Salmonella属はS. entericaとS. bongoriの2菌種に分類され,2400を超える血清型が知られている。これらの血清型の一部には名前が付けられている。そのような場合によく用いられる慣用法は,属名と血清型だけが含まれるように学名を短縮するというもので,例えばS. enterica,亜種enterica,血清型Typhiは,Salmonella Typhiと短縮される。
Salmonella属細菌は,宿主ヒトに対する菌の適応性に基づいて3つの群に分けられることもある:
ヒト宿主に高い適応性を示し,ヒト以外に宿主をもたない群:この群にはチフス菌(S. Typhi)とパラチフス(S. Paratyphi)A菌,B菌(S. Schottmülleriとも呼ばれる),C菌(S. Hirschfeldiiとも呼ばれる)が含まれ,ヒトのみに病原性を示し,一般的には 腸チフス 腸チフス 腸チフスは,グラム陰性細菌である血清型Typhi(Salmonella enterica血清型Typhi[S. Typhi])を原因菌とする全身性疾患である。症状は高熱,極度の疲労,腹痛,およびバラ色の発疹がある。診断は臨床的に行い,培養により確定する。治療はセフトリアキソン,シプロフロキサシン,またはアジスロマイシンによる。 ( サルモネラ感染症の概要も参照のこと。)... さらに読む を引き起こす。
ヒト以外の宿主に適応するか,ほぼ動物にのみ疾患を引き起こす群。この群に属する一部の菌株(S. Dublin[ウシ],S. Arizonae[爬虫類],およびS. Choleraesuis[ブタ])はヒトにも疾患を引き起こす。
宿主域の広い群:この群には2000を超える血清型(例,S. Enteritidis,S. Typhimurium)が含まれ, サルモネラ胃腸炎 非チフス性サルモネラ(Salmonella)感染症 チフス以外のSalmonella属細菌は,主として胃腸炎,菌血症,および局所感染症を引き起こすグラム陰性細菌である。症状は下痢,極度の疲労を伴う高熱,局所感染症状などである。診断は血液,便,または病変部の検体の培養による。適応がある場合の治療は,トリメトプリム/スルファメトキサゾール,シプロフロキサシン,アジスロマイシン,またはセフトリアキソンのほか,膿瘍,血管病変,ならびに骨および関節の感染症には手術も施行する。... さらに読む を引き起こし,米国で発生するSalmonella属細菌による感染症の85%を占めている。