メルクマニュアル18版 日本語版
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低ナトリウム血症

低ナトリウム血症とは,血漿ナトリウム濃度が136mEq/L未満に低下することで,溶質に対する水分の過剰が原因となる。一般的な原因は,利尿薬の使用,下痢,心不全,腎疾患である。特に急性低ナトリウム血症では,臨床症状は主として神経学的なものであり(浸透圧によって水分が細胞内に移動することが原因),頭痛,錯乱,昏迷のほか,発作や昏睡が生じることもある。診断は血漿ナトリウム濃度の測定によって行い,血漿および尿の電解質や浸透圧が原因の解明に有用である。治療としては,水分摂取制限,水分排出促進,欠乏しているナトリウムの補充,および原因の治療などを行う。

病因と病態生理

低ナトリウム血症は,体内の総ナトリウム量に対して体内総水分量(TBW)が過剰であることを反映している。ECF量の状態が体内の総ナトリウム量を反映するので,低ナトリウム血症では体液の状態も考慮しなければならない:これは,循環血液量が減少しているのか,正常であるのか,過剰であるのかということである( 水分と電解質代謝: 低ナトリウム血症の主要原因表 3: 表を参照)。

表 3

低ナトリウム血症の主要原因

循環血液量減少を伴う低ナトリウム血症(TBWおよびナトリウムは減少;相対的にはナトリウムの減少の方が大きい)

腎外性喪失

消化管:嘔吐,下痢

サードスペースへの喪失:膵炎,腹膜炎,小腸閉塞,横紋筋融解症,熱傷

腎性喪失

利尿薬

ミネラルコルチコイド欠乏症

浸透圧利尿(ブドウ糖,尿素,マンニトール)

塩類喪失性腎症

循環血液量が正常の低ナトリウム血症(TBWは増加;体内の総ナトリウム量はほぼ正常)

利尿薬

グルココルチコイド欠乏症

甲状腺機能低下症

原発性多飲症

ADHの放出を増加させる状態(術後のオピオイド類投与,疼痛,情動ストレス)

ADH分泌異常症候群

循環血液量過剰を伴う低ナトリウム血症(体内総ナトリウム量の増加;相対的にTBWの増加の方が大きい)

腎臓以外の障害

肝硬変

心不全

腎臓の障害

急性腎不全

慢性腎不全

ネフローゼ症候群

TBW=体内総水分量。

循環血流量減少性低ナトリウム血症: TBWおよび体内の総ナトリウム量の欠乏がいずれも存在するが,水分よりもナトリウムの方が比例的に多く失われている;ナトリウム欠乏は循環血液量の減少をもたらす。遷延性嘔吐,重度の下痢,またはサードスペースへの体液の隔絶( 水分と電解質代謝: 喪失した体液の組成表 4: 表を参照)などでみられるナトリウム含有液の喪失に伴って生じるような水分喪失が,自由水の摂取で補充されたり低張液静注療法で治療されたりしたときに低ナトリウム血症が生じうる。大量のECF喪失もADHの放出を引き起こし,腎臓による水分貯留が生じて低ナトリウム血症が持続または悪化する場合がある。体液量喪失に対する正常な腎臓の反応はナトリウム保持なので,循環血液量減少の原因が腎臓以外にあれば尿中ナトリウム濃度は典型的には10mEq/L未満となる。

表 4

喪失した体液の組成

(mEq/L)

体液

ナトリウム

カリウム

塩素

胃液

20-80

5-20

100-150

膵液

120-140

5-15

90-120

小腸液

100-140

5-15

90-130

胆汁

120-140

5-15

80-120

回腸瘻液

45-135

3-15

20-115

下痢

10-90

10-80

10-110

発汗

10-30

3-10

10-35

熱傷

140

5

110

From: http://www.vnh.org/Pediatric

Emergency Manual/Electrolyte.html

循環血流量減少性低ナトリウム血症につながる腎性の体液喪失が,ミネラルコルチコイド欠乏症,利尿療法,浸透圧利尿,または塩類喪失性腎症とともに生じることがある。塩類喪失性腎症には,腎尿細管機能低下を主とする内因性腎疾患と大まかに定義される1群が包括される。この疾患群は,間質性腎炎,髄質嚢胞性疾患,尿路部分閉塞や,ときに多発性嚢胞腎を含む。循環血流量減少性低ナトリウム血症の腎性の原因は,通常は腎外性の原因と病歴によって鑑別できる。腎性の体液喪失が進行中の患者も,不適切に高い尿中ナトリウム濃度(>20mEq/L)によって腎外性の体液喪失患者と鑑別できる。(遷延性嘔吐に伴って生じるような)代謝性アルカローシスでは例外が生じ,大量のHCO3が尿中に流出し,電気的中性を維持するために強制的にナトリウムが排泄される。代謝性アルカローシスでは,体液量喪失の原因が腎性か腎外性かは尿中塩素濃度によってしばしば鑑別できる(酸-塩基の調節と障害: 代謝性アルカローシスを参照 )。

利尿薬も循環血流量減少性低ナトリウム血症をもたらすことがある。サイアザイド系利尿薬は特に,ナトリウム排泄量を増加させると同時に腎臓の希釈能に影響を及ぼす。一旦体液が喪失すると,非浸透圧性のADH放出によって水分貯留が生じ,低ナトリウム血症が悪化する。随伴する低カリウム血症はナトリウムを細胞内に移動させてADH放出を増加させ,その結果として低ナトリウム血症が悪化する。サイアザイド系利尿薬のこの作用は,投薬中止後も最大2週間持続する可能性がある;しかし,不足したカリウムや体液を補充するとともに薬物の作用が消失するまで水分摂取を制限すれば,低ナトリウム血症は通常それに反応する。高齢者は特にサイアザイド系利尿薬誘発性の低ナトリウム血症を起こしやすく,とりわけ腎臓の水分排泄に以前から欠陥がある場合にこれはいえる。まれに,このような患者がサイアザイド系利尿薬の開始から数週間以内に生命を脅かす重度低ナトリウム血症を来すことがあるが,これは過度のナトリウム排泄増加および基礎にある尿希釈能障害による。ループ利尿薬が低ナトリウム血症を引き起こすことははるかに少ない。

循環血液量が正常な低ナトリウム血症: 循環血液量が正常な低ナトリウム血症では,体内の総ナトリウム量,ひいてはECF量も正常であるが,TBWは増加している。水分摂取が腎臓の水分排泄能を上回ったときにのみ,原発性多飲症は低ナトリウム血症を引き起こしうる。正常な腎臓は1日に最大25Lの尿を排泄できるので,多飲症を原因とする低ナトリウム血症は専ら大量の水分摂取または腎希釈能の欠陥のみに起因する。これが生じる患者は精神病患者,またはより軽度の多飲症に加えて腎不全を有する患者である。希釈性低ナトリウム血症は,アジソン病,粘液水腫,または非浸透圧性ADH分泌(例,ストレス,術後,クロルプロパミドまたはトルブタミド,オピオイド類,バルビツール類,ビンクリスチン,クロフィブラート,カルバマゼピンなどの薬物の使用)の存在下でのナトリウム保持を伴わない過剰な水分摂取に起因することもある。術後の低ナトリウム血症は,非浸透圧性ADH放出および術後の低張液過剰投与が組み合わさって生じる。ある種の薬物(例,シクロホスファミド,NSAID,クロルプロパミド)は腎臓に対する内因性ADHの作用を増強するが,腎臓にADH様の作用を直接及ぼす薬物(例,オキシトシン)もある。水分排泄不足がこれら全ての状態において一般的にみられる。

ADH分泌異常症候群(SIADH)の原因はADHの過剰放出にある。SIADHは,低血漿浸透圧(低ナトリウム血症)の存在下で尿が最大に希釈されず,体液の喪失または過剰,情動ストレス,疼痛,利尿薬またはADH分泌を刺激する他の薬物の使用がみられず,心臓,肝臓,腎臓,副腎,および甲状腺の機能が正常な場合と定義される。SIADHは無数の障害と関連している( 水分と電解質代謝: 抗利尿ホルモン分泌異常症候群の原因表 5: 表を参照)。

表 5

抗利尿ホルモン分泌異常症候群の原因

悪性腫瘍

CNS

十二指腸

リンパ腫

膵臓

肺疾患

アスペルギルス症

肺膿瘍

肺炎

陽圧呼吸

結核

CNS障害

急性間欠性ポルフィリン症

急性精神病

脳膿瘍

脳炎

ギラン-バレー症候群

頭部外傷

髄膜炎

脳卒中

硬膜下出血またはクモ膜下出血

内分泌疾患

アジソン病

下垂体機能低下症

甲状腺機能低下症

その他の原因

蛋白-エネルギー栄養障害

手術

循環血液量増加性低ナトリウム血症: 循環血液量増加性低ナトリウム血症は体内の総ナトリウム量(したがってECF量)およびTBWの両方の増加を特徴とし,相対的にはTBWの増加の方が大きい。心不全や肝硬変を含む様々な浮腫性疾患が循環血液量増加性低ナトリウム血症を引き起こす。まれに,ネフローゼ症候群で低ナトリウム血症がみられるが,脂質の上昇がナトリウム測定を干渉して偽性低ナトリウム血症が生じている可能性もある。これらの各障害では,有効循環血液量が減少してADHおよびアンジオテンシンⅡが放出される。低ナトリウム血症は,腎臓に対するADHの抗利尿作用のみならず,アンジオテンシンⅡが腎臓の水分排泄を直接障害することにも起因する。アンジオテンシンⅡによる糸球体ろ過率低下および口渇刺激も低ナトリウム血症の発現を助長する。尿中ナトリウム排泄は通常10mEq/Lを下回り,血漿浸透圧と比較して尿浸透圧が高くなる。

AIDSの低ナトリウム血症: 50%を上回る入院中のAIDS患者で低ナトリウム血症が報告されている。多数の寄与因子の中には,低張液の投与,腎機能障害,血管脱水による非浸透圧性ADH放出,および腎臓の水分排泄を障害する薬物の投与がある。さらに,サイトメガロウイルス性副腎炎,マイコバクテリア感染,またはケトコナゾールによる副腎でのグルココルチコイド合成障害およびミネラルコルチコイド合成障害の結果,AIDS患者では副腎不全が一般的になりつつある。共存する肺感染または中枢神経系感染が原因でSIADHが発生することがある。

症状と徴候

症状は主に中枢神経系の機能不全である。しかし,低ナトリウム血症に体内の総ナトリウム量の異常が付随するときには,体液喪失または体液過剰の徴候も生じる(水分と電解質代謝: 症状と徴候を参照 )。低ナトリウム血症の程度,発症の速さ,原因,患者の年齢および全身状態によって症状の重症度が決まる。一般に,高齢で慢性的な低ナトリウム血症患者は,他には異常のない若年患者よりも多くの症状を呈する。また,急速に発症する低ナトリウム血症ほど,より重度である。症状は一般に有効血漿浸透圧が240mOsm/kg未満に低下すると現れる。症状は軽微な場合もあり,人格変化,嗜眠,錯乱など,主として精神状態の変化からなる。血漿ナトリウム濃度が115mEq/Lを下回ると,昏迷,神経筋の興奮性亢進,痙攣,昏睡が生じ,死に至ることもある。急性低ナトリウム血症を呈する閉経前女性では重度の脳浮腫が生じることがあるが,これはエストロゲンやプロゲステロンが脳のNa+,K+-ATPaseを阻害して脳細胞からの溶質排出が低下するためである。続発症には,視床下部梗塞,下垂体後葉梗塞,ときに脳幹ヘルニアがある。

診断

低ナトリウム血症は血清電解質濃度の測定によって診断される。しかし,重度の高血糖によって浸透圧が上昇しているときには血清ナトリウムが人為的に低くなることもある。水分は細胞からECFへ移動する。血糖値が基準範囲から100mg/dL(5.55mmol/L)上昇する毎に,血清ナトリウム濃度は1.6mEq/L低下する。TBWまたはナトリウムの量に正味の変化が生じていないので,この状態は見かけ上の低ナトリウム血症と呼ばれる。脂質または蛋白質が分析用に採取した血漿中で容積を占めるので,高脂血症または極度の高蛋白血症では血漿浸透圧正常の偽性低ナトリウム血症が生じることがある。イオン選択性電極を用いて血漿電解質を測定する新しい方法によってこの問題は回避される。

低ナトリウム血症の原因解明は複雑となる場合がある。病歴から原因が示唆されることもある(例,嘔吐または下痢による著明な体液喪失,腎疾患,強迫性の水分摂取,ADH放出を刺激するまたはADH作用を増強する薬物の服用)。

患者の体液量の状態,特に明らかな体液喪失または体液過剰がある場合には,特定の原因を示唆する(水分と電解質代謝: 細胞外液量減少の一般的原因表 1: 表および水分と電解質代謝: 細胞外液量過剰の主要原因表 2: 表参照)。循環血液量の減少が顕在する患者には,通常は体液喪失の明らかな原因がある(典型的にはその後に低張液が補充される)。循環血液量の増加が顕在する患者には,通常は心不全,肝疾患,腎疾患など容易に認識される病態が認められる。循環血液量が正常な患者および体液量の状態が不明瞭な患者では,原因を同定するためにさらなる臨床検査が必要となる。

症状の進行速度により治療の緊急性は異なる。中枢神経系機能不全が急性に出現した場合は低ナトリウム血症が急速に進行したことを示唆する。

臨床検査には血液および尿の浸透圧や電解質を含めるとよい。循環血液量が正常な患者では甲状腺および副腎の機能も検査すべきである。循環血液量が正常な患者の低浸透圧は大量の希釈尿(例,浸透圧100mOsm/kg未満,比重1.003未満)の排泄を引き起こすはずである。血清ナトリウム濃度および血清浸透圧が低く,低い血清浸透圧に対して尿浸透圧が不適切に高ければ(120〜150mmol/L),体液量過剰,体液量減少,またはSIADHが示唆される。体液量過剰や体液量減少は臨床的に鑑別される(水分と電解質代謝: 細胞外液量の減少および水分と電解質代謝: 細胞外液量の増加を参照 )。いずれでもないようであればSIADHを考慮する。通常は,SIADH患者の循環血液量は正常またはわずかに増加している。BUNおよびクレアチニンの値は基準範囲内であり,血清尿酸値は一般に低い。尿中ナトリウム濃度は通常30mmol/Lを超え,ナトリウム排泄分画は1%を上回る。

体液量減少患者で腎機能が正常であれば,ナトリウム再吸収の結果,尿中ナトリウム濃度は20mmol/L未満となる。循環血液量減少患者で尿中ナトリウム濃度が20mmol/Lを上回れば,ミネラルコルチコイド欠乏症または塩類喪失性腎症が示唆される。高カリウム血症は副腎機能不全を示唆する。

治療

軽度の低ナトリウム血症であっても,低ナトリウム血症を急速に補正すると神経系の合併症のリスクが生じる(水分と電解質代謝: 浸透圧性脱髄症候群を参照 )。一般に,ナトリウムは0.5mEq/L/時を上回る速さで是正すべきではない。初めの24時間の上昇が10mEq/Lを超えるべきではない。低ナトリウム血症の原因が特定されれば,同時に治療する。

軽度低ナトリウム血症: 軽度で無症候性の低ナトリウム血症(すなわち,血漿ナトリウム濃度>120mEq/L)では制限が必要である。利尿薬誘発性の低ナトリウム血症では,利尿薬を中止すれば十分であろう;一部の患者ではナトリウムやカリウムの補充が多少必要となる。同様に,水分排泄障害のある患者に不適切な非経口補液を行って生じた軽度の低ナトリウム血症であれば,低張液療法の中止だけで十分であろう。

循環血液量が減少している場合に,副腎機能が正常であれば,0.9%生理食塩水の投与によって通常は低ナトリウム血症および血液量減少の両方が修正される。血漿ナトリウム濃度が120mEq/L未満であれば,血管内血液量が回復しても完全には是正されない場合があり,自由水の摂取量を24時間で500〜1000mL以下に制限する必要が生じることがある。

循環血液量が増加している患者で希釈性低ナトリウム血症が腎臓のナトリウム保持に起因する場合(例,心不全,肝硬変,ネフローゼ症候群)には,基礎疾患の治療を組み合わせた水分制限がしばしば奏効する。ACE阻害薬をループ利尿薬と併用すれば,心不全患者の難治性低ナトリウム血症を是正できる。低ナトリウム血症が単純な水分制限に反応しないならば,用量を漸増しながらループ利尿薬を使用でき,ときに0.9%生理食塩水の静注を併用する。尿中に失われたカリウムおよびその他の電解質は補充しなければならない。低ナトリウム血症が重度で利尿薬に反応しなければ,0.9%生理食塩水を静注して低ナトリウム血症を是正すると同時に,ECF量を調節するために間欠的または連続的な血液濾過が必要となる場合がある。

循環血液量が正常であれば,治療は原因(例,甲状腺機能低下症,副腎機能不全,利尿薬投与)に向けられる。SIADHが存在するならば,厳格な水分制限(例,250〜500mL/24時間)が必要である。さらに,循環血液量増加性低ナトリウム血症の場合と同様に,ループ利尿薬を0.9%生理食塩水の静注と併用することがある。補正された状態が持続するかは基礎疾患の治療が成功するかによる。転移性肺癌の場合のように基礎疾患が治療できないときや,厳格な水分制限を患者が受容できないときには,デメクロサイクリン(300〜600mg,12時間毎)が有用となることがあるが,デメクロサイクリンが急性腎不全を引き起こす恐れがある;薬物が中止されれば,通常腎不全は回復する。研究中の選択的バソプレシン受容体拮抗薬は,電解質を尿中に大量に喪失することなく効果的に水利尿をもたらし,将来的に難治性低ナトリウム血症の有用な治療となるであろう。

重度低ナトリウム血症: 無症状の患者の重度低ナトリウム血症(血漿ナトリウム濃度109mEq/L未満;有効浸透圧238mOsm/kg未満)は,厳格な水分摂取制限によって安全に治療できる。神経症状(例,錯乱,嗜眠,痙攣,昏睡)があるときの治療についてはさらに意見が分かれている。議論は主として,低ナトリウム血症を補正する速度および程度に関するものである。多くの専門家が血漿ナトリウム濃度を1mEq/L/時よりも急速に上昇させないように推奨するが,痙攣患者では最初の2〜3時間の補充速度として最大2mEq/L/時が提唱されている。いずれにせよ,最初の24時間の上昇は10mEq/L以下とすべきである。それよりも急激に補正すると,浸透圧性脱髄症候群を促進するリスクが生じる(下記参照)。

高張性(3%)の生理食塩水(ナトリウム513mEq/Lを含有)を用いることもあるが,頻繁に(2〜4時間毎)電解質を測定するときのみである。痙攣または昏睡を来した患者には,血清ナトリウム濃度を4〜6mEq/L上昇させるために100mL/時以下で4〜6時間かけて十分量を投与する。この量(単位はmEq)は,下記のナトリウム欠乏量の式を用いて算出できる:

(望ましいナトリウム変化量) ×TBW

ここで,TBWは男性では0.6×体重(kg),女性では0.5×体重(kg)とする。

例えば,体重70kgの男性でナトリウム濃度を106から112へ上昇させるために必要なナトリウム量は,下記のように算出できる:

(112mEq/L106mEq/L)×(0.6L/kg ×70kg)=252mEq

高張生理食塩水には513mEq/Lのナトリウムが含まれるので,ナトリウムを106mEq/Lから112mEq/Lへ上昇させるにはおよそ0.5Lの高張生理食塩水が必要になる。調節が必要となることもあるので,治療開始後2〜3時間以内から血漿ナトリウム濃度を厳重にモニタリングしなければならない。痙攣,昏睡,または精神状態の変化を来した患者には,痙攣に対する気道挿管およびベンゾジアゼピン類の投与(例,ロラゼパム1〜2mg,必要に応じて5〜10分毎に静注)を含む支持療法が必要である。

浸透圧性脱髄症候群: 浸透圧性脱髄症候群(以前は橋中心髄鞘崩解症と呼ばれた)が低ナトリウム血症の性急な補正に続発する恐れがある。脱髄は,橋および脳の他の領域に影響を及ぼしうる。病変は,アルコール中毒,栄養不良,またはその他の慢性消耗性疾患の患者でより一般的にみられる。弛緩性麻痺,構音障害,嚥下障害が数日または数週間かけて進行する可能性がある。病変は背部に広がって感覚神経路を巻き込み,閉込め症候群(患者は覚醒し感覚もあるが,全身運動麻痺が原因で恐らくは目の動きによる合図を除いて意思疎通を図れない)をもたらす。損傷はしばしば恒久的である。ナトリウムの補充が急速すぎて(例,>14mEq/L/8時間)神経症状が出現し始めたならば,高張液を中止してそれ以上血漿ナトリウム濃度を上昇させないことがきわめて重要である。このような場合は,低張液を用いて低ナトリウム血症を誘発することで恒久的な神経学的損傷の発生を軽減する。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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