メルクマニュアル18版 日本語版
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蜂巣炎

蜂巣炎は皮膚および皮下組織の急性細菌感染で,レンサ球菌またはブドウ球菌が原因であることが最も多い。症状および徴候は,疼痛,急速に拡大する紅斑,浮腫である;発熱および局所リンパ節腫脹を来すことがある。診断は臨床像で行う;培養は通常不要である。治療は抗生物質で行う。時期を失せずに治療すれば,予後は非常によい。

病因

蜂巣炎はA群β-溶血性レンサ球菌(例,S. ピオゲネス)および黄色ブドウ球菌が原因であることが最も多い。レンサ球菌による感染はびまん性で急速に拡大するが,その理由は,レンサ球菌の産生する酵素(ストレプトキナーゼ,DNA分解酵素,ヒアルロニダーゼ)が細胞成分を破壊するからであり,もしこのような酵素がなければ,炎症は拡大せず限局するであろう。典型的な場合ブドウ球菌性蜂巣炎はレンサ球菌性のものより限局性で,通常,開放創または皮膚膿瘍とともに生じる。

これらの菌ほどではないが,よくみられる原因菌として,高齢の糖尿病患者におけるB群レンサ球菌(例,S. アガラクティエ);小児におけるグラム陰性菌(例,インフルエンザ菌);糖尿病患者または好中球減少症の患者,湯船または入浴施設の利用者,入院患者における緑膿菌がある。動物咬傷で蜂巣炎が生じることがあり,ネコではパスツレラ-マルトシダ,イヌではカプノサイトファガ属が原因菌となる。淡水に浸軟させることで障害が起きると親水性エロモナスによって蜂巣炎の生じることがある;温かい塩水では,ビブリオ-ブルニフィクスが蜂巣炎を引き起こすこともある。

危険因子として皮膚の異常(例,外傷,潰瘍,真菌感染,その他既存の皮膚疾患による皮膚のバリア障害)があり,これらは慢性静脈不全またはリンパ浮腫の患者でよくみられる。心臓外科または血管外科で伏在静脈を除去した後に生じた瘢痕は,特に足白癬が存在する場合,再発性蜂巣炎の好発部位となる。蜂巣炎発症の素因や侵入個所が明らかでない場合も多い。

症状,徴候,診断

感染は下肢に最も好発する。主な所見は局所の紅斑と圧痛で,リンパ管炎と局所リンパ節腫脹を伴うことが多い。皮膚は熱感があり,発赤して浮腫状となり,表面はオレンジの皮に似た外観を呈することが多い。境界は通常不明瞭であるが,丹毒(蜂巣炎の一種で,境界明瞭―細菌性皮膚感染症: 丹毒を参照 )の場合は例外である。点状出血がよくみられる;大きな斑状出血はまれである。小水疱や水疱が発生して破裂することがあり,ときに病変部皮膚に壊死が生じる。蜂巣炎は深部静脈血栓症に似ることがあるが,いくつかの特徴から鑑別できる(細菌性皮膚感染症: 蜂巣炎と深部静脈血栓症の鑑別表 1: 表を参照)。発熱,悪寒,頻脈,頭痛,低血圧,せん妄が皮膚所見の発現より数時間前に起こることもあるが,多くの患者では健康状態が冒されているようにはみえない。普通は白血球増多がある。

表 1

蜂巣炎と深部静脈血栓症の鑑別

特徴

蜂巣炎

深部静脈血栓症

皮膚温

熱い

正常または冷たい

皮膚の色調

赤色

正常またはチアノーゼ色

皮膚表面

オレンジの皮様

平滑

リンパ管炎および局所リンパ節腫脹

高頻度

存在しない

診断は診察で行う。皮膚および創傷(もし存在すれば)から培養を行っても原因菌を同定できることはまれなので,培養は通常適応にならない。免疫不全患者では,菌血症を検出または除外する目的で血液培養を行えば有用である。免疫不全患者の場合,もし経験的な治療に反応しなかったり血液培養で菌を分離できなかったなら,罹患部位の組織から培養を行う必要があるかもしれない。

予後と治療

蜂巣炎の大半は,抗生物質による治療で速やかに消退する。局所的な膿瘍がときに形成され,切開排膿が必要となる。重篤だが,まれにしか起こらない合併症として,重症の壊死性皮下感染(細菌性皮膚感染症: 壊死性皮下感染を参照 )および転移性感染病巣を伴う菌血症がある。

同一部位に再発することが多く,ときにリンパ管の重篤な傷害,慢性リンパ管閉塞,リンパ浮腫を生じる。

治療は抗生物質で行う。ほとんどの患者で,経験的にA群レンサ球菌および黄色ブドウ球菌のいずれにも有効な治療が行われる:感染が軽症である場合は,通常ジクロキサシリン250mgまたはセファレキシン500mg,経口,1日4回投与で治療すれば十分である。レボフロキサシン250mg,経口,1日1回投与も有効で,患者が服薬指示を守るのも容易である。より重篤な感染の場合は,オキサシリンまたはナフシリン1gを6時間毎に静脈内投与する。ペニシリンアレルギーのある患者またはメチシリン抵抗性黄色ブドウ球菌 の感染が疑われる患者では,バンコマイシン1gを12時間毎に静脈内投与する方法を選択する。病変部を動かさないようにして高挙すれば浮腫の軽減に役立つ;冷たく湿ったドレッシングを施せば局所の不快感が和らぐ。

好中球減少症患者の蜂巣炎では,血液培養の結果が出るまで経験的にシュードモナスに有効な抗生物質の投与(例,トブラマイシン1.5mg/kg,静脈内投与,8時間毎およびピペラシリン3g,静脈内投与,4時間毎)が必要である。ペニシリンはP. マルトシダに対する選択薬で,アミノ配糖体(例,ゲンタマイシン)は親水性エロモナスに有効であり,テトラサイクリンはV. ブルニフィクスに好んで用いられる。

再発性の下肢の蜂巣炎は随伴症である足白癬の治療を行えば防止できるが,その理由は,しばしば炎症を起こしている浸軟組織に棲息する細菌の供給源を排除できるからである。このような治療が成功しなかったり適応でない場合,ベンザシンペニシリン120万単位,筋肉内投与,月1回で治療するかペニシリンVまたはエリスロマイシン250mg,経口,1日4回投与を1カ月に1週間行えば,再発性の蜂巣炎を防止できることがある。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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