メルクマニュアル18版 日本語版
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はじめに

ポルフィリン症はヘム生合成経路の遺伝的酵素欠損に起因する。これらの欠損はヘム前駆体を蓄積させ,毒性をもたらす。ポルフィリン症は特異的な酵素欠損に従って される。2つの主要な臨床症状が生じる:内臓神経異常(一般に急性ポルフィリン症)および皮膚光線過敏症(一般に皮膚ポルフィリン症)。

鉄含有色素であるヘムは,大部分が(赤芽球および網赤血球によって)骨髄で合成されてヘモグロビンに組み込まれる。ヘムは肝臓でも合成されて,ある種の酵素(例,チトクロム)に組み込まれる。ヘム合成には8種の酵素を要する(ポルフィリン症: ヘム生合成経路の基質および酵素,ならびにそれらの欠損に関連する疾患表 1: 表を参照)。これらの酵素はポルフィリンと呼ばれる分子群を産生,変換するが,ポルフィリンは蓄積すると毒性を生じる。

表 1

PDF ヘム生合成経路の基質および酵素,ならびにそれらの欠損に関連する疾患

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病因と病態生理

ポルフィリン症はヘム生合成経路の後側7種の酵素のいずれかの欠損に起因する(経路の1番目の酵素,δアミノレブリン酸[ALA]合成酵素の欠損は鉄芽球性貧血を引き起こす)。単一の遺伝子が各酵素をコードする;無数の突然変異の可能性があり,いずれの変異もその遺伝子によってエンコードされる酵素の機能を喪失させうる。ヘム合成酵素に欠損または欠陥が生じると,正常ではその酵素によって修飾される基質および他のヘム前駆体が骨髄,肝臓,皮膚,または他の組織に蓄積して毒性を示すことがある。これらの前駆体が血中に過剰に出現し,尿,胆汁,または糞便に排泄される。

大半のポルフィリン症は常染色体優性である。ホモ接合状態はしばしば生存に不適合であり,一般に胎児死亡をもたらす;例外はALA脱水酵素(ALAD)欠損性ポルフィリン症およびウロポルフィリノーゲンⅢ合成酵素欠損症であり,ホモ接合状態または二重ヘテロ接合状態(すなわち,別々のヘテロ接合体の突然変異が2カ所,同一患者の同一遺伝子に生じた状態)のみで疾患が生じる。ヘテロ接合体の疾患浸透率は多様である。

欠損している酵素に基づけばポルフィリン症は最も正確に定義されるが,主要臨床特徴(表現型)による分類がしばしば有用となる。したがって,ポルフィリン症は一般に2種に分類される:急性ポルフィリン症と皮膚ポルフィリン症である。急性ポルフィリン症は,腹部症状,精神症状,および神経症状の間欠的な発作として生じる。発作は典型的には薬物やその他の外因性因子によって誘発される。皮膚ポルフィリン症では,皮膚光線過敏症を含む症状が持続的または波状に生じる傾向がある。一部の急性ポルフィリン症でも皮膚症状がみられる。

遺伝的有病率という点でいえば,一般的なポルフィリン症2種は急性間欠性ポルフィリン症(AIP)および晩発性皮膚ポルフィリン症(PCT)である。それぞれの有病率はおよそ1万人に1人である;ポルフィリン症: 一般的な2種のポルフィリン症の主な特徴表 2: 表で主要な特徴を対比させている。ヘテロ接合のポルフィリン症では浸透率が多様であることから,臨床的に発現する疾患は遺伝的有病率と比較して頻度が低い。

表 2

一般的な2種のポルフィリン症の主な特徴

ポルフィリン症

発生する症状

増悪因子

最も重要なスクリーニング検査*

治療

急性間欠性ポルフィリン症

内臓神経症状(間欠性,急性)

薬物(大部分はP-450誘導物質);絶食;アルコール摂取;感染;ストレス

尿中ポルホビリノーゲン

ブドウ糖;ヘム

晩発性皮膚ポルフィリン症

水泡様皮膚病変(慢性)

鉄;アルコール;エストロゲン;C型肝炎ウイルス;ハロゲン化炭化水素

血漿中(または尿中)ポルフィリン

瀉血;低用量クロロキン

*症候期。

造血性プロトポルフィリン症(EPP)およびALAD欠損性ポルフィリン症を除く全てのポルフィリン症の症候期には,尿の変色(赤色または赤褐色)が生じうる。変色はポルフィリンおよび/またはポルフィリン前駆体であるポルホビリノーゲン(PBG)の酸化に起因する。尿を約30分間光に当てて酸化の時間をとった後にも,ときに着色がみられる。ALAD欠損性ポルフィリン症を除く急性ポルフィリン症患者のうち,ヘテロ接合患者の約3名に1名(男性よりも女性で頻度が高い)では潜伏期にも尿中PBG排泄が増加(および尿が変色)している。

診断

ポルフィリン症を示唆する症状を呈する患者では,血液検査または尿検査でポルフィリンおよびポルフィリン前駆体のPBGやALAのスクリーニングを実施する(ポルフィリン症: ポルフィリン症のスクリーニング表 3: 表を参照)。スクリーニングの結果が異常であれば,さらなる検査で確認を行う。

表 3

ポルフィリン症のスクリーニング

ポルフィリン症を示唆する症状

検査

急性内臓神経症状

光線過敏症

スクリーニング検査

尿中PBG(半定量的,随時尿)

血漿中ポルフィリン*

確定検査

(スクリーニング検査が著明な異常を呈するとき)

尿中ALAおよびPBG†(定量的‡)

便中ポルフィリン

赤血球PBG脱アミノ酵素

血漿中ポルフィリン*

赤血球中ポルフィリン

尿中ALA,PBG,およびポルフィリン(定量的)

便中ポルフィリン†

血漿中ポルフィリン

PBG =ポルホビリノーゲン; ALA= δアミノレブリン酸。

*望ましい方法は直接蛍光分光測光法である。

†尿中および便中のポルフィリンは総量が増加した場合のみ分画する。

‡尿中クレアチニン濃度に従って結果を補正。

キャリアであることが疑われる者や発作間欠期にある者を含む無症候性患者も同様に評価する。しかし,前述の検査はこれらの状況では感度が下がる;赤血球または白血球の酵素活性測定は大幅に感度が高い。遺伝子解析はきわめて正確で,突然変異が既知のときには家系内で優先的に使用される;出生前検査(羊水穿刺または絨毛膜生検を含む)は可能であるが,適応となることはまれである。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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