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スティーブンス-ジョンソン症候群および中毒性表皮壊死剥離症

スティーブンス-ジョンソン症候群および中毒性表皮壊死剥離症は重症の皮膚過敏反応である。薬剤,とりわけサルファ剤,抗てんかん薬,抗生物質が原因として最も多い。斑が急速に拡大して融合し,表皮の水疱,壊死,剥離を来す。診断は,通常,初期病変の臨床像および臨床症状全般から明らかである。治療は支持的に対処する;コルチコステロイド,シクロホスファミドなどの薬剤を試みてもよい。予後はこれらの疾患がどれだけ迅速に診断され治療されたかに左右される;死亡率は40%に達することもある。

スティーブンス-ジョンソン症候群(SJS)と中毒性表皮壊死剥離症(TEN)は分布を除けば臨床的に類似している。広く承認されている定義によれば,変化が体表面積の10%未満ならSJSで,30%を超えればTENである;体表面積の15〜30%が罹患していればSJS-TENのオーバーラップと考える。

これらの疾患は,百万人当たり1〜5人が罹患する。両疾患の発生率および/または重症度は,骨髄移植を受けた患者,ニューモシスチス-ジロベジー (以前のP. カリニ)に感染したHIV患者,SLE患者で高い。

病因と病態生理

SJSの50%以上,TENでは95%までの症例で薬剤が関与している。サルファ剤(例,コトリモキサゾール,スルファサラジン),抗てんかん薬(例,フェニトイン,カルバマゼピン,フェノバルビタール,バルプロ酸),抗生物質(例,アミノペニシリン系,キノロン系,セファロスポリン系),その他種々の薬剤(例,ピロキシカム,アロプリノール,クロルメザノン)が最も多い原因薬物である。薬剤が原因でない症例は,感染症(大部分が肺炎マイコプラズマ),予防接種,移植片対宿主病が原因である。まれに原因を特定できないことがある。

正確な発症機序は不明である;しかし,一説によれば,一部の患者では薬物代謝が異常であるため反応性に富む代謝産物が形成され,この代謝産物が細胞タンパクに結合してこのタンパクを変化させ,ケラチノサイト内の薬物抗原に対しT細胞性細胞傷害反応を惹起させるとのことである。別の機序として,細胞表面にある細胞死受容体であるFasとそのリガンドの相互作用が関与していることも考えられる。

症状と徴候

原因薬剤が開始されて1〜3週以内に,患者は,倦怠感,発熱,頭痛,咳嗽,結膜炎といった前駆症状を発症する。その後,しばしば“標的状”の形状をした斑が,通常顔面,頸部,体幹上部に突然出現する。これらは同時に身体他部にも出現し,融合して大きな弛緩性水疱となり,1〜3日かけて剥離する。爪および眉毛は表皮とともに脱落することがある。

TENの重症例では,圧迫を加えた部分で全身の表皮が大きな膜状に剥離し(ニコルスキー徴候),滲出性で疼痛のある紅色皮膚が露出する。症例の90%までに,皮膚の剥離とともに,疼痛を伴う口腔内の痂皮およびびらん,角結膜炎,性器の障害(包茎,陰唇癒着)が生じる。気管支上皮も剥離することがあり,咳嗽,呼吸困難,肺炎,肺浮腫,低酸素血症を来す。糸球体腎炎および肝炎が発症することもある。

診断

診断は,病変の臨床像および症状の急速な進行からしばしば明らかである。剥離した皮膚を組織学的に検討すれば壊死に陥った表皮が認められるが,これが鑑別に役立つ特徴である。SJSおよび早期TENの鑑別診断には,多形紅斑,ウイルス性発疹,薬疹がある;後期TENの鑑別診断には,腫瘍随伴性天疱瘡,毒素性ショック/毒素性レンサ球菌症候群,剥脱性紅皮症,熱傷がある。小児のTENは成人ほど多くなく,ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群と鑑別しなければならない。

予後と治療

重症のTENは広範な熱傷に類似する;患者は急速に状態が悪化し,物を食べたり眼を開けたりすることができず,大量の体液および電解質の喪失を来すことがある。患者は感染症,多臓器不全,死亡を来すリスクが高い。早期に治療すれば,生存率は90%に達する。

SJS-TENが早期に診断され,皮膚科病棟またはICUで治療されれば,治療は最も効果的である;重症例では熱傷病棟が適応となるかもしれない。眼科医の診察が不可欠である。薬剤は直ちに中止すべきである。患者は感染に対する暴露を最小限にとどめるために隔離し,必要に応じて,輸液,電解質,血液製剤,栄養補給を積極的に行う。スキンケアの中に,細菌二次感染に対する迅速な対処がある。予防的な抗生物質投与には賛否両論がある。

SJS-TENの治療に関しては論争がある。T細胞性細胞傷害を阻害するために,高用量のコルチコステロイドの全身投与(例,メチルプレドニゾロン80〜200mgの静注またはプレドニゾン80mg,経口,1日1回投与を7〜10日間もしくは病気の進行が止まるまで実施)またはシクロホスファミドの投与(300mg,静脈内,24時間毎の投与を7日間または有意な改善が得られるまで実施)を行ってもよい。しかし,コルチコステロイドに関しては賛否両論があり,死亡率を高めると考える者もいる。プラスマフェレーシスを行えば,反応性がある薬物代謝産物または抗生物質を除くことができる。早期に2.7g/kgの用量で3日間高用量の免疫グロブリンを静注すれば(IVIG),抗体およびアポトーシス誘導タンパクであるFasリガンドを遮断できる。一部の症例ではTENに対して高用量のIVIGを用いて非常に有効であったが,小さなコホートで行われた臨床試験では,矛盾する結果が報告されている。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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