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非機能性副腎腫瘤

執筆者:

Ashley B. Grossman

, MD, University of Oxford; Fellow, Green-Templeton College

レビュー/改訂 2020年 9月
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非機能性副腎腫瘤はホルモン活性をもたない副腎の占拠性病変である。症状,徴候,および治療は腫瘤の性質および大きさによって異なる。

成人で最もよくみられる非機能性副腎腫瘤は腺腫であり(50%),癌腫と転移性腫瘍がこれに続く。嚢胞および脂肪腫が残りの大半を占める。しかし,正確な比率は臨床症状に依存する。スクリーニングで偶然発見される腫瘤は通常腺腫である。あまり一般的ではないが,新生児では特発性副腎出血により大型の副腎腫瘤が生じ, 神経芽腫 神経芽腫 神経芽腫は,副腎から,またはより頻度は低いが後腹膜,胸部,頸部を含む副腎外の交感神経鎖から発生するがんである。診断は生検により確定される。治療には外科的切除,化学療法,放射線療法,造血幹細胞移植併用大量化学療法,シス-レチノイン酸投与,免疫療法などがある。 神経芽腫は, 乳児のがんとして最も多くみられるものである。神経芽腫のほぼ90%が5歳未満の小児に発生する。神経芽腫のほとんどは自然発生的に生じるが,1~2%は遺伝性とみられる。一部の... さらに読む または ウィルムス腫瘍 ウィルムス腫瘍 ウィルムス腫瘍とは,腎芽,間質,上皮の各成分で構成される腎臓の胎児性がんである。遺伝子異常が発生機序に関与するとみられているが,家系内の遺伝は症例のわずか1~2%を占めるに過ぎない。診断は超音波検査,腹部CT,またはMRIにより行われる。治療には外科的切除,化学療法,放射線療法が含まれる。 ウィルムス腫瘍は通常5歳未満の小児にみられるが,ときにより年長の小児にも,まれに成人にも発生する。ウィルムス腫瘍は,15歳未満の... さらに読む に類似することがある。成人では,両側性の大量副腎出血は血栓塞栓性疾患または凝固障害に起因する場合がある(疾患関連か薬剤関連かは問わない)。

良性の嚢胞は高齢患者にみられ,嚢胞性変性または血管イベントによる可能性がある。リンパ腫,細菌感染症,真菌感染症(例, ヒストプラズマ症 ヒストプラズマ症 ヒストプラズマ症は,Histoplasma capsulatumにより引き起こされる肺および播種性感染症であり,しばしば慢性に経過し,無症状の初感染に続いて発症するのが通常である。症状は,肺炎症状または非特異的慢性疾患症状である。診断は,喀痰中もしくは組織中の菌の同定,または特異的な血清および尿中抗原検査による。治療が必要な場合は,アムホテリシンBまたはアゾール系薬剤を使用する。... さらに読む ヒストプラズマ症 ),または寄生虫感染症(例,エキノコックス[Echinococcus]による)も副腎腫瘤として現れることがあり,ときに両側にみられる。結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の血行性散布が副腎腫瘤をもたらすこともある。非機能性副腎癌では後腹膜腔にびまん性浸潤性の隆起が生じる。出血が生じて副腎血腫を引き起こす場合がある。

非機能性副腎腫瘤の症状と徴候

非機能性副腎腫瘤の診断

  • 副腎ホルモンの測定

  • 穿刺生検

非機能性副腎腫瘤は通常他の理由で行われたCTまたはMRIなどの検査中に偶然発見される。非機能性であることは臨床的に確定され,副腎ホルモン測定によって確認される。 (ACRによる副腎偶発腫瘍への適切な対応基準[ACR Appropriateness Criteria on Incidentally Discovered Adrenal Mass]およびAACEおよびAAESによる副腎偶発腫瘍の管理ガイドライン[AACE and AAES Medical Guidelines for the Management of Adrenal Incidentalomas]も参照のこと。)

スクリーニングでの副腎ホルモンの測定項目には,デキサメタゾン抑制試験および血清コルチゾール(クッシング症候群 クッシング症候群 クッシング症候群は,血中のコルチゾールまたは関連するコルチコステロイドの慢性高値によって引き起こされる一群の臨床的な異常である。クッシング病は下垂体の副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)過剰産生に起因するクッシング症候群であり,通常は下垂体腺腫に続発する。典型的な症状および徴候には,満月様顔貌および中心性肥満,紫斑ができやすい,ならびにやせた四肢などがある。診断はコルチコステロイド使用歴または血清コルチゾールの上昇および/または比較的自律的... さらに読む クッシング症候群 を除外するため),24時間尿中または血漿中メタネフリン分画(褐色細胞腫 褐色細胞腫 褐色細胞腫は,典型的には副腎に局在する,クロム親和性細胞から成るカテコールアミン産生腫瘍である。持続性または発作性の高血圧を引き起こす。診断は,血中または尿中のカテコールアミン産物の測定による。画像検査,特にCTまたはMRIは腫瘍の局在同定に役立つ。治療は,可能であれば腫瘍の切除による。血圧調節のための薬物療法にはα遮断薬が使用され,通常はβ遮断薬と併用される。 ( 副腎機能の概要も参照のこと。)... さらに読む を除外するため)ならびに血漿アルドステロンおよびレニン(原発性アルドステロン症 原発性アルドステロン症 原発性アルドステロン症は,副腎皮質の自律的なアルドステロン産生(過形成,腺腫,または癌腫による)により引き起こされるアルドステロン症である。症状および徴候には,発作性の筋力低下,血圧上昇,および低カリウム血症がある。診断の際には血漿アルドステロン値および血漿レニン活性の測定などを行う。治療は原因により異なる。腫瘍は可能であれば切除する;過形成では,スピロノラクトンまたは関連する薬物により血圧が正常化し,他の臨床症状が消失する場合がある。... さらに読む を除外するため)などがある。

転移性または感染性疾患の可能性がある場合,穿刺生検が診断に役立つことがあるが,副腎癌(腫瘍の播種を避けるため)または褐色細胞腫(急性高血圧の誘発を避けるため)の疑いがある場合は禁忌である。

非機能性副腎腫瘤の治療

  • 大きさおよび/または画像検査の結果に応じて,ときに切除

  • 定期的なモニタリング

新規の画像検査法(例,MRIのin-phase像とout-of-phase像)が診断に役立つ可能性があるが,腫瘍が充実性で副腎由来,かつ4cmを超える場合は,画像検査で明らかに良性の特徴を認める場合を除き,通常は切除すべきである。

直径2~4cmの腫瘍は,特に臨床判断の難しい問題である。画像検査の結果からがんが示唆されず,かつホルモン機能が変化していないようであれば(例,電解質およびメタネフリンが正常で,クッシング症候群の所見がない),通常は1~2年間にわたって定期的に画像検査による再評価を行うのが妥当である。進行が認められなければ,それ以上のフォローアップは不要である。しかし,これらの腫瘍の多くは,分泌するコルチゾールの量が少ないため症状を引き起こすには至らず,治療されなかった場合にやがて症状や疾患を引き起こすかどうかは不明である。大半の臨床医は,このような腫瘍のある患者を経過観察のみとするが,コルチゾールの著明な分泌がみられる場合は,腫瘍の切除を考慮すべきである。

2cm未満の副腎腺腫は特別な治療を必要としないが,増殖や分泌能の発現がないか観察を行うべきである(例えば,臨床徴候の検索や定期的な電解質測定など)。

転移した非機能性副腎癌は手術には適さないが,ミトタンとコルチコステロイドの併用が高コルチゾール血症の症状の管理に役立つ可能性がある。

非機能性副腎腫瘤についてのより詳細な情報

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