メルクマニュアル18版 日本語版
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バンコマイシン

バンコマイシンは細胞壁合成を抑制する殺菌性抗菌薬である。

薬理: バンコマイシンは経口的にはあまり吸収されない。非経口的に投与すると,胆汁および胸水,心膜液,滑液,および腹水に浸透する。しかしながら,まさに炎症を起こしている脳脊髄液への浸透は低く不安定であり,髄膜炎に使用する用量を通常よりも増やさなければならない。バンコマイシンは糸球体濾過により未変化で排泄されるため,腎不全においては用量減少が必要である。重症患者においては,血清濃度を投与2回目または3回目の後に測定して,10 μg/mL(トラフ濃度)と30〜45 μg/mL(ピーク濃度)の間に保つべきである。

適応症: バンコマイシンは,ほとんどのグラム陽性球菌および桿菌(ペニシリン系およびセファロスポリン系に耐性のほぼ全ての黄色ブドウ球菌およびコアグラーゼ陰性ブドウ球菌株も含む)に対して活性である。バンコマイシンは腸球菌に対して静菌性であるが,多くの腸球菌株および一部の黄色ブドウ球菌株は耐性である。

バンコマイシンは,黄色ブドウ球菌,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌,肺炎球菌β溶血性レンサ球菌,コリネバクテリウムグループJK,ビリダンス型レンサ球菌,または腸球菌に起因する重篤な感染症および心内膜炎に対して,βラクタム系が薬物アレルギーまたは耐性のため使用できない場合の選択薬である。しかしながら,黄色ブドウ球菌性心内膜炎に対するバンコマイシンの効果は,抗ブドウ球菌性βラクタム系よりも小さい。バンコマイシンは,メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌性の人工弁心内膜炎および腸球菌性心内膜炎を治療する際,他の抗菌薬と併用される。バンコマイシンはペニシリン感受性が低下した菌株による肺炎球菌性髄膜炎の代替薬としても使用されるが,バンコマイシンの脳脊髄液への不安定な浸透(特にデキサメタゾンの併用中)や臨床的失敗例の報告もあるため,肺炎球菌性髄膜炎治療のために単独で使用する場合,バンコマイシンは最適治療薬とはいえない。

クロストリジウム-ディフィシル腸炎治療用の経口バンコマイシンは,メトロニダゾールに反応しない患者用に保留する。バンコマイシンはまた,菌血症を来す可能性の高い胃腸または泌尿生殖器手術を受けるペニシリンアレルギーのハイリスク患者において,心内膜炎の予防にも使用される。

毒性: 過敏性反応(発疹,発熱,ならびに可逆性の好中球減少および血小板減少)が起こることがある(特に治療を2週間以上継続したとき)。アミノ配糖体と併用しない限り腎毒性はまれである。静脈内注入中にまれに静脈炎が起こる。レッドネック症候群(頸部および肩にそう痒および潮紅を生じることのあるヒスタミン介在性反応)を避けるため,注入には最低60分以上かけるべきである。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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