メルクマニュアル18版 日本語版
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非ケトン性高浸透圧症候群

非ケトン性高浸透圧症候群(NKHS)は糖尿病の代謝性合併症で,高血糖,極度の脱水,血漿高浸透圧,および意識障害を特徴とする。Ⅱ型糖尿病で最も頻度が高く,しばしば生理的ストレス下において生じる。NKHSは,重度高血糖,血清高浸透圧,有意なケトーシスの欠如によって診断される。治療は生理食塩水およびインスリンの静注である。合併症は昏睡,痙攣発作,死亡である。

NKHSは高浸透圧性高血糖状態とも呼ばれ,Ⅱ型糖尿病の合併症であり,最大40%の死亡率を呈する。通常は症候性高血糖の期間を経て発症し,この期間中の水分摂取が高血糖誘発性の浸透圧利尿による極度の脱水を予防するには不十分であったと考えられる。促進因子には,急性感染症の共存,耐糖能を障害する薬物(グルココルチコイド)または水分喪失を増加させる薬物(利尿薬),治療不遵守,その他の疾患がある。血清中にケトン体は存在せず,血糖値および浸透圧は典型的には糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)よりも大幅に高い:血糖値>600mg/dL(>33mmol/L),浸透圧>320mOsm/L。

症状,徴候,診断

NKHSの主症状は錯乱や見当識障害から昏睡までと幅広い意識障害であり,通常は,前腎性高窒素血症,高血糖,極度の脱水(高浸透圧を伴う場合と伴わない場合とがある)の結果生じる。DKAとは対照的に,焦点性または全身性の痙攣および一過性の片麻痺が生じうる。血清カリウム濃度は通常は基準範囲内であるが,ナトリウムは循環血液の不足量によって低値または高値となる。BUNおよび血清クレアチニンの濃度は著明に上昇している。動脈血pHは通常7.3を上回るが,ときに乳酸が蓄積して軽度の代謝性アシドーシスが生じる。

平均的な体液喪失量は10Lで,急性循環虚脱が一般的な死因である。広範な血栓症は剖検でしばしば認められる所見であり,一部の症例では播種性血管内血液凝固の結果として出血が生じることがある。その他の合併症には,誤嚥性肺炎,急性腎不全,急性呼吸促迫症候群がある。

治療

治療は0.9%生理食塩水1Lを30分かけて,その後1L/時で静注し,血圧を上昇させて循環状態および尿の排出を改善させる。血圧が正常になり血糖値が300mg/dLに達すれば,輸液を0.45%生理食塩水に置き換えられる。静脈内輸液速度は,血圧,心臓の状態,水分の補給と排泄とのバランスで調節すべきである。

インスリンは,最初の1Lの生理食塩水を静注後に0.15単位/kgをボーラス投与し,続いて0.1単位/kg/時を静注する。輸液単独でも,ときに血糖値が急激に低下してインスリンを減量する必要が生じることがある;急速すぎる浸透圧の低下は脳浮腫につながる恐れがある。ときに,NKHSを呈するインスリン抵抗性Ⅱ型糖尿病患者は大量のインスリンを要する。血糖値が200〜250mg/dLに達したならば,輸液が完了し患者が食事を摂れるようになるまでインスリン注入速度を基礎レベル(1〜2単位/時)まで低下させるべきである。5%ブドウ糖液注入の追加が低血糖を回避するためにときに必要となる。通常は急性症状から回復してから用量を調整したインスリン皮下注射に切り替える。大半の患者では病状が安定した時点で経口血糖降下薬を再開できる。

カリウムの補充はDKAと同様である:血清カリウム値が3.3mEq/L未満であれば40mEq/時,3.3〜4.9mEq/Lであれば20〜30mEq/時を投与し,5mEq/L以上であれば投与は行わない。

最終改訂月 2007年5月

最終更新月 2005年11月

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