メルクマニュアル18版 日本語版
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カリウム濃度の異常

カリウムは,最も豊富な細胞内陽イオンであるが,体内総カリウムのわずか2%程度だけが細胞外に存在する。細胞内カリウムのほとんどは筋細胞内に含まれるので,体内の総カリウム量は除脂肪体重に概ね比例する。平均的な70kgの成人は約3500mEqのカリウムを有する。

カリウムは細胞内浸透圧を決定する主要因子である。ICFおよびECFのカリウム濃度比は細胞膜の分極に強く影響し,ひいては神経インパルスの伝導および(心筋を含む)筋細胞の収縮など,細胞の重要な過程に影響を及ぼす。したがって,血漿カリウム濃度の比較的小さな変化が大きな臨床症状を生むことがある。

カリウムを細胞内外へ移動させる因子の不在下では(水分と電解質代謝: 細胞内移動を参照 ),血漿カリウム濃度は体内総カリウム量と密接に相関している。血漿pHが一定であると仮定すれば,血漿カリウム濃度が4mEq/Lから3mEq/Lに減少すると,カリウムの不足量は全体で100〜200mEqとなる。血漿カリウム濃度が3mEq/L未満に低下すればカリウムの不足量は計200〜400mEqである。

インスリンはカリウムを細胞内に移動させるので,インスリン高値は血漿カリウム濃度を低下させる。糖尿病性ケトアシドーシスにみられるようにインスリンが低値になると,カリウムが細胞外へ移動して血漿カリウム濃度が上昇し,これは体内総カリウム量が不足していてもときに生じる。βアドレナリン作動薬,特に選択的β2作動薬はカリウムを細胞内に移動させるが,β遮断薬やα作動薬は恐らくはカリウムを細胞外へ移動させる。急性代謝性アシドーシスではカリウムは細胞外へ移動するが,急性代謝性アルカローシスではカリウムは細胞内へ移動する。しかし,血漿HCO3濃度の変化の方がpHの変化よりも重要であると考えられる;無機酸の蓄積に起因するアシドーシス(非アニオンギャップ性高塩素性アシドーシス)では血漿カリウム濃度がより上昇しやすい。これに対して,有機酸の蓄積による代謝性アシドーシス(高アニオンギャップ性アシドーシス)では高カリウム血症は生じない。したがって,糖尿病性ケトアシドーシスに一般的な高カリウム血症は,アシドーシスよりもインスリン欠乏に起因することの方が多い。急性呼吸性のアシドーシスやアルカローシスは,代謝性のアシドーシスやアルカローシスほどには血漿カリウム濃度に影響を与えない。それにもかかわらず,血漿カリウム濃度は血漿pH(およびHCO3濃度)との関連で解釈すべきである。

食事からのカリウム摂取量は,正常では40〜150mEq/日と多様である。定常状態では,便中への排泄量は通常は摂取量のほぼ10%である。尿中排泄はカリウム平衡に寄与している。カリウム摂取が増加(1日に150mEqを上回るカリウムを摂取)すると,その後の数時間で過剰なカリウムの約50%が尿中に排泄される。残りのほとんどは細胞内区画に運ばれ,血漿カリウム濃度の上昇は最低限にとどめられる。カリウムの摂取増加が持続すれば,カリウム刺激性のアルドステロン分泌によって腎臓からのカリウム排泄が亢進する;アルドステロンはカリウム排泄を促す。さらに,便からのカリウム吸収はある程度調節を受けるとみうけられ,慢性的なカリウム過剰では50%低下することもある。

カリウム摂取が減少すると,血漿カリウム濃度の大幅な変動に対する予備としての機能を細胞内カリウムが再び果たす。腎臓でのカリウム保持は食事性カリウムの減少に応じて比較的緩徐に進み,腎臓のナトリウム保持能と比べてはるかに効率が悪い。したがって,カリウム欠乏はしばしば臨床的に問題となる。尿中カリウム排泄量が10mEq/日であれば,ほぼ最大限のカリウム保持が腎臓で行われていることを表し,著明なカリウム欠乏が示唆される。

急性アシドーシスがカリウム排泄を障害するのに対して,慢性アシドーシスおよび急性アルカローシスはカリウム排泄を促進することがある。ナトリウム大量摂取またはループ利尿薬療法によって生じるような遠位ネフロンへのナトリウム輸送の増加は,カリウム排泄を促進する。

白血球数が105/μLを上回る慢性骨髄性白血病患者では,検体を処理前に室温に置くと検体中の異常白血球が血漿中のカリウムを取り込むので,ときに偽性低カリウム血症,すなわち血清カリウム濃度の偽低値が生じる。これは血漿または血清を血液検体から速やかに分離することで防ぐ。

偽性高カリウム血症,すなわち血清カリウム濃度の偽高値はより一般的であり,典型的には溶血や細胞内カリウムの放出によって生じる。これを予防するために,採血者は細い針で急激に血液を吸引したり,血液検体を過度に撹拌したりすべきではない。血液凝固時に血小板からカリウムが放出されるので,偽性高カリウム血症は血小板数が106/μLを上回るときにも起こりうる。偽性高カリウム血症の場合は,血清カリウム濃度とは対照的に血漿カリウム濃度(非凝固血)は基準範囲内にある。

低カリウム血症

低カリウム血症とは,体内の総カリウム貯蔵量の不足またはカリウムの細胞内への異常な移動によって血清カリウム濃度が3.5mEq/Lを下回ることである。最も一般的な原因は腎臓または消化管からの過剰喪失である。臨床像には筋力低下および多尿があり,重度の低カリウム血症では心興奮性亢進が生じることがある。診断は血清検査によって行う。治療はカリウム投与および原因への取り組みである。

病因と病態生理

低カリウム血症はカリウム摂取の減少によっても生じうるが,通常は尿中または消化管からの過剰なカリウム喪失に起因する。

消化管からの喪失: 消化管からの異常なカリウム喪失は慢性の下痢で生じ,緩下剤の長期乱用や吸収障害による喪失を含む。その他の原因には,土食症,嘔吐,胃内容物の吸引(HClが除去されて腎臓がカリウムを排泄するようになる)がある。まれに大腸の絨毛腺腫が原因で消化管から大量のカリウムが喪失する。代謝性アルカローシスによる腎性カリウム喪失の共存および体液喪失によるアルドステロン刺激によって,消化管からのカリウム喪失が増悪することがある。

細胞内移動: 細胞内へのカリウムの移動も低カリウム血症を引き起こしうる。これは,TPNまたは経腸栄養中やインスリン投与後のグリコーゲン生成時に生じる。交感神経系の刺激,特にβ2作動薬(例,アルブテロール,テルブタリン)による刺激が,細胞のカリウム取り込みを増加させると考えられる。同様に,過剰なβ交感神経刺激に起因する甲状腺中毒症患者で,ときに重度の低カリウム血症が生じる(低カリウム性甲状腺中毒性周期性四肢麻痺)。家族性周期性四肢麻痺(遺伝性筋疾患: 家族性周期性四肢麻痺を参照 )はまれな常染色体優性遺伝疾患であり,カリウムが突発的に細胞内へ異常移動して生じると考えられる一過性の著明な低カリウム血症の発現を特徴とする。発作時にはしばしば様々な程度の四肢麻痺がみられる。典型的には炭水化物の大量摂取または激しい運動によって発作が助長されるが,こうした特徴のない変異型も報告されている。

腎臓からの喪失: 種々の障害で腎臓からのカリウム排泄が増加することがある。副腎ステロイド過剰状態では,ミネラルコルチコイドが遠位ネフロンによるカリウム排泄に直接作用することによって排泄が増加する場合がある。クッシング症候群,原発性高アルドステロン症,まれなレニン分泌腫瘍,グルココルチコイドで治療可能なアルドステロン症(アルドステロン代謝異常が関与するまれな遺伝性疾患),および先天性副腎過形成は,ミネラルコルチコイドの過剰形成による低カリウム血症を引き起こしうる。11βヒドロキシステロイド脱水素酵素(11β-HSD)の阻害は,多少のミネラルコルチコイド活性を示すコルチゾールから活性のないコルチゾンへの変換を妨げる。グリチルリジン(天然の甘草に含まれ,噛みたばこの製造に用いられる)などの物質は11β-HSDを阻害し,その結果循環血液中のコルチゾール濃度は上昇し,腎臓からのカリウム排泄が生じる。

リドル症候群(異常腎輸送症候群: リドル症候群も参照 )は,重度の高血圧および低カリウム血症を特徴とするまれな常染色体優性遺伝疾患である。リドル症候群は,上皮ナトリウムチャネルサブユニットをエンコードする遺伝子に認められるいくつかの変異の1つに起因する遠位ネフロンでの無制限なナトリウム再吸収によって引き起こされる。ナトリウム再吸収が不適切に亢進することによって,高血圧および腎臓からのカリウム喪失の両方がもたらされる。

バーター症候群およびギテルマン症候群はまれな遺伝性疾患であり,腎臓からのカリウムおよびナトリウムの喪失,レニンおよびアルドステロンの過剰産生,ならびに正常血圧を特徴とする。バーター症候群(異常腎輸送症候群: バーター症候群も参照 )は,ヘンレ係蹄のループ利尿薬感受性イオン輸送機序の変異によって引き起こされる。ギテルマン症候群は,遠位ネフロンのサイアザイド感受性イオン輸送機序の機能喪失性変異によって引き起こされる。

腎臓からのカリウム喪失は,尿細管性アシドーシスやファンコニ症候群(カリウム,ブドウ糖,リン酸,尿酸,アミノ酸の腎性排泄を来すまれな症候群)など,先天性および後天性の多数の腎尿細管疾患によっても引き起こされる可能性がある。

薬物: 利尿薬は,低カリウム血症を引き起こす薬物の中でも他を大きく引き離して最も一般的に用いられている。遠位ネフロンよりも近位でのナトリウム再吸収を阻害するカリウム喪失性の利尿薬には,サイアザイド系利尿薬,ループ利尿薬,浸透圧利尿薬がある。緩下剤は,特に乱用されたときには,下痢を引き起こすことによって低カリウム血症をもたらしうる。利尿薬および/または緩下剤を隠れて乱用することがしばしば持続性低カリウム血症の原因となっており,特にこれは体重を減らすことに拘泥する患者や処方医薬品を入手しやすい医療従事者にみられる。

低カリウム血症を引き起こしうるその他の薬物には,アムホテリシンB,抗緑膿菌性ペニシリン系薬(例,カルベニシリン),および高用量ペニシリンがある。最後に,低カリウム血症は急性および慢性のいずれのテオフィリン中毒でも生じる。

症状と徴候

軽度の低カリウム血症(血漿カリウム濃度3〜3.5mEq/L)で症状が現れることはまれである。血漿カリウム濃度が3mEq/L未満では一般に筋力低下が認められ,四肢麻痺や呼吸不全に至ることもある。その他の筋肉の機能不全には,痙攣,線維束性収縮,麻痺性イレウス,低換気,低血圧,テタニー,横紋筋融解症がある。持続性低カリウム血症では腎濃縮能が障害されて二次性多飲症を伴う多尿症が生じる。

低カリウム血症の心臓への影響は,通常,血漿カリウム濃度が3mEq/Lを下回るまではごく軽微である。低カリウム血症はST部分の低下,T波の陰性化,U波の増高をもたらす。著明な低カリウム血症では,T波は次第に小さくなり,U波はますます大きくなる。ときに,平低または陽性のT波が陽性U波と合わさって,QT延長と混同されることがある( 水分と電解質代謝: 低カリウム血症および高カリウム血症の心電図パターン。図 2: イラストを参照)。低カリウム血症は,心室性および心房性の期外収縮,心室性および心房性の頻拍性不整脈,ならびに2度または3度の房室ブロックをもたらすことがある。低カリウム血症の重症度が増すにつれてこのような不整脈も重症化し,やがて心室細動が起こる恐れがある。重大な心疾患が既に存在する患者および/またはジゴキシンを投与されている患者では,軽度の低カリウム血症でさえ心伝導異常をもたらすリスクがある。

図 2

低カリウム血症および高カリウム血症の心電図パターン。

低カリウム血症および高カリウム血症の心電図パターン。

(血清カリウム濃度の単位はmEq/L。)

診断

低カリウム血症は,血漿または血清のカリウム濃度が3.5mEq/L未満であることに基づいて診断する。病歴(特に薬歴)から原因が明らかでなければ,さらに検査を行う必要がある。アシドーシス,および細胞内にカリウムを移動させるその他の原因を除外してから,24時間尿中カリウムを測定する。低カリウム血症では,カリウム排泄が通常は15mEq/L未満である。腎臓からのカリウム排泄が15mEq/L未満のときに原因不明の慢性低カリウム血症があれば,腎外性(消化管性)のカリウム喪失またはカリウム摂取の減少が疑われる。排泄が15mEq/L以上であれば,カリウム喪失の原因は腎臓にあることが示唆される。腎臓からのカリウム排泄増加および高血圧を伴う原因不明の低カリウム血症は,アルドステロン分泌腫瘍またはリドル症候群を示唆する。腎臓からのカリウム喪失増加および正常血圧を伴う低カリウム血症はバーター症候群を示唆するが,低マグネシウム血症,隠れ嘔吐,利尿薬乱用の方がより一般的であり,これらも考慮すべきである。

治療と予防

多数の経口カリウム補給薬が市販されている。消化管刺激や,ときに出血を引き起こすので,通常は分割投与する。KCl液を経口投与すると1〜2時間以内に濃度が上昇するが,苦味があるので25〜50mEqを上回る用量では忍容性が低い。ワックス含浸KCl製剤は安全で忍容性に優れる。マイクロカプセル封入KCl製剤では,消化管出血がさらに少ないようである。1カプセルに8mEqまたは10mEqを含有するいくつかの製剤が市販されている。

低カリウム血症が重度のとき,経口療法に反応しないとき,または活動性疾患を有する入院患者に生じたときには,カリウムを非経口的に補充しなければならない。カリウム溶液は末梢静脈を刺激することがあるので濃度は40mEq/Lを超えるべきではない。カリウムは遅れて細胞内に移動するので,低カリウム血症の補正速度には限界がある。ルーチンの注入速度は10mEq/時を超えるべきではない。低カリウム血症誘発性不整脈ではKClをより急速に静注しなければならず,通常は中心静脈から投与するか,または複数の末梢静脈を同時に使用する。KClを40mEq/時で注入することは可能であるが,心臓のモニタリングを連続的に行い1時間毎に血漿カリウム濃度を測定する場合のみである。血漿インスリン濃度の上昇が低カリウム血症を一時的に増悪させる恐れがあるのでブドウ糖液は避ける。

糖尿病ケトアシドーシスにみられるような,血漿カリウム濃度が高値を示すカリウム欠乏では,血漿カリウム濃度が低下し始めるまでカリウムの静注を延期する。カリウム欠乏が重度なときでも,カリウム喪失が持続しているのでない限り,24時間に100〜120mEqを上回るカリウムの投与が必要となることはまれである。低カリウム血症が低マグネシウム血症とともに起きているときには,カリウム欠乏とマグネシウム欠乏の両方を補正して腎臓からのカリウム喪失の進行を止めなければならない(水分と電解質代謝: 低マグネシウム血症を参照 )。

利尿薬を投与されている患者の大半ではルーチンのカリウム補充は不要である。しかし,利尿薬が使用されているとき,特にジゴキシンを投与されている左室機能低下患者,糖尿病患者,およびβ2作動薬を投与されている喘息患者では,血漿カリウム濃度を監視すべきである。トリアムテレン100mg,1日1回,またはスピロノラクトン25mg,1日4回の経口投与はカリウム排泄を増加させず,低カリウム血症を来しているが利尿薬を使用しなければならない患者に有用であろう。低カリウム血症が発生したならばカリウム補給が適応となる。血漿カリウム濃度が3mEq/L未満のときにはKClの経口補給がしばしば必要となる。血漿カリウム濃度1mEq/Lの低下は体内総カリウム貯蔵量200〜400mEqの欠乏と相関するので,通常は進行中のカリウム喪失量よりも20〜80mEq/日過剰な量を数日間にわたって投与してカリウム欠乏を是正すべきである。長期に及ぶ飢餓の後に栄養補給を再開するときには,カリウム補給の必要が数週間続くことがある。

高カリウム血症

高カリウム血症とは,体内の総カリウム貯蔵量の過剰またはカリウムの細胞外への異常な移動によって血清カリウム濃度が5.5mEq/Lを上回ることである。通常の原因は腎排泄障害であり,コントロールされていない糖尿病でみられるような代謝性アシドーシスでも生じうる。臨床症状は一般に筋力低下につながる神経筋症状で,重度であれば心室細動または心停止をもたらしうる心毒性もみられる。診断は血清または血漿のカリウム濃度測定による。治療は陽イオン交換樹脂の投与であり,緊急時にはグルコン酸カルシウム投与,インスリン投与,および透析を行う。

病因と病態生理

正常な腎臓は過剰なカリウムを最終的に排泄するので,持続性の高カリウム血症は通常は腎臓での排泄低下を示す。高カリウム血症はカリウムが細胞を通過して細胞外へと移動することによっても引き起こされることがあり,これは代謝性アシドーシス,インスリン欠乏下での高血糖,適度な強度の運動(特にβ遮断の存在下),ジゴキシン中毒,急性腫瘍溶解,急性血管内溶血,または横紋筋融解症でみられる。はるかに珍しい疾患は高カリウム血性家族性周期性麻痺であり,これはまれな遺伝病で,通常は運動によって促進される細胞外へのカリウムの突発移動を原因とする発作性高カリウム血症を特徴とする(遺伝性筋疾患: 家族性周期性四肢麻痺を参照 )。

体内総カリウム量の過剰による高カリウム血症は,乏尿状態(特に急性腎不全)で生じるか,横紋筋融解症,熱傷,軟部組織内または消化管内への出血,および副腎不全に伴うことが特に一般的である。慢性腎不全では,食事からのカリウム摂取過剰や,経口または非経口のカリウム療法,消化管出血,組織損傷,溶血など,他にカリウム負荷過剰の原因がない限り,GFRが10〜15mL/分未満に低下するまでは高カリウム血症の発生はまれである。この他に慢性腎不全で高カリウム血症を引き起こしうる原因としては,低レニン性低アルドステロン血症(Ⅳ型腎性尿細管アシドーシス),ACE阻害薬,カリウム保持性利尿薬,絶食(インスリン分泌の抑制),β遮断薬,およびNSAIDがある。十分なKClが摂取または非経口投与されていれば,腎機能が正常であっても重度の高カリウム血症が生じうる。原因は通常,ACE阻害薬を服用中の患者にカリウムを補給するなど,医原性である。腎臓でのカリウム排出を制限し,それによって高カリウム血症をもたらしうるその他の薬物には,シクロスポリン,リチウム,ヘパリン,トリメトプリムがある。

症状と徴候

弛緩性麻痺をときに認めるが,通常高カリウム血症は心毒性が出現するまでは無症状である(水分と電解質代謝: 低カリウム血症および高カリウム血症の心電図パターン。図 2: イラストを参照)。初期の心電図変化はカリウムが5.5mEq/Lを上回ると生じ,QT間隔の短縮および高くて左右対称性の先鋭的なT波を特徴とする。カリウムが6.5mEq/Lを上回ると,結節性および心室性の不整脈,QRS幅の拡大,PR間隔の延長,P波の消失がみられる。最終的に,QRS波は変形して正弦波パターンとなり,心室細動または収縮不全が起こる。

まれな障害である高カリウム血性家族性周期性四肢麻痺では,発作時に脱力がしばしば生じ,明白な麻痺に進行する場合がある。

診断

血漿カリウム濃度が5.5mEq/Lを上回ることによって診断がつく。重度の高カリウム血症は迅速な治療を要するので,腎不全,ACE阻害薬およびカリウム保持性利尿薬で治療中の重症心不全,または尿路閉塞症状を有するといった高リスク患者で,特に不整脈または他の高カリウム血症の心電図徴候が認められるならば,それを考慮しなければならない。

高カリウム血症の原因を診断するにあたっては,薬物を見直し,電解質,BUN,およびクレアチニンを測定する。腎不全がある場合には,閉塞を除外診断するための腎臓超音波検査を含む追加検査が必要である(腎不全: 診断を参照 )。

治療

軽度高カリウム血症: 血漿カリウム濃度が6mEq/L未満で心電図異常がない患者は,カリウム摂取の抑制またはカリウム値を上昇させる薬物の中止に反応する可能性がある。ループ利尿薬の追加は腎臓からのカリウム排泄を高める。ポリスチレンスルホン酸ナトリウムのソルビトール懸濁液を投与する場合もある(15〜30gを70%ソルビトール30〜70mLに溶解,4〜6時間毎に経口投与)。これは陽イオン交換樹脂として作用し,カリウムを消化管粘膜を介して除去する。ソルビトールを樹脂とともに投与して消化管を確実に通過させる。腸閉塞やその他の理由により薬物を経口摂取できない患者では,同量を注腸投与することがある。投与した樹脂1g当たり約1mEqのカリウムが除去される。樹脂療法は遅効性であり,異化亢進状態ではしばしば血漿カリウム濃度を大幅に低下できない。ポリスチレンスルホン酸ナトリウムを用いるとナトリウムとカリウムとが交換されるので,特に体液量が既に過剰な乏尿患者ではナトリウムが過剰となることがある。

中等度から重度の高カリウム血症: 特に心電図変化を伴うときには,血漿カリウム濃度が6mEq/Lを上回ればカリウムを細胞内に移動させる積極的な治療が必要になる。下記の対策の初めの2つを迅速に実施する:

1.10%グルコン酸カルシウム10〜20mL(または22%グルセプト酸カルシウム5〜10mL)を5〜10分間かけて静注。カルシウムが,心筋興奮性に対する高カリウム血症の作用に拮抗する。低カリウム血症に関連する不整脈が促進されるリスクがあるので,ジゴキシン服用患者にカルシウムを投与するときには注意すべきである。心電図が変化して正弦波または収縮不全が認められたならば,グルコン酸カルシウムをより急速に投与してもよい(5〜10mLを2分間で静注)。CaClも使用できるが,刺激を起こす可能性があり中心静脈カテーテルから投与すべきである。効果は数分以内に現れるが20〜30分しか持続しない。カルシウム注入は他治療の効果の発現を待つ間の姑息的手段であり,反復が必要になることもある。

2.レギュラーインスリン5〜10単位を静注し,この直後またはこれと同時に50%ブドウ糖液50mLを迅速に注入する。低血糖予防のために,10%ブドウ糖液を50mL/時で引き続き注入すべきである。血漿カリウム濃度に対する作用は,1時間後にピークに達して数時間持続する。

3.アルブテロール10〜20mg(10分間かけて吸入,濃度5mg/mL)などの高用量β作動薬は,血漿カリウム濃度を安全に0.5〜1.5mEq/L低下させることができ,有用な補助療法となりうる。最大効果は90分で得られる。

4.NaHCO3の静注については議論が続いている。これは血清カリウム濃度を数時間かけて低下させる。低下はアルカリ化によるものか,または製剤に含まれる濃縮ナトリウムに起因する高張状態によるものと考えられる。そこに含まれる高張ナトリウムは,体液量過剰を呈する可能性もある透析患者には有害となる恐れがある。投与する場合の通常量は45mEq(7.5%NaHCO3を1アンプル)で,これを5分かけて注入し,30分後に再投与する。酸血症も存在するのでない限り,HCO3療法を進行腎不全患者に単独で用いてもほとんど効果はない。

カリウムを細胞内に移動させることで濃度を下げる上記戦略に加えて,重度または症候性の高カリウム血症の治療早期には身体からカリウムを除去する処置も行うべきである。カリウムは,ポリスチレンスルホン酸ナトリウムの投与によって消化管経由で除去され(水分と電解質代謝: 軽度高カリウム血症を参照 ),血液透析によっても除去できる。腎不全患者での緊急措置後,または緊急治療が無効の場合には,血液透析を直ちに開始すべきである。腹膜透析はカリウムの除去という点では比較的効率が悪い。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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