メルクマニュアル18版 日本語版
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副鼻腔炎

副鼻腔炎はウイルス性,細菌性,または真菌性感染もしくはアレルギー反応による副鼻腔内の炎症である。症状には鼻閉およびうっ血,膿性鼻汁,咳,顔面痛,倦怠感,ときに発熱がある。治療は,アモキシシリン,ペニシリン,エリスロマイシン,またはトリメトプリム-スルファメトキサゾールなどの抗生物質で行い,急性副鼻腔炎には12〜14日間投与し,慢性副鼻腔炎には最長で6週間投与する。抗うっ血薬,保温および保湿により症状が軽減し,副鼻腔の排膿が促進しうる。再発性副鼻腔炎は,副鼻腔の排膿を促進するために手術が必要となりうる。

副鼻腔炎は,急性(30日以内に完治);亜急性(30〜90日間で完治);再発性(頻回の不連続な急性症状の発現で, 30日以内に完全消退するが,周期的に再発し,症状の完治と次の発症までに少なくとも10日間経過する);慢性(90日を超えて持続)に分類しうる。

病因

急性副鼻腔炎では,通常ウイルス性のURIが先行し,次いでレンサ球菌,肺炎球菌,インフルエンザ菌,またはブドウ球菌属の二次的コロニー形成が起こる。URIにおいては,腫脹した鼻粘膜は副鼻腔の開口部を閉塞し,副鼻腔中の酸素が粘膜の血管に吸収される。その結果,副鼻腔内は相対的に陰圧になり(真空副鼻腔炎),痛みを伴う。もしこの真空状態が維持されるならば,粘膜からの漏出液が副鼻腔に充満し;副鼻腔開口部または粘膜固有層に広がる蜂巣炎もしくは血栓性静脈炎を経由して侵入してきた細菌にとって,この漏出液は副鼻腔内で培地として働く。その結果,感染を抑えるための血清や白血球が流出することになり,閉塞された副鼻腔内が陽圧となり痛みをもたらす。粘膜は充血し浮腫状となる。

慢性副鼻腔炎は,グラム陰性桿菌または嫌気性菌により増悪することがある。少数の症例においては,慢性上顎洞炎は歯性感染に続発する。真菌感染(アスペルギルス属スポロトリクス属Pseudoallescheria)は免疫不全患者において発症するのに対して,院内感染は嚢胞性線維症,経鼻的胃管挿管および経鼻的気管挿管,衰弱した患者において合併する。典型的な細菌には,黄色ブドウ球菌肺炎桿菌緑膿菌プロテウス-ミラビリス,およびエンテロバクター属がある。アレルギー性真菌性副鼻腔炎は,びまん性鼻うっ血,鼻腔の顕著な粘性分泌物,そしてしばしば鼻ポリープによって特徴づけられる。この疾患は局在する真菌,しばしばアスペルギルス属に対するアレルギー反応であり,侵襲的感染によって起こるものではない。

症状,徴候,診断

急性および慢性副鼻腔炎の症状と徴候は類似し,膿性鼻汁,顔面の圧迫感と顔面痛,鼻うっ血と鼻閉,嗅覚減退,口臭,喀痰を伴う咳(特に夜間)である。罹患した副鼻腔を覆う皮膚には圧痛,腫脹,および紅斑が認められる。上顎洞炎は上顎痛,歯痛,および前頭部痛を引き起こす。前頭洞炎では前額部や前頭部痛が生じる。篩骨洞炎は眼の後方,両眼間の頭痛や,しばしば“割れるような”と表現される前頭部痛,眼窩周囲蜂巣炎,および流涙を引き起こす。蝶形骨洞炎による痛みは,他と比べて局在性が弱く,前頭または後頭部痛と取り違えられる。倦怠感を来すこともある。発熱および悪寒は,感染が副鼻腔を越えて拡大していることを示唆する。

鼻粘膜は赤く腫脹し;黄色または緑色の膿性鼻漏を来すことがある。上顎洞炎,前篩骨洞炎または前頭洞炎の場合は中鼻道に,後篩骨洞炎または蝶形骨洞炎の場合は中鼻甲介の正中寄りの領域に,漿液膿性もしくは粘膿性の滲出液が認められることがある。

副鼻腔感染は通常臨床的に診断される。透照法を行い,照明が見えないか薄暗い場合は,上顎洞または前頭洞の滲出液による充満が示唆される。急性および慢性副鼻腔炎においては,粘膜の腫脹と漏出液の貯留により,患部の副鼻腔は4方向X線撮影において不透明となる。単純X線撮影はCTほど有効ではなく,CTは副鼻腔炎の範囲と程度に関する比較的正確な情報が得られる。慢性上顎洞炎の場合,歯根端周囲膿瘍を除外するために,歯根端のX線像が必要である。疑問点が残る場合(例,頭蓋内の進展,医療ミス,院内感染による副鼻腔炎),培養および感受性を内視鏡または洞穿刺ならびに吸引を行って検査しうる。

小児における副鼻腔炎は,膿性鼻汁が10日間を超え,疲労感と咳を伴い持続する場合に疑われる。発熱はまれである。局所の顔面痛または不快感を伴う場合がある。鼻腔の診察により排膿が示され,CTにより確定される。CTスキャンは,放射線暴露を制限するために冠状投影における断面像を制限して行う。

治療

急性副鼻腔炎においては排膿の促進と感染の制御が治療の目的である。蒸気吸入,タオルによる罹患部位の温湿布,熱い飲み物により鼻腔の血管収縮を改善し,排膿を促進する。0.25%フェニレフリンを3時間毎に噴霧するなどの血管収縮薬の局所投与は有効だが,使用は最長5日間,または副鼻腔炎が消退するまで3日間の投与と3日間の休薬の反復周期とすべきであり,プソイドエフェドリン30mg,経口にて4〜6時間毎(成人に対して)などの血管収縮薬の全身投与は効果が劣る。

急性および慢性副鼻腔炎においては,抗生物質を少なくとも10日間,しばしば14日間投与しなければならない。急性副鼻腔炎においては,アモキシシリン500mg ,経口にて8時間毎単独投与またはクラブラン酸を併用が第1選択の療法である。ペニシリンアレルギーの患者には,エリスロマイシン250mg,経口にて6時間毎とトリメトプリムスルファメトキサゾール80/400mg,経口にて6時間毎を併用しうる。第2選択の療法には,セフロキシム500mg,12時間毎またはモキシフロキサシン400mg,1日1回投与がある。小児に対しては同様の抗生物質を用いるが,患児の体重に合わせて調整する。しかしながら,フルオロキノロン系は,骨端成長板の早期閉鎖が懸念されるため小児には用いられない。

小児または成人における慢性副鼻腔炎の増悪においては,広域抗生物質,例えば,アモキシシリン/クラブラン酸875mg,12時間毎(小児には12.5〜25mg/kg,12時間毎),セフロキシムまたは成人においてはモキシフロキサシンを用いる。慢性副鼻腔炎においては,4〜6週間の長期抗生物質療法により,しばしば完治しうる。副鼻腔滲出液から分離された菌の感受性および患者の反応により,引き続いて行う療法が決定する。

抗生物質療法に反応しない副鼻腔炎は,換気と排膿を改善し,濃縮した粘膿性鼻汁や上皮残屑および肥厚粘膜を除去するための手術(上顎洞根本術,篩骨洞開放術,蝶形骨洞開放術)を必要とすることがある。これらの手技は通常,内視鏡を用いて鼻腔内で行う。慢性前頭洞炎は骨形成性閉塞によって,または一部の患者については内視鏡的に治療することがある。疾患を限局させ,隣接組織(目や脳など)の外傷を防ぐために,術中コンピュータを用いた手術が一般的になっている。

免疫不全患者における副鼻腔炎

侵攻性の,致死的なことすらある真菌または細菌性副鼻腔炎は,血糖管理の不十分な糖尿病,好中球減少症,もしくはHIV感染のため免疫不全となった患者において発症しうる。

ムコール菌症(フィコミコーシス)ケカビ属アブシディア属,およびクモノスカビ属の種を含むムコラレス目の真菌による真菌症が,血糖管理の不十分な糖尿病患者に発生することがある。ムコール菌症は,鼻腔内の黒色壊死組織,および頸動脈系の逆行性血栓動脈炎に続発する神経学的徴候により特徴づけられる。診断は無血管化した組織内の菌糸を組織病理学的証明に基づく。治療には,基礎疾患の管理(糖尿病におけるケトアシドーシスの逆転など)とアムホテリシンBの静注が必要である。組織検査および培養のため迅速な鼻腔の生検を行うのは当然である。

副鼻腔のアスペルギルス症およびカンジダ症は,細胞傷害性薬物療法,または白血病,リンパ腫,多発性骨髄腫,AIDSなどの免疫抑制疾患で二次性に免疫不全状態となった患者において発症する。これらの感染は,鼻腔中の肥厚粘膜と同様にポリープ様組織として出現し,診断上必要となる。しばしば致死的となるこれらの感染を制御するために,積極的な副鼻腔手術およびアムホテリシンB静注療法が行われる。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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