メルクマニュアル18版 日本語版
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毒素性ショック症候群

毒素性ショック症候群はブドウ球菌またはレンサ球菌の外毒素によって引き起こされる。症状は高熱,低血圧,びまん性紅斑性発疹,および重度かつ難治性のショックへと急速に進行する多臓器病変である。診断は臨床的に,および菌の分離により行う。治療は抗生物質,集中的な支持療法,および免疫グロブリンなどである。

病因と病態生理

毒素性ショック症候群(toxic shock syndrome;TSS)は外毒素産生性球菌により引き起こされる。ファージグループ1型黄色ブドウ球菌はTSS毒素-1(TSST-1)または関連外毒素を産生し,化膿レンサ球菌の特定の菌株は少なくとも2種類の外毒素を産生する。

最もリスクが高いのは,腟にすでにブドウ球菌が定着していてタンポンを使用する女性である。タンポン使用に関係する機械的あるいは化学的要因が,外毒素の産生を助長するか,外毒素が粘膜損傷部または子宮を介して血流へ侵入するのを促進すると考えられる。数少ない研究からの推測によると,現在でも,月経中の女性約10万人当たり3例の発症が示唆され,タンポンを使用しない女性や術後および分娩後の女性における症例も報告されている。症例の約15%が分娩後または術後のブドウ球菌性創傷感染症として発生するが,それらはしばしば軽度のようである。インフルエンザ,骨髄炎および蜂巣炎に関連する症例も報告されている。

ブドウ球菌性TSSによる死亡率は3%未満である。発症後の最初の4カ月間にタンポンの使用を続けた女性では,再発がよくみられる。

レンサ球菌性毒素性ショック症候群は黄色ブドウ球菌に起因するものと類似しているが,その死亡率は高い(20〜60%)。さらに,症例の約50%が化膿レンサ球菌血症を,50%が壊死性筋膜炎を起こしている(どちらもブドウ球菌性TSSでは一般的ではない)。患者は通常,それまでは健康な小児または成人である。皮膚および軟部組織の一次感染が他の部位よりも一般的である。ブドウ球菌性TSSとは対照的に,レンサ球菌性TSSは呼吸促迫症候群を起こしやすく,典型的皮膚反応を起こす可能性は低い。

症状と徴候

発症は突然で,発熱(39〜40.5°Cで,上昇したままである),低血圧,びまん性斑状紅皮症および少なくとも他の2カ所の臓器系病変を伴う。ブドウ球菌性TSSは嘔吐および下痢,筋肉痛およびクレアチンホスホキナーゼの上昇,粘膜炎,肝障害,血小板減少,ならびに錯乱を起こしやすい。ブドウ球菌性TSSの発疹は,発症後3〜7日の間に落屑しやすい(特に手掌および足底において)。レンサ球菌性TSSは一般的に呼吸促迫症候群,凝固障害,および肝障害を引き起こし,発熱,倦怠,および軟部組織感染部位の激痛を起こしやすい。腎機能障害はどちらのTSSともに頻繁に起こる。この症候群は48時間以内に失神,ショックそして死亡へと進行しうる。重症度の低いブドウ球菌性TSS症例はかなり多くみられる。

診断

診断は臨床的に,および血液培養(ブドウ球菌の場合)または局所部位からの菌の分離により行う。TSSは川崎病に類似するが,川崎病は一般に5歳未満の小児に起こり,ショック,高窒素血症,または血小板減少を発現せず,皮膚発疹は斑丘疹である。考慮すべき他の疾患は,猩紅熱,ライ症候群,ブドウ球菌熱傷様皮膚剥脱症候群,髄膜炎菌血症,ロッキー山紅斑熱,レプトスピラ症,ウイルス性発疹性疾患である。これらの疾患は特異的な臨床的相違,培養,および血清学的検査により除外される。

培養用の検体は鼻腔(ブドウ球菌),咽頭(レンサ球菌),腟(両者),および血液のあらゆる病変から採取すべきである。腎臓,肝臓,骨髄,および心肺機能の継続的監視が必要である。

治療

TSSが疑われる患者は直ちに入院して集中的治療を受けるべきである。タンポン,ペッサリーおよび他の異物を速やかに取り除き,原発感染が疑われる部位の徹底的な汚染除去を行うべきである。軟部組織のMRIまたはCTが感染部位の特定に役立つ。汚染除去として,患者が健康そうに見える場合でも手術創の再視診および洗浄を行う;壊死組織切除を反復する;菌が自然に定着した可能性のある部位(洞,腟)を洗浄する。循環血液量減少,低血圧,ショックの予防または治療のために,水分および電解質の補充を行う。組織への水分損失が全身的に生じうるため,深刻なショックが持続することがある。ときに積極的な急速輸液および循環維持療法が必要である。

明らかな感染は治療すべきである。化膿レンサ球菌が分離された場合,βラクタム(例,ペニシリン)にクリンダマイシン(900mg,静注,8時間毎)を加え14日間継続する方法が最も有効な抗生物質療法として提唱されている。クリンダマイシンを使用する論理的根拠は別項に説明されている(グラム陽性球菌: 咽頭炎を参照 )。急性期疾患中の抗生物質治療はまた,病巣の根絶と再発予防にも役立つ。TSS毒素に対する静注免疫グロブリン(400mg/kg)による受動免疫は,どちらの種類の重症TSS症例においても有用で数週間持続するが,疾患そのものが能動免疫を誘導しないことがあり,そのため再発の可能性がある。

TSST-1に対する血中抗体が陽性化しないならば,ブドウ球菌性TSSの既往のある女性はおそらくタンポンおよび頸管キャップ,タンポン綿球,ペッサリーの使用を控えるべきである。TSST-1症の有無にかかわらず,全ての女性に対して,タンポンの頻繁な交換またはナプキン使用への変更を助言する方がよいと思われる。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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