メルクマニュアル18版 日本語版
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心臓カテーテル法

心臓カテーテル法とは,末梢動脈または末梢静脈から心腔および冠動脈へカテーテルを挿入することである。心臓カテーテル法は,血管造影,血管内超音波検査,心拍出量(CO)の測定,心内膜心筋生検,および心筋代謝の測定を含む様々な検査を行うために利用できる。これらの検査は,診断を確立するために冠動脈の解剖,心臓の解剖,および心機能を明確にし,治療を選択するのに役立つ。心臓カテーテル法はいくつかの治療的介入の基礎でもある。

手技

患者は心臓カテーテル法施行前の4〜6時間,絶食しなければならない。ほとんどの患者は宿泊を伴う入院の必要はない。

左心カテーテル法は冠動脈の解剖を評価するのに最も一般的に使用され,大動脈血圧および全身血管抵抗,大動脈弁および僧帽弁の機能,左室(LV)圧および左室機能を評価するのにも有用である。この手技は大腿動脈,橈骨動脈,または上腕動脈の経皮的穿刺によって行われ,カテーテルを冠動脈口に,または大動脈弁を通過して左室に挿入する。ときに,右心カテーテル検査中に経心房中隔穿刺法を用いて,左房(LA)および左室にカテーテルを挿入する。

右心カテーテル法は右房(RA),右室(RV),肺動脈圧,肺動脈閉塞圧(PAOP)を評価するのに最も一般的に使用される心血管検査および手技: 心腔の圧曲線,心音,頸静脈波,および心電図を示す心周期の模式図。図 1: イラスト および重症患者へのアプローチ: 肺動脈楔入圧(PAOP)を参照 ;肺動脈閉塞圧は左房および左室の拡張終期圧を概算する。重篤な病状の患者では,肺動脈閉塞圧は容量の状況の評価に役立ち,心拍出量を同時に測定すると,治療の方針を決めるのに役立つことがある。右心カテーテル法は肺血管抵抗,三尖弁または肺動脈弁の機能,および右室圧の評価にも有用であり,右室圧は非侵襲的検査で診断がつかないときに,心筋症,収縮性心膜炎,および心タンポナーデを診断するのに役立つことがある。この手技は大腿静脈,鎖骨下静脈,内頸静脈,または前肘静脈の穿刺によって行い,カテーテルは右房内部を通り,三尖弁を通じて右室に入り,肺動脈弁を越えて肺動脈に入る(重症患者へのアプローチ: 手技を参照 )。冠静脈洞の選択的カテーテル法も行える。

図 1

心腔の圧曲線,心音,頸静脈波,および心電図を示す心周期の模式図。

心腔の圧曲線,心音,頸静脈波,および心電図を示す心周期の模式図。

AO = 大動脈弁開放;AC = 大動脈弁閉鎖;MO =僧帽弁開放。心周期の相には心房収縮期(a),等容性収縮期(b),最大駆出期(c),減弱駆出期(d),拡張初期相(e),等容性弛緩期(f),急速流入期(g),心拍静止期または緩徐な左室充満期(h)がある。説明のため弁の開閉の時間間隔を改変し,Z点は延長してある。

特異的検査

血管造影 : ある特定の状況では,冠動脈または肺動脈,大動脈,および心腔に放射線不透過性色素を注入することが有用である。デジタルサブトラクション血管造影は,動いていない動脈と心腔シネアンギオグラフィに使用される。

左心カテーテル法による冠動脈造影は,不安定狭心症,非定型胸痛,弁置換前の弁膜異常,または説明のできない心不全を有する患者にみられるように,様々な臨床状況における冠動脈解剖を評価するのに利用される。

右心カテーテル法による肺血管造影法は肺塞栓症の診断に利用され,血管腔内の陰影欠損または動脈遮断は診断に有効である。放射線不透過性色素は通常,片方または両方の肺動脈,およびその関連部分に選択的に注入される。

左心カテーテル法による大動脈血管造影は,大動脈弁閉鎖不全,大動脈縮窄,動脈管開存,および大動脈解離の評価に利用される。

心室造影は弁下領域,弁領域,ならびに弁上領域を含む,心室壁運動および心室流出路を視覚化するのに利用される。1平面または2平面の心室血管造影図による左室の重量および容量の測定後,収縮終期と拡張終期の容量および駆出率を計算できる。

血管内超音波検査: 冠動脈カテーテルの先端にある小型超音波トランスデューサーは,冠血管腔像および冠血管壁像を描出し,血流を描写できる。この方法は,冠動脈造影と同時にますます利用されるようになっている。

心臓シャント検査: 心臓および大血管内部の一連のレベルで血中O2含有量を測定することは,セントラルシャントの存在,方向,および量の決定に役立つ。肺動脈と右室のO2含有量の差は,正常では最大0.5mL/dLで,右室と右房では0.9mL/dL,右房と上大静脈では1.9mL/dLである。もし心腔の血液O2含有量がより近位の心腔の含有量を上回り,その差がこれらの値を超えるならば,そのレベルでの左-右シャントがありうる。左房,左室,または動脈のO2飽和度が低く(92%以下),純粋O2で改善しないとき(吸気O2分画=1.0),右-左シャントが強く疑われる。左心または動脈の脱飽和と右側循環系でシャント部位を越えて採取した血液サンプルのO2含有量の増加は,両方向性シャントを示唆する。

心拍出量と血流の測定: 心拍出量は,1分間に心臓から拍出される血液量である(安静時の正常範囲:4〜8L/分)。心拍出量を計算するのに用いられる方法には,フィック法,標識-希釈法,および熱希釈法がある(心血管検査および手技: 心拍出量の方程式表 2: 表を参照)。

表 2

PDF 心拍出量の方程式

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フィック法では,心拍出量はO2消費量を動静脈のO2差で除した値に比例する。

希釈法は,標識が血液循環に注入された後,それが心拍出量に比例して現れたり消えたりするという前提に基づく。

通常,心拍出量は体表面積(BSA)との関係で,心係数(CI)L/分/m2として表される(すなわち,CI=CO/BSA―心血管検査および手技: 心係数および関連測定値の正常値表 3: 表を参照)。 BBSAはデュボアの身長(ht)体重(wt)式で計算される:

表 3

心係数および関連測定値の正常値

測定項目

正常値

SD

O2摂取率

143mL/分/m2*

14.3

動静脈のO2較差

4.1dL

0.6

心係数

3.5L/分/m2

0.7

1回拍出率

46mL/拍/m2

8.1

全血管抵抗

1130ダイン-秒-cm-5

178

全肺抵抗

205ダイン-秒-cm-5

51

肺細動脈抵抗

67ダイン-秒-cm-5

23

SD =標準偏差。

*BMIにより変動。

Adapted from Barratt-Boyes BG, Wood EH: “Cardiac output and related measurements and pressure values in the right heart and associated vessels, together with an analysis of the hemodynamic response to the inhalation of high oxygen mixtures in healthy subjects.” Journal of Laboratory and Clinical Medicine 51:72–90, 1958.

心内膜心筋生検: この手技は,移植拒絶および感染による心筋疾患を評価するのに役立つ。生検カテーテル(biotome)はどちらの心室にも(通常は右室)通すことができる。中隔心内膜から3〜5つの心筋組織サンプルを採取する。主な合併症である心穿孔は患者の0.3〜0.5%に起こり,心タンポナーデにつながる心膜血腫を引き起こすことがある。

禁忌と合併症

心臓カテーテル法に対する相対禁忌は,腎不全,凝固障害,発熱,全身性感染,コントロール不良の不整脈または高血圧,非代償性心不全,および,適切に前投薬されていない患者における放射線不透過性色素アレルギーなどである(放射線画像診断の原則: アレルギー型の造影剤に対する反応を参照 )。

放射線不透過性色素の注入により,多くの患者において体全体に一過性の熱感が生じる。頻拍,全身血圧のわずかな低下,心拍出量増加,悪心,嘔吐,および咳がみられることがある。重篤な合併症(例,心停止,アナフィラキシー反応,ショック,発作,チアノーゼ,腎毒性)はまれである。大量の色素が注入されると,まれに徐脈が起こり,患者に咳をさせることで,しばしば正常な律動が回復する。高Hct患者は血栓症になりやすく,血管造影前のHctは65%未満でなければならない。アレルギー反応には蕁麻疹および結膜炎などがあり,それらは通常,ジフェンヒドラミン50mg静注に反応する。気管支痙攣,喉頭浮腫,および呼吸困難はまれな副作用であり,サルブタモールまたはエピネフリンで治療する。アナフィラキシーショックはアドレナリンおよびその他の補助療法で治療する。カテーテルの先端が心室心内膜に接触すると,心室性不整脈がよくみられるが,心室細動はまれである。その場合,直流(DC)電気的除細動を直ちに行う(呼吸停止と心停止: 除細動を参照 )。放射線不透過性色素は全て高張性で,腎から排泄される。

死亡率は0.1〜0.2%である。心筋梗塞(0.1%)および脳卒中(0.1%)は重大な病的状態をもたらすことがある。カテーテル挿入部位での局所血管損傷は出血,または仮性動脈瘤もしくは動静脈瘻の形成を引き起こすことがある。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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