メルクマニュアル18版 日本語版
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移植の一般原則

同種移植では全てのレシピエントに拒絶反応の危険性がある;レシピエントの免疫系が移植片を異物として認識し,破壊しようとするからだ。免疫細胞を含む移植片を移植されたレシピエントには,移植片対宿主病(GVHD)を起こす危険性がある。これらの合併症の危険性は,移植前スクリーニングならびに移植前および移植中の免疫抑制療法により,最小限に抑えられる。

移植前スクリーニング

移植前スクリーニングでは,レシピエントおよびドナーはHLAおよびABO抗原の検査を受け,レシピエントはドナー抗原に対する前感作の検査を受ける。HLA組織適合検査は腎臓移植および最も一般的な種類のHSC移植にとって最も重要である。心臓,肝臓,膵臓,肺の移植は通常,迅速に,しばしばHLA組織適合検査が完了しないうちに行われるため,HLA組織の適合がこれら臓器の移植に果たす役割は十分確立されていない。

末梢血またはリンパ節リンパ球のHLA組織適合検査は,ドナーとレシピエントの組織適合性に関する既知の決定因子のうち最も重要な因子を適合させるのに使われる。1250を超える対立遺伝子が6つのHLA抗原(HLA-A,-B,-C,-DP,-DQ,-DR)を決定しているため適合は困難で,例えば米国では,腎臓ドナーとレシピエントの間で6抗原のうち平均2つしか適合していない。できるだけ多くのHLA抗原の適合は,生きた血縁ドナーからの腎臓およびHSC移植片の機能的生着を顕著に改善する;非血縁ドナーからの移植片のHLA適合も生存を改善するが,検知されない組織適合性の違いが複数あるため,改善の程度ははるかに低い。より優れた免疫抑制療法は移植の適用を拡大した。もはや,HLA不適合によって患者が自動的に移植不適格とされることはない。

ABOおよびHLAの適合性は移植片生着にとって重要である。ABO不適合は,表面にABO抗原をもつ,非常に血管に富む移植片(例,腎臓,心臓)の超急性拒絶反応の基盤となりうる。HLAおよびABOへの前感作は以前の輸血,移植または妊娠の結果であり,血清学的検査または,より一般的にはレシピエントの血清とドナーのリンパ球を使った補体存在下でのリンパ球傷害性試験によって検出できる。交差試験陽性はレシピエントの血清がドナーのABOまたはクラスⅠHLA抗原に対する抗体を含むことを示し,まだ同種血球凝集素を産生していない乳児(生後14カ月まで)は例外である可能性があるが,移植の絶対禁忌である。高用量静注免疫グロブリンはHLA抗体を抑制し,移植を容易にするために使われているが,長期のアウトカムは知られていない。交差試験陰性は安全性の保証にならない;ABO抗原が適合しているが同一でない場合(例,ドナーがOでレシピエントがA,BまたはAB),移植されたパッセンジャードナーリンパ球による抗体産生のため,溶血が合併する可能性がある。

HLAおよびABO抗原の適合は移植片生着を改善するが,非白人患者にとっては,白人ドナーと異なるHLA多型をもつ,HLA抗原への前感作割合が高いといったことがありうるため,また,血液型(OおよびB)のため,不利となる。

感染の危険性を最小限にするため,一般的な感染源への暴露および活動性感染を移植前に検出する必要がある。このスクリーニングには通常,病歴聴取;サイトメガロウイルス(CMV),エプスタイン-バーウイルス(EBV),単純ヘルペスウイルス(HSV),水痘帯状疱疹ウイルス(VZV),BおよびC型肝炎ウイルス,HIVの血清学的検査;ツベルクリン皮膚試験が含まれる。陽性の場合,移植後抗ウイルス治療が必要となるか(例,CMV感染またはB型肝炎),移植が禁忌となる(例,もしHIVが検出されれば)。

免疫抑制

免疫抑制薬は移植片拒絶反応をコントロールし,移植成功の主要な鍵となっている。しかしながら,それらは全ての免疫反応を抑制し,重篤な感染による死亡を含む多くの移植後合併症の一因となる。HLAが同一の移植片を使う場合を除き,免疫抑制薬は通常,移植後長期間使用を継続する必要があるが,手術の数週間後には初期の高用量から減量し,拒絶反応が起こらない限り低用量を無期限に継続できる。

コルチコステロイド: 通常移植時に高用量投与し,その後徐々に維持量まで減らし,維持量で無期限に投与する。コルチコステロイドは,移植の数カ月後には隔日投与できる;この投与方法は小児の発育制限防止に役立つ。もし拒絶反応が起これば,高用量投与が再開される。

カルシニューリン阻害剤: これらの薬剤(シクロスポリン,タクロリムス)はサイトカイン産生に必要なT細胞転写過程の阻害により,T細胞の増殖と活性化を選択的に阻害する。

シクロスポリンは心臓および肺移植で使われる最も一般的な薬剤である。単独で投与できるが,通常,より低い,毒性の弱い用量が使えるように他剤(例,アザチオプリンやプレドニゾン)と併用される。初回量は,移植後すぐに維持量まで減らされる。シクロスポリンはチトクロムP-450 3A酵素で代謝され,血中濃度は多くの他剤に影響を受ける。最も重篤な副作用は腎毒性である;シクロスポリンは輸入(糸球体前)細動脈の血管収縮を起こし,これが糸球体装置の障害,難治性糸球体低灌流,最終的には慢性腎不全につながる。また,EBVとの関連性による可能性があるが,B細胞リンパ腫と多クローン性B細胞リンパ増殖は高用量のシクロスポリン投与を受けている,またはシクロスポリンとT細胞に向けられた他の免疫抑制薬の併用患者で,より頻繁に発生する。その他の副作用には,肝毒性,難治性高血圧,他の腫瘍の発生率の増加,それほど重篤でない副作用(例,歯肉の肥厚や多毛症)が含まれる。

タクロリムスは,腎臓,肝臓,膵臓,腸管の移植に使われる最も一般的な薬剤である。タクロリムスは,移植時または手術の何日か後に投与を開始される。血中濃度に基づいて投薬すべきだが,血中濃度はシクロスポリンの場合と同じ薬物相互作用に影響される。タクロリムスはシクロスポリンで効果が得られない,または耐え難い副作用が起こる場合に有用となりうる。副作用は,タクロリムスの方が糖尿病を惹起する傾向が強いこと;歯肉の肥厚と多毛症の発生がそれほど一般的でないことを除き,シクロスポリンと同様である。リンパ球増殖性疾患はタクロリムス使用患者でより頻繁に,移植の何週間か後でも,発生するようだ。もしリンパ増殖性疾患が発生し,しかもカルシニューリン阻害剤が必要であれば,タクロリムスの使用を中止してシクロスポリンで代用するべきである。

プリン代謝阻害薬: 例としてアザチオプリンおよびミコフェノール酸モフェチル(MMF)が挙げられる。アザチオプリンは代謝拮抗物質で,通常,移植時に投与が開始される。ほとんどの患者で無期限に忍容性がある。最も重篤な副作用は,骨髄抑制と,まれに発生する肝炎である。アザチオプリンはしばしば,低用量のシクロスポリンと併用される。

MMFは代謝されてミコフェノール酸となるプロドラッグで,リンパ球増殖の律速段階となるグアニン核酸合成経路の酵素,イノシンモノホスフェイト脱水素酵素を可逆的に阻害する。MMFは腎臓,心臓または肝臓移植患者に,シクロスポリンおよびコルチコステロイドとともに投与される。最も一般的な副作用は,白血球減少,悪心,嘔吐,下痢である。

ラパマイシン: これらの薬剤(シロリムス,エバロリムス)はリンパ球の重要な制御キナーゼを阻害し,これが結果的に細胞周期の停止とサイトカイン刺激へのリンパ球反応の阻害につながる。

シロリムスは典型的には,シクロスポリンおよびコルチコイドとともに投与され,腎不全患者に最も有用と考えられる。副作用には,高脂血症および創傷治癒障害,ならびに白血球減少や血小板減少,貧血を伴う骨髄抑制が含まれる。

エバロリムスは典型的に,心臓移植の拒絶反応予防に使われ,副作用はシロリムスと同様である。

免疫抑制性免疫グロブリン: 例として,抗リンパ球グロブリン(ALG)と抗胸腺細胞グロブリン(ATG)があり,これらはそれぞれ,ヒトのリンパ球または胸腺細胞に対する動物の抗血清の分画である。ALGおよびATGは液性免疫を維持しながら細胞性免疫を抑制する。それらは,他の免疫抑制薬を毒性の低い低用量で投与できるように,これらの薬剤と併用される。急性拒絶反応のコントロールのためのALGまたはATGの使用は,移植片の生着率を改善する;移植時の使用は拒絶反応の発生率を下げ,シクロスポリンの投与開始を遅くできるようにし,それによりこの薬剤の毒性を弱めうる。高度に精製された血清分画の使用が副作用(例,アナフィラキシー,血清病,抗原-抗体誘導性糸球体腎炎)の発生率を顕著に低下させている。

モノクローナル抗体(mAb): T細胞に対するmAbは,ALGおよびATGに比べて抗T細胞抗体の濃度が高く,無関係な血清蛋白は少ない。マウスのmAbであるOKT3は,現在臨床使用のために入手可能な唯一のmAbである。OKT3はT細胞レセプター(TCR)-抗原間の結合を阻害し,その結果,免疫抑制が起こる。OKT3は主に急性拒絶反応発症時に使われるが,拒絶反応の発生率を低下させる,または発生を遅らせるために,移植時に予防的にも使われる。しかしながら,予防的使用の効果は重度のCMV感染および中和抗体の発生を含む副作用を考慮して検討する必要がある;これらの副作用は実際の急性拒絶反応発症時のOKT3の使用を不可能にする。OKT3は初回使用でTCR-CD3複合体と結合し,細胞を活性化してサイトカイン放出を促すが,これらのサイトカインは発熱,悪寒,筋肉痛,関節痛,悪心,嘔吐および下痢の症状を引き起こす。コルチコステロイド,解熱薬および抗ヒスタミン薬の前投与でこれらの症状を軽減できる。初回投与時の反応には,それほど一般的ではないが,補体活性化による可能性のある胸痛,呼吸困難および喘鳴が含まれる。反復使用はEBV誘導性のBリンパ球増殖性疾患の発生率上昇と関連している。まれに,無菌性髄膜炎および溶血性尿毒症症候群が発生する。

抗インターロイキン(IL)-2受容体mAbは活性化したT細胞から分泌されるIL-2の作用を妨げ,T細胞増殖を阻害する。2つのヒト化抗TaT(HAT)抗体,バシリキシマブおよびダクリズマブは腎臓,肝臓および腸管移植の急性拒絶反応治療への使用が多くなっている;これらは移植時の補助免疫抑制療法としても使われている。報告された唯一の副作用はアナフィラキシーだが,1件の試験ではダクリズマブをシクロスポリン,MMFおよびコルチコステロイドと併用する場合,死亡率が上昇しうると示唆されている。また,IL-2受容体抗体の使用経験は限られており,リンパ球増殖性疾患の危険性の増大は否定できない。

放射線照射: 移植片もしくはレシピエントの局所組織,またはその両方の放射線照射は,腎移植の拒絶反応治療で他の治療(例,コルチコステロイドおよびATG)の効果がない場合,使用できる。全リンパ照射法は実験的だが,まずサプレッサーT細胞の刺激により,その後おそらく特異的抗原反応性細胞のクローン除去により,安全に細胞性免疫を抑制するようだ。

将来の治療法: 他の免疫反応を抑制せずに,移植片抗原に特異的な寛容を惹起するプロトコルと薬剤が探索されている。有望な2つの方法として:細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)-IgG1融合蛋白によるT細胞共刺激経路の阻害;一過性のT細胞除去とドナーHSCの定着を惹起し,その後の同一ドナーからの固形臓器移植に対する寛容を生じさせるために骨髄非破壊的移植前治療(例,シクロホスファミド,胸腺照射,ATGおよびシクロスポリンによる)を使用したキメラ現象(ドナーおよびレシピエントの免疫細胞が共存し,これらの細胞内で移植片組織が自己として認識されている)の惹起がある。

移植後の合併症

拒絶反応: 固形臓器の拒絶反応は超急性,急速,急性または慢性(晩期)となりうる。これらの分類は時期が少し重複するが,組織病理学的に識別できる。症状は臓器により異なる( 移植: 移植拒絶反応の徴候表 1: 表参照)。

表 1

PDF 移植拒絶反応の徴候

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超急性拒絶反応は移植後48時間以内に,移植片抗原に対する既存の補体結合抗体(前感作)によって起こる。移植前スクリーニングが改善されているため,この種類の拒絶反応はまれ(1%)になっている。超急性拒絶反応は小脈管の血栓症と移植片梗塞を特徴とする。移植片除去以外に効果的な治療法はない。

急速拒絶反応は移植後3〜5日に,移植片抗原に対する既存の非補体結合抗体によって起こる。この種類の拒絶反応もまれである。組織病理学的には血管の変化を伴うまたは伴わない細胞浸潤を特徴とする。治療は高用量コルチコステロイドパルス療法,また,もし血管の変化が起これば,抗リンパ球製剤を用いる。血中の抗体をより急速に除去しうるプラスマフェレーシスが使われている。

急性拒絶反応は移植後6日から3カ月に起こる移植片破壊で,同種移植片の組織適合抗原に対するT細胞介在性の遅延型過敏反応を原因とする。この種類の拒絶反応は,10年以内に起こる全ての拒絶反応の約12を占める。様々な程度の出血,浮腫,壊死を伴う単核細胞浸潤を特徴とする。血管内皮が主な標的となっているようだが,脈管の全体性は通常,保たれる。急性拒絶反応はしばしば,強い免疫抑制療法(例,コルチコステロイドパルス療法およびALG)によって改善できる。拒絶反応の回復後は,移植片の重度に損傷を受けた部分は線維形成により治癒,残りの部分は正常に機能し,免疫抑制薬の用量は非常に低くすることができ,同種移植片は長期間生着しうる。

慢性拒絶反応は,発熱をしばしば伴わずに起こる移植片の機能不全で,典型的には移植後数カ月から数年で起こるが,ときには数週間以内に起こることもある。原因は複数あり,早期の抗体媒介性拒絶反応,周術期の虚血再灌流傷害,薬剤毒性,感染,血管性の要因(例,高血圧,高脂血症)が含まれる。慢性拒絶反応は,全ての拒絶反応のうち残り12 のほとんどを占める。平滑筋細胞と細胞外基質からなる内膜の過形成(移植動脈硬化)が徐々に進行し,最終的に血管内腔を塞ぎ,移植片の斑状の虚血と線維化を来たす。慢性拒絶反応は免疫抑制療法にかかわらず潜行性に進行する;確立された治療法はない。

感染: 免疫抑制薬,臓器不全を伴う続発性免疫不全および手術は,移植患者をより感染しやすくする。まれに,移植臓器が感染源(例,CMV)となる。

最も一般的な徴候は発熱で,局所的徴候を伴わないことが多い。発熱は急性拒絶反応の症状でもあるが,通常は移植片機能不全の徴候を伴う。これらの徴候がなければ,治療法は他の原因不明熱(感染性疾患の生物学: 原因不明熱を参照 )と同様である;移植後の症状および徴候の発生時期は,鑑別診断を絞りこむのに役立つ。

移植後最初の1カ月には,ほとんどの感染が他の手術患者に感染するものと同じ院内感染細菌および真菌(例,肺炎を起こすシュードモナス属,創傷感染を起こすグラム陽性菌)によって生じる。初期感染について最大の懸念は,菌が縫合部位で移植片またはその供給血管に感染し,真菌性動脈瘤または裂開を起こしうることだ。

日和見感染は移植後1〜6カ月で起こる(治療は本書別項を参照)。感染は細菌性(例,リステリア症,ノカルジア症),ウイルス性(例,CMV,EBV,VZVまたはBもしくはC型肝炎ウイルスによるもの),真菌性(例,アスペルギルス症,クリプトコッカス症,ニューモシスチスジロベジー感染),または寄生虫性(例,糞線虫症,トキソプラズマ症,トリパノソーマ症,リーシュマニア症)のことがある。

感染の危険性は6カ月後には,約80%の患者で基準レベルに戻る。約10%の患者では,移植片のウイルス感染,転移性感染(例,CMV網膜炎,大腸炎),またはウイルス誘発性癌(例,肝炎と肝細胞癌,ヒトパピローマウイルスと基底細胞癌)など,初期感染の合併症が起こる。その他の患者は慢性拒絶反応を起こして高用量の免疫抑制薬を必要とし(5〜10%),無期限に日和見感染の高い危険性が続く。

移植後,ほとんどの患者に感染の危険性を低くするため抗菌薬が投与される。薬剤の選択は個人の危険性と移植の種類による;治療法には,ニューモシスチスジロベジー感染予防または腎臓移植患者での尿路感染予防のための4〜12カ月にわたるトリメトプリム/スルファメトキサゾール80/400mg,1日1回経口投与が含まれる。好中球減少症の患者には,グラム陰性菌感染を防ぐため,ときにキノロン抗生物質(例,レボフロキサシン500mg,1日1回経口または静脈内投与)が投与される。不活性化ワクチンは移植後,安全に投与できる;弱毒化ワクチンの危険性は,特に低用量の免疫抑制薬を使用している患者については潜在的な効果とのバランスを考慮する必要がある。

腎障害: 固形臓器移植後6カ月間に,15〜20%の患者でGFRが30〜50%下降する。これらの患者は通常,高血圧も生じる。発生率は腸管移植レシピエントで最も高く(21%),心肺移植レシピエントで最も低い(7%)。カルシニューリン阻害剤の腎毒性と糖尿病誘発性が最も重要な要因だが,手術前後の腎への障害,移植前の腎不全またはC型肝炎ウイルス感染,および他の腎毒性薬剤の使用も一因となる。GFRは初期の低下後,典型的には安定または低下が遅くなる;しかし,死亡の危険性は後に腎移植が行われない限り4倍となる。移植後の腎不全はカルシニューリン阻害剤の早期の離脱により予防しうるが,安全な最小用量は確定されていない。

癌: 長期の免疫抑制はウイルス誘発性癌,特に扁平上皮および基底細胞癌,リンパ球増殖性疾患(主にB細胞性非ホジキンリンパ腫),肛門性器(子宮頸部を含む)の癌,ならびにカポジ肉腫の発生率を上昇させる。治療法は非免疫抑制患者の癌と同様である;免疫抑制の減弱化または中断は,悪性度の低い腫瘍では通常,必要ではないが,より進行性が高い腫瘍とリンパ腫では推奨される。部分的にHLAが適合した細胞傷害性T細胞の輸注は,いくつかの型のリンパ球増殖性疾患の潜在的な治療法として研究されている。罹患患者では骨髄生検による検査が推奨される。

その他の合併症: 免疫抑制薬(特にコルチコステロイドおよびカルシニューリン阻害剤)は,移植前に危険性のあった患者(例,身体的活動の減少,喫煙およびアルコールの摂取,または既存の腎疾患による)で骨吸収を増やし,骨粗鬆症の危険性を高くする。ルーチンではないが,移植後のビタミンD,ビスホスホネート,または他の抗骨吸収剤の使用は予防に役立ちうる。

小児においては,主にコルチコステロイドの慢性的使用の結果として発育しないことが懸念される。発育不全は,コルチコステロイドを移植片の拒絶反応につながらない最小用量まで漸減することで軽減しうる。

カルシニューリン阻害剤およびコルチコステロイドの使用による高脂血症は,全身性のアテローム性動脈硬化症を起こしうる;典型的には,移植後15年を超えた腎臓移植レシピエントで発症する。

GVHDはドナーのT細胞がレシピエントの自己抗原に反応する際に生じる。GVHDは主にHSCのレシピエントが罹患するが,肝臓および小腸移植のレシピエントも罹患しうる(移植: 手技を参照 )。

禁忌

移植の絶対禁忌には,活動性感染,癌(肝臓に限局する肝細胞癌を除く)および妊娠が含まれる。相対的禁忌には,65歳を超える年齢,機能または栄養状態の不良(重度の肥満を含む),HIV感染,多臓器機能不全,物質乱用障害および治療不遵守の可能性が高い場合を含む。相対的禁忌に該当する患者の移植適応の判断は医療センターによって異なる。免疫抑制薬はHIV陽性の移植レシピエントにとって安全で効果的である。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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