メルクマニュアル18版 日本語版
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リンパ浮腫

リンパ浮腫は,リンパ系形成不全(原発性),またはリンパ管の閉塞もしくは破壊(二次性)による四肢の浮腫である。症状と徴候は,1本以上の肢の肥厚した線維性の非陥凹性浮腫である。診断は身体診察により行う。治療は運動,圧力勾配ドレッシング,マッサージ,およびときに手術からなる。治癒はまれだが,治療は症状を軽減し,進行を遅延または停止させる。患者には蜂巣炎,リンパ管炎,およびまれにリンパ管肉腫のリスクがある。

分類と病因

リンパ浮腫は原発性(リンパ系形成不全による)のことも,二次性(リンパ管の閉塞や破壊による)のこともある。

原発性リンパ浮腫: 原発性リンパ浮腫は遺伝性であり,まれである。表現型および症状発現時の患者の年齢は様々である。

先天性リンパ浮腫は2歳になる前に現れ,リンパ系の形成不全または低形成によるものである。ミルロイ病は,常染色体性優性の家族性の先天性リンパ浮腫であり,VEGF3の変異に起因し,ときに胆汁うっ滞性黄疸,および腸リンパ管拡張症により起こる蛋白漏出性腸症による浮腫または下痢と関連する。

早発性リンパ浮腫は2〜35歳の間に,典型的には初潮時または妊娠中の女性に現れる。メージュ病は常染色体性優性の家族性の早発性リンパ浮腫であり,転写因子遺伝子(FOXC2)の変異に起因し,余分な睫毛(睫毛重生),口蓋裂,脚,腕,およびときに顔の浮腫と関連する。

晩発性リンパ浮腫は35歳以降に起こる。家族性のものと散発性ものとがあり,両方とも遺伝的根拠は不明である。臨床所見は早発性リンパ浮腫のものと類似するが,それほど重度ではない。

ターナー症候群;胸水および黄色爪を特徴とする黄色爪症候群;腸およびその他のリンパ管拡張症,顔面奇形,精神遅滞のみられるまれな先天性症候群であるHennekam症候群など,他の遺伝的症候群でもリンパ浮腫は著明である。

二次性リンパ浮腫: 二次性リンパ浮腫は,原発性のものよりもはるかに一般的にみられる。最も一般的には,手術(特に,典型的には乳癌において行われるリンパ節摘出),放射線療法(特に腋窩部または鼡径部),外傷,腫瘍によるリンパ管閉塞,および開発途上国ではリンパ系フィラリア症によって引き起こされる。慢性静脈不全患者では,リンパ液の間質組織への漏出によって軽度のリンパ浮腫が起こることもある。

症状と徴候

二次性リンパ浮腫の症状には,疼くような不快感および重圧感または膨満感がある。

主徴は3ステージに分類される軟組織の浮腫である。ステージ1では浮腫は圧痕を示し,罹患部位はしばしば朝までに正常に戻る。ステージ2では浮腫は圧痕を残さず,慢性の軟組織の炎症が初期の線維化を起こす。ステージ3では,主として軟組織の線維化のために浮腫は肥厚し不可逆性である。腫脹は最も多くは一側性であり,暖かい天候のときや月経前,長時間患肢を下垂した後などに増悪する。四肢のいずれかの部分(単独で近位または遠位)が罹患することも,または肢全体が罹患することもあり,腫脹が関節周囲に起こると可動域を制限することもある。リンパ浮腫が内科的または外科的な治療によって起こったときは特に,身体障害と感情的苦痛は重大なものとなりうる。

皮膚の変化は一般的であり,角質増殖,色素沈着過度,疣贅,乳頭腫,真菌感染などがある。

リンパ管炎(細菌性皮膚感染症: リンパ管炎を参照 )が発症することがあり,細菌が,真菌感染の結果できた足趾の間の皮膚のひび割れから侵入した場合,または手の切創から侵入した場合に最も多い。リンパ管炎はほとんど常にレンサ球菌性であり,丹毒を引き起こすが,ときにブドウ球菌性のこともある。患肢は発赤し,熱感があり,侵入口から赤い線条が近位に伸び,リンパ節腫脹が起こることがある。まれに,皮膚が破れる。

診断

診断は通常,身体診察により明らかである。二次性リンパ浮腫が疑われるときは追加検査が適応となる。CTおよびMRIはリンパ管閉塞部位を確認でき,放射性核種リンパシンチグラフィはリンパ系形成不全または流れの遅滞を確認できる。肢の外周の測定,肢を水に沈めて置換された水量の測定,皮膚または軟組織の圧力測定法の使用により進行をモニタリングできるが,これらの検査は正当性が確認されていない。開発途上国ではリンパ系フィラリア症の検査を行うべきである(線虫類: バンクロフトおよびマレー糸状虫症(リンパ系フィラリア症)を参照 )。

予後と治療

リンパ浮腫がいったん起こると,治癒はまれである。注意深い治療および予防となりうる措置により,症状を軽減し,疾患の進行を遅延または停止させうる。まれに,通常は乳房切除術後の患者およびフィラリア症患者において,長期のリンパ浮腫がリンパ管肉腫を引き起こすことがある(スチュワート・トリーブス症候群)。

生活の質が著しく低下している場合は,原発性リンパ浮腫の治療として軟組織の整復と再建を行うこともある。

二次性リンパ浮腫の治療では,原因の管理を行う。リンパ浮腫そのものには,浮腫液を動かすいくつかの介入(複合うっ滞緩和療法)が利用できる。これには,肢を挙上し心臓に向かって“搾乳”する用手リンパドレナージ;圧力勾配のある包帯または腕あて;肢の運動;間欠的空気圧迫を含む肢のマッサージがある。軟組織の外科的整復,リンパ管の再吻合,排液路の形成がときに試みられるが,厳密に研究されてはいない。

予防法には,暑さを避けること,積極的な運動,および患肢の周囲に締めつける衣類(血圧カフを含む)を装着することがある。皮膚および爪のケアには細心の注意が必要であり,患肢のワクチン接種,静脈切開,静脈内カテーテル留置は避けるべきである。

リンパ管炎は,グラム陽性菌をカバーするβラクタマーゼ耐性抗生物質(例,オキサシリン,クロキサシリン,ジクロキサシリン)により治療する。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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