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はじめに

米国の人口の10%近くは,なんらかの程度の難聴を有する。新生児の約800〜1000人に1人には,出生時に高度から重度の難聴がある。それより程度の軽い難聴になると,その2〜3倍である。小児期には,さらに1000人に2〜3人の小児が中等度から高度の難聴になる。青少年は,過度の騒音への暴露および/または頭部外傷の危険性がある。高齢者は一般的に,聴力の進行性の低下(老人性難聴―難聴: 難聴の後天性原因を参照 表)を経験するが,これはおそらく加齢および音響暴露に関連する。65歳以上の聴覚障害の有病率は25〜40%であり,75歳以上では40〜66%である。

幼児期に聴力障害があると,言語の理解力および表現力が生涯にわたって損なわれることがある。障害の程度は,難聴が起きた年齢;難聴の性質,すなわち持続期間,影響を受けた周波数と程度;個々の小児の感受性(例,視力障害,精神遅滞,原発性言語障害の共存)によって決まる。他の感覚障害,言語障害,認知障害のある小児では,影響は極めて深刻である。

難聴は,伝音性,感音性,またはその両方(混合難聴)に分類しうる。伝音難聴は,外耳道,鼓膜,または中耳の病変から二次的に発生する。これらの病変は,内耳への音の効果的な伝導を妨げる。感音難聴は,内耳(内耳性)または聴神経(第8脳神経)(後迷路性,難聴: 内耳性難聴と後迷路性難聴の違い表 1: 表)のいずれかの病変によって生じる。この区別が重要なのは,内耳性難聴はときに可逆的であり,生命に危険を及ぼすことはほとんどないからである。後迷路性難聴は,回復可能なことはまれであり,生命に危険が及ぶ恐れのある脳腫瘍(一般的には小脳橋角部腫瘍)に起因する場合もある。混合難聴の原因には,頭蓋骨または側頭骨の骨折を伴うまたは伴わない重度の頭部損傷,慢性感染症,多くの遺伝性疾患の1つ,などがある。また,一般的には中耳炎に起因する一過性の伝音難聴が,感音難聴に重なって起こる場合にも混合難聴が生じる。

表 1

内耳性難聴と後迷路性難聴の違い

検査

内耳性難聴

後迷路性難聴

語音弁別能

中等度の低下

重度の低下

音を強めた場合の弁別能

向上

低下

補充現象

あり

なし

アブミ骨筋反射の減衰

なし,または軽度

あり

疲労現象

なし,または軽度

著明

聴性脳幹反応の波形

明瞭な波形,正常な潜時

なし,または潜時が異常に長い

耳音響反射

なし

あり

病因

難聴には,先天性(難聴: 難聴の先天性原因表 2: 表)または後天性(難聴: 難聴の後天性原因表 3: 表),進行性または突発性(難聴: 小児における治療も参照 ),一時的または永続的,片側性または両側性,軽度または重度のものがある。薬物誘発性聴器毒性については内耳障害: 薬物誘発性聴器毒性で考察する。

表 2

難聴の先天性原因

難聴の型*

障害のある解剖学的部位

病因

伝音性

外耳および中耳

遺伝性

特発性(原因不明の)奇形

薬物誘発性奇形(サリドマイド)

内耳性

内耳

遺伝性

特発性(原因不明の)奇形

先天性感染症(例,風疹,サイトメガロウイルス,トキソプラズマ症,梅毒)

Rh不適合

無酸素症

聴器毒性薬物の母体摂取(例,結核や重度の感染症)

薬物誘発性奇形(サリドマイド)

後迷路性

中枢神経系

無酸素症

特発性(原因不明の)奇形

遺伝性

先天性感染症(例,風疹,サイトメガロウイルス,トキソプラズマ症,梅毒)

Rh不適合

*先天性難聴の多くは混合難聴,すなわち伝音難聴と内耳性および/または後迷路性難聴が組み合わさったものである。

ほぼ頻度が高い順に記載。

表 3

PDF 難聴の後天性原因

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耳垢(耳あか)の蓄積は,特に高齢者において,治療可能な難聴の最も一般的な原因である。小児では,外耳道を塞ぐ異物がときに問題となる。

感染症,とりわけ中耳炎とその後遺症が,特に小児においては,伝音難聴の一般的原因である。ほぼ全ての小児が,中耳炎に起因する軽度から中等度の一過性難聴を経験する。しかしながら,反復性感染症や重度の感染症は耳小骨,特にキヌタ骨長脚を破壊し,永続的障害をもたらす可能性がある。未治療の中耳炎が真珠腫の発生につながることがあるが,これは伝音難聴を引き起こす可能性のある良性腫瘍である。感染後に中耳に残留する液体(滲出性中耳炎)は一般的に,一時的難聴を引き起こす。感音難聴は,その他の様々な感染症から起こりうるが,先天性および後天性のいずれもある。

音響外傷(騒音性感音難聴)は,1回の極端な音響暴露(例,近くでの銃撃や爆発)に起因することもあれば,85デシベル(dB―難聴: 音のレベルを参照 囲み解説 1: 囲み解説)を超える騒音に対する長期的暴露から起こることもある。騒音性難聴になりやすいかどうかは個人差が大きいが,十分に大きい騒音に十分な時間曝されれば,ほとんど全ての人がいくらか聴力を損なう。この難聴は通常は一時的なものであり,典型例では長時間大音響に曝された後,数時間から1日続き,耳鳴を併発する人もいる。しかしながら,大きい騒音に繰り返し曝されると,最終的にコルチ器の有毛細胞が失われることになる。難聴は,典型例では初め4kHzで発症し,音響暴露が続くと次第に低周波と高周波に波及する。感音難聴の他の大部分の原因とは異なり,騒音性難聴の障害の程度は8kHzの方が4kHzよりも軽いことがある。

囲み解説 1

音のレベル

音の大きさはデシベル(dB)単位で測定される。デシベルは,2つの値を比較する単位のない数値であり,測定値と基準値の比の対数に定数を掛けたものとして定義される:

dB = k log (V測定値/V基準値).

慣例として,音の大きさの基準値は,健康な若年者の耳に聞こえる最も静かな音である1000Hzとされる*。音は,音圧レベル(N/m2),音の強さ(ワット/m2),その他の単位で測定される。

音の強さは音圧の2乗に等しいので,音圧レベルの定数(k)は20であり,音の強さの定数は10である。したがって,20デシベル増加するごとに,音圧レベルは10倍増加するが,音の強さは100倍増加する。

デシベル

0

人間の耳に聞こえる最も小さな音

30

ささやき声,静かな図書館

60

普通の会話,ミシン,タイプライター

90

芝刈り機,電動工具,トラックの往来(防音保護具なしの場合は最大暴露時間8時間/日†)

100

チェーンソー,空気ドリル,スノーモービル(防音保護具なしの場合は最大暴露時間2時間/日)

115

サンドブラスト,大音量のロックコンサート,自動車のクラクション(防音保護具なしの場合は最大暴露時間15分/日)

140

銃声,ジェットエンジン(音で耳が痛くなり,防音保護具なしでは短時間でも耳を傷める;防音保護具を使用しても耳を傷める場合あり)

180

ロケット発射台

*人間の耳の反応は周波数によって異なるので,聴力検査では検査対象の周波数ごとに基準値が変わる。オージオグラムに記録される閾値は,このことを考慮に入れている;実際の音圧レベルに関係なく,正常な閾値は常に0dBである。

†米連邦政府指定基準,ただし85dBを超える音に長時間曝される場合は防音保護具の使用が推奨される。

自己免疫疾患はあらゆる年齢で感音難聴を引き起こす可能性があり,その他の徴候や症状も生じる。

老人性難聴は,加齢に伴って起こる感音難聴である。これはおそらく,年齢に関連する変化および音響暴露の長期的な影響に起因する。内耳有毛細胞,血管条,神経節細胞,蝸牛神経核の進行性劣化および細胞死が関与している。この難聴は通常,初期には高周波音(18〜20kHz)に影響が現れ,次第に低周波音に波及する;通常,55〜65歳くらいで(ときにはもっと早く)重要な4〜8kHzの範囲が障害されると,臨床上問題となる。高周波の聴力が失われることにより,会話の理解がかなりの程度障害される。会話の音の大きさは正常だと思われても,特定の子音(例,C,D,K,P,S,T)が聞き取りにくくなり,罹患した人はしばしば相手がもごもご話しているように感じる。 話し手が大きな声で話そうとすると,通常は母音(周波数は低い)が強調されるため,言語認識はほとんど改善されない。

評価

評価は,難聴の検知および定量化,ならびに病因の決定(特に可逆的な原因)から成る。

スクリーニング: 大部分の成人と児童は突然発症した難聴に気づくが,進行性難聴や,乳児および幼児の全ての難聴は,スクリーニングで検出しなければならない。言語刺激によって至適な言語発達を促せるように,スクリーニングは乳幼児期に開始するべきである(正常な乳幼児や小児の治療へのアプローチ: 聴力()を参照 )。難聴が疑われるときはいつでも,専門家へ紹介すべきである。スクリーニングを行わないと,高度の両側性難聴が2歳まで認識されないことがあり,軽度〜中等度または高度の片側性難聴はしばしば小児が学齢期になるまで認識されない。

病歴: 生後1週間以内に新生児が声やその他の音に反応しなければ,保育者はその新生児が高度の難聴かもしれないと疑う。発話や言語の発達が遅れている小児や学校生活に困難のある小児は,難聴の検査を受けるべきである。精神遅滞,失語症,自閉症も考慮する必要がある。運動発達の遅れは前庭障害の徴候の場合があり,これはしばしば感音難聴と関連がある。

高齢者は典型的に,自分の聴力が衰えたのではなく相手がはっきり話さないのだと訴え,しばしば,家族が難聴の評価を促す。会話の理解は,暗騒音があるときは特に困難である。成人におけるスクリーニングは,難聴に関する高齢者用項目リスト―スクリーニング版(Hearing Handicap Inventory for the Elderly―Screening Version)の質問票を使うことで首尾よく行える。この検査では,患者に以下の質問がなされる:

  • 聴力に問題があるために,人と会ったときに気まずい思いをしますか
  • 聴力に問題があるために,家族と話しているときに苛立ちを感じますか
  • 相手がささやき声だと聞き取りにくいですか
  • 聴力の問題がハンディキャップだと感じますか
  • 聴力に問題があるために,友人,親類,隣人を訪ねたときに困りますか
  • 聴力に問題があるために,礼拝に出席する回数を減らしていますか
  • 聴力に問題があるために,家族と口論になりますか
  • 聴力に問題があるために,テレビやラジオの音が聞き取りにくいですか
  • 聴力に障害があるために,私生活や社会生活が妨げられていると感じますか
  • 聴力に問題があるために,親類や友人とレストランにいるときに困りますか。

患者はそれぞれの質問に“いいえ”(0点),“ときどき”(2点),“はい”(4点)で答える。点数を集計し,スコアが高いほど聴覚障害の程度が大きいことを示す。スコアが10を超える場合は顕著な聴覚障害が示唆され,フォローアップが必要である。

随伴症状,特に神経症状(例,ふらつき,めまい,眼振,頭痛,顔面神経麻痺)がある場合は,聴覚検査などの耳科学的検査を直ちに実施するべきである。中枢神経系または耳の感染の病歴,聴器毒性のある薬物の使用,大きな音への暴露,頭部外傷,突発的な難聴,耳痛(耳の痛み),および/または難聴の家族歴は,難聴の原因を示唆することがある。例えば,暗闇での見当識障害の病歴(前庭機能の喪失),めまいの発作(回転や空間的移動の自覚的感覚),顔面の脱力または非対称の発現,味覚異常などである。

身体診察: 医師は外耳の閉塞,感染,先天奇形,および鼓膜の穿孔,中耳炎,真珠腫を評価する。神経学的検査では,脳神経機能,特に平衡,顔面脱力,および味覚機能が重要である(神経疾患患者へのアプローチ: 脳神経()を参照 )。

ウェーバー検査およびリンネ検査では,音叉を使って伝音難聴と感音難聴を鑑別する。ウェーバー検査では,振動している512Hz および/または1024Hzの音叉の幹を頭部正中線にあてて,患者にどちらの耳で音がより大きく聞こえるかを示させる。片側の伝音難聴の場合は,患側の耳の方が音が大きく聞こえる。片側の感音難聴においては,健側の耳の方が音が大きく聞こえるが,これは音叉が両側の内耳を等しく刺激するとき,患者は健側の耳でその刺激を知覚するためである。リンネ検査では,骨導による聴力と気導による聴力を比較する。骨導は外耳,中耳を経由しないので,内耳,第8脳神経,中枢聴覚路に障害がないことを検査することになる。振動する音叉の幹を,まず乳様突起にあて(骨導),音が知覚されなくなったらすぐに音叉を乳様突起から外し,まだ振動を続けている音叉の枝を耳介のそばに掲げる(気導)。正常な場合,音叉はもう一度聞こえ,気導が骨導よりすぐれていることを示す。伝音難聴では,この関係は逆転し,骨導の方が気導よりも音が大きい。感音難聴の場合は,気導,骨導ともに弱まるが,気導の方が音が大きいことに変わりはない。

聴覚検査: 典型的な聴覚検査には,気導および骨導による純音閾値の測定,語音聴取閾値,語音弁別能,ティンパノメトリ,アブミ骨筋反射検査などがあり,ときとして反射の減衰をみる検査も行う。これらの検査により入手した情報は,その難聴が内耳性か後迷路性かをさらに確定的に鑑別する必要があるか否かの判断に役立つ。

純音聴力検査では,難聴の程度を定量的に測定する。オージオメータは,特定の周波数の音(純音)を様々な強さで出し,それぞれの周波数におけるその患者の聴力の閾値(知覚できる最小の音の大きさ)を測定する。それぞれの耳での聴力は,(イヤホンを用いて)気導に関して,また(乳様突起または額にあてた発振器を用いて)骨導に関して,いずれも125あるいは250Hzから8000Hzまで検査される。検査の結果はオージオグラムと呼ばれるグラフにプロットされるが(難聴: 聴力が正常な患者の右耳のオージオグラム。図 1: イラスト参照),これは,各周波数における患者の聴力閾値と正常な聴力の差を示すものである。この差はdB単位で測定される(難聴: 音のレベルを参照 囲み解説 1: 囲み解説)。正常な閾値を0dB聴力レベル(Hl)とし,患者の閾値が25dB Hlを超える場合に難聴があるとみなされる。大きな検査音を必要とするような難聴の場合,片方の耳に大きな音を提示すると,もう一方の耳が聴取してしまうことがある。このような場合は,通常は狭帯域の雑音から成るマスキング音を非検側の耳に提示して,分離する。

図 1

聴力が正常な患者の右耳のオージオグラム。

聴力が正常な患者の右耳のオージオグラム。

右耳の正常なオージオグラム。縦の線は,125〜8000Hzの,検査した周波数を示す。横の線は,その音が聞こえると患者が答えた閾値を記録する。正常な閾値は0dB+/−10dBである。聴力閾値が20dB以下の患者は,平均以上の聴力をもつとみなされる。dBが大きくなるほど音は大きくなり,聴力は悪くなる。○は右耳の気導を示す標準的な記号であり,Xは左耳の気導を示す標準的な記号である。<は右耳のマスキングなしの骨導を示す標準的な記号であり,>は左耳のマスキングなしの骨導を示す標準的な記号である。

語音聴力検査には,語音聴取閾値(SRT:speech reception threshold)と単語認識スコアが含まれる。SRTは,語音が認識される音の強さの測度である。SRTを測定するには,試験者が患者に,特定の音の強さで単語のリストを提示する。これらの単語は通常,railroad,staircase,baseballなどのように,等しいアクセントの2音節(強強格)から成る。試験者は,患者が50%の単語を正確に繰り返したときの音の強さを記録する。SRTは,日常会話の周波数(例,500,1000,2000Hz)における平均聴力レベルに近い。

単語認識スコアは,様々な語音あるいは音素を弁別する能力を検査する。これは,音声学上正しく調整された50個の単音節単語を,患者のSRTより35〜40dB大きい強さで提示することによって測定する。単語のリストには,様々な音素が日常英会話と同様の相対的出現頻度で含まれている。このスコアは,患者が正確に繰り返した単語のパーセンテージであり,最適な聴力環境下で語音を理解する能力を示す。正常なスコアの範囲は90〜100%である。単語認識スコアは,伝音難聴では音の強さのレベルが高くても正常であるが,感音難聴では全ての音の強さのレベルで低下する可能性がある。弁別能は,内耳性難聴よりも後迷路性難聴でさらに低い。

ティンパノメトリは,音のエネルギーに対する中耳のインピーダンスを測定するもので,患者の自覚を必要としない。これは通常,小児における中耳の滲出液のスクリーニングに用いられる。音源,マイクロホン,気圧調整器を内蔵したプローブを外耳道に差し込み,気密性のシールで密閉する。外耳道内の気圧を変化させながら,プローブのマイクロホンで鼓膜からの反射音を記録する。正常では,中耳のコンプライアンスが最大となるのは,外耳道の気圧が大気圧に等しい状態のときである。異常なコンプライアンスのパターンは,特異的な解剖学的障害を示唆する。耳管狭窄や中耳の滲出液がある場合,最大コンプライアンスは外耳道圧が陰圧のときに生じる。キヌタ骨長脚の壊死や転位などで,耳小骨連鎖が離断した場合,中耳のコンプライアンスは過剰になる。耳硬化症で,アブミ骨固着などが生じ,耳小骨連鎖が固着した状態になると,コンプライアンスは正常かあるいは減少する。

アブミ骨筋反射とは,大きな音に反応して生じるアブミ骨筋の収縮であり,これによって鼓膜のコンプライアンスを変化させ,中耳を音響外傷から保護する。この反射の検査では,音を提示して,鼓膜の動きで示される中耳のインピーダンスに変化が生じる音の強さを測定する。反射がない場合,聴神経の腫瘍を示唆していることも考えられる。

高度な検査: 単語認識スコアが低い患者,非対称性の感音難聴患者,および/または病因が不明で神経学的検査に異常のある患者には,小脳橋角部の病変を検出するためのガドリニウム造影頭部MRIが必要な場合がある。

聴性脳幹反応は,表面電極を使用して,他の検査では反応を示せない人の音刺激に対する脳波の反応をモニタリングする。

蝸電図は,電極を鼓膜上に置くか,または鼓膜を貫通して留置して,蝸牛および聴神経の活動を測定する。これは,めまいのある患者の評価とモニタリング,手術中のモニタリング,および覚醒時の患者に使用できる。耳音響放射検査は,通常は外耳道に置かれた音刺激に反応して蝸牛の外有毛細胞から生じる音を測定する。これは,新生児および乳児の難聴のスクリーニングや,聴器毒性のある薬物(例,ゲンタマイシン,シスプラチン)を服用している患者の聴力のモニタリングに使用される。

読字やその他の学習上の問題がある小児や,聞こえてはいるが理解していないように思われる高齢者など,一部の患者には,中枢聴覚の評価を行うべきである。これは,変質した,または歪んだ語音の弁別能,対側の耳に競合するメッセージを与えたときの弁別能,それぞれの耳に提示された不完全あるいは部分的メッセージを意味のあるメッセージに融合させる能力,両耳に同時に音刺激を与えたときの空間的な音の位置同定の能力を測定する。

治療

難聴の基礎原因を特定し,治療すべきである。聴器毒性のある薬物は,投与を中止するか減量すべきである。一部の聴器毒性のある抗生物質(例,ゲンタマイシン)の血中濃度は測定しうる。

中耳の滲出液による液体は,鼓膜切開術によって排泄し,鼓膜チューブの挿入によって予防しうる。耳管や外耳道を塞ぐ腫瘍(良性および悪性)は切除しうる。自己免疫疾患に起因する難聴は,コルチコステロイドに反応することがある。

鼓膜や耳小骨の損傷または耳硬化症には,再建手術が必要な場合がある。脳腫瘍が難聴を引き起こしている場合,腫瘍の切除により聴力が保たれることもある。

難聴の原因には治療法がないものが多く,難聴を補うための処置が行われる。中等度から高度の難聴がある患者の大半には,補聴器が役立つ。高度から重度の難聴がある患者には,人工内耳が役立つことがある。

補聴器: 補聴器で音量を増幅することは,多くの人にとって助けとなる。補聴器は聴力を正常に回復させるものではないが,コミュニケーションはかなり改善できる。医師は補聴器の使用を勧め,耳の悪い人が補聴器をつけるのは目が悪い人が眼鏡を掛けるのと同じだという例えを用いるなどして,補聴器使用の障害となっている社会的な不名誉感を患者が克服できるよう手助けするとよい。

全ての補聴器には,位置は異なるものの,マイクロホン,増幅器,スピーカー,イヤホン,音量調節器が備わっている。補聴器の選択と調整には,聴覚訓練士があたるべきである。

最良の機種を,その患者に特有の難聴のパターンに合わせて調整する。主に高周波の難聴がある人には,単純な増幅では効果がなく,聞こえてくる不明瞭な語音が大きくなるだけである。このような人には通常,高周波を選択的に増幅する補聴器が必要である。一部の補聴器は,イヤモールドに穴が開いていて,高周波の音波が通過しやすくなっている。また,複数の周波数チャンネルを備えたデジタル音声処理機能を使用することにより,オージオグラムで測定した難聴に合わせてより正確に増幅を調節できるものもある。

補聴器を使用する人にとって,電話の使用が困難なことがある。一般的な補聴器では,耳を受話器にあてるとキーンという音が発生する。一部の補聴器は電話用コイルを備え,スイッチを切り替えるとマイクロホンがオフになり,電話用コイルと電話機内のスピーカー磁石との間で信号が伝えられるようになっている。

中等度から高度の難聴には,耳介の後ろに取り付けて柔らかいチューブでイヤモールドと接続する,耳かけ型(イヤーレベル型)補聴器が適当である。挿耳型補聴器は,イヤモールドの中にすっぽり入り,外耳と外耳道の中でほとんど目立たない;この補聴器は軽度から中等度の難聴に適当である。外耳道型補聴器は,外耳道にすっぽり入るので,他の補聴器をいやがる多くの患者にとって美容上受け入れやすいものであるが,一部の患者(特に高齢者)には操作が難しい。CROS補聴器(Contralateral Routing Of Signals)は,片側性の高度難聴に対して用いられ,補聴器のマイクロホンを機能していない耳に装着し,音はコードまたは無線通信機によって,機能している耳に流れる。この装置により,装用者は機能していない耳の側からの音を聞くことができ,音の位置を同定する能力がある程度改善される。良聴耳にも難聴がある場合は,悪い側からの音もよい側からの音も両方ともが,両耳用CROS(BiCROS)補聴器で増幅できる。箱型補聴器は重度難聴に適している。箱型補聴器はシャツのポケットや装着具に入れて身につけ,イヤホン型のレシーバーにコードで接続されていて,レシーバーはプラスチックの挿入具(イヤモールド)で外耳道にあてられる。

骨導補聴器は,外耳道閉鎖症や持続性の耳漏のように,イヤモールドやチューブを使用できないときに使われる。発振器は,通常は乳様突起を覆うように頭に押しつけてゴムバンドで固定され,音は頭蓋骨を通じて蝸牛へ伝導される。骨導補聴器は,気導補聴器よりも多くの電力を必要とし,音を歪ませやすく,付け心地が悪い。一部の骨導補聴器(埋め込み型骨導補聴器)は外科的に乳様突起に埋め込まれるので,ゴムバンドの装用の悪さと出っぱりを避けることができる。

人工内耳: 補聴器をつけていても重要な環境音(例,ドアのベル,電話のベル,めざまし時計の音)が聞こえない重度難聴患者には,人工内耳が役立つことがある。この装置は,蝸牛に埋め込まれた複数の電極を介して聴神経に直接電気信号を送る。体外部のマイクロホンとプロセッサーが音波を電気インパルスに変換し,それが皮膚を通して電磁的に体外誘導コイルから,耳の後上部の頭蓋骨内に埋め込まれた体内コイルに伝達される。体内コイルは,鼓室階に埋め込まれた電極に接続している。

人工内耳は,単語のイントネーションや発話のリズムにかかわる情報を提供することによって,読話の助けとなる。人工内耳を埋め込んだ人の一部は,視覚的な手がかりなしで単語を弁別できるので,電話で話すことができる。人工内耳によって難聴患者は,環境音や警戒信号を聞き取り弁別できるようになる。また,難聴者が話す際に声を調整して,聞き手により分かりやすいように話す助けにもなる。

対処法: 光警報システムは,玄関のベルが鳴っているときや,赤ん坊が泣いているときに知らせてくれる。特殊な音響装置は,映画館や教会などの聞き取りを妨げる雑音のある場所での聞き取りに役立つ。多くのテレビ番組でクローズドキャプションが提供されている。また,電話でのコミュニケーションのための装置を利用してもよい。

読唇法(読話法)は,音が聞こえるものの音の弁別が困難な人にとって特に重要である。多くの人が,正式な訓練は受けないまでも,読唇法を覚える。これを役立てるためには,聞き手が話者の口元を見ることができなければならない。医療従事者はこの問題に気を配り,聴力に障害のある人に話しかけるときには常に適切な位置をとるべきである。話し手の唇の位置を観察することにより,どの子音が話されているかを認識でき,それによって高周波の難聴がある患者の会話理解が改善される。

患者は,困難な状況の修正や回避により,聞くことに関する環境をコントロールできる。例えば,レストランに行くなら混雑していない,より静かな時間帯を選ぶとよい。また,外の音が入りにくいボックス席を希望することもできる。直接会話をするときは,自分の方に顔を向けて話すように頼むこともできる。電話での会話では,最初に,聴力に障害があることを相手に伝えるとよい。会議では,聞き取り補助装置の使用を話し手に依頼することができ,この装置では磁気誘導ループ,赤外線,またはFMの技術を利用してマイクロホンから患者の補聴器に音が送られる。

重度の難聴がある人は,しばしば手話を使ってコミュニケーションをとる。アメリカン・サイン・ランゲージ(ASL)は米国で最も一般的な手話である。その他の方法には,サインド・イングリッシュ,サイニング・イグザクト・イングリッシュ,キュード・スピーチなどがある。

小児における治療

難聴がある小児の場合,基礎原因の治療と補聴器の装用に加え,適切な療法により言語の発達を支援する必要がある。自然に言語を学ぶには言葉を聞かなければならないので,難聴児は特殊な訓練をしない限り言語が発達しないが,こうした訓練は難聴が判明したらできるだけ早く始めるのが理想的である。難聴の乳児には一定の形の言語刺激を与えなければならない。例えば,視覚に頼る手話によりその後の口頭言語発達の基礎を作ることができる。

重度の両側難聴があって補聴器でも効果が得られない1歳以上の小児は,人工内耳埋め込みの候補となる。人工内耳を埋め込むと,先天性であれ後天性であれ難聴がある小児の多くで聴覚によるコミュニケーションが可能になるが,すでに言語が発達している者の方がより効果が大きいようである。髄膜炎後に難聴になった小児では,内耳が骨化しており,このような小児には早期に人工内耳埋め込みをして,最大限の効果が挙げられるようにすべきである。聴神経が腫瘍によってすでに破壊されてしまっている小児には,脳幹聴覚刺激電極を埋め込むと役立つことがある。人工内耳を埋め込んだ小児は,人工内耳を埋め込んでいない小児や人工内耳を埋め込んだ成人に比べて,髄膜炎の危険性が若干高くなりうる。

片側性難聴の小児には,教室におけるFM聴覚訓練器などの特殊なシステムの使用が許されるべきである。このようなシステムでは,教師がマイクロホンに向かって話すと,そこから小児の健側の耳に装着した補聴器に信号が送られ,背景音がうるさくても話を聞き取る能力が高められる。

予防

難聴の予防は主に,音響暴露の時間と強さを制限することである。大きな音への暴露が避けられない人は,外耳道に挿入するプラスチックのプラグ型や,耳ごと覆うグリセリンを満たしたマフ型などの耳保護具を装用する必要がある。米労働省の労働安全衛生局(OSHA:Occupational Safety and Health Administration)や多くの国の同様の機関が,人が騒音に曝されても差し支えない時間の長さに関する基準を定めている。騒音が大きいほど,暴露の時間は短くなる。

最終改訂月 2007年1月

最終更新月 2005年11月

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