メルクマニュアル18版 日本語版
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はじめに

ぶどう膜炎はぶどう膜(虹彩,毛様体,脈絡膜)の炎症である。ほとんどは特発性であるが,同定可能な原因には,様々な感染症,全身性疾患があり,しばしば自己免疫疾患である。症状には,視力低下,眼痛,充血,羞明,飛蚊症がある。診断は臨床的に行い,臨床検査および補助的検査で補完する。原因に基づき治療を行うが,典型的にはコルチコステロイドの局所または全身投与および調節麻痺・散瞳薬および/または非ステロイド性免疫抑制薬による治療を行う。感染症が原因の場合は抗菌療法が必要となる。

ぶどう膜の炎症(ぶどう膜炎)は,硝子体炎,網膜炎,乳頭炎,視神経炎を伴うまたは伴わない場合がある。ぶどう膜炎は解剖学的に,前部,中間部,後部,びまん性に分類される。

前部ぶどう膜炎は主に前眼部に限局し,虹彩炎(前房の炎症のみ)および虹彩毛様体炎(前房および前部硝子体の炎症)を含む。中間部ぶどう膜炎(周辺部ぶどう膜炎または慢性毛様体炎)は硝子体に生じる。後部ぶどう膜炎は,あらゆる網膜炎,脈絡膜炎,視神経乳頭の炎症を意味する。びまん性ぶどう膜炎(全ぶどう膜炎)は前房および後房両方の炎症を意味する。

病因と病態生理

ほとんどの例は特発性であり,自己免疫に起因すると推測されている。同定可能な原因には,外傷,眼感染症と全身感染症,全身性自己免疫疾患がある(ぶどう膜炎: 結合組織疾患によるぶどう膜炎を参照 )。

前部ぶどう膜炎の最も一般的な原因は外傷である(外傷性虹彩毛様体炎)。その他の原因として 脊椎関節症(20〜25%),若年性特発性関節炎,ヘルペスウイルス感染症があるが,症例の半数は特発性である。ほとんどの中間部ぶどう膜炎は特発性であるが,まれではあるものの,同定可能な原因には,多発性硬化症,サルコイドーシス,結核,梅毒,ライム病,シェーグレン症候群がある。後部ぶどう膜炎の最も一般的な原因はトキソプラズマであるが,AIDS患者ではサイトメガロウイルスが原因であることが最も多い。びまん性ぶどう膜炎の最も一般的な原因はサルコイドーシスであるが,ほとんどの場合,特発性である。

まれに全身薬によりぶどう膜炎が起こる。例えば,スルホンアミド,パミドロン酸(骨吸収抑制剤),リファブチン,シドフォビルである。

ぶどう膜炎の原因となる全身疾患およびその治療については本書の別の個所に記載されている。

症状と徴候

症状と徴候は軽微な場合もあり,炎症の部位および重症度により異なる。

前部ぶどう膜炎は最も自覚症状が現れる傾向があり,通常眼痛,充血,羞明,視力低下がみられる。徴候には,角膜に隣接する結膜の充血がある。細隙灯顕微鏡所見では,房水中に細胞とフレア,角膜後面沈着物,虹彩後癒着を認める。

中間部ぶどう膜炎は典型的には無痛で,飛蚊症と視力低下が現れる。主な徴候は硝子体内の細胞である。炎症細胞はしばしば毛様体扁平部上で凝集,凝縮し,“雪玉状混濁”となる。浮遊物または黄斑部において血管からの液の漏出により生じる嚢胞様黄斑浮腫のため,視力が低下しうる。硝子体細胞および雪玉状混濁が毛様体扁平部で融合,凝縮すると古典的“雪堤防状”の外観を呈するが,これは網膜周辺部の新生血管を伴っている可能性がある。

後部ぶどう膜炎は多様な症状を引き起こしうるが,最も一般的な症状は中間部ぶどう膜炎と同様,飛蚊症および視力低下である。徴候には,硝子体内の細胞,網膜の白色または黄白色病変(網膜炎)および/または網膜下の脈絡膜の白色または黄白色病変(脈絡膜炎),滲出性網膜剥離,網膜血管炎,乳頭浮腫がある。

びまん性ぶどう膜炎では,上記の症状と徴候のいずれか,または全てが出現しうる。

ぶどう膜炎は,特に見過ごしおよび/または治療が不適切な場合には,著しい不可逆的な視力低下を招くことがある。最も頻度の高い合併症には,白内障,緑内障,網膜剥離,および網膜,視神経,虹彩の新生血管,ぶどう膜炎による視力低下の最も一般的な原因である嚢胞様黄斑浮腫がある。

診断

眼痛,充血,羞明,視力低下を訴える患者ではぶどう膜炎を疑うべきである。ぶどう膜炎が疑われる患者は,直ちに眼科精密検査を受けるべきである。ほとんどの所見は,細隙灯顕微鏡検査および倒像眼底検査により最もよく観察される。

眼内の炎症を引き起こす多くの疾患がぶどう膜炎に似た症状を呈す可能性があり,臨床の場で検討すべきである。これらの疾患には,年少児(典型的には網膜芽細胞腫および白血病)ならびに高齢者(眼内リンパ腫)の眼内悪性腫瘍が含まれる。あまり一般的ではないが網膜色素変性症(網膜疾患: 網膜色素変性を参照 )で,ぶどう膜炎と混同されうる軽度の炎症が現れることがある。

治療

通常,活動期の炎症は,調節麻痺・散瞳薬とともにコルチコステロイドの局所投与または眼周囲への注射による治療が必要である。感染性ぶどう膜炎の治療には抗菌薬が使用される。特に重症例または慢性例では,コルチコステロイドの全身投与,非ステロイド性免疫抑制薬の全身投与,網膜周辺部に対する経強膜的冷凍手術,観血的硝子体除去(硝子体切除術)が必要な場合がある。

結合組織疾患によるぶどう膜炎

多くの結合組織疾患がぶどう膜の炎症を起こす。

脊椎関節症: 血清陰性の脊椎関節症(関節疾患: 脊椎関節症を参照 )は前部ぶどう膜炎の一般的な原因である。眼の炎症は強直性脊椎炎で最も一般的にみられるが,反応性関節炎,潰瘍性大腸炎とクローン病を含む炎症性腸疾患,乾癬性関節炎でも起こる。ぶどう膜炎は古典的には片眼性であるが,再発することが多く,両眼交互に起こりうる。女性よりも男性に多い。ほとんどの患者は,性別にかかわらずHLA-B27陽性である。コルチコステロイドの局所投与および調節麻痺・散瞳薬による治療が必要である。ときに,眼周囲へのコルチコステロイド投与が必要となる。

若年性特発性関節リウマチ(JIA,若年性関節リウマチとしても知られる): 若年性特発性関節リウマチは,特に少関節型(関節疾患: 若年性関節リウマチ(JRA)を参照 )の小児に両眼性の慢性虹彩毛様体炎を引き起こす特徴がある。他のほとんどの前部ぶどう膜炎と異なり,若年性特発性関節リウマチでは眼痛,羞明,結膜充血が現れない傾向がある一方で,霧視および縮瞳のみを認めるために,しばしば白い虹彩炎と呼ばれる。若年性特発性関節リウマチに伴うぶどう膜炎は男子よりも女子に多い。炎症の再燃に対する最善の治療は,コルチコステロイドの局所投与および調節麻痺・散瞳薬である。長期コントロールには,しばしばメトトレキサート,ミコフェノール酸モフェチルなどの非ステロイド性免疫抑制薬が必要となる。

サルコイドーシス: サルコイドーシス(サルコイドーシスも参照 )はぶどう膜炎の10〜20%を占め,サルコイドーシス患者の約25%にぶどう膜炎が起こる。サルコイドーシスのぶどう膜炎は黒人および高齢者に好発する。実際には前部,中間部,後部,びまん性ぶどう膜炎のあらゆる症状および徴候が起こりうる。サルコイドーシスを示唆する所見には,結膜の肉芽腫,角膜内皮上の大きい角膜後面沈着物(いわゆる肉芽腫性角膜後面沈着物または豚脂様角膜後面沈着物),虹彩の肉芽腫,網膜血管炎がある。サルコイドーシスを示唆する病変の生検により,最も診断が確定的となる。治療には通常,コルチコステロイドの局所,眼周囲,全身投与と調節麻痺・散瞳薬の局所投与との併用が必要である。中等度から重度の炎症の患者では,メトトレキサート,ミコフェノール酸モフェチル,アザチオプリンなどの非ステロイド性免疫抑制薬が必要となりうる。

ベーチェット症候群: 本疾患は北米ではまれだが,中東および極東ではぶどう膜炎の比較的一般的な原因である(脈管炎: ベーチェット症候群も参照 )。典型的な所見には,前房蓄膿(前房内のリンパ球堆積)を伴う重症の前部ぶどう膜炎,網膜血管炎,乳頭炎がある。臨床経過は通常,重症で,再発性である。診断には,口腔のアフタ性潰瘍または陰部潰瘍,結節性紅斑を含む皮膚炎,血栓性静脈炎,精巣上体炎など関連する全身所見を認める必要がある。口腔のアフタ性潰瘍の生検により,閉塞性血管炎を証明してもよい。ベーチェット症候群のための臨床検査はない。コルチコステロイドの局所と全身投与および調節麻痺・散瞳薬を用いた治療により急性増悪は軽減しうるが,ほとんどの患者では結局,コルチコステロイドの全身投与およびシクロスポリン,クロランブシルなどの非ステロイド性免疫抑制薬が,炎症のコントロールおよび長期のコルチコステロイド療法による重篤な合併症を予防するために必要となる。

フォークト-小柳-原田(VKH)症候群: VKH症候群は,皮膚および神経学的異常を伴うぶどう膜炎を特徴する,まれな全身性疾患である。VKH症候群は,特にアジア人,インド人,アメリカインディアンの子孫に好発する。男性より,20代および30代の女性に多い。ぶどう膜,皮膚,内耳,髄膜の色素細胞に対する自己免疫反応が強く疑われているが,病因は不明である。

神経症状は初期に現れる傾向があり,耳鳴,聴力不全(聴覚性失認),めまい,頭痛,髄膜症がみられる。皮膚所見は後期によくみられ,斑状白斑(特に眼瞼,腰部,臀部に好発),白毛(限局する斑状の白髪),脱毛を認め,しばしば頭部および頸部を侵す。その他の眼合併症には,白内障,緑内障,乳頭浮腫,一般的に脈絡膜上にある網膜の滲出性剥離を伴う脈絡膜炎がある。

初期の治療には,コルチコステロイドの局所および全身投与ならびに調節麻痺・散瞳薬がある。多くの患者では,メトトレキサート,アザチオプリン,ミコフェノール酸モフェチルなどの非ステロイド性免疫抑制薬も必要である。

眼内炎

眼内炎は急性,びまん性ぶどう膜炎で,原因は細菌感染が最も多い。

眼内炎のほとんどは,表皮ブドウ球菌または黄色ブドウ球菌などのグラム陽性菌により引き起こされる。グラム陰性菌も眼内炎を起こしうるが,毒性がより強い傾向があり,不良な予後と関連する。真菌および原虫が原因の眼内炎はまれである。ほとんどの例は,穿孔性眼外傷または眼内手術後に起こる(外因性)。あまり一般的ではないが,全身性の手術または歯科処置後,静注ラインまたは静注薬使用時に血流を介して感染が眼に達することがある(内因性)。

視力予後が発症から治療開始までの時間と直接関係するため,眼内炎は医学的に緊急を要する疾患である。まれに,未治療の眼内感染が眼にとどまらず眼窩および中枢神経系を侵すことがある。外因性眼内炎では典型的に,激しい眼痛および視力低下を生じる。徴候には,著しい結膜充血,前房と硝子体内の眼内炎症,ときに眼瞼浮腫がある。

特に手術または外傷の最近の既往があり,危険性の高い患者では,強く疑うことが診断上必要である。前房および硝子体からの吸引物のグラム染色および培養が標準的である。内因性眼内炎が疑われる患者では,血液および尿の培養も行うべきである。

初期治療には広域スペクトル抗生物質の硝子体内投与があり,バンコマイシン,セフタジジムが最も一般的である。内因性眼内炎患者には,抗生物質の硝子体内投与と静脈内投与を併用すべきである。

早期に適切な治療が行われた場合でも,視力予後はしばしば不良である。培養および感受性試験の結果が得られたら,治療の変更が必要となる場合もある。診察時に指数弁以下の患者では,硝子体切除術およびコルチコステロイド眼内投与を検討すべきである。しかしながら,真菌性眼内炎の場合,コルチコステロイドは禁忌である。

感染性ぶどう膜炎

多くの感染症がぶどう膜炎を起こす(ぶどう膜炎: ぶどう膜炎の原因となる感染症表 1: 表を参照)。最も一般的なのは,ヘルペスウイルス,サイトメガロウイルス,トキソプラズマ症である。

表 1

ぶどう膜炎の原因となる感染症

より一般的

あまり一般的ではない

まれ

サイトメガロウイルス*

ヘルペスウイルス

ニューモシスチス-ジロヴェッチ(旧ニューモシスチス-カリニ)*

トキソプラズマ症

ヒストプラズマ

ライム病

梅毒

トキソカラ症

結核

アスペルギルス

カンジダ

コクシジオイデス症

クリプトコッカス

嚢虫症

ハンセン病

レプトスピラ症

オンコセルカ症

トロフェリマ-ホウィッペリ

*AIDS患者において

ヘルペスウイルス: 単純ヘルペスウイルス(ヘルペスウイルス: 単純ヘルペスウイルス感染症も参照 )は前部ぶどう膜炎を起こす。加齢とともに帯状疱疹に関連する前部ぶどう膜炎の有病率が増加するが,帯状疱疹ウイルスによるものはあまり一般的ではない。症状には,眼痛,羞明,視力低下がある。徴候には,充血,しばしば角膜の炎症(角膜炎)を伴う結膜充血と前房の炎症,角膜知覚低下,急激な眼圧上昇,斑状または扇形虹彩萎縮がある。治療には,コルチコステロイド局所投与および調節麻痺・散瞳薬投与を行う。アシクロビルを単純ヘルペスウイルスでは400mg経口にて1日5回,帯状疱疹ウイルスでは800mg経口にて1日5回を併用してもよい。

非常にまれであるが,帯状疱疹ウイルスおよび単純ヘルペスウイルスは,急性網膜壊死(ARN)と呼ばれ,急激に進行する網膜炎を起こす。これは,典型的には閉塞性網膜血管炎および中等度から重度の硝子体の炎症を伴う。急性網膜壊死の3分の1は両眼性となり,4分の3は網膜剥離を起こす。急性網膜壊死はHIV,AIDS患者にも起こりうるが,免疫不全患者では硝子体炎症は起こりにくい傾向がある。培養およびPCR分析のための硝子体生検が急性網膜壊死を診断する上で有用となりうる。治療では,アシクロビル静脈内投与とともにガンシクロビルまたはホスカルネットの静脈内投与と硝子体内投与を行う。バルガンシクロビルの経口投与も行いうる。

トキソプラズマ症: トキソプラズマ症腸外原虫: トキソプラズマ症も参照 )は,免疫能を有する患者の網膜炎では最も一般的な原因である。後天感染も一般的にみられるが,ほとんどは先天感染である。飛蚊症および視力低下の症状は硝子体内の細胞,または網膜の病変もしくは瘢痕によることがある。同時に前眼部を侵すことがあり,疼痛,充血,羞明が現れることがある。臨床検査では,血清抗トキソプラズマ抗体価を検査するべきである。視神経や黄斑など視機能に関係する重要な構造を脅かす後部病変を有する患者,および免疫不全患者には治療が推奨される。ピリメタミン,スルホンアミド,クリンダマイシン,および特定の症例にはコルチコステロイドの全身投与を含む多剤併用療法が一般的に行われる。しかしながら,抗生物質の併用なしにコルチコステロイドを用いるべきではない。

サイトメガロウイルス: サイトメガロウイルス(ヘルペスウイルス: サイトメガロウイルス感染症も参照 )は免疫不全患者における網膜炎の最も一般的な原因であり,AIDS患者の25〜40%,典型的にはCD4陽性細胞数が50個/μL未満に低下する場合に罹患する。サイトメガロウイルス網膜炎は新生児および薬理学的に免疫が抑制された患者でも起こりうるが,まれである。診断は,直像または倒像眼底検査により大部分は臨床的に行い,血清学的検査の使用は限られている。HIV,AIDS患者の治療には,ガンシクロビルの全身または局所投与(インプラント),ホスカルネットまたはバルガンシクロビルの全身投与を用いる。併用抗レトロウイルス療法により免疫再構築(典型的には,少なくとも3カ月間CD4陽性細胞数が100個/μLを超える)が起きない限り,典型的には無期限に治療を継続する。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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