メルクマニュアル18版 日本語版
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バルトネラ感染症

バルトネラ種はグラム陰性菌で以前はリケッチアに分類されていた。この菌種は,ネコひっかき病,急性発熱性貧血,慢性皮膚発疹,および免疫不全宿主における播種性疾患など,いくつかのまれな感染を引き起こす( グラム陰性桿菌: 一部のバルトネラ感染症表 1: 表参照)。

表 1

一部のバルトネラ感染症

疾患

発現の徴候*

リスク患者

媒介昆虫

治療

細菌性血管腫症

B.henselae

B.quintana

隆起性桑実状の皮膚病変

免疫不全患者

シラミ,ダニ,ノミ(?)

ドキシサイクリン†,エリスロマイシン

塹壕熱

B.quintana

B.henselae

遷延性または再発性の発熱

密集または衛生状態不良の状況下で暮らす人,全身性感染症のリスクのある免疫不全患者

ヒトジラミ,ダニ

ドキシサイクリン†,エリスロマイシン,リファンピン‡

ネコひっかき病

B. henselae

リンパ節腫脹,発熱

猫の飼い主,全身性感染症のリスクのある免疫不全患者

ノミ(?)

ドキシサイクリン†,エリスロマイシン,リファンピン‡

オロヤ熱,ペルーいぼ,カリオン病

B. bacilliformis

急性熱性溶血性貧血,皮膚病変,二次感染症

高度600-2400mのアンデス山中の住人

フレボトムス属サシチョウバエ

ドキシサイクリン†,クロラムフェニコール,ペニシリン,ストレプトマイシン

*正常宿主において。

†ドキシサイクリンが一般的に選択される薬物である。

‡通常,免疫系が正常な患者では治療の必要はない。

ネコひっかき病

ネコひっかき病はBartonella henselaeに起因する感染症である。症状は局所の丘疹および所属リンパ節炎である。診断は臨床的に行い,生検により確定する。治療は局所の温湿布および鎮痛薬による。

飼い猫がB. henselaeの主な保菌者である。米国の猫におけるこの菌に対する抗体の保有率は14〜50%である。患者のおよそ99%では猫(そのほとんどが健康)との接触が報告されている。ネコノミが付加的に媒介者となることがある。小児が最もしばしば罹患する。

症状と徴候

ひっかき後3〜10日以内に,ほとんどの患者がひっかき傷の部位に紅斑性で痂皮を有する丘疹(まれに膿胞)を発症する。所属リンパ節腫脹が2週間以内に発現する。リンパ節は初期には硬く圧痛があり,後に波動性となり瘻孔を形成して排膿することがある。発熱,倦怠,頭痛,および食欲不振がリンパ節腫脹に併発することがある。

患者の5〜14%に次のような非定型的症状が現れる:6%にパリノー結膜腺症候群(耳介前リンパ節の腫脹を伴う結膜炎),2%に神経学的症状(脳障害,けいれん,視神経網膜炎,脊髄炎,対麻痺,脳動脈炎),1%未満に肝脾肉芽腫症。AIDS患者では重度の播種性疾患が起こりうる。

皮膚病変およびリンパ節腫大は2〜5カ月以内に自然に消失する。通常は完全に回復するが,重度の神経学的または肝脾疾患は例外で,致死的なこともあれば後遺症を残すこともある。

診断と治療

診断はB. henselaeの培養またはその陽性抗体価,PCR法,またはリンパ節吸引物の培養により確定する。

治療法は局所的な温湿布と鎮痛薬である。リンパ節が波動性ならば,針吸引により疼痛は通常軽減する。抗生物質治療の有益性は不明瞭であり,一般的に限局性感染に対して使用するべきではない。AIDS患者における菌血症に対しては,シプロフロキサシン,ゲンタマイシン,ドキシサイクリン,およびトリメトプリム-スルファメトキサゾール(TMP-SMX)が使用されている。菌血症の消失には通常長期療法(例,数週間〜数カ月)が必要である。in vitroの抗生物質感受性は,しばしば臨床結果と相関しない。

オロヤ熱およびペルーいぼ

オロヤ熱およびペルーいぼはBartonella bacilliformisに起因する感染症である。オロヤ熱は初期暴露で起こり,ペルーいぼは一次感染からの回復後に起こる。

コロンビア,エクアドル,およびペルーのアンデス山脈に限定される風土病で,いずれもフレボトムス属サシチョウバエにより人から人へ広がる疾患である。

オロヤ熱の症状は発熱および著明な貧血で,それらは突発し,発症時は無痛性である。貧血は主として溶血性であるが,骨髄抑制も起こる。筋肉痛および関節痛,激しい頭痛,ならびにしばしばせん妄および昏睡が起こりうる。サルモネラや他の腸内細菌による菌血症が重複して発生することがある。ペルーいぼは多発性皮膚病変として発現するが,細菌性血管腫症に酷似し通常は四肢および顔面に生じる。これらは数カ月から数年持続することがあり,疼痛および発熱を併発しうる。

オロヤ熱の診断は血液培養により確定する。未治療患者の死亡率は50%を超える。オロヤ熱にはしばしばサルモネラ菌血症が併発するため,クロラムフェニコール500〜1000mg,経口,6時間毎,7日間が最適治療である。ペルーいぼは症状,およびときに生検(皮膚の血管新生を示す)により診断する。ペルーいぼはほとんどの抗生物質治療により軽快するが,再発がよくみられ長期療法を必要とする。

細菌性血管腫症

(類上皮性血管腫症)

細菌性血管腫症はB. henselaeまたは B. quintanaによる皮膚感染症である。

細菌性血管腫症はほとんどの場合免疫不全患者に起こり,しばしば周囲を鱗屑環に囲まれた隆起性で赤みを帯びたイチゴ状病変を特徴とする。病変部を傷つけると大量に出血する。それらはカポジ肉腫または化膿性肉芽腫に類似することがある。感染はシラミ,ダニ,およびおそらく飼い猫のノミによって広がる。疾患は細網内皮系全体に広がりうる(特にAIDS患者において)。診断は皮膚病変の組織病理学,培養検査,およびPCR解析による。バルトネラ属が疑われる場合,特殊染色およびPCR増幅検査を要するため,検査室に報告しなければならない。治療はエリスロマイシン500mg,経口,6時間毎,またはドキシサイクリン100mg,経口,12時間毎を少なくとも3カ月継続する。

塹壕熱

(Wolhynia,脛骨,または五日熱)

塹壕熱はB. quintanaまたはB. henselaeに起因するシラミおよびダニ媒介性疾患であり,もともとは第1次および第2次世界大戦中の兵士にみられた。症状は急性熱性疾患で,ときに発疹を伴う。診断は血液培養による。治療はマクロライドまたはドキシサイクリンによる。

人が唯一の保菌者である。B. quintanaは,感染したシラミの糞が皮膚の擦過傷または結膜にこすりつけられて人に伝播する。B. henselaeはダニの刺咬傷により伝播する。この疾患はメキシコ,チュニジア,エリトリア,ポーランド,元ソビエト連邦の風土病であり,米国のホームレス集団において再発生している。

14〜30日の潜伏期後,発熱,脱力,めまい,頭痛,激しい背痛および下肢疼痛とともに突然発症する。発熱は40.5°Cに達し5〜6日間続くことがある。約1/2の症例で,発熱が5〜6日おきに1〜8回再発する。一時的な斑状または丘疹状発疹,ときに肝腫大および脾腫が起こる。再発がよくみられ,初発から最長10年後に起こっている。

シラミの蔓延が深刻な地域に住む人においては,塹壕熱を疑うべきである。レプトスピラ症,発疹チフス,回帰熱,マラリアを考慮しなければならない。

血液培養により微生物が同定されるが,発育には1〜4週間を要することがある。この疾患は,初発期間,再発期間,および再発と再発の間の無症候性期間を通じて持続的リケッチア血症がみられるのが特徴である。1〜2カ月で通常は完全に回復し,死亡率はごくわずかであるが,臨床的回復後も数カ月間菌血症が存続することがあり,マクロライドまたはドキシサイクリンによる長期(1カ月を超える)療法が必要かもしれない。ヒトジラミを駆除しなければならない(寄生虫性皮膚感染症: 衣シラミを参照 )。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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