メルクマニュアル18版 日本語版
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代謝性アルカローシス

代謝性アルカローシスは一次性のHCO3 -の増加で,代償性のPco2増加を伴う場合と伴わない場合とがあり,pHは高値またはほぼ基準範囲内である。一般的な原因は,遷延性の嘔吐,循環血液量減少,利尿薬の使用,および低カリウム血症である。アルカローシスが持続するためには,腎臓からのHCO3 -排泄障害が存在しなければならない。重症例の症状および徴候は,頭痛,嗜眠,テタニーである。診断は臨床的に行い,ABGや血清電解質も用いる。基礎にある原因を治療し,アセタゾラミドやHClの経口投与または静脈内投与がときに適応となる。

病因と病態生理

代謝性アルカローシスは,酸の喪失,アルカリ投与,H+の細胞内への移動(低カリウム血症で生じるような),またはHCO3 -のうっ滞によるHCO3 -の蓄積である。初期の原因にかかわらず,代謝性アルカローシスの持続は腎臓でのHCO3 -再吸収の増加を示し,なぜならばHCO3 -は正常では腎臓によって自由に濾過され,したがって自由に排泄されるからである。体液量減少および低カリウム血症はHCO3 -再吸収を増加させる最も一般的な刺激であるが,アルドステロンまたはミネラルコルチコイド(ナトリウムの再吸収ならびにカリウムやH+の排泄を促進する)が増加するような病態ではHCO3 -は増加しうる。したがって,低カリウム血症は代謝性アルカローシスの原因であると同時にしばしば結果でもある。原因を酸-塩基の調節と障害: 代謝性アルカローシスの原因表 4: 表に挙げる;一般的な原因は体液量減少(特に反復性嘔吐または経鼻胃管からの吸引による胃酸および塩素の喪失が含まれるとき)ならびに利尿薬の使用である。

表 4

代謝性アルカローシスの原因

原因

コメント

消化管からの酸の喪失*

 

嘔吐または経鼻胃管からの吸引による胃酸喪失

アルドステロン放出やそれに続くHCO3吸収に起因する。濃縮性アルカローシスに伴うHClおよび酸の喪失

先天性塩素性下痢

便中への塩素喪失およびHCO3貯留

絨毛腺腫

恐らくカリウム欠乏に続発

腎臓からの酸の喪失

 

原発性高アルドステロン症†

先天性副腎過形成を含む

二次性アルドステロン症†

循環血液量減少,心不全,腹水を伴う肝硬変,ネフローゼ症候群,クッシング症候群またはクッシング病,腎動脈狭窄,およびレニン分泌腫瘍に合併

グリチルリチン含有化合物†(例,甘草,噛みタバコ,カルベノキソロン,Lydia Pinkham's vegetable compound)の使用

グリチルリチンはコルチゾルからより活性の低い代謝産物への酵素による変換を抑制する

バーター症候群†

まれな先天性疾患で,小児期早期に腎臓からの塩類喪失および体液量減少を伴い発症し,高アルドステロン症および低カリウム性代謝性アルカローシスを引き起こす。

ギテルマン症候群†

バーター症候群様の疾患で,低マグネシウム血症や低カルシウム尿症がさらに存在すること,および若年成人で発症することが特徴

利尿薬(サイアザイドおよびループ)‡

複数の機序:体液量減少,塩素喪失,および/または濃縮性アルカローシスに起因する二次性アルドステロン症;共存するカリウム喪失によって塩素非反応性となることがある

低カリウム血症および低マグネシウム血症†

カリウムおよびマグネシウムの再吸収,ならびに水素排泄を刺激;欠乏が修正されるまではNaClおよび補液に反応しないアルカローシス。カリウム低値は水素を細胞内へ移動させ,細胞外pHを高める

HCO3過剰

 

高炭酸ガス血症後*

代償性HCO3濃度の持続的な上昇,しばしば体液,カリウム,および塩素の喪失を伴う

有機酸アシドーシス後

アシドーシスに対するHCO3療法によって悪化する乳酸またはケト酸からHCO3への変換

NaHCO3負荷

過度の負荷,または低カリウム血症の状況における負荷に伴って生じる;水素が細胞内に戻ると,血清はよりアルカローシスに傾く

ミルク-アルカリ症候群

慢性的な炭酸カルシウム制酸薬摂取はカルシウム負荷およびHCO3負荷をもたらす;高カルシウム血症はGFRを減少させ,過剰なHCO3負荷の除去を阻害する

濃縮性アルカローシス*

 

利尿薬(全種)

嚢胞性線維症での発汗による喪失

NaCl喪失は,一定量のHCO3をより少ない総体容積に集中させる

その他

 

飢餓後の炭水化物摂取再開

飢餓性ケトーシス/アシドーシスの消失および細胞機能向上

緩下剤乱用*

機序不明

一部の抗生物質(カルベニシリン,ペニシリン,チカルシリン)

非再吸収性陰イオンを含み,カリウムおよび水素の排泄が増加する

*塩素反応性。

†塩素非反応性。

‡塩素反応性または塩素非反応性のいずれの場合もある。

塩素の喪失または過剰分泌を含む代謝性アルカローシスは塩素反応性と呼ばれ,これはNaCl含有液の静脈内投与によって典型的には修正されるからである。塩素不応性代謝性アルカローシスはこれでは修正されず,典型的には重度のマグネシウム欠乏,カリウム欠乏,またはミネラルコルチコイド過剰が関与する。2種の病型は共存可能で,例えば体液量の過剰な患者で高用量の利尿薬が低カリウム血症を引き起こした場合に見られる。

症状,徴候,診断

軽度アルカリ性血症の症状および徴候は,通常は基礎にある病因と関連している。より重度のアルカリ性血症ではイオン化カルシウムCa++の蛋白結合が亢進して,低カルシウム血症およびそれに続く頭痛,嗜眠,神経筋の興奮性亢進がもたらされ,ときにせん妄,テタニー,痙攣発作を伴う。アルカリ性血症は狭心症症状および不整脈の閾値も下げる。共存する低カリウム血症が脱力を引き起こすことがある。

代謝性アルカローシスおよび適切な呼吸性代償の認識については酸-塩基の調節と障害: 診断で考察されており,ABGおよび血清電解質(カルシウム,マグネシウムを含む)が必要になる。

一般的な原因はしばしば病歴および身体診察によって明らかにされる。病歴からは何も明らかにされず腎機能が正常であれば,尿中Cl-濃度およびK+濃度を測定する(測定値は腎機能不全では診断につながらない)。尿中の塩素が20mEq/L未満であれば,腎臓での著明なCl-再吸収が示され,したがって原因は塩素反応性である(酸-塩基の調節と障害: 代謝性アルカローシスの原因表 4: 表を参照)。尿中の塩素が20mEq/Lを上回れば,塩素非反応性の病型が示唆される。

尿中カリウムおよび高血圧の有無は塩素非反応性アルカローシスの鑑別に役立つ。尿中カリウム30mEq/日未満は低カリウム血症または緩下剤の誤用を意味する。尿中カリウムが30mEq/日を上回り高血圧がなければ,利尿薬の乱用,バーター症候群,またはギテルマン症候群が示唆される。尿中カリウムが30mEq/日を上回り高血圧を伴えば,高アルドステロン症,ミネラルコルチコイド過剰,および腎血管疾患の評価が必要となる;検査は典型的には血漿レニン活性,アルドステロン濃度,およびコルチゾル濃度を含む(副腎障害: 診断および副腎障害: 症状,徴候,診断を参照 )。

治療

基礎疾患を治療し,循環血液量減少および低カリウム血症の是正に特に注意を払う。

塩素反応性の代謝性アルカローシス患者には0.9%生理食塩水を静注する;初期の重炭酸塩尿から回復後に尿中の塩素が上昇して25mEq/Lを上回り尿のpHが正常化するまでは,注入速度は一般に尿およびその他の有感・無感の体液喪失よりも50〜100mL/時ほど速くする。塩素非反応性の代謝性アルカローシス患者に補液が有益となることはまれである。

ときに重度の代謝性アルカローシス患者(例,pH>7.6)では,緊急での血清pH補正が必要となることがある。特に体液量過剰が存在する場合は,血液濾過または血液透析が選択肢となる。アセタゾラミド250〜375mg,1日1回または2回を経口投与または静注するとHCO3 -排泄が増加するが,尿へのK+およびPO4 -の喪失が促進される恐れもある;体液量の過剰な患者で利尿薬誘発性の代謝性アルカローシスのある者,および高炭酸ガス血症後の代謝性アルカローシスのある者では特に有益となりうる。

0.1〜0.2規定液に溶解した塩酸の静注は安全かつ有効であるが,浸透圧が高く末梢静脈を硬化させるので中心カテーテルを介して投与しなければならない。用量は0.1〜0.2mmol/kg/時で,ABGおよび電解質を頻繁に監視する。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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