メルクマニュアル18版 日本語版
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黒色腫(悪性黒色腫)

悪性黒色腫は色素がある部位に存在するメラノサイトから発生する:そのような部位は皮膚,粘膜,眼,CNSである。転移は真皮浸潤の深さと相関する。病変が原発巣にとどまっていないなら,予後は不良である。診断は生検で行う。手術可能な腫瘍に対しては,広範な外科的切除が原則である。転移を起こしていれば化学療法が必要であるが,治癒は困難である。

米国では年間約50,000例の悪性黒色腫症例が新規に生じ,約8000名が死亡している。本疾患の発生率は,他の悪性腫瘍の発生率よりも急速に増加している。家族歴,色素性母斑数の増加,悪性黒子の発生,大型の先天性色素性母斑の存在,異形性母斑症候群の存在が危険因子であるように,日光暴露も危険因子である。黒人では,黒色腫はまれである。

黒色腫の病歴をもつ第1度近親者の人が1人以上いる人は,家族歴のない人よりもリスクが高い(最大6または8倍)。

黒色腫の約40〜50%は有色素性のほくろから生じる(良性腫瘍: ほくろも参照 );残りの大部分は正常皮膚のメラノサイトから生じる。前癌病変には異型性ほくろがある(異形母斑―良性腫瘍: 異型ほくろを参照 )。悪性黒色腫は小児では非常にまれであるが,小児で悪性黒色腫が生じるとすれば,ほとんど例外なく,出生時から存在する大型の色素性母斑(先天性巨大母斑)から生じる。黒色腫は妊娠中に生じるが,ほくろが黒色腫になる可能性を妊娠が高めるわけではない;妊娠中,母斑の大きさが変化し,母斑が均一に濃色化することは多い。しかし,悪性化の徴候は注意深く観察すべきで,それらには以下のものがある:大きさの変化;色調の不規則な変化,特に周囲正常皮膚への赤色,白色,青色の色調の拡大;表面の性状,硬さ,形状の変化;とりわけ出血,潰瘍,かゆみ,圧痛を伴うことのある周囲皮膚の炎症徴候。

黒色腫は,口腔粘膜,性器粘膜,結膜にも発生する。粘膜の黒色腫(特に肛門直腸黒色腫)は有色人種に多く,予後はよくない。

黒色腫の大きさ,形状,色調(通常は有色素性),浸潤傾向,転移傾向は様々である。本腫瘍は急速に原発巣から広がり,存在が確認されてから数カ月以内に患者は死亡するが,早期のごく表在性の病変であれば,5年治癒率はほぼ100%である。したがって,治癒は早期診断および早期治療にかかっている。黒色腫の主要な4型を以下に述べる。

悪性黒子型黒色腫は,黒色腫の15%までを占める。本病型は高齢患者に生じる傾向がある。本病型は悪性黒子(ハッチンソン色素斑,すなわちin situの悪性黒色腫)から生じる。本病型は顔面をはじめとする露光部に生じ,大きさ2〜6cm,平坦で淡黄褐色から褐色の,症状を伴わない不規則な形状の斑で,表面に濃い褐色から黒色の斑点が散在している。悪性黒子では正常のメラノサイトと悪性のメラノサイトが表皮に限局して存在している;悪性のメラノサイトが真皮に侵入すれば病変は悪性黒子型黒色腫と呼ばれ,転移する可能性がある。

表在拡大型黒色腫は黒色腫の2/3を占める。本病型は,典型的な場合は無症状で,通常は悪性黒子型黒色腫よりも小さい段階で診断され,女性の下肢,男性の体幹に最も好発する。病変は通常不規則に隆起し,淡黄褐色または褐色の硬結を触れる局面であるが,しばしば赤色,白色,黒色,青色の斑点を認め,また小さくて隆起することのある青黒い結節のこともある。病変の拡大や色調の変化に伴い,辺縁に小さな切痕状陥凹を認めることもある。組織学的には,異型メラノサイトが表皮および真皮に浸潤しているという特徴がある。

結節型黒色腫は黒色腫の10〜15%を占める。本病型は体のどこにでも生じ,濃色の隆起した丘疹または局面で,真珠色から灰色さらに黒色まで色調は様々である。ときには,病変がごくわずかの色素しか含まなかったり,病変が血管性腫瘍のようにみえることもある。潰瘍化しない限り結節型黒色腫は症状がなく,通常患者は病変が急速に増大するために受診する。

末端黒子型黒色腫はまれだが,黒人の黒色腫では最もよくみられる病型である。本病型は手掌,足底,爪下の皮膚に発生し,悪性黒子型黒色腫に似た特徴的な組織像を示す。

黒色腫の転移はリンパ行性と血行性がある。局所転移が生じれば原発巣近傍に衛星状の丘疹や結節が形成され,それらは色素を有することも有しないこともある。皮膚や内臓への直接転移も起こることがあり,ときには原発巣が判明する前に転移巣や腫脹したリンパ節が発見される。

診断

鑑別診断には,基底細胞癌および有棘細胞癌,脂漏性角化症,異形母斑,青色母斑,皮膚線維腫,ほくろ,血腫(特に手や足の),静脈湖,化膿性肉芽腫,局所的に血栓を生じたイボがある。疑わしい場合は,真皮全層を含めわずかに病変部の辺縁を超える形で生検すべきである。生検は,小さい病変には摘出生検,大きい病変には切開生検を行うべきである。病理医は,切片を飛び飛びに検討することにより,黒色腫の最大の厚みを決定できる。組織診断がつく前に徹底的な根治手術を行うべきではない。

色素性病変に切除や生検を実施する目安は,最近増大した,色調が黒くなった,出血した,潰瘍が生じたといった事柄である。しかし,こうした徴候は,通常黒色腫がすでに皮膚深部まで浸潤していることを示す。色調がまだらであったり(例,赤色調,白色調,青色調を混じた褐色や黒色),肉眼的に認めるまたは触知可能な不整な隆起があったり,尖った陥凹や切痕のある辺縁を伴っている病変から生検材料を入手できれば,早期診断は可能である。デルマトスコープは検眼鏡を応用して色素性病変の観察に油浸用オイルを用いる装置であるが,この装置は黒色腫と良性病変の鑑別に有用なことがある。

リンパ球の浸潤度は患者の免疫学的防御機構を示し,腫瘍の浸潤の程度と予後に相関することがある。治癒の可能性は,リンパ球浸潤が最も表在性の病変に限局しているときが最大であり,深層まで腫瘍細胞が浸潤して潰瘍化し,血管やリンパ管に浸潤するにつれて減少する。

黒色腫のステージは臨床的および病理学的な基準に基づいており,局所性病変,領域性病変,遠隔性病変に分類されている;ステージと生存率は相関が強い。いわゆるセンチネルリンパ節生検という侵襲性の非常に低い顕微鏡的ステージ決定手技があるが,この手技は患者のステージをより正確に知ることができるという点で大きな進歩である。ステージの検討は,通常,皮膚科医,一般外科医,形成外科医,皮膚病理医がチームの形で協働して行う。

予後と治療

腫瘍が皮膚原発である場合(CNSや爪下の黒色腫ではない),生存率は診断時の腫瘍の厚さによって異なる(皮膚癌: 悪性黒色腫の厚さと5年生存率の関連表 1: 表を参照)。発見時にはしばしば非常に限局しているようにみえても,粘膜起源の黒色腫は予後不良である。黒色腫が一旦転移すれば,5年生存率は約10%である。

表 1

悪性黒色腫の厚さと5年生存率の関連

腫瘍の厚さ(mm)*

5年生存率(%)

< 0.76

98–100

0.76–1.5

90–94

1.51–2.25

83–84

2.26–3.0

72–77

> 3.0

46

*組織学的に消退徴候があれば,腫瘍の厚さは評価が非常に困難である。

治療は外科的切除である。辺縁にどの程度の幅をもたせて切除するかについては議論の的であり,専門医のほとんどは,厚さが1mm未満の病変なら腫瘍辺縁から1cm離して摘出するのが適当であるということで同意している。それより厚い病変の場合,さらに根治的な手術およびセンチネルリンパ節生検が適当と思われる。

一般に,転移病変は手術不能である。補助療法として,遺伝子組み換え型免疫反応修飾物質を用いて臨床的にまだ明らかとなっていない段階の微小な転移を積極的に抑制しようという方法が現在評価中で,遺伝子組み換え型免疫反応修飾物質としては特にインターフェロン-αが精力的に研究されている。進行期の病変については,リンホカイン活性化キラー細胞または抗体の注入が研究されている。ワクチン療法も検討中である。 脳転移は放射線照射で治療してもよいが,反応は不良である。

悪性黒子型黒色腫と悪性黒子の治療は,通常局所を広範囲に切除し,必要なら皮膚移植を行う。強力に放射線療法を行っても,その効果は手術よりもはるかに劣る。悪性黒子は-病変が非常に大きくなる前に-早期切除するのが望ましい;コントロールされた凍結外科療法は別として,大多数の他の治療法では,通常除去しなければならない毛包の病変部まで十分に深く到達できない。

拡大型または結節型の黒色腫は,通常筋膜の深さまでの広範囲局所切除で治療する。リンパ節廓清は,リンパ節に病変を認めるときに勧められる。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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