眼瞼腫脹は片側性のこともあれば両側性のこともある。無症状のこともあれば,そう痒または疼痛を伴うこともある。
眼瞼腫脹の病因
眼瞼腫脹には多くの原因がある(眼瞼腫脹の主な原因の表を参照)。通常は眼瞼の疾患に由来するが,眼窩内および周囲の疾患または全身性浮腫を引き起こす全身性疾患に由来することもある。
最も頻度が高い原因は以下のようなアレルギー性である:
片方の眼瞼の局所的腫脹は霰粒腫によることが最も多い。
最も緊急度の高い原因は眼窩蜂窩織炎および海綿静脈洞血栓症(まれ)である。
眼瞼腫脹の主な原因で挙げた疾患に加え,眼瞼腫脹の原因には他にも以下のようなものがありうる:
眼瞼を侵すが,かなり進行しない限り腫脹を引き起こさない疾患(例,扁平上皮癌および黒色腫などの眼瞼腫瘍)
腫脹が発生するが,主症状ではない疾患(例,頭蓋底骨折,熱傷,外傷,手術後)
眼瞼腫脹の評価
病歴
現病歴の聴取では,いつから腫脹があるか,片側性か両側性か,および何らかの外傷(虫刺症を含む)が先行したかどうかを確認すべきである。同定すべき重要な随伴症状としては,そう痒,疼痛,頭痛,視覚の変化,発熱,眼脂などがある。
システムレビュー(review of systems)では,可能性のある原因の症状がないか検討すべきであり,具体的には,鼻水,そう痒,発疹,および喘鳴(全身性アレルギー反応);頭痛,鼻閉,および膿性鼻汁(副鼻腔炎);歯痛(歯性感染症);呼吸困難,起座呼吸,および発作性夜間呼吸困難(心不全);耐寒性低下および皮膚のきめの変化(甲状腺機能低下症);耐暑性低下(heat intolerance),不安,および体重減少(甲状腺機能亢進症)などがある。
既往歴には,最近の眼損傷または手術歴;心,肝,腎,または甲状腺疾患の病歴;ならびにアレルギー歴および可能性のあるアレルゲンへの曝露歴を含めるべきである。薬歴には特にアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬の使用歴を含めるべきである。
身体診察
バイタルサインを評価し,発熱および頻脈がないか確認すべきである。
眼の視診では,腫脹の位置および色(紅斑性か蒼白か)を評価し,腫脹が片眼の上下眼瞼のいずれかまたは両方にみられるか,それとも両眼の上下眼瞼のいずれかまたは両方にみられるか,および圧痛があるか,熱感があるか,またはその両方の所見がみられるかなどを確かめる。検者は,所見が眼瞼浮腫か,眼球突出か,またはその両方のいずれを表すかを観察すべきである。眼科診察では特に視力および外眼筋運動の範囲(完全かまたは制限されているか)に注意すべきである。腫脹が著明な場合,この検査は困難なことがあるが,もし外眼筋運動が障害されていれば眼瞼ではなく眼窩または眼窩後部に障害があることが示唆されるため,検査を行うことが重要である;眼瞼を開けたまま保持させるのに介助者を要することがある。結膜は充血および眼脂がないか確かめる。いかなる眼瞼および眼病変も細隙灯顕微鏡を用いて評価する。
全身状態の観察では,重篤な感染症を示唆する中毒徴候,および原因となりうる疾患の徴候を評価すべきである。顔面の皮膚を視診して,乾燥および鱗屑(甲状腺機能低下症を示唆している可能性がある)ならびに脂漏性の鱗屑またはその他の脂漏性皮膚炎の徴候がないか確認する。四肢および仙骨前領域を診察して,全身的原因を示唆する浮腫がないか確認する。全身的原因が疑われる場合,評価のためのさらなる考察は浮腫の項を参照のこと。
警戒すべき事項(Red Flag)
以下の所見は特に注意が必要である:
発熱
視力低下
外眼筋運動障害
眼球突出
所見の解釈
所見の中には,カテゴリーの異なる疾患を鑑別するのに役立つものもある。最も重要な区別は,炎症または感染症かアレルギーまたは体液過剰かの区別である。疼痛,発赤,熱感,および圧痛は炎症または感染症を示唆する。無痛性の,蒼白な腫脹は血管性浮腫を示唆する。そう痒があればアレルギー反応が,そう痒がなければ心機能または腎機能障害が示唆される。
片側の眼瞼に限局する腫脹で,その他に徴候がない場合,危険な疾患によるものはまれである。片眼または両眼の眼瞼に大きな腫脹があれば,重篤な疾患を疑うべきである。炎症,眼球突出,視力障害,および外眼筋運動障害の徴候は眼窩疾患(例,眼窩蜂窩織炎,海綿静脈洞血栓症)を示唆し,これにより眼球が前に押し出されている,または神経もしくは筋が障害されている可能性がある。その他の示唆的または特異的な所見を眼瞼腫脹の主な原因の表に挙げた。
検査
眼瞼腫脹の治療
治療は基礎疾患に対して行う。腫脹に対する特異的な治療法はない。