メルクマニュアル18版 日本語版
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フルオロキノロン系

フルオロキノロン系( 細菌および抗菌薬: フルオロキノロン系表 9: 表参照)は,細菌のDNA複製に不可欠な酵素であるDNAジャイレースおよびトポイソメラーゼの活性を阻害することにより,濃度依存性の殺菌活性を示す。フルオロキノロン系は抗菌スペクトルおよび薬理により2つのグループに分けられる:古いグループにはシプロフロキサシン,ノルフロキサシン,およびオフロキサシンが,そして新しいグループにはガチフロキサシン,ゲミフロキサシン,レボフロキサシン,モキシフロキサシン,およびトロバフロキサシンがある。

表 9

フルオロキノロン系

シプロフロキサシン

モキシフロキサシン

ガチフロキサシン

ノルフロキサシン

ゲミフロキサシン

オフロキサシン

レボフロキサシン

トロバフロキサシン

薬理: シプロフロキサシン,ガチフロキサシン,レボフロキサシン,モキシフロキサシン,オフロキサシン,およびトロバフロキサシンは経口的および非経口的に投与できるが,ゲミフロキサシンおよびノルフロキサシンは経口投与のみである。数種のフルオロキノロン系は耳および眼用の製剤としても利用できる。経口吸収は陽イオン(アルミニウム,マグネシウム,カルシウム,亜鉛および鉄製剤)の同時投与により低下する。経口的および非経口的投与後,フルオロキノロン系はほとんどの細胞外液および細胞内液中に広く分布し,前立腺,肺,および胆汁に集中する。ほとんどは肝臓で代謝され,尿中に排泄されて尿中濃度増加を来す。モキシフロキサシンは主に胆汁中に排泄される。モキシフロキサシンを除き,腎不全においては用量減量が必要である。古いフルオロキノロン系は通常1日2回の投与,新しいフルオロキノロン系および徐放性シプロフロキサシンは1日1回の投与である。

適応症: フルオロキノロン系はナイセリアインフルエンザ菌モラクセラ-カタラーリスマイコプラズマクラミジアおよびクラミドフィラレジオネラ,腸内細菌科,および緑膿菌(特にシプロフロキサシンの場合)に対して活性である。フルオロキノロン系は結核菌,一部の非定型抗酸菌,およびメチシリン感受性ブドウ球菌に対しても活性であるが,院内感染性のメチシリン耐性ブドウ球菌は通常耐性である。古いフルオロキノロン系はレンサ球菌および嫌気性菌に対する活性が低い。新しいフルオロキノロン系はレンサ球菌(ペニシリン感受性の低下した肺炎球菌を含む)および一部の嫌気性菌に対して確実な活性をもつ。使用の増加に伴い,腸内細菌科,緑膿菌肺炎球菌およびナイセリアの間で耐性が発現している(特に古いフルオロキノロン系に対して)。

フルオロキノロン系(モキシフロキサシンを除く)は,トリメトプリム-スルファメトキサゾール耐性の大腸菌が15%以上を閉める尿路感染症に対する経験的選択薬である。これらは細菌性前立腺炎,サルモネラ菌血症,および通常は腸チフスにおいて有効である。フルオロキノロン系は感染性下痢のほとんどの原因菌(サルモネラ種,カンピロバクター種,赤痢菌種,ビブリオ種,および腸炎エルシニア)に対し優れた活性を有するが,クロストリジウム-ディフィシルによる下痢は例外である。オフロキサシンの3日間のクールは軟性下疳に有効であり,7日間のクールはクラミジア-トラコマチスが原因の感染症に推奨される。新しいフルオロキノロン系はしばしば市中感染性肺炎に使用されるが,最近フルオロキノロンを使用した患者には別のレジメンを使用するべきである。新しいフルオロキノロン系(およびアジスロマイシン)はレジオネラ肺炎に対する選択薬である。シプロフロキサシンは緑膿菌に対する活性が優れているため,院内感染性肺炎に対して通常は他の抗緑膿菌薬とともに経験的に使用する。シプロフロキサシンはグラム陰性桿菌性または黄色ブドウ球菌性骨髄炎に対する長期経口治療,および髄膜炎菌性疾患予防に使用するが,2001年の米国におけるバイオテロ事件では炭疸菌予防の目的で広く使用された。

毒性: 重篤な有害反応はまれである。およそ5%の患者が,胃腸の直接刺激による上部消化管有害作用および中枢神経系作用を経験する。下痢,白血球減少,貧血,および光線過敏症はまれである。特に40歳未満の女性において1週間を超えてゲミフロキサシンを使用する場合を除き,発疹はまれである。フルオロキノロン系は,短期間の使用後であってもアキレス腱の断裂を含む膝蓋腱炎を起こしやすい。腎毒性はまれである。軽度の頭痛,傾眠,不眠症,めまい,および気分変動などの中枢神経系作用が5%未満に発現する。トロバフロキサシンは中枢神経系の有害事象の発現率が最も高く,めまい,ふらつき,または眩暈が最も多い。発作はまれであるが,これらの薬物は中枢神経系障害患者においては避けるべきである。NSAIDはフルオロキノロン系の中枢神経系刺激作用を増強させうる。フルオロキノロン系は小児に対して禁忌であり,成長板が開いていると軟骨病変を引き起こしうる。妊婦におけるフルオロキノロン系の安全性は確立されていない。シプロフロキサシンはテオフィリン濃度を上昇させ,その結果テオフィリン関連の有害作用を来すことがある。フルオロキノロン系はQT間隔を延長させ,心室性不整脈および突然の心臓死を招く可能性がある。以下の患者における使用を避けることにより,不整脈のリスクを低下させうる:既知のQT間隔延長患者;補正されていない低カリウム血症,低マグネシウム血症,または著しい徐脈を有する患者;QT間隔を延長または徐脈を起こすことが知られている薬物(メトクロプラミド,シサプリド,エリスロマイシン,クラリスロマイシン,クラスIaおよびIIIの抗不整脈薬,および三環系抗うつ薬)の併用治療を受けている患者。まれな例ではトロバフロキサシンが重度の肝毒性を引き起こす(特に2週間を超えて使用する場合);そのため,トロバフロキサシンはほとんど使用されない。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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