胸部X線による。治療には酸素,硝酸薬静注,利尿薬のほか,ときにモルヒネを使用するとともに,駆出率が低下した心不全患者には,短期間の陽性変力薬の静注と補助換気(気管挿管と機械的人工換気または二相性陽圧換気)を行う。... さらに読む 肺水腫 および ARDS 急性低酸素血症性呼吸不全 (AHRF,ARDS) 急性低酸素血症性呼吸不全は,酸素投与に反応しない重症の動脈血低酸素血症である。これは,気腔への体液貯留または虚脱(例,左室不全による肺水腫,急性呼吸窮迫症候群)に起因する血液の肺内短絡,または血液を右から左へ循環させる心内短絡によって引き起こされる。所見には呼吸困難および頻呼吸などがある。診断は動脈血ガス測定および胸部X線による。通常,治療には機械的人工換気が必要となる。 (... さらに読む 急性低酸素血症性呼吸不全 (AHRF,ARDS) などの疾患では,PEEP値をより高い値にすることで酸素化が改善される。PEEPにより動脈血の十分な酸素化を保ちつつ,使用するFIO2は比較的低いレベルを維持できる。この効果は,高濃度のFIO2(0.6以上)への長期的曝露により生じうる肺損傷の発生を抑える上で,重要といえる。PEEPにより胸腔内圧が上昇して静脈還流が妨げられると,循環血液量が減少した患者では低血圧を招くことがあり,また,肺の一部を過膨張させ 人工呼吸器関連肺損傷 機械的人工換気の合併症および予防策 (VALI)を引き起こすこともある。一方,PEEPが低すぎると気腔の周期的な開閉につながることがあり,結果としてこれもまた,反復されるずり応力によりVALIの原因となる可能性がある。圧-容量曲線は肺の領域によって異なるということを覚えておくことは重要である。この差異は,任意のPEEPに対し,容量の増加は肺の荷重部で小さく,非荷重部で大きいことを意味している。

人工呼吸器の設定に関する参考文献

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  • 2.Guay J, Ochroch EA, Kopp S: Intraoperative use of low volume ventilation to decrease postoperative mortality, mechanical ventilation, lengths of stay and lung injury in adults without acute lung injury.Cochrane Database Syst Rev Jul; 2018(7): CD011151, 2018.doi: 10.1002/14651858.CD011151.pub3

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患者の体位

機械的人工換気は一般的には上体を半分起こした体位の患者に使用される。しかしながら,ARDSの患者では,腹臥位で酸素化が改善されることがあり,これは主としてより均一な換気ができるためである。均一な換気により,換気を欠く肺容量(すなわち,シャントの量,一般的に背側および尾側に最も多い)が減少するが,血流の分布への影響はわずかである。

高いPEEP値(例,12cmH2O以上)およびFIO2(例,0.6以上)を必要とするARDSの患者には腹臥位を試みることを多くの研究者が提唱しているが,初期の臨床試験では,この戦略に死亡率の改善は示されなかった(ただし,それらの試験は検出力不足であった)。その後の大規模な多施設共同臨床試験(1 患者の体位に関する参考文献 機械的人工換気には以下の種類がある: 非侵襲的,様々な種類のフェイスマスクを使用する 侵襲的, 気管挿管を伴う 適切な手法の選択および使用には呼吸力学の理解が必要である。 気管挿管および機械的人工換気の適応は極めて多彩であるが( 気道管理が必要となる状況の表を参照),一般には,気道の確保または十分な酸素化もしくは換気の維持が困難であることを示す徴候が臨床的または臨床検査により認められる場合に,機械的人工換気を考慮すべきである。 さらに読む )では,中等度のARDS(FIO2 ≥ 0.6,PEEP > 5cmH2Oの状況で,PaO2:FIO2 < 150mmHg)の患者を対象に,1回換気量を約6mL/kgに設定して評価された。被験者は人工換気中に16時間以上腹臥位をとらせる群と仰臥位を継続する群にランダムに割り付けられた。計466人の患者を対象としたこの試験では,腹臥位をとらせた群において,合併症の有意な発生率の増加がなく,28日死亡率と90日死亡率が低下したことが明らかにされた。以前の研究と比較して良好な結果が得られたのは,患者選択および管理プロトコルの改善によるものと考えられる(2 患者の体位に関する参考文献 機械的人工換気には以下の種類がある: 非侵襲的,様々な種類のフェイスマスクを使用する 侵襲的, 気管挿管を伴う 適切な手法の選択および使用には呼吸力学の理解が必要である。 気管挿管および機械的人工換気の適応は極めて多彩であるが( 気道管理が必要となる状況の表を参照),一般には,気道の確保または十分な酸素化もしくは換気の維持が困難であることを示す徴候が臨床的または臨床検査により認められる場合に,機械的人工換気を考慮すべきである。 さらに読む )。

腹臥位は,脊椎が不安定な患者または頭蓋内圧が亢進している患者では禁忌である。この体位を施行する場合は,気管内チューブまたは血管内カテーテルのずれなどの合併症を予防するため,集中治療室スタッフによる注意深い観察も必要である。

患者の体位に関する参考文献

鎮静および快適さ

多くの患者は鎮静なしに気管内チューブを介した機械的人工換気に耐えられるが,一部の患者ではストレスおよび不安を最小限にするため,鎮静薬(例,プロポフォール,ロラゼパム,ミダゾラム)および鎮痛薬(例,モルヒネ,フェンタニル)の静脈内投与を必要とする。これらの薬剤はまた,エネルギー消費量をある程度減らすことにより,二酸化炭素の産生量および酸素消費量を削減できる。期待される効果を得るため,標準的な鎮静/鎮痛スコアリングシステム(例,リッチモンド興奮鎮静スケール[Richmond Agitation Sedation Scale], ライカー鎮静興奮スケール[Riker Sedation-Agitation Scale] ライカー鎮静興奮スケール(Riker Sedation-Agitation Scale:SAS) ライカー鎮静興奮スケール(Riker Sedation-Agitation Scale:SAS) )に従い投与量を調整すべきである。ARDSのために機械的人工換気を受ける患者は,概して高いレベルの鎮静および鎮痛を必要とする。24~48時間以上にわたりプロポフォールを使用する場合は,定期的な(例,48時間毎の)血清トリグリセリド値のモニタリングが必要である。鎮静薬を持続的に静脈内投与することにより,機械的人工換気の継続期間が延長するというエビデンスがある。よって,目標は十分かつ過度にならない鎮静を得ることであり,持続的な鎮静に毎日中断を加えたり,静注を間欠的に行うことにより達成できる。

神経筋遮断薬をルーチンに使用すると,神経筋障害を残すリスクのほか,持続的な高レベルの鎮静を行う必要が生じるため,機械的人工換気を受けている患者でこの薬剤をルーチンに使用することはない;しかしながら,ある研究では,48時間にわたる神経筋遮断薬の投与を受けた早期の重症ARDS患者で,90日間の死亡率が低下したことが示されている(1 鎮静および快適さに関する参考文献 機械的人工換気には以下の種類がある: 非侵襲的,様々な種類のフェイスマスクを使用する 侵襲的, 気管挿管を伴う 適切な手法の選択および使用には呼吸力学の理解が必要である。 気管挿管および機械的人工換気の適応は極めて多彩であるが( 気道管理が必要となる状況の表を参照),一般には,気道の確保または十分な酸素化もしくは換気の維持が困難であることを示す徴候が臨床的または臨床検査により認められる場合に,機械的人工換気を考慮すべきである。 さらに読む )。残念ながら,これらの知見は,ARDSにおける早期の神経筋遮断薬の使用と,神経筋遮断薬を用いないより軽度の鎮静とを比較したより大規模な追跡研究では再現されなかった(2 鎮静および快適さに関する参考文献 機械的人工換気には以下の種類がある: 非侵襲的,様々な種類のフェイスマスクを使用する 侵襲的, 気管挿管を伴う 適切な手法の選択および使用には呼吸力学の理解が必要である。 気管挿管および機械的人工換気の適応は極めて多彩であるが( 気道管理が必要となる状況の表を参照),一般には,気道の確保または十分な酸素化もしくは換気の維持が困難であることを示す徴候が臨床的または臨床検査により認められる場合に,機械的人工換気を考慮すべきである。 さらに読む )。このため,重度のARDSに対してルーチンに筋弛緩を行うことは推奨されない。神経筋遮断薬の恩恵を受ける例外的なケースとして,機械的人工換気のより精緻で複雑なモードに耐えられない患者,および心停止後の冷却法を用いる際にシバリングが止まらない患者などがある。

鎮静および快適さに関する参考文献

機械的人工換気の合併症および予防策

機械的人工換気の合併症の原因は以下のように分類できる:

  • 気管挿管

  • 機械的人工換気そのもの

  • 長期間に及び動けないこと,および通常の食事ができないこと

酸素毒性とは,高いFIO2(例,> 0.6)に長期間曝露することで発生しうる炎症性変化,肺胞浸潤,およびその最終段階である肺線維化を指す。毒性は濃度および時間の両方に依存する。0.6を超えるFIO2は,患者の生存に必要でない限り避けるべきである。0.6未満のFIO2は,長期にわたって十分に許容される。

人工呼吸器関連肺損傷(VALI:ventilator-associated lung injury)は,ventilator-induced lung injuryと呼ばれることもある,機械的人工換気に関連する肺胞および/または末梢気道の損傷である。考えられる機序として,肺胞の過膨張(すなわち,容量外傷)および肺胞の開放と虚脱が繰り返されること(すなわち無気肺)によって生じるずり応力などがあり,それが炎症性メディエーターの放出につながり,肺胞透過性の亢進,体液の蓄積,およびサーファクタントの欠乏を引き起こす。

機械的人工換気下の患者に急性の低血圧が生じた場合,特に頻脈および/または急な最高吸気圧の上昇を伴う場合,常に 緊張性気胸 気胸(緊張性) 緊張性気胸は圧力下での胸腔内に空気が貯留した状態のことであり,肺を圧迫し,心臓への静脈還流量を減少させる。 ( 胸部外傷の概要も参照のこと。) 肺または胸壁の損傷が,空気が胸腔に入ることが可能でも出ていくことができない損傷(一方向弁)である場合に,緊張性気胸が発生する。その結果,空気が貯留して肺を圧迫し,最終的に縦隔を偏移させ,対側肺が圧迫され,心臓への静脈還流量が減少するほどに胸腔内圧が上昇し,... さらに読む 気胸(緊張性) を考慮しなければならない;このような所見があれば,迅速に胸部の診察を行い,胸部X線(または,胸部の診察の所見が確定的であれば,直ちに治療)を行うべきである。しかしながら,低血圧のより一般的な原因は,挿管および換気を促すために用いた鎮静薬またはオピオイドによる交感神経の抑制である。高い値のPEEPを受けている患者,または喘息もしくはCOPDのため内因性PEEPが高い患者では,胸腔内圧の上昇による静脈還流量減少が原因で低血圧が起こることもある。緊張性気胸を示唆する身体所見がなく,血圧低下の原因として人工呼吸器関連の原因が考えられる場合,ポータブルX線撮影装置による胸部X線検査を行う前に,患者を人工呼吸器から外し,100%酸素を用いて2~3呼吸/分の速度で手動により愛護的に換気しつつ,輸液(例,生理食塩水を成人では500~1000mL,小児では20mL/kg)を行う。すぐに回復した場合,人工呼吸器関連の原因が示唆され,それに応じて人工呼吸器の設定を調整すべきである。

相対的に動けない状態が続くため,静脈血栓塞栓症(例, 深部静脈血栓症 深部静脈血栓症(DVT) 深部静脈血栓症(DVT)とは,四肢(通常は腓腹部または大腿部)または骨盤の深部静脈で血液が凝固する病態である。DVTは肺塞栓症の第1の原因である。DVTは,静脈還流を阻害する病態,内皮の損傷または機能不全を来す病態,または凝固亢進状態を引き起こす病態によって発生する。DVTは無症状の場合もあるが,四肢に疼痛および腫脹が生じる場合もあり,肺塞栓症が直接の合併症の1つである。診断は病歴聴取と身体診察で行われ,客観的検査法(典型的にはdupl... さらに読む 深部静脈血栓症(DVT) 肺塞栓症 肺塞栓症(PE) 肺塞栓症とは,典型的には下肢または骨盤の太い静脈など,他の場所で形成された血栓による肺動脈の閉塞である。肺塞栓症の危険因子は,静脈還流を障害する状態,血管内皮の障害または機能不全を引き起こす状態,および基礎にある凝固亢進状態である。肺塞栓症の症状は非特異的であり,呼吸困難,胸膜性胸痛などに加え,より重症例では,ふらつき,失神前状態,失神,... さらに読む 肺塞栓症(PE) ),皮膚の破綻,および 無気肺 無気肺 無気肺は,肺組織の容量減少を伴う虚脱である。無気肺が広範囲に及ぶと,呼吸困難または呼吸不全を起こすことがある。肺炎を発症することもある。無気肺は通常症状を伴わないが,低酸素血症および胸膜性胸痛を呈する症例もある。診断は胸部X線による。治療として,咳嗽および深呼吸の維持,ならびに原因そのものの治療がある。 以下によって,肺胞のような開放気腔が自然に虚脱しようとする力に対抗している:... さらに読む 無気肺 のリスクが増加する。

多くの病院には合併症を減らすための標準化されたプロトコルが存在する。ベッドの頭側を30°よりも上昇させると人工呼吸器関連肺炎のリスクが減少し,また,ルーチンに2時間毎に体位変換を行うと皮膚の損傷のリスクが減少する(褥瘡の予防 予防 褥瘡(pressure ulcer)とは,骨突出部と体外の硬い表面の間で軟部組織が圧迫された領域に生じる壊死および潰瘍である。持続的な機械的圧迫に摩擦,ずれ力,湿潤が組み合わさって生じる。危険因子としては,年齢65歳以上,循環および組織灌流の障害,体動不能,低栄養,感覚低下,失禁などがある。重症度としては,圧迫しても消退しない皮膚の紅斑か... さらに読む  予防 を参照)。機械的人工換気を受けている全ての患者に,深部静脈血栓症の予防を行うべきであり,ヘパリン5000単位を1日2回または3回皮下投与するか低分子ヘパリンを使用し,ヘパリンが禁忌の場合は連続圧迫装置(Sequential compression device[SCD])を用いる。消化管出血を予防するために,ヒスタミンH2受容体拮抗薬(例,ファモチジン20mg,経腸もしくは静注で1日2回)またはスクラルファート(1g,経腸で1日4回)を投与すべきである。プロトンポンプ阻害薬は,もともと適応があった患者,または活動性出血を有する患者のみに用いるべきである。ルーチンの栄養評価は必須であり,機械的人工換気の持続使用が予想される場合,経管栄養を開始すべきである。

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