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心臓腫瘍

執筆者:

Anupama K. Rao

, MD, Rush University Medical Center

レビュー/改訂 2021年 2月
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心臓腫瘍は原発性(良性または悪性)の場合と転移性(悪性)の場合がある。原発性心臓腫瘍で最も頻度が高いものは,良性腫瘍である粘液腫である。心臓腫瘍は心臓のあらゆる組織に発生する。弁または流入路・流出路の閉塞,血栓塞栓症,不整脈,心膜疾患などの原因となりうる。診断は心エコー検査としばしば心臓MRIによる。良性腫瘍の治療は通常,外科的切除であるが,再発することがある。転移性悪性腫瘍の治療法は,腫瘍の種類と原発部位に依存するが,一般に予後は不良である。

原発性心臓腫瘍は,剖検例では2000例当たり1例未満の頻度で発見される。転移性腫瘍は30~40倍多くみられる。通常,原発性心臓腫瘍は心筋または心内膜を起源とするが,弁組織,心臓結合組織,または心膜に由来することもある。転移性心臓腫瘍は典型的には肺を起源とする。心転移を起こす頻度の高い他の腫瘍としては,乳癌,腎癌,黒色腫,リンパ腫などがある。

心臓腫瘍の分類

比較的頻度の高い原発性および続発性心臓腫瘍について記載する(心臓腫瘍の種類 心臓腫瘍の種類 心臓腫瘍の種類 を参照)。原発性心臓腫瘍は以下のものに分類される:

  • 良性(症例の80%近く)

  • 悪性(残りの20%)

良性原発性心臓腫瘍

例として粘液腫,乳頭状線維弾性腫,横紋筋腫,線維腫,血管腫,奇形腫,脂肪腫,傍神経節腫,心膜嚢腫などが挙げられる。

粘液腫が最も多く,原発性心臓腫瘍全体の50%を占める。女性での発生率が男性の2~4倍である。まれにみられる家族性の腫瘍(Carney complex)は,男性に多くみられる。粘液腫の約75%が左房に発生するが,残りは他の心腔に孤立性の腫瘍として生じることもあれば,比較的まれながら複数の部位に生じることもある。粘液腫の直径は最大15cmになることもある。約75%が有茎性で,拡張期に僧帽弁に落ち込んで,心室充満を妨げることがある。残りの腫瘍は広基性および無茎性である。粘液腫には,粘液状ないしゼリー状のもの,平滑で堅く分葉状のもの,もろく不整のものなどがある。もろく不整な粘液腫は全身性塞栓症のリスクを増大させる。

Carney complexは,常染色体優性の形式で遺伝する家族性症候群であり,再発性心臓粘液腫に加えて,皮膚粘液腫,粘液様乳線維腺腫,色素性皮膚病変(黒子,雀卵斑,青色母斑), 多発性内分泌腫瘍症(MEN) 多発性内分泌腫瘍症(MEN)の概要 多発性内分泌腫瘍症(MEN)は遺伝的に異なる3つの家族性疾患から成り,いくつかの内分泌腺における腺腫様過形成および悪性腫瘍を伴う。 MEN 1では,主に副甲状腺の過形成またはときに腺腫(その結果 副甲状腺機能亢進症が生じる)ならびに膵島細胞および/または下垂体の腫瘍を認める。 MEN... さらに読む 多発性内分泌腫瘍症(MEN)の概要 (原発性の色素性結節性副腎皮質疾患で, クッシング症候群 クッシング症候群 クッシング症候群は,血中のコルチゾールまたは関連するコルチコステロイドの慢性高値によって引き起こされる一群の臨床的な異常である。クッシング病は下垂体の副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)過剰産生に起因するクッシング症候群であり,通常は下垂体腺腫に続発する。典型的な症状および徴候には,満月様顔貌および中心性肥満,紫斑ができやすい,ならびにやせた... さらに読む クッシング症候群 ,成長ホルモンおよびプロラクチン分泌性の下垂体腺腫,精巣腫瘍,甲状腺腺腫または甲状腺癌,および卵巣嚢胞を引き起こす),砂粒腫性のメラニン性神経鞘腫,乳管腺腫,骨軟骨粘液腫などが様々な組合せで発生する。しばしば若年で発症し(年齢の中央値は20歳),多発性粘液腫が出現し(特に心室),粘液腫再発のリスクが高い。

乳頭状線維弾性腫は,80%以上の症例で心臓弁に生じる無血管性の乳頭腫である。乳頭腫は左心系に発生することが多く,大半が大動脈弁と僧帽弁に生じる。発生率は男性と女性で同じである。中心部の核から乳頭状の葉部が枝分かれして伸び,イソギンチャクのように見える。約45%が有茎性である。弁機能障害を引き起こすことはないが,塞栓症のリスクを増大させる。

横紋筋腫は主に乳児および小児に発生し,そのうち80%が 結節性硬化症 結節性硬化症(tuberous sclerosis complex:TSC) 結節性硬化症は,複数の臓器に腫瘍(通常は過誤腫)が発生する優性遺伝性疾患である。診断には,病変のある臓器の画像検査が必要である。治療は対症療法か,中枢神経系腫瘍が増大していれば,シロリムスまたはエベロリムスを使用する。合併症を検出するためにモニタリングを定期的に行わなければならない。... さらに読む 結節性硬化症(tuberous sclerosis complex:TSC) を併発している。横紋筋腫は通常多発性であり,左室の中隔壁または自由壁の内部に発生し,心臓の刺激伝導系を障害する。腫瘍は白色で硬い分葉状を呈し,典型例では年齢とともに退縮する。少数の患者では,左室流出路閉塞により頻拍性不整脈および 心不全 心不全 心不全は心室機能障害により生じる症候群である。左室不全では息切れと疲労が生じ,右室不全では末梢および腹腔への体液貯留が生じる;左右の心室が同時に侵されることもあれば,個別に侵されることもある。最初の診断は臨床所見に基づいて行い,胸部X線,心エコー検査,および血漿ナトリウム利尿ペプチド濃度を裏付けとする。治療法としては,患者教育,利尿薬,ア... さらに読む 心不全 が発症する。

線維腫も主に小児で発生し,皮膚の脂腺腫および腎腫瘍との関連がみられる。主に左心系で発生し,心室の心筋内に位置することが多く,炎症への反応として発生することがある。刺激伝導系への圧迫や浸潤を起こすことがあり,その場合は不整脈や突然死を引き起こす。線維腫には,全身性の過成長,下顎の角化嚢胞,骨格異常,ならびに様々な良性および悪性腫瘍が併発する症候群(Gorlin症候群ないし基底細胞母斑症候群)の部分症として発生するものもある。

血管腫の症状は少数の患者でしかみられない。他の理由で行われた診察で偶然発見されることが最も多い。

心膜の奇形腫は主に乳児および小児で発生する。しばしば腫瘍が大血管の基部に接している。約90%が前縦隔,残りは主に後縦隔に位置する。

傍神経節腫褐色細胞腫 褐色細胞腫 褐色細胞腫は,典型的には副腎に局在する,クロム親和性細胞から成るカテコールアミン産生腫瘍である。持続性または発作性の高血圧を引き起こす。診断は,血中または尿中のカテコールアミン産物の測定による。画像検査,特にCTまたはMRIは腫瘍の局在同定に役立つ。治療は,可能であれば腫瘍の切除による。血圧調節のための薬物療法にはα遮断薬が使用され,通常... さらに読む も含む)が心臓に発生することはまれであるが,この種の腫瘍が心臓に発生した場合には,心基部の迷走神経終末付近に限局するのが通常である。カテコールアミンの分泌による症状(例,心拍数と血圧の上昇,大量発汗,振戦)で発症することもある。傍神経節腫は,良性の場合と悪性の場合がある。

心膜嚢腫は,胸部X線像では心臓腫瘍や心嚢液貯留に類似することがある。通常は無症状であるが,圧迫症状(例,胸痛,呼吸困難,咳嗽)を引き起こすものもある。

悪性原発性心臓腫瘍

肉腫は,最も多くみられる悪性心臓腫瘍である。肉腫は主に中年成人に生じる(平均44歳)。ほぼ40%が血管肉腫であり,その大半が右房に発生して心膜に浸潤して,右室流入路閉塞および心タンポナーデを引き起こし,肺転移を来す。その他の組織型としては,未分化肉腫,悪性線維性組織球腫,平滑筋肉腫,線維肉腫, 横紋筋肉腫 横紋筋肉腫 横紋筋肉腫は,骨格筋細胞へと分化する可能性をもつ胎児性間葉細胞から発生する小児がんである。あらゆる部位のほぼ全てのタイプの筋肉組織に発生しうるがんであり,臨床症状は極めて多様である。典型的にはCTまたはMRIにより発見され,生検により診断が確定される。治療には,外科手術,放射線療法,化学療法がある。... さらに読む ,脂肪肉腫,骨肉腫などがあり,これらは左房から発生することが多く,僧帽弁閉塞から 心不全 心不全 心不全は心室機能障害により生じる症候群である。左室不全では息切れと疲労が生じ,右室不全では末梢および腹腔への体液貯留が生じる;左右の心室が同時に侵されることもあれば,個別に侵されることもある。最初の診断は臨床所見に基づいて行い,胸部X線,心エコー検査,および血漿ナトリウム利尿ペプチド濃度を裏付けとする。治療法としては,患者教育,利尿薬,ア... さらに読む 心不全 を引き起こす。

原発性リンパ腫は極めてまれである。通常はHIV/AIDS患者やその他の 免疫不全 免疫不全疾患の概要 免疫不全疾患では,感染症,自己免疫疾患,リンパ腫,その他のがんなど,様々な合併症がみられたり,そのような合併症が発生しやすくなったりする。原発性免疫不全症は遺伝性であり先天性となる可能性があり,続発性免疫不全症は後天性でありはるかに多くみられる。 免疫不全症の評価には病歴,身体診察,および免疫機能の検査が含まれる。どのような検査を行うかは... さらに読む 患者に生じる。それらの腫瘍は急速に増殖し, 心不全 心不全 心不全は心室機能障害により生じる症候群である。左室不全では息切れと疲労が生じ,右室不全では末梢および腹腔への体液貯留が生じる;左右の心室が同時に侵されることもあれば,個別に侵されることもある。最初の診断は臨床所見に基づいて行い,胸部X線,心エコー検査,および血漿ナトリウム利尿ペプチド濃度を裏付けとする。治療法としては,患者教育,利尿薬,ア... さらに読む 心不全 不整脈 不整脈の概要 正常な心臓は規則正しく協調的に拍動するが,これは固有の電気的特性を有する筋細胞によって電気パルスが生成・伝達され,それにより一連の組織化された心筋収縮が誘発されることによって生じる。不整脈と伝導障害は,そうした電気パルスの生成,伝導,またはその両方の異常により引き起こされる。 先天的な構造異常(例,房室副伝導路)や機能異常(例,遺伝性のイ... さらに読む 不整脈の概要 心タンポナーデ 心タンポナーデ 心タンポナーデは,心室充満を障害するほどの量および圧力の,心嚢における血液の貯留である。一般的には,低血圧,心音減弱,および頸静脈怒張がみられる。診断は臨床的に行い,しばしばベッドサイドの心エコー検査による。治療は,速やかな心嚢穿刺または心膜切開である。 ( 胸部外傷の概要も参照のこと。)... さらに読む ,および上大静脈症候群を引き起こす。

転移性腫瘍

黒色腫 黒色腫 悪性黒色腫は,色素のある部位(例,皮膚,粘膜,眼,中枢神経系)のメラノサイトから発生する。転移は真皮浸潤の深さと相関する。進展した場合の予後は不良である。診断は生検による。手術可能な腫瘍には広範な外科的切除を行うのが原則である。転移例には全身療法が必要であるが,治癒は困難である。... さらに読む 黒色腫 は心臓を侵す傾向の強い腫瘍である。肺癌,乳癌,軟部肉腫,および腎癌も心転移を起こす頻度の高い腫瘍である(1 分類に関する参考文献 心臓腫瘍は原発性(良性または悪性)の場合と転移性(悪性)の場合がある。原発性心臓腫瘍で最も頻度が高いものは,良性腫瘍である粘液腫である。心臓腫瘍は心臓のあらゆる組織に発生する。弁または流入路・流出路の閉塞,血栓塞栓症,不整脈,心膜疾患などの原因となりうる。診断は心エコー検査としばしば心臓MRIによる。良性腫瘍の治療は通常,外科的切除である... さらに読む 分類に関する参考文献 )。白血病とリンパ腫もしばしば心臓に転移するが,心病変は臨床的に無症状で,偶然発見されることが多い。免疫不全(通常はAIDS)患者において カポジ肉腫 カポジ肉腫 カポジ肉腫は,ヘルペスウイルス8型によって引き起こされる多中心性の血管性腫瘍である。病型として古典的カポジ肉腫,AIDS関連カポジ肉腫,風土病型(アフリカ型)カポジ肉腫,および医原性カポジ肉腫(例,臓器移植後)がある。診断は生検による。進行の緩徐な表在性病変に対する治療としては,凍結療法,電気凝固術,切除,または電子線照射療法が施行される... さらに読む カポジ肉腫 が全身に進展した場合,心臓にも及ぶことがあるが,臨床的な心合併症を来すことはまれである。

分類に関する参考文献

心臓腫瘍の症状と徴候

心臓腫瘍が引き起こす症状および徴候は,他のはるかに頻度の高い疾患(例,心不全,脳卒中,冠動脈疾患)の典型的な症候と同じである。良性の原発性心臓腫瘍の症状および徴候は,腫瘍の種類,位置,大きさ,脆弱性に依存する。

症状と徴候の種類

症状は以下のように分類できる:

  • 心臓外

  • 心筋内

  • 心腔内

心臓外の症状と徴候には,全身性のものと機械的なものがある。発熱,悪寒,嗜眠,関節痛,体重減少などの全身症状は,粘液腫のみが引き起こし,おそらくはサイトカイン(例,インターロイキン6)の放出に起因する。点状出血がみられることもある。これらの所見と他の所見から,誤って 細菌性心内膜炎 感染性心内膜炎 感染性心内膜炎は,心内膜の感染症であり,通常は細菌(一般的にはレンサ球菌またはブドウ球菌)または真菌による。発熱,心雑音,点状出血,貧血,塞栓現象,および心内膜の疣贅を引き起こすことがある。疣贅の発生は,弁の閉鎖不全または閉塞,心筋膿瘍,感染性動脈瘤につながる可能性がある。診断には血液中の微生物の証明と通常は心エコー検査が必要である。治療... さらに読む 感染性心内膜炎 ,結合組織疾患,または潜在がんが想定されることもある。一部の腫瘍(特にゼリー状を呈する粘液腫)では,血栓または腫瘍断片が体循環(例,脳,冠動脈,腎臓,脾臓,四肢)もしくは肺で塞栓を発生させ,これらの臓器に特異的な症状を引き起こすことがある。機械的症状(例,呼吸困難,胸部不快感)は,心腔または冠動脈の圧迫や,心嚢内での腫瘍増大または出血に起因する心膜刺激ないし心タンポナーデによって引き起こされる。心膜腫瘍は心膜摩擦音を発生させることもある。

心腔内の症状と徴候は,腫瘍が弁機能,血流またはその両方を阻害することに起因する(それにより弁狭窄,弁閉鎖不全,心不全を引き起こす)。体位によって腫瘍に関連する血行動態と物理的な力が変化する可能性があり,それに伴って心腔内の症状と症候が変化することがある。

腫瘍の種類別に見た症状と徴候

粘液腫は, 心不全 心不全 心不全は心室機能障害により生じる症候群である。左室不全では息切れと疲労が生じ,右室不全では末梢および腹腔への体液貯留が生じる;左右の心室が同時に侵されることもあれば,個別に侵されることもある。最初の診断は臨床所見に基づいて行い,胸部X線,心エコー検査,および血漿ナトリウム利尿ペプチド濃度を裏付けとする。治療法としては,患者教育,利尿薬,ア... さらに読む 心不全 ,塞栓性疾患,および全身症状の三徴で発症することがある。粘液腫では 僧帽弁狭窄による雑音 聴診 僧帽弁狭窄症は,僧帽弁口が狭小化することによって,左房から左室への血流が妨げられる病態である。原因は(ほぼ)常にリウマチ熱である。一般的な合併症は,肺高血圧症,心房細動,および血栓塞栓症である。症状は心不全と同じであり,徴候としては開放音や拡張期雑音などがある。診断は身体診察および心エコー検査による。予後は良好である。内科的治療としては,... さらに読む によく似た拡張期雑音が聴取されることがあるが,その大きさと聴取部位が体位により心拍毎に変化する。有茎性の左房粘液腫の約15%では,拡張期に腫瘍が僧帽弁口に落ち込むことで「tumor plop」が聴取される。粘液腫は不整脈を引き起こすこともある。 レイノー症候群 レイノー症候群 レイノー症候群は,寒冷刺激や精神的ストレスに対する反応として手の一部に生じる血管攣縮で,単一または複数の手指に可逆的な不快感および変色(蒼白,チアノーゼ,紅斑,またはこれらの組合せ)がみられる。ときに,他の先端部位(例,鼻,舌)で発生することもある。この病態には,原発性のものと続発性のものがある。診断は臨床的に行い,検査では原発性と続発性... さらに読む レイノー症候群 ばち指 ばち状指の測定 ばち状指の測定 がみられるが,あまり典型的ではない。

線維弾性腫は通常は無症状であり,しばしば剖検で偶然発見されるが,全身性塞栓症の発生源となることもある。

横紋筋腫は通常,無症状である。

線維腫は不整脈を引き起こし,突然死や閉塞症状を引き起こす可能性がある。

血管腫は通常は無症状であるが,心臓外,心筋内,心腔内のいずれの症状も呈することがある。

奇形腫は,大動脈および肺動脈の圧迫による呼吸窮迫およびチアノーゼ,または上大静脈の圧迫による 上大静脈症候群 局所浸潤 局所浸潤 を引き起こす。

悪性心臓腫瘍の症状と徴候は,良性腫瘍と比較して発症がより急性で,より急速に進行する。心臓肉腫は最も一般的には,心室流入路閉塞および 心タンポナーデ 心タンポナーデ 心タンポナーデは,心室充満を障害するほどの量および圧力の,心嚢における血液の貯留である。一般的には,低血圧,心音減弱,および頸静脈怒張がみられる。診断は臨床的に行い,しばしばベッドサイドの心エコー検査による。治療は,速やかな心嚢穿刺または心膜切開である。 ( 胸部外傷の概要も参照のこと。)... さらに読む の症状を引き起こす。中皮腫は 心膜炎 心膜炎 心膜炎とは心膜の炎症であり,しばしば心嚢液貯留を伴う。心膜炎は,多くの疾患(例,感染症,心筋梗塞,外傷,腫瘍,代謝性疾患)によって引き起こされるが,特発性のことも多い。症状としては胸痛や胸部圧迫感などがあり,しばしば深呼吸により悪化する。心タンポナーデまたは収縮性心膜炎が発生した場合には,心拍出量が大きく低下することがある。診断は症状,心... さらに読む 心膜炎 または心タンポナーデの症状を引き起こす。原発性リンパ腫は,難治性かつ進行性の心不全,心タンポナーデ,不整脈,および上大静脈症候群を引き起こす。転移性心臓腫瘍は,突然の心拡大,心タンポナーデ(血性心嚢液の急速な貯留による),心ブロック,その他の不整脈,または原因不明の突然の心不全などを呈する。発熱,倦怠感,体重減少,盗汗,および食欲不振もみられることがある。

心臓腫瘍の診断

  • 心エコー検査

  • 心臓MRI

  • 心臓CT

心臓MRI MRI 心臓の画像検査によって,心臓の構造および機能を描出することができる。標準的な画像検査としては以下のものがある: 心エコー検査 胸部X線 CT MRI さらに読む MRI は,腫瘍組織の特徴を同定し,腫瘍の組織型について手がかりを得るためによく用いられる。心臓MRIで判断が難しい場合は,心電図同期法による核医学検査およびCTが役立つことがある。

画像検査で良性腫瘍と悪性腫瘍を鑑別できることが多いため,生検は通常施行されず,また,悪性原発性腫瘍を有する患者では生検によりがん細胞が意図せず広がる可能性がある。

粘液腫患者では,症状が非特異的であるために,心エコー検査の前に多くの検査が行われることが多い。貧血,血小板減少,白血球数増加,赤沈亢進,C反応性タンパク(CRP)高値,およびγグロブリン高値がよくみられる。心電図では左房拡大のパターンを認めることがある。ルーチンの胸部X線検査では,右房粘液腫または奇形腫のカルシウム沈着が前縦隔腫瘤として認められることがある。粘液腫はしばしば,外科的に除去された塞栓中に腫瘍細胞が検出されることで診断される。

結節性硬化症 結節性硬化症(tuberous sclerosis complex:TSC) 結節性硬化症は,複数の臓器に腫瘍(通常は過誤腫)が発生する優性遺伝性疾患である。診断には,病変のある臓器の画像検査が必要である。治療は対症療法か,中枢神経系腫瘍が増大していれば,シロリムスまたはエベロリムスを使用する。合併症を検出するためにモニタリングを定期的に行わなければならない。... さらに読む 結節性硬化症(tuberous sclerosis complex:TSC) の特徴がみられる患者で不整脈および心不全がある場合は,横紋筋腫または線維腫が示唆される。心臓外の部位で悪性腫瘍が判明している患者で新たに心臓の症候が出現した場合は,心転移が示唆される。胸部X線で心陰影内に奇妙な変化を認めることがある。

心臓腫瘍の治療

  • 良性原発性:切除

  • 悪性原発性:緩和療法

  • 転移性:腫瘍の原発巣に依存する

良性原発性腫瘍の治療は外科的切除であり,その後は5~6年間にわたる継続的な心エコー検査により再発のモニタリングを行う。手術の禁忌となる他の疾患(例,認知症)がない限り腫瘍を切除する。通常は手術により治癒に至る(3年生存率95%)。例外として,横紋筋腫はその大半が自然に退縮するため治療が不要であり,心膜奇形腫には緊急の 心嚢穿刺 心嚢穿刺 心嚢穿刺 が必要となることがある。線維弾性腫患者には,弁修復または弁置換が必要になることがある。横紋筋腫または線維腫が多発性に生じた場合は,外科的切除は通常効果がなく,1年以降での予後は不良で,5年生存率は15%程度となる可能性がある。

悪性原発性腫瘍は予後不良であるため,その治療は通常,緩和療法(例,放射線療法,化学療法,合併症の管理)となる。

転移性心臓腫瘍の治療は,腫瘍の原発巣に依存する。全身の化学療法または緩和療法を含める場合がある。

心臓腫瘍の要点

  • ほとんどの心臓腫瘍は転移性であり,その原発腫瘍として最も頻度が高いものは,肺癌,乳癌,黒色腫,軟部肉腫,および腎癌である。

  • 原発性心臓腫瘍は,はるかに頻度が低く,ほとんどは心筋または心内膜を起源とするが,心臓のあらゆる組織で発生する可能性があり,良性のこともあれば悪性のこともある。

  • 臨床像は腫瘍の部位と種類に依存するが,全身症状,弁または流入路・流入路閉塞,血栓塞栓症,不整脈などがみられる。

  • 診断は心エコー検査としばしば心臓MRIによる。

  • 良性腫瘍に対する治療は切除であり,悪性腫瘍とほとんどの転移性腫瘍に対する治療は緩和療法である。

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