メルクマニュアル18版 日本語版
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ホジキンリンパ腫(ホジキン病)

ホジキンリンパ腫は,リンパ細網系から生じた細胞の限局性または播種性の悪性増殖で,主にリンパ節組織,脾臓,肝臓,および骨髄を侵す。症状には,無痛性のリンパ節腫脹のほか,時に発熱,寝汗,意図しない体重減少,そう痒,脾腫,肝腫などがある。診断はリンパ節生検に基づいて行う。治療は症例の約75%に治癒をもたらし,化学療法および/または放射線療法から成る。

米国では,毎年新たに約7500例がホジキンリンパ腫と診断されている。男性:女性の比率は1.4:1である。ホジキンリンパ腫は10歳未満にはまれで,最も一般的にみられるのは15〜40歳である。

病因と病態生理

ホジキンリンパ腫は,B細胞由来の細胞のクローン性の転化から生じ,疾病特徴的な二核性のリード-ステルンベルグ細胞を生じさせる。原因は不明であるが,遺伝的感受性と環境的関連性(例,木細工師などの職業;フェニトイン療法や放射線療法または化学療法などの治療歴,エプスタイン-バーウイルス型結核菌,ヘルペスウイルス6型,HIV感染)が関与している。リスクは,ある種の免疫抑制状態の患者(例,免疫抑制剤を服用している移植後患者);先天性の免疫不全状態の患者(例,毛細血管拡張性運動失調症,クラインフェルター症候群,チェディアック-東症候群,ヴィスコット-オールドリッチ症候群);特定の自己免疫疾患患者(関節リウマチ,非熱帯性スプルー,シェーグレン症候群,SLE)においてわずかに増加している。

大半の患者では徐々に進行する細胞性免疫(T細胞機能)の障害もみられ,進行期に一般的な細菌,まれに真菌,ウイルス,原虫の感染を引き起こす原因となる。進行期では,液性免疫(抗体産生)が抑制される。しばしば敗血症が原因で死亡する。

症状と徴候

大半の患者が無痛性の頸部リンパ節腫脹を呈する。機序は不明であるが,アルコール性飲料を飲んだ直後に病変部位の痛みが生じることがあり,これにより早期に診断の目安が得られる。

他の症候は,疾患が細網内系を通じて,一般的には隣接部位に広がって出現する。早期に激しいそう痒が生じることもある。全身症状には,発熱,寝汗,意図しない体重減少(過去6カ月の体重の10%以上)などがあり,これらは体内部(縦隔または後腹膜)のリンパ節,内臓(肝臓),または骨髄への浸潤を意味しうる。脾腫がしばしば認められ,肝腫がみられることもある。時に,ペル-エブスタイン熱(2,3日の高熱と,数日から数週間の平熱または平熱以下の体温を規則的に交互に繰り返す)がみられる。悪液質は疾患の進行につれて多くみられる。

骨への浸潤はしばしば無症状であるが,椎骨の造骨性病変(象牙椎)や,まれに骨溶解性病変や圧迫骨折に伴う痛みが生じることもある。頭蓋内,胃,皮膚の病変はまれであり,HIV関連ホジキンリンパ腫を示唆する。

腫瘍塊による局所圧迫は,肝内または肝外胆管閉塞に続発する黄疸;骨盤や鼠径部のリンパ管閉塞に続発する下肢の浮腫;気管気管支の圧迫に続発する重度の呼吸困難や喘鳴;大葉性肺炎または気管支肺炎と類似する肺実質への浸潤に続発する肺空洞化や肺膿瘍などの症状をしばしば引き起こす。脊髄を圧迫する硬膜外浸潤によって対麻痺が引き起こされることがある。腫大したリンパ節が頸部交感神経や反回喉頭神経を圧迫すると,ホルネル症候群と喉頭麻痺が起こることがある。神経根の圧迫によって神経痛が起こる。

診断

ホジキンリンパ腫は通常,無痛性のリンパ節腫脹またはルーチンの胸部X線で検出される縦隔リンパ節腫大を有する患者において疑われる。同様のリンパ節腫脹は,伝染性単核球症,トキソプラズマ症,サイトメガロウイルス,非ホジキンリンパ腫または白血病に起因することがある。胸部X線所見が,肺癌,サルコイドーシス,または結核に類似することがある(縦隔腫瘤の評価については縦隔および胸膜の疾患: 縦隔腫瘤も参照 )。

胸部X線を撮り,体幹のCTまたはPETスキャンにて所見が確認された場合は,通常はその後リンパ節生検を行う。縦隔リンパ節のみが腫大した場合,縦隔鏡検査またはチェンバレン手技(頸部縦隔鏡検査による接近が難しい縦隔リンパ節の生検を可能にする左前に限定した縦隔切開術)が適応となる。CTガイド下の生検も考慮に入れる。一般的には,全血球計算,ESR,アルカリホスファターゼ,腎機能検査,肝機能検査を行う。その他の検査は,所見に応じて実施する(例,脊髄の圧迫症状に対してはMRI,骨痛の評価のための骨シンチグラフィー)。

生検では,組織球,リンパ球,単球,形質細胞,好酸球から成る特徴的な細胞浸潤の中にリード-ステルンベルグ細胞(大きな二核細胞)が明らかになる。古典的ホジキンリンパ腫には4つの組織病理学的亜型があり( リンパ腫: ホジキンリンパ腫の組織病理学的亜型(WHO分類)表 2: 表参照),リンパ球優位型もある。リード-ステルンベルグ細胞の特定の抗原は,ホジキンリンパ腫をNHLと区別するのに役立ち,また古典的ホジキンリンパ腫をリンパ球優位型と区別するのにも役立つ。

表 2

ホジキンリンパ腫の組織病理学的亜型(WHO分類)

組織型

形態学的外観

腫瘍性細胞の免疫表現型

罹患率

古典的

     

結節硬化型

ホジキン組織の小結節の周囲に密集した線維組織*

CD15+,CD30+,CD20

67%

混合細胞型

背景の多様な細胞浸潤に混在する中程度の数のリード-ステルンベルグ細胞

CD15+,CD30+,CD20

25%

リンパ球豊富型

少数のリード-ステルンベルグ細胞,多数のB細胞,微細な硬化

CD15+,CD30+,CD20

3%

リンパ球減少型

多数のリード-ステルンベルグ細胞と広範囲の線維症

CD15+,CD30+,CD20

まれ

結節性リンパ球優位型

 

少数の腫瘍性細胞(L&H細胞),多数の小さなB細胞,結節型

CD15,CD30,CD20+,EMA+

3%

*偏光により特徴的な複屈折を示す。

他の検査結果で異常がみられることもあるが,診断の決め手とはならない。全血球計算が軽度の多形核白血球増加を示すこともある。リンパ球減少は早期に起こり,病気が進行するにつれて顕著になる。好酸球増加が患者の約20%にみられ,血小板増加が認められることがある。貧血はしばしば小球性であり,通常は病気の進行とともに出現する。進行期の貧血では鉄再利用障害がみられ,血清鉄低値と低鉄結合能および骨髄鉄の増加によって特徴づけられる。汎血球減少症が時に骨髄浸潤の結果として生じるが,通常はリンパ球減少型によって生じる。脾機能亢進症(脾臓の疾患: 脾機能亢進症を参照 )は,顕著な脾腫を有する患者にみられることがある。血清アルカリホスファターゼ値の上昇が認められることがあるが,必ずしもこれが骨髄または肝臓,あるいはその両方への浸潤を示すとは限らない。白血球アルカリホスファターゼ,血清ハプトグロビン,ESR,その他の急性期反応物質の増加は,通常,疾患が活動性であることを示す。

病期分類: 診断後,病期を決定し,治療方針を立てる。一般的に利用されているAnn Arbor分類( リンパ腫: ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫のAnn Arbor分類のコッツウォールド修正版表 3: 表参照)には,症状,身体診察所見のほか,胸部,腹部,骨盤のCTを含む画像診断の結果,片側の骨髄生検などが組み入れられている。開腹術は病期分類には不要である。その他の病期分類のための検査には,治療法を見越してのPETスキャンや心肺機能検査などがある。

表 3

ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫のAnn Arbor分類のコッツウォールド修正版

病期*

基準

Ⅰ期

リンパ節領域1個所のみ

Ⅱ期

横隔膜の同じ側の2個所以上のリンパ節領域

Ⅲ期

横隔膜の両側のリンパ節,脾臓,またはその両方

Ⅳ期

リンパ節外の浸潤(例,骨髄,肺,肝臓)

*下位分類Eは,侵されたリンパ節に近接しているリンパ節外領域が侵されていることを示す(例,近接の肺浸潤を伴う縦隔リンパ節および肺門部リンパ節腫大の疾患はⅡE期に分類される)。病期はさらに,全身症状(体重減少,発熱,または寝汗)がないことを示すAと,あることを示すBとに分類される。全身症状は一般的にⅢ期とⅣ期で生じ(患者の20〜30%),末尾のXは,巨大病変が最長部分で10cmを超えるか,または胸部X線上で胸部の直径の3分の1を超えることを示すために用いられる。

いずれの病期でも,Aと明示されている場合は,全身症状の経験がないことを意味する。Bと表示されている場合は,全身症状を少なくとも1回は経験していることを意味する。症状の存在は,治療への反応と相関する。

予後と治療

ホジキンリンパ腫の場合,治療後の5年無病生存は治癒とみなされ,5年以降の再発は非常にまれである。放射線療法を伴うまたは伴わない化学療法では,新たに診断された患者の75%以上が治癒を得ている。治療法の選択は複雑で,疾患の正確な病期で決まる。

ⅠA期,ⅡA期,ⅠB期またはⅡB期の疾患は一般に,化学療法と放射線療法を併用して治療する。このような治療で患者の約80%が治癒する。巨大な縦隔病変をもつ患者に対しては,放射線療法を行う前に,より長期のまたは別の型の化学療法を用いる。

ⅢA期の疾患は一般的に,巨大なリンパ節病変部位への放射線療法を伴うまたは伴わない多剤併用化学療法で治療される。75〜80%の治癒率が達成されている。

ⅢB期の疾患は放射線療法単独では治癒しないため,多剤併用化学療法単独か,または時として放射線療法と併用しての治療が求められる。生存率は70〜80%である。

ⅣA期およびⅣB期の疾患の場合は,ABVD(ドキソルビシン[アドリアマイシン],ブレオマイシン,ビンブラスチン,ダカルバジン)を含む多剤併用化学療法が標準レジメンとなっており,患者の70〜80%は完全寛解に達し,50%以上が10〜15年の無病期間を維持している。MOPP(メクロレタミン,ビンクリスチン[オンコビン],プロカルバジン,プレドニゾン)は,二次性白血病を含む副作用のために,現在では使用されていない。他の有効薬物には,ニトロソウレア,イホスファミド,シスプラチンまたはカルボプラチン,およびエトポシドなどがある。有望な新しい併用療法であるスタンフォードVは,12週レジメンである。完全寛解に達しない患者や,12カ月以内に再発する患者は予後が悪い。

末梢血幹細胞を使った自家移植を考慮すべき患者は,サルベージ化学療法に反応する再発性/難治性ホジキンリンパ腫を有する全ての適格患者である。

治療後の監視スケジュールは リンパ腫: ホジキンリンパ腫の治療後の監視表 4: 表を参照。

表 4

ホジキンリンパ腫の治療後の監視

評価

スケジュール

病歴および身体診察,全血球計算,血小板,ESR,化学プロファイル

最初の2年は3〜4カ月毎

3〜5年目は6カ月毎

>5年,12カ月毎

胸部CTが得られない場合は,診察の都度,胸部X線

最初の2年は3カ月毎

3〜5年目は6カ月毎

>5年,年1回

胸部CT

最初の2年は6〜8カ月毎

3〜5年目は年1回

>5年,胸部X線による異常発見時

腹部および骨盤CT

Ⅰ期およびⅡ期:最初の5年間は年1回

その他の病期:最初の2年は6カ月毎,3〜5年目は年1回

甲状腺刺激ホルモン濃度

頸部への照射後6カ月毎

7年目以降はマンモグラムを年1回

横隔膜より上部への放射線の開始年齢が30歳未満の場合

37歳以降はマンモグラムを年1回

横隔膜より上部への放射線の開始年齢が30歳以降の場合

治療による合併症: MOPPのようなレジメンによる化学療法は,一般に3年を過ぎて発現する白血病のリスクを増大させる。化学療法および放射線療法はともに悪性固形腫瘍(例,乳房,消化管,肺,軟部組織)のリスクを増大させる。縦隔放射線は冠動脈アテローム硬化のリスクを増大させる。女性の乳癌リスクが増大するのは,隣接リンパ節領域に対する放射線治療を受けてから約7年後以降である。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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