メルクマニュアル18版 日本語版
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はじめに(異常蛋白血症;単クローン性ガンマグロブリン血症;パラプロテイン血症;形質細胞異形成)

形質細胞疾患は,B細胞の1つのクローンの不均衡な増殖と,構造的かつ電気泳動的に均質な(単クローン性の)免疫グロブリンあるいはポリぺプチドのサブユニットが血清中または尿中に存在することを特徴とする,病因不明の多種多様な障害の集まりである。

病態生理

(免疫グロブリンの構造的特徴と分類については免疫系の生物学: 抗体を参照 。)

未分化B細胞は,骨髄内で発生後,リンパ節,脾臓,腸,およびパイエル板などの末梢リンパ組織に入る。そこで限られた抗原に反応できる細胞に分化する。適当な抗原と出合った後,一部のB細胞はクローン性増殖を経て形質細胞となる。各形質細胞クローン系は,1つのH鎖(ガンマ[γ],ミュー[μ],アルファ[α],デルタ[δ],またはイプシロン[ε])と1つのL鎖(カッパー[κ]またはラムダ[λ])から成る1つの特異的な免疫グロブリン抗体を合成する。L鎖のわずかな過剰は正常でも生じるので,少量の多クローン性のL鎖の尿中排泄(40mg/24時間以下)は正常である。

形質細胞疾患は病因不明の疾患で,1つのクローンの不均衡な増殖によって特徴づけられる。結果として,その産物である単クローン性免疫グロブリン蛋白(M蛋白)の血清レベルに相応した増加がみられる。

M蛋白は,H鎖およびL鎖双方か,またはどちらか1つの型の鎖のみから成る。一部は抗体活性を示し,臓器,特に腎臓の自己免疫損傷をもたらす。M蛋白が産生される際,他の免疫グロブリンの産生は一般的に低下し,免疫性が損なわれることもある。M蛋白は血小板を覆い,凝固因子を不活化し,血液粘稠度を上昇させ,他の機序により出血を引き起こす。M蛋白はまた続発性アミロイドーシスも引き起こす。クローン細胞が骨基質または骨髄に浸潤し,その結果として骨粗鬆症,高カルシウム血症,貧血,汎血球減少症を来すことがある。

形質細胞疾患は,無症状で安定した状態(蛋白の存在だけがみられる)から進行性の腫瘍(例,多発性骨髄腫)まで多様である。まれに一過性の形質細胞疾患が薬物過敏症(スルホンアミド,フェニトインおよびペニシリン)の患者,ウイルスに感染したと思われる患者,および心臓の手術を受けた患者に生じる。形質細胞疾患の分類は 形質細胞疾患: 形質細胞疾患の分類表 1: 表に示してある。

表 1

形質細胞疾患の分類

カテゴリー

症状

障害

コメントおよび例

意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症

無症状,通常は非進行性

非リンパ網内系腫瘍と関連

特に,前立腺癌,腎癌,消化管癌,乳癌,胆道癌

   

慢性炎症性疾患および慢性感染性疾患と関連

慢性胆嚢炎,骨髄炎,結核,腎盂腎炎,関節リウマチ

   

その他様々な障害と関連

粘液水腫性苔癬,肝疾患,甲状腺中毒症,悪性貧血,重症筋無力症,ゴーシェ病,家族性高コレステロール血症,カポジ肉腫

     

見かけ上健康な人々に生じる;年齢関連性の発生

悪性形質細胞疾患

症候性,進行性

マクログロブリン血症

IgM

   

多発性骨髄腫

最も多くみられるのはIgG,IgA,またはL鎖(ベンス-ジョーンズ)のみ

   

非遺伝性原発性全身性アミロイドーシス

通常はL鎖(ベンス-ジョーンズ)のみだが,時に正常な免疫グロブリン分子(IgG,IgA,IgM,IgD)

   

H鎖病

IgG H鎖(γ鎖)病(時に良性)

IgA H鎖(α鎖)病

IgM H鎖(μ鎖)病

IgD H鎖(δ鎖)病

一過性形質細胞疾患

   

薬物過敏症,ウイルス感染,および心臓手術と関連

形質細胞疾患は,(しばしば貧血の評価中に)臨床症候に基づいて,または血清蛋白もしくは蛋白尿の上昇の偶発的な発見によって疑われることがあり,さらにM蛋白を明らかにする血清または尿蛋白の電気泳動にて評価することとなる。M蛋白はさらに,H鎖とL鎖のタイプを同定するため免疫固定電気泳動にて評価される。臨床検査評価を以下に記す。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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