メルクマニュアル18版 日本語版
検索のヒント
ABCDEFGHI
JKLMNOPQR
STUVWXYZ
記号

セクション

トピック

多汗症

多汗症は過剰な発汗で,局所性のこともびまん性のこともあり,原因は多岐にわたる。腋窩,手掌,足底の発汗はストレスによることが最も多い;びまん性の発汗は通常特発性であるが,悪性疾患,感染症,内分泌疾患も疑うべきである。診断は明らかであるが,基礎にある原因の検査が適応となることもある。治療は塩化アルミニウムの外用,水道水によるイオントフォレーゼ,ボツリヌス毒素であり,非常に高度な例では手術を行う。

病因

多汗症は局所性のことも全身性のこともある。

局所性発汗: 普通は情動的な原因で生じ,不安,興奮,憤怒,恐怖を感じたときに,手掌,足底,腋窩,前額部に発汗を来す。この現象は,ストレスで全身的に交感神経の活動が増大するためかもしれない。そのような発汗は正常の反応であるが,多汗症の患者は過剰に発汗し,大部分の人では発汗しない状況で発汗が生じる。

味覚性発汗は,摂取された食べ物や飲み物が辛かったり熱かったりした場合に,口唇および口の周囲に生じる。大部分の症例では原因不明であるが,味覚性発汗は,糖尿病性神経障害,顔面帯状疱疹,頸部交感神経節への浸潤,CNSの損傷または疾患,耳下腺の損傷で増加することがある。耳下腺の例では,手術,感染症,外傷によって耳下腺の神経支配が破壊され,その結果,耳下腺の副交感神経線維が再生して,損傷が生じた局所皮膚の汗腺を支配する交感神経線維に入り込むが,この現象は通常耳下腺の上で生じる;この状態はフライ症候群と呼ばれる。

局所性発汗の他の原因としては,脛骨前粘液水腫(向うずね),肥大性骨関節症(手掌),青色ゴム乳首様母斑症候群,グロムス腫瘍(病変の上)がある。代償性発汗は,交感神経切除後の強い発汗である。

全身性発汗: 全身性発汗は,ほぼ全身に生じる。大部分の症例は特発性であるが,様々な病態の関与していることがあり,その例として,内分泌疾患(特に,甲状腺機能亢進症,低血糖,性腺刺激ホルモン放出ホルモン拮抗薬で誘発された下垂体機能亢進症);妊娠および閉経;薬剤(特に,抗うつ薬全般,アスピリン,NSAID,血糖降下薬,カフェイン,テオフィリン);オピオイドの離脱;カルチノイド症候群;自律神経障害;頸部交感神経節への浸潤;CNSの損傷または疾患がある。夜間全身性発汗(寝汗)はしばしば良性であるか不安に関連しているが,悪性疾患(特にリンパ腫および白血病)ならびに感染症(特に結核,心内膜炎,全身性真菌疾患)も疑うべきである。

症状,徴候,診断

発汗はしばしば診察中にも生じ,ときに顕著である;衣類が汗で水びたしになることもあるし,手掌や足底が浸軟して亀裂を生じることもある。多汗症は多汗症患者にとって情動的ストレスになることがあり,社会的な引きこもりにつながる恐れがある。手掌や足底の皮膚は白くみえることがある。

多汗症は病歴および診察で診断するが,ヨードデンプン試験(罹患部位にヨード液を塗布し,乾燥させて,コーンスターチをふりかける:発汗部位は暗色になる)で確認できる。試験は,発汗巣を確認するため(フライ症候群の場合,もしくは手術またはボツリヌス毒素による治療の必要な部位を突き止める目的),または治療経過をフォローするときの半定量法としてのみ必要である。

多汗症の原因を見つける試験は症状を見直すことで方向が決定され,その中には,白血病を検出するためのCBC,糖尿病を検出するための血糖測定,甲状腺機能不全のスクリーニングを行うための甲状腺刺激ホルモンの測定が含まれるであろう。

治療

局所性発汗と全身性発汗の初期治療は似ている。

無水エチルアルコールに溶解した6〜20%の塩化アルミニウム六水和物は,腋窩,手掌,足底の発汗の局所治療に適応がある;この製剤は医師の処方が必要である。この溶液は汗管を遮断し,夜に塗布して薄いポリビニリデンまたはポリエチレンの膜で密に覆うと最も効果がある;朝になれば洗い流すべきである。汗で塩化アルミニウムが洗い流されるのを防止するため,ときに塗布前に抗コリン薬を服用させる。初めのうちは症状をコントロールするのに週に数回の塗布が必要であるが,そのうち週に1回から2回の維持療法でよくなる。もし密封して行う治療で刺激があるようなら,密封せずに試みるべきである。この溶液は,炎症を起こしていたり,亀裂があったり,湿っていたり,ひげを剃ったばかりの皮膚に塗布すべきではない。比較的軽症な例では,高濃度の水性塩化アルミニウム溶液で十分な効果の得られることがある。塩化アルミニウムの代替外用薬であるグルタールアルデヒド,ホルムアルデヒド,タンニン酸などは効果的であるが,接触皮膚炎を起こしたり皮膚を変色させたりすることがある。

水道水によるイオントフォレーシスとは電流で塩類(イオン)を皮膚に浸透させる方法であるが,局所療法に反応しない患者に対する選択肢である。電解質を含む水道水が入った2個の容器に罹患部(典型的な場合は手掌または足底)を浸し,15〜25mAの電流を10〜20分間通電する。この方法を毎日1週間行い,その後1週毎または月に2回繰り返す。治療は,抗コリン薬の外用または内服と併用すれば,さらに効果的である。治療は通常有効であるが,手技に時間がかかりまた幾分わずらわしいので,いつも同じ治療を繰り返すのが嫌になる患者もいる。

ボツリヌス毒素Aは神経毒で,エクリン腺を支配する交感神経からのアセチルコリン遊離を減少させる。腋窩,手掌,前額部に直接注射すると,ボツリヌス毒素は用量に応じて約5カ月間発汗を阻害する。合併症として,局所の筋力低下および頭痛がある。注射は効果があるが,疼痛を伴い高価である。

さらに保存的療法を行って効果がなければ,手術の適応である。腋窩に発汗する患者は,切開を入れて剥離するか脂肪吸引(この方が副作用が少ないようである)で腋窩の汗腺を手術的に除去することにより治療できる。手掌に発汗する患者は,内視鏡的胸部交感神経切除術で治療できる。特に交感神経切除術では,手術による副作用の可能性を考慮しなければならない。合併症として,幻想発汗,代償性発汗,味覚性発汗,神経痛,ホルネル症候群が生じるかもしれない。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

ページの先頭へ

前へ: 臭汗症

次へ: 乏汗症

イラスト
個人情報の取扱いご利用条件