メルクマニュアル18版 日本語版
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高ナトリウム血症

(新生児の高ナトリウム血症については新生児における代謝,電解質,および中毒性障害: 高ナトリウム血症を参照 。)

高ナトリウム血症とは,溶質に対して水分が不足した結果,血漿ナトリウム濃度が145mEq/Lを上回ることである。主要症状は口渇である;他の臨床症状は主に神経症状(浸透圧によって水分が細胞外へ移動することによる)で,錯乱,神経筋の興奮,痙攣,昏睡がある。診断は血清ナトリウムの測定によって行う。治療としては通常,調節しながら水分を補給する。反応が不良であれば,基礎にある原因を検出するためにさらに検査を実施する(例,監視下での飲水制限またはADHの投与)。

病因と病態生理

成人の高ナトリウム血症の死亡率は40〜60%である。高ナトリウム血症は通常,口渇機構の障害または水分の入手制限を意味する。飲水不能な状態を通常もたらす基礎疾患の重症度,および脳浸透圧上昇の及ぼす影響が,高い死亡率の原因であると考えられる。口渇反応の低下や基礎疾患が原因で,特に高齢者は,とりわけ温暖な気候においてこれを起こしやすい。高ナトリウム血症の一般的な原因を 水分と電解質代謝: 高ナトリウム血症の主要原因表 6: 表に挙げる。

表 6

高ナトリウム血症の主要原因

循環血液量減少を伴う高ナトリウム血症(TBWおよびナトリウムは減少;相対的にはTBWの減少の方が大きい)

腎外性喪失

消化管:嘔吐,下痢

皮膚:熱傷,発汗過多

腎性喪失

内因性腎疾患

ループ利尿薬

浸透圧利尿(ブドウ糖,尿素,マンニトール)

循環血液量が正常の高ナトリウム血症(TBWは減少;体内の総ナトリウム量はほぼ正常)

腎外性喪失

呼吸器:頻呼吸

皮膚:発熱,発汗過剰

腎性喪失

中枢性尿崩症

腎性尿崩症

その他

飲水不能

原発性寡飲症

浸透圧制御(閾値)の再設定

循環血液量増加を伴う高ナトリウム血症(ナトリウムは増加;TBWは正常または増加)

高張液投与(高張生理食塩水,NaHCO3,完全静脈栄養)

ミネラルコルチコイド過剰

デオキシコルチコステロン産生腎腫瘍

先天性副腎過形成(11-水酸化酵素欠損症)

医原性

TBW=体内総水分量。

体液喪失に伴う高ナトリウム血症は,ナトリウム喪失に付随して,ナトリウムよりも大量の水分が身体から失われたときに生じる。一般的な腎外性の原因には,低ナトリウム血症や,体液喪失を引き起こす原因の大半が含まれる(水分と電解質代謝: 低ナトリウム血症を参照 )。ナトリウムおよび水分の相対的な喪失量,ならびに発症前の水分摂取量に応じて,高ナトリウム血症または低ナトリウム血症のいずれかが重度の体液喪失に伴って生じうる。

高ナトリウム血症および体液喪失を引き起こす腎性の原因には利尿薬治療がある。ループ利尿薬は,ネフロンの濃縮部におけるナトリウム再吸収を阻害し,水の排泄を増加させる。浸透圧利尿も,遠位ネフロンの尿細管内腔に存在する高張性物質が原因で腎臓の濃縮能を障害することがある。グリセロール,マンニトール,ときに尿素も,高ナトリウム血症を来す浸透圧利尿を引き起こしうる。恐らく,浸透圧利尿による高ナトリウム血症の最も一般的な原因は糖尿病患者の高血糖である。ブドウ糖はインスリン不在下では細胞膜を通過しないので,高血糖はICFをさらに減少させる。高浸透圧の程度は,細胞からECFへと水分を移動させて血漿ナトリウム濃度を人為的に低下させることによって不明瞭になる場合がある(見かけ上の低ナトリウム血症,水分と電解質代謝: 低ナトリウム血症を参照 )。腎疾患患者でも,腎臓で尿を最大限濃縮できなければ高ナトリウム血症が生じやすい。

循環血液量が正常な高ナトリウム血症では,通常,体内総水分量(TBW)が減少していて,体内総ナトリウム量はほぼ正常である(純粋な水分不足)。過度の発汗など水分喪失をもたらす腎外性の原因によって一部のナトリウムは失われるが,汗は低張性なので著明な循環血液量の減少に先立って高ナトリウム血症が生じる可能性がある。中枢性または腎性の尿崩症でも,ほぼ純粋に水分だけの不足が生じる。

脳損傷を有する小児および慢性疾患を有する高齢者で,本態性高ナトリウム血症(原発性寡飲症)がときに生じる。これは口渇機構の障害,浸透圧によるADH放出誘発の変化,またはその両方を特徴とする。非浸透圧性のADH放出は損なわれないと考えられ,これらの患者の循環血液量は一般に正常である。

まれな例では高ナトリウム血症に体液量過剰が伴う。この場合は,高ナトリウム血症は水分摂取制限を伴う大幅なナトリウム摂取増加に起因する。1つの例は,心肺蘇生術中または乳酸アシドーシス治療中の高張性NaHCO3の過剰投与である。高ナトリウム血症は,高張生理食塩水の投与または高カロリー輸液によっても引き起こされる。

高ナトリウム血症は特に高齢者で頻度が高い。理由には,水分摂取困難,口渇機構障害,腎濃縮能障害(利尿薬または加齢や他の腎疾患に伴うネフロンの減少による),および不感蒸泄の増加がある。高齢者では,ADH放出は浸透圧刺激に応じて増強されるが,血液量および血圧の変化に応じて減少する。さらに,一部の高齢患者ではアンジオテンシンⅡ産生が障害されており,これが口渇機構,ADH放出,および腎濃縮能の障害の直接的な原因となっている。高齢者の高ナトリウム血症は,術後患者や,経管栄養,経静脈栄養,または高張液投与が行われている患者で特に一般的である。

症状と徴候

高ナトリウム血症の主な症状は口渇である。意識のある高ナトリウム血症患者に口渇が認められなければ口渇機構の障害が示唆される。意思の疎通が困難な患者は,口渇を表現したり水分を摂取したりできないことがある。高ナトリウム血症の主な徴候は,脳細胞収縮による中枢神経系機能不全に起因する。錯乱,神経筋の興奮,痙攣,または昏睡が起こることがあり,重度の高ナトリウム血症で死亡した患者には皮質下やクモ膜下の出血を伴う脳血管障害および静脈血栓症がしばしばみられる。

慢性高ナトリウム血症では,浸透圧活性のある物質が中枢神経系細胞に生じて(特発性浸透圧)細胞内浸透圧を上昇させる。したがって,脳細胞の脱水およびその結果生じる中枢神経系症状の程度は,急性高ナトリウム血症でみられるよりも慢性高ナトリウム血症でみられる方が軽症である。

体内総ナトリウム量の異常に伴って高ナトリウム血症が生じたときには,体液の喪失または過剰に典型的な症状が認められる(水分と電解質代謝: 細胞外液量の減少を参照 および水分と電解質代謝: 細胞外液量の増加を参照 )。大量の低張尿の排泄は腎濃縮異常の患者に特徴的である。水分喪失が腎外性のときには,水分喪失の経路はしばしば明白であり(例,嘔吐,下痢,発汗過剰),尿中ナトリウム濃度は低い。

診断

診断は臨床的に行われ,血清ナトリウム濃度の測定も行う。患者が単純な水分補給に反応しないか,または十分に水分を摂取しても高ナトリウム血症が再発するならば,さらなる診断的検査が必要になる。基礎にある原因を明らかにするためには,尿量および尿浸透圧の評価が特に水制限後に必要である。

中枢性および腎性の尿崩症などいくつかの多尿状態を鑑別するために水制限試験(下垂体障害: 診断を参照 )がときに用いられる。

治療

自由水の補充が,もう1つの主な治療目標である。著明な消化管機能不全が認められず意識のある患者には,経口水分補給が有効である。重度の高ナトリウム血症や,持続性の嘔吐または精神状態の変化が原因で飲水できない患者では,静注による水分補給が望ましい。高ナトリウム血症の持続が24時間未満であれば,24時間以内に修正すべきである。しかし,慢性的または持続時間不明の高ナトリウム血症であれば48時間以上かけて修正すべきであり,脳の溶質過剰による脳浮腫を回避するために血漿浸透圧は2mOsm/L/時以下の速度で低下させるとよい。現存する不足を補うために必要な水分量は下記の式で概算する:

自由水不足量=TBW×[(血漿ナトリウム濃度/140)1]

ここで,TBWはリットルで表し,体重(キログラム)に0.6を乗じて推定される;血漿ナトリウム濃度はmEq/Lで表す。この式では体内の総ナトリウム量は一定であると仮定している。体内の総ナトリウム量が減少している高ナトリウム血症患者(すなわち,体液を喪失している患者)では,自由水の不足量は式による推定値よりも大きい。

ECF量が過剰な高ナトリウム血症患者(体内の総ナトリウム量が過剰)では,自由水の不足分を5%ブドウ糖液で補充でき,これにループ利尿薬を追加することもある。しかし,5%ブドウ糖液の注入速度が速すぎれば糖尿が生じ,したがって塩類を含まない水分排泄の増加や浸透圧の上昇が特に糖尿病でみられる。血漿カリウム濃度に応じてKClを補充すべきである。

循環血液量が正常な高ナトリウム血症患者では,5%ブドウ糖液または0.45%生理食塩水のいずれかを用いて自由水を補充できる。

中枢性尿崩症患者および後天性腎性尿崩症患者の治療については下垂体障害: 治療および異常腎輸送症候群: 腎性尿崩症で考察されている。

循環血液量の減少した高ナトリウム血症患者,特に非ケトン性高血糖性昏睡を伴う糖尿病患者では,0.9%生理食塩水と5%ブドウ糖液とを併用する代わりに0.45%生理食塩水を投与してナトリウムや自由水を補給できる。重度のアシドーシス(pH<7.10)が存在するときには,最終的に低張性が維持されるのであれば,5%ブドウ糖液または0.45%生理食塩水にNaHCO3溶液を加えてもよい。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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