下垂体病変

執筆者:John D. Carmichael, MD, Keck School of Medicine of the University of Southern California
レビュー/改訂 2021年 3月
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    視床下部-下垂体病変のある患者では一般に,以下のうちいくつかを認める:

    • 腫瘤性病変の症状および徴候:頭痛,食欲の変化,口渇,視野欠損―特に両耳側半盲またはhemifield slide現象(像と像が離れていく)

    • 画像上で腫瘤性病変が偶発的に発見される

    • 1つまたは複数の下垂体ホルモンの分泌亢進または分泌低下

    下垂体の分泌低下または分泌過剰の最も頻度の高い原因は,下垂体または視床下部の腫瘍である。下垂体腫瘍は鞍(トルコ鞍)を拡大させる傾向がある。また,トルコ鞍拡大はトルコ鞍空洞症候群を反映している可能性がある。

    (下垂体の構造および機能,ならびに視床下部と下垂体との関連については内分泌系の概要で考察されている。)

    トルコ鞍空洞症候群(empty sella症候群)

    この疾患では,トルコ鞍が髄液で満たされ,それにより下垂体がトルコ鞍の壁に押し付けられて偏平になるため,トルコ鞍が空洞に見える。この症候群には以下の種類がある:

    • 先天性

    • 原発性

    • 損傷(例,分娩後の虚血,外科手術,頭部外傷,放射線療法)に続発するもの

    典型的な患者の特徴は,女性(> 80%),肥満(約75%),および高血圧(30%)であり,特発性頭蓋内圧亢進(10%)または髄液鼻漏(10%)を呈することもある。

    トルコ鞍空洞症候群患者の下垂体機能は正常であることが多い。しかし,下垂体機能低下症が生じることもあり,頭痛および視野欠損が生じることもある。ときに患者に成長ホルモン(GH),プロラクチン,または副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を分泌する小さい下垂体腫瘍が併存する。

    診断はCTまたはMRIで確定しうる。

    トルコ鞍が空洞に見えるのみであれば,特に治療は不要である。

    前葉病変

    下垂体前葉ホルモンの分泌過剰(下垂体機能亢進症)はほぼ常に選択的であるが,ときに,腫瘍により成長ホルモンとプロラクチンの両方が過剰分泌される。過剰分泌が最もよくみられる下垂体前葉ホルモンには,GH(先端巨大症巨人症における),プロラクチン(乳汁漏出症における),およびACTH(クッシング病を引き起こす)がある。

    下垂体前葉ホルモンの分泌低下下垂体機能低下症)では,下垂体ホルモンが全般的に欠乏していることもあれば(通常は下垂体腫瘍によるが,特発性のこともある),1種ないし数種のホルモンが選択的に欠乏していることもある。

    後葉病変

    下垂体後葉ホルモンには以下の2種類がある:

    • オキシトシン

    • バソプレシン(抗利尿ホルモン[ADH])

    女性では,オキシトシンは乳腺筋上皮細胞および子宮筋細胞の収縮を引き起こす。オキシトシンは男性にも存在するが,証明された機能はない。

    バソプレシンの欠乏は中枢性尿崩症をもたらす。バソプレシンの分泌過剰はADH不適合分泌症候群(SIADH)をもたらす。

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