メルクマニュアル18版 日本語版
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好酸球増加症

好酸球増加症とは,末梢血中好酸球数が450/μLを超えるものを指す。原因は無数にあるが,しばしばアレルギー反応または寄生虫感染を示す。診断には,臨床的に疑われる根底の原因に対する選択的検査を実施する。治療は根底の原因に対して行う。

好酸球増加症には免疫反応の特徴がみられる:旋毛虫などの外的病原因子は比較的低値の好酸球増加を伴う一次応答を引き起こすが,反復的な暴露では,増強された,いわゆる二次的な好酸球応答が生じる。

好酸球数を減らす因子には,β遮断薬,コルチコステロイド,ストレス,および(時に)細菌感染やウイルス感染がある。肥満細胞や好塩基球から放出される,例えばアナフィラキシー性好酸球走化性因子,ロイコトリエンB4,補体複合体(C5-C6-C7),および(狭い範囲の濃度の)ヒスタミンなどのいくつかの物質が,IgE媒介の好酸球産生を誘導する。

好酸球増加症は一次性(特発性)に,または多数の障害に対して二次性に起こる( 好酸球性疾患: 二次性の好酸球増加症の重要な原因表 1: 表参照)。米国ではアレルギー性またはアトピー性の疾患が最も一般的な原因であり,病態で最も一般的なものは気道疾患と皮膚疾患である。好酸球増加症は,ほぼあらゆる寄生虫の組織中への侵入によって引き起こされるが,通常,原生動物や非侵入性の後生動物によっては起こらない。

表 1

二次性の好酸球増加症の重要な原因

原因

アレルギー性またはアトピー性疾患

喘息,アレルギー性鼻炎,アレルギー性気管支肺アスペルギルス症,職業性肺疾患,じんま疹,湿疹,アトピー性皮膚炎,牛乳蛋白アレルギー,好酸球増加症を伴う一時的な血管性浮腫,薬物反応

寄生虫の侵入(特に組織侵襲性の後生動物)

旋毛虫症,内臓幼虫移行症,鞭虫症,回虫症,糞線虫症,鉤虫感染症,肝吸虫症,肺吸虫症,肝蛭症,嚢虫症(有鉤条虫),エキノコックス症,フィラリア症,住血吸虫症,ニューモシスチス-ジロベジー(以前のニューモシスチス-カリニ)感染症

非寄生虫性感染症

アスペルギルス症,ブルセラ症,ネコひっかき熱,感染性リンパ球増加症,乳児期のクラミジア肺炎,急性コクシジオイデス真菌症,伝染性単核球症,抗酸菌性疾患,猩紅熱

腫瘍

癌および肉腫(肺,膵臓,結腸,子宮頸部,卵巣),ホジキンリンパ腫(ホジキン病),非ホジキンリンパ腫,免疫芽球性リンパ節症

骨髄増殖性疾患

慢性骨髄性白血病

好酸球増加を伴う肺浸潤症候群

単純性肺好酸球増加症(レフラー症候群),慢性好酸球性肺炎,熱帯性肺好酸球増加症,アレルギー性気管支肺アスペルギルス症,チャーグ-ストラウス症候群

皮膚障害

剥脱性皮膚炎,疱疹状皮膚炎,乾癬,天疱瘡

結合組織,脈管炎,または肉芽腫性の障害(特に肺を侵す疾患)

結節性多発動脈炎,関節リウマチ,サルコイドーシス,炎症性腸疾患,SLE,強皮症,好酸球性筋膜炎,ドレスラー症候群

免疫障害(しばしば湿疹を伴う)

移植片対宿主病,先天性免疫不全症候群(例,IgA欠損症,高IgE症候群,ヴィスコット-オールドリッチ症候群)

内分泌疾患

副腎機能低下症

その他

肝硬変,放射線療法,腹膜透析,家族性好酸球増加症,L-トリプトファンの使用

腫瘍性疾患の中でもホジキンリンパ腫(ホジキン病)は著しい好酸球増加症を引き起こすことがあるが,非ホジキンリンパ腫,慢性骨髄性白血病,急性リンパ芽球性白血病の場合,好酸球増加症はそれほど多くない。固形腫瘍の中では卵巣癌が主要な原因となっている。肺好酸球浸潤症候群(PIE症候群)は,末梢の好酸球増加と好酸球の肺浸潤を特徴とする一連の臨床症候から成るが(間質性肺疾患: 好酸球性肺疾患を参照 および組織球性症候群: ランゲルハンス 細胞組織球増加症を参照 ),通常その原因は不明である。好酸球増加性の薬物反応がみられる患者は,症状がない場合と,間質性腎炎,血清病,胆汁うっ滞性黄疸,過敏性血管炎,免疫芽球性リンパ節症を含む様々な症候群を有する場合とがある。数百人の患者が鎮静や精神作用を補助するL-トリプトファン投与後に好酸球増多-筋痛症候群を発症したことが報告されている。この症候群はおそらく,L-トリプトファンよりもむしろ汚染物質が原因であったと考えられている。症状(重度の筋肉痛,腱滑膜炎,筋浮腫,皮膚発疹)が数週間から数カ月続き,複数の死亡例もあった。

診断と治療

全血球計算が好酸球増加を示す場合に,好酸球絶対数が必要とされることはまれである。旅行,アレルギー,薬物使用に重点を置いて病歴を聴取し,身体診察を行う。特異的診断検査は臨床所見によって決定され,胸部X線,尿検査,肝および腎機能検査,寄生虫疾患や結合組織疾患に対する血清学的検査などが含まれる。虫卵や寄生虫に対する糞便検査は実施すべきであるが,陰性所見でも寄生虫による原因が除外されるわけではない(例,旋毛虫症の場合は筋肉生検を要する;臓器幼虫移行症およびフィラリア感染は他の組織生検を要する;特定の寄生虫[例,糞線虫属]を除外するには十二指腸吸引物が必要となることがある―線虫類: 糞線虫症を参照 )。血清ビタミンB12の高値,白血球アルカリホスファターゼの低値,末梢血塗抹標本上の異常から基礎疾患として骨髄増殖性疾患が示唆され,その場合は,骨髄の細胞遺伝学検査を含む骨髄穿刺と生検が役立つ。

根底にある原因が検出されない場合は,合併症を追跡する。好酸球増加症が悪性ではなく二次性(例,アレルギーまたは寄生虫侵入)である場合は,低用量コルチコステロイドを短期間試してみると,好酸球数が低下することがある。このような試みは,好酸球増加症が持続性および進行性で,かつ治療可能な原因がない場合に適応となる。

特発性好酸球増加症候群

(播種性好酸球性膠原病;好酸球性白血病;好酸球増加を伴うレフラー線維性心内膜炎)

特発性好酸球増加症候群とは,寄生虫,アレルギーなどの好酸球増加症をもたらす他の原因がなく,末梢血好酸球増加が1500/μLを超える状態が6カ月以上続き,好酸球増加症に直接関係する臓器系の異常または機能不全の症候を伴う状態と定義される。症状は無数にあり,どの臓器が機能不全であるかによって決まる。治療はプレドニゾンの投与で開始し,ヒドロキシ尿素,インターフェロンα,およびイマチニブが含まれることもある。

一部の長期にわたる好酸球増加症患者のみが,特発性好酸球増加症候群を発症する。あらゆる臓器が侵されうるが,心臓,肺,脾臓,皮膚および神経系が典型的に影響を受ける。心臓が侵されるとしばしば病的状態および死亡に至る。新たに発見された融合チロシンキナーゼFIP1L1-PDGFRが病態生理に寄与していると考えられている。

症状,徴候,診断

症状は多種多様で,どの臓器が機能不全であるかによって決まる( 好酸球性疾患: 特発性好酸球増加症候群患者にみられる異常表 2: 表参照)。臨床的な症候群は2つの大きなパターンに従う。第一のパターンは骨髄増殖性疾患で,脾腫,血小板減少,血清ビタミンB12高値,低顆粒あるいは空胞化した好酸球を伴う。このパターンを伴う患者は,しばしば心内膜心筋線維症を,または(一般的ではないが)臨床的に明白な白血病を発症する。第二のパターンは過敏反応型の疾患で,血管性浮腫,高ガンマグロブリン血症,血清IgEの上昇,血中免疫複合体を伴う。このパターンがみられる患者は,心疾患を発症する頻度は少なく,通常は治療を必要とせず,コルチコステロイドによく反応する。

表 2

特発性好酸球増加症候群患者にみられる異常

有病率

症候

全身

50%

脱力,疲労,食欲不振,発熱,体重減少,筋肉痛

心肺

>70%

咳,呼吸困難,心不全,不整脈,心内膜心筋疾患,肺浸潤,胸水,塞栓がみられる壁在血栓を伴う拘束型心筋症,浸潤性心筋症,僧帽弁逆流,三尖弁逆流

血液

>50%

血栓塞栓性の現象,貧血,血小板減少,リンパ節腫脹,脾腫

神経

>50%

行動および認識機能の変化と痙性を伴うびまん性の脳障害,末梢神経障害,局所障害を伴う脳塞栓

皮膚

>50%

皮膚描記症,血管性浮腫,発疹,そう痒

胃腸

>40%

下痢,悪心,腹部痙攣

免疫

40%

免疫グロブリンの増加(特にIgE),血清病を伴う血中免疫複合体

明らかな原因がみられず,臓器不全を示唆する症状がみられる好酸球増加症患者では,この診断が疑われる。このような患者は,二次性の好酸球増加症の原因となる障害を全て除外するために,上述の検査を行うべきである。また,心筋の病変を検出するために心エコー検査も行うべきである。全血球計算および末梢血塗抹標本は,2つの大きな疾患パターンのどちらが存在するかの特定に役立つ。これらのパターンのいずれかを伴う患者の約3分の1は,初診時に血小板減少が認められる。

予後と治療

かつて好酸球増加症候群は予後不良であり,通常の死亡原因は臓器不全であった。現在の治療法により予後は改善されている。

臓器系の機能不全が生じない限り治療の必要はない;その他の場合は患者を3〜6カ月毎に評価する。治療法はいずれも,疾患の症候が好酸球の組織浸潤または好酸球内容物の放出によってもたらされるという前提に基づき,好酸球数を減らすように設計されている。限局性の臓器系の合併症は,特異的な積極的治療を必要とすることがある(例,弁膜性心疾患の場合は弁置換を行う)。

初期治療では,臨床的な改善がみられ好酸球数が正常に戻るまで,プレドニゾン1mg/kg,経口にて1日1回投与する;プレドニゾンは2カ月以上継続しては試すべきである。寛解に達したら,次の2カ月間は投与量を0.5mg/kg,1日1回にまで徐々に減らし,その後1mg/kgの投与量で隔日療法に切りかえる。その後さらに減量を行い,疾患を制御できる最低量までゆっくり下げる。2カ月以上プレドニゾンの効果がみられない場合,プレドニゾンの投与量をより多く必要とする場合,または増悪を誘発することなく投与量を下げることができない場合は,ヒドロキシ尿素0.5〜1.5g,経口にて1日1回の投与を加える;好酸球数4000〜10,000/μLを治療目標とする。

プレドニゾンの効果がみられない患者,特に心病変を有する患者には,インターフェロンαも使用する。その投与量は,300万〜500万単位,皮下に3回/週とし,臨床効果と副作用に対する忍容性によって決定する。インターフェロンαを中止すると疾患が悪化することもある。

経口プロテインキナーゼ阻害薬であるイマチニブは有望である;3カ月間で治療患者11人中9人に,好酸球数の正常化がみられた。

心臓の症候(例,浸潤性心筋症,弁病変,心不全)には,薬物療法および外科的療法が必要となる場合もある。血栓性合併症については,抗血小板薬(例,アスピリン,クロピドグレル,チクロピジン)の使用を必要とすることがある;左室壁内血栓がある場合,またはアスピリンの使用にもかかわらず一過性脳虚血性発作が持続する場合については,抗凝固療法の適応となる。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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