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ライム病

執筆者:

Larry M. Bush

, MD, FACP, Charles E. Schmidt College of Medicine, Florida Atlantic University;


Maria T. Vazquez-Pertejo

, MD, FACP, Wellington Regional Medical Center

レビュー/改訂 2020年 11月
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ライム病は,スピロヘータの一種であるBorrelia属細菌によって引き起こされるダニ媒介性感染症である。初期症状に遊走性紅斑があり,数週間から数カ月後には神経,心臓,または関節の異常が続発することがある。病初期では主に臨床所見から診断するが,疾患後期に発生する心臓合併症,神経系合併症,およびリウマチ性合併症の診断には血清学的検査が役立つ可能性がある。治療はドキシサイクリンやセフトリアキソンなどの抗菌薬による。

スピロヘータ科の細菌は,菌体のらせん状形態によって他の細菌と区別される。病原性のあるスピロヘータとしては,Treponema属,Leptospira属,Borrelia属などがある。Treponema属とLeptospira属はどちらも薄すぎて明視野顕微鏡検査では観察できないが,暗視野顕微鏡または位相差顕微鏡下では明瞭に観察できる。Borrelia属はより厚く,染色することで明視野顕微鏡下でも観察できる。

ライム病の概要
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ライム病の疫学

ライム病は1976年にコネチカット州のライムで集団発生したことで認知され,現在では米国で最も多く報告されるダニ媒介性疾患となっている。これまでに49の州で報告されているが,90%以上の症例がメイン州からバージニア州までの地域とウィスコンシン州,ミネソタ州,およびミシガン州で発生している。西海岸では,ほとんどの症例がカリフォルニア州およびオレゴン州の北部地域で発生している。ライム病は欧州,旧ソ連全土,ならびに中国および日本においても発生する。

米国では,ライム病は主にBorrelia burgdorferiによって引き起こされ,程度は低いが中西部北方諸州において最近発見されたB. mayoniiによっても引き起こされる。欧州およびアジアでは,ライム病は主にB. afzeliiB. garinii,およびB. burgdorferiによって引き起こされる。発症時期は通常,夏季と秋の初頭である。患者の大半は樹木の生い茂る地域に居住する小児および若年成人である。

ライム病はIxodes属のダニのうち主に以下の4種によって世界中で伝播されている:

  • 米国北東および中央北部ではI. scapularis(シカダニ)

  • 米国西部ではI. pacificus

  • 欧州ではI. ricinus

  • アジアではI. persulcatus

米国では,シロアシネズミがB. burgdorferiの主要な病原体保有生物であり,シカダニの若虫および幼虫が好む宿主である。シカはダニ成虫の宿主であるが,ボレリア(Borrelia)を保菌していない。その他の哺乳動物(例,イヌ)は偶発的に宿主となることがあり,ライム病を発症することがある。欧州ではヒツジなどの大型哺乳類がダニ成虫の宿主である。

シカダニ

シカダニ

ライム病の病態生理

B. burgdorferiはダニ刺咬部から皮膚に侵入する。菌は3~32日後に刺咬部周囲を局所的に遊走し,リンパ管を介して拡大することにより,所属リンパ節腫脹を引き起こすか,血行性に臓器または他部位の皮膚に播種する。感染に対する有意な抗体応答(抗体陽転)が起きる前に,まず炎症反応(遊走性紅斑)が起こる。

ライム病の症状と徴候

ライム病には3つの段階がある:

  • 早期(限局期)

  • 早期(播種期)

  • 晩期

播種期と晩期の間には通常,無症状の期間がある。

遊走性紅斑の臨床像

早期(限局期)

ライム病の特徴であり,最良な臨床指標でもある遊走性紅斑は,この疾患の最初の徴候である。少なくとも75%の患者でみられ,ダニ刺咬後3~32日の間にダニ刺咬部(通常は四肢の近位部または体幹[特に大腿部,殿部,腋窩]にある)の赤い斑または丘疹として出現する。ダニの若虫は非常に小さいため,大半の患者は刺咬に気づかない。

病変部が拡大していき,中心と外周の間がしばしば退色して牛の目状になり,最大で直径50cmまで拡大する。中心部に黒ずんだ紅斑ができることがあるが,熱感を帯びて硬結することもある。無治療でも,遊走性紅斑は典型的には3~4週間以内に退色する。

遊走性紅斑が消失すると,一過性の病変が現れることがある。粘膜病変は生じない。治療後に一見すると再発と思える遊走性紅斑が出現することがあるが,その新しい病変部で同定される遺伝子型は当初の感染菌のものとは異なることから,それは再発ではなく再感染である。

早期(播種期)

早期(播種期)の症状は,初期病変の出現から数日または数週間後に細菌が全身に播種された段階で始まる。その発症直後には,無治療患者の半数近くで中央部の硬結を欠いた通常は小さな輪状の二次性皮膚病変が複数出現する。これら二次性病変の生検材料は培養陽性となり,感染の播種を意味する。

倦怠感,疲労,悪寒,発熱,頭痛,項部硬直,筋肉痛,関節痛など主に筋骨格系のインフルエンザ様症候群も現れ,数週間にわたり続くことがある。症状はしばしば非特異的であるため,遊走性紅斑がないと診断を誤ることが多く,診断するには強く疑うことが必要である。明らかな関節炎はこの段階ではまれである。背部痛,悪心および嘔吐,咽頭痛,リンパ節腫脹,ならびに脾腫はあまりみられない。

症状は間欠性で変化していく特徴があるが,倦怠感と疲労は何週間も遷延することがある。一部の患者は線維筋痛症の症状を示す。晩期には,ときに関節炎の再発発作に先立ち,消失した皮膚病変がわずかに再発することがある。

心筋異常が遊走性紅斑の数週間以内に約8%の患者で生じる。具体的には,重症度が変動する房室ブロック(第1度,Wenckebach型,または第3度)や,まれであるが胸痛,駆出率低下,および心拡大を伴う心筋心膜炎などが挙げられる。

晩期

無治療のライム病では,最初の感染後数カ月から数年で晩期に移行する。約60%の患者において,発症(遊走性紅斑によって確定される)から数カ月(ときに最長2年)以内に関節炎が発生する。間欠的な腫脹および疼痛が2~3の大関節(特に膝関節)に生じ,典型的には数年にわたって再発を繰り返す。侵された膝関節は一般的に疼痛よりも腫脹がはるかに著明となり,しばしば熱感を帯びるが発赤はまれである。ベーカー嚢胞の形成および破裂が起こりうる。倦怠感,疲労,および微熱が関節炎発作に先行するか,同時に発生する。約10%の患者では膝関節病変が慢性化する(6カ月以上軽快しない)。

その他の晩期所見(発病後何年も経過してから生じるもの)は,抗菌薬感受性の皮膚病変(慢性萎縮性肢端皮膚炎)および慢性中枢神経系異常(多発神経障害または気分,記憶,および睡眠障害を伴う軽微な脳症のいずれか)である。

抗菌薬治療が成功した後に疲労,頭痛,関節痛,筋肉痛,認知障害などの症状が現れる患者もいる。これらの症状はまとめて治療後ライム病症候群(post-treatment Lyme disease syndrome:PTLDS)と呼ばれる。このような主観的症状がある患者の一部には慢性ライム病の診断が下されるが,そのような病態が存在することや,それらの患者の体内に生きたBorreliaが存在することを示す明確な証拠は認められない。

ライム病の診断

  • 臨床的評価と急性期および回復期血清での血清学的検査による裏付け

血液および関連する体液(例,髄液,関節液)の培養を行ってもよいが,他の病原体の診断が主な目的となる。

2週間空けて測定した急性期(IgM)および回復期(IgG)の抗体価が参考になりうる;酵素結合免疫吸着測定法(C6 ELISA)で陽性となったとしても,2回目の酵素免疫測定(EIA)またはウェスタンブロット検査で確認すべきである。ただし,抗体陽転が遅延(例,4週間以上)したり,ときに皆無であったりするため(例,患者がすでに抗菌薬投与を受けている場合),IgG抗体価の陽性のみでは過去の曝露を示したにすぎない場合もある。ウェスタンブロット法でIgMバンドのみが検出される場合(特に曝露から長時間経過している場合)は,偽陽性であることが多い。髄液または滑液のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査は,それらの部位が侵されている場合はしばしば陽性となる。

したがって,ライム病の診断は検査結果と典型的所見の両方に基づいて行う。遊走性紅斑の古典的な発疹はライム病を強く示唆し,特に他の要素による裏付け(例,最近のダニ刺咬,流行地域での曝露,典型的な全身症状)がある場合はより確定的となる。

ライム病の流行地域では,多くの患者が関節痛,疲労,集中困難,その他の非特異的症状を訴える。このような症状があるが,遊走性紅斑の既往も早期(限局期)および早期(播種期)ライム病の他の症状の既往もない患者で,実際にライム病に罹患している患者はごく少数である。そのような患者では,IgG抗体価の上昇(IgM抗体価は正常)は現在の感染でも持続感染でもなく過去の曝露を示しているすぎないが,これが誤って解釈されると,不必要な抗菌薬治療が長期に続けられる事態につながる可能性がある。B. burgdorferi感染症をこの線維筋痛症様ないし慢性疲労様の症候群と関連づけたエビデンスは存在しない。

鑑別診断

一方で発疹がないと,診断は難しくなる。

早期(播種期)の病態は,小児の 若年性特発性関節炎 若年性特発性関節炎(JIA) 若年性特発性関節炎は,16歳までに発症するリウマチ性疾患の一群である。関節炎,発熱,発疹,リンパ節腫脹,脾腫,および虹彩毛様体炎が,一部の病型で典型的である。診断は臨床的に行う。治療としては,コルチコステロイドの関節内注射,および疾患修飾性抗リウマチ薬などがある。 若年性特発性関節炎(JIA)はまれである。JIAの原因は不明であるが,遺伝... さらに読む 若年性特発性関節炎(JIA) や成人の 反応性関節炎 反応性関節炎 反応性関節炎は,しばしば感染(通常は泌尿生殖器または消化管感染)により誘発されるとみられる急性の 脊椎関節症である。一般的な臨床像としては,下肢を侵す傾向がある様々な重症度の非対称性の関節炎(手指,足趾,またはその両方のソーセージ状変形を伴う),全身症状,付着部炎,腱炎,角質増殖または痂皮化を伴う小胞性病変(膿漏性角化症[keratoderma blennorrhagicum])といった粘膜皮膚の潰瘍などがある。診断は臨床的に行う。治療... さらに読む 反応性関節炎 および非定型的な 関節リウマチ 関節リウマチ(RA) 関節リウマチ(RA)は,主に関節を侵す慢性の全身性自己免疫疾患である。RAは,サイトカイン,ケモカイン,およびメタロプロテアーゼを介した損傷を引き起こす。特徴として,末梢関節(例,手関節,中手指節関節)に対称性に炎症が生じ,結果として関節構造が進行性に破壊される(通常は全身症状を伴う)。診断は特異的な臨床所見,臨床検査結果,および画像所見に基づく。治療としては,薬物療法,理学療法,およびときに手術を行う。疾患修飾性抗リウマチ薬は症状のコ... さらに読む 関節リウマチ(RA) に類似することがある。関節リウマチによくみられ,ライム病にみられない病変としては,朝のこわばり,皮下小結節,虹彩毛様体炎,粘膜病変,リウマトイド因子,および抗核抗体などがある。晩期のライム病は体軸関節の病変を欠き,この点から末梢関節病変を伴う 脊椎関節症 血清反応陰性脊椎関節症の概要 血清反応陰性脊椎関節症(血清反応陰性脊椎関節炎)では,特定の臨床的特徴(例,炎症性背部痛,ぶどう膜炎,消化管症状,発疹)が共通してみられる。一部はヒト白血球抗原B27(HLA-B27)アレルと強く関連する。臨床的類似性および遺伝子の類似性から,同様の原因または病態生理も共有していることが示唆される。脊椎関節症では通常,リウマトイド因子(RF)が陰性である(それゆえに血清反応陰性脊椎関節症と呼ばれる)。脊椎関節症には,... さらに読む と鑑別することができる。

米国では,Borrelia miyamotoiによる回帰熱および ポワッサンウイルス ポワッサンウイルス アルボウイルス(節足動物媒介ウイルス)という名称は,特定の吸血性節足動物,主に昆虫(ハエおよび蚊)とクモ形網動物(マダニ)を媒介生物としてヒトおよび/または他の脊椎動物に伝播する全てのウイルスに適用される。 チクングニア熱では,急性熱性疾患に続いて,数カ月または数年続く可能性のある比較的慢性の多関節炎が生じる。死に至ることは極めてまれである。 チクングニア熱は,ヤブカ(Aedes属の蚊)により伝播し,アフリカ,インド,パキ... さらに読む 脳炎に並び,ヒト顆粒球 アナプラズマ症 エーリキア症およびアナプラズマ症 エーリキア症およびアナプラズマ症はリケッチア様細菌によって引き起こされる。エーリキア症は主にEhrlichia属細菌によって,アナプラズマ症はAnaplasma phagocytophilumによって引き起こされる。どちらもダニがヒトへの伝播を媒介する。症状は,発疹がはるかに少ないという点を除き,ロッキー山紅斑熱のものと類似する。発症は突然で,発熱,悪寒,頭痛,および倦怠感がみられる。... さらに読む エーリキア症およびアナプラズマ症 (リケッチア感染症の一種)と バベシア症 バベシア症 バベシア症は,バベシア(Babesia属の原虫)による感染症である。バベシア症は無症状の場合もあれば,発熱および溶血性貧血を伴うマラリア様症状を引き起こす場合もある。無脾患者,高齢患者,およびAIDS患者において最も重症化する。診断は血液塗抹検査,血清学的検査,またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査でのバベシア(Babesia)の同定による。治療(必要な場合)は,アジスロマイシンとアトバコンの併用,またはキ... さらに読む バベシア症 I. scapularisによって媒介されており,それぞれ北東部と中西部北方地域に共通の分布域がある。I. scapularisによって媒介される疾患のいずれか1つに罹患している患者は,そのダニが媒介する他の疾患にも同時に感染している可能性がある。ライム病の患者を見た場合,以下の疾患が併発していないかを疑うべきである:

  • バベシア症(溶血性貧血および血小板減少を認める場合)

  • ヒト顆粒球アナプラズマ症(アミノトランスフェラーゼ上昇,白血球減少,好中球内の封入体,および/または血小板減少を認める場合)

南部および中部大西洋地域では,A. americanumに咬まれると,非特異的で自然に軽快する全身性の症状および徴候を伴って,遊走性紅斑様の発疹が出現することがある。この疾患(southern tick-associated rash illnessと呼ばれる)の原因としては,まだ特異的な感染因子は同定されていない。

ライム病はベル麻痺を引き起こすことがあり,夏季には,リンパ球性髄膜炎の他の原因や末梢神経障害と類似する筋骨格症状を伴う無菌性髄膜炎症候群として出現することがある。

診断に関する参考文献

  • 1.Sanchez E, Vannier E, Wormser GP, et al: Diagnosis, treatment, and prevention of Lyme disease, human granulocytic anaplasmosis, and babesiosis: A review.JAMA3 15 (16):1767–1777, 2016.doi: 10:1001/jama.2016.2284

  • 2.Bush LM, Vazquez-Pertejo MT: Tick borne illness―Lyme disease.Dis Mon 64(5):195–212, 2018.doi: 10.1016/j.disamonth.2018.01.007

ライム病の治療

  • 病期とともに変わってくるが,典型的にはアモキシシリン,ドキシサイクリン,セフトリアキソンなど複数の選択肢がある

ライム病の大半の性質が抗菌薬に反応するが,早期治療が最も効果的である。晩期においては,抗菌薬により除菌が得られ,大部分の患者では関節炎を軽減できる。しかしながら,炎症は継続するため,遺伝的素因をもった少数の人々では,感染が解消してからも持続性の関節炎がみられる。表 Professional.table numonly 成人ライム病の抗菌薬治療に関するガイドライン* 成人ライム病の抗菌薬治療に関するガイドライン* 成人ライム病の抗菌薬治療に関するガイドライン* に様々な臨床像のライム病に対する成人用の治療レジメンを示す。小児における治療は成人と同様であるが,8歳未満の小児ではドキシサイクリンの使用を避け,また体重に基づいて用量を調整する必要がある( Professional.see table よく処方される抗菌薬の常用量a よく処方される抗菌薬の常用量a よく処方される抗菌薬の常用量a )。

症状軽減のために非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を使用してもよい。完全房室ブロックには,一時的なペースメーカーが必要となることがある。液貯留により膝関節に腫れがみられる場合は,関節穿刺が必要となる。抗菌薬療法にもかかわらず膝関節炎が持続する一部の遺伝的素因を有する患者では,関節鏡視下滑膜切除術が奏効する可能性がある。

ライム病の予防

流行地域の人々にはダニ刺咬に注意を払わせるべきである( Professional.see sidebar ダニ刺咬の予防 ダニ刺咬の予防 ダニ刺咬の予防 )。ヒトを刺咬するシカダニの若虫は,小さいため発見は困難である。一旦皮膚に咬着すると,何日間も吸血し続ける。通常は感染ダニが36時間以上にわたり咬着し続けて初めてB. burgdorferiの伝播が起こる。したがって,ダニに曝露した可能性がある場合は,よく探して速やかに除去することが感染予防に役立つ。

ダニ刺咬の予防

ダニを皮膚に到達させない対策:

  • 遊歩道や小道から外れない

  • ズボンの裾をブーツまたは靴下の中に入れる

  • 長袖のシャツを着用する

  • ジエチルトルアミド(DEET)を含有する防虫剤を皮膚に塗布する

毒性反応が報告されているため,非常に年少の小児に対するDEETの使用には注意が必要である。衣服へのペルメトリンの散布はダニを効果的に死滅させる。流行地域では,ダニが付着していないか頻繁に調べることが必須である(特に有毛部と小児)。

吸血して膨張したダニは注意深く除去すべきであり,病原体の伝播につながる恐れがあるため,指でつぶしてはならない。ダニの体部をつまんだり,強い力をかけたりしてはならない。小さなピンセットで頭部を徐々に引っ張れば,ダニを除去することができる。ダニが付着していた部位はアルコールで清拭する。ワセリン,アルコール,火を付けたマッチ,その他の刺激物はダニを除去する方法としては無効であり,使用してはならない。(マダニの除去 マダニの除去 ダニ媒介性疾患(例, ロッキー山紅斑熱, ライム病, 野兎病, ダニ麻痺症, バベシア症, アナプラズマ症, エーリキア症, ダニ媒介性脳炎)を予防するため,皮膚に付着したマダニは除去すべきである。 ( マダニ咬傷も参照のこと。) 皮膚にマダニが付着している なし マダニの除去が不十分ないし部分的であると,感染や慢性の肉芽腫形成につながることがある。 さらに読む を参照のこと。)

ダニを根絶できる実用的な方法はないが,流行地域では小動物の個体数を制御することでダニの個体数を低減できる可能性がある。

ダニの刺咬に気づいて,ライム病を予防するために抗菌薬をルーチンに予防投与することは推奨されていない。ダニ刺咬がはっきりしている患者に対しては,刺咬部を観察して,発疹または他の症状が出現したら治療を受けるように指示すればよいが,ダニ刺咬の既往がない場合には,ライム病の診断は非常に難しくなる。ドキシサイクリン200mgを経口単回投与することで,シカダニの咬傷後にライム病を発症する可能性が低下することが示されている。Infectious Diseases Society of America(IDSA)の2006年のガイドラインによると,抗菌薬の予防的投与は以下の条件を全て満たす場合にのみ勧めるべきである(1 予防に関する参考文献 ライム病は,スピロヘータの一種であるBorrelia属細菌によって引き起こされるダニ媒介性感染症である。初期症状に遊走性紅斑があり,数週間から数カ月後には神経,心臓,または関節の異常が続発することがある。病初期では主に臨床所見から診断するが,疾患後期に発生する心臓合併症,神経系合併症,およびリウマチ性合併症の診断には血清学的検査が役立つ可能性がある。治療はドキシサイクリンやセフトリアキソンなどの抗菌薬による。... さらに読む 予防に関する参考文献 ):

予防に関する参考文献

ライム病の要点

  • 米国では,ライム病症例の90%以上がメイン州からバージニア州までの地域とウィスコンシン州,ミネソタ州,およびミシガン州で発生しているが,これらの地域ではIxodes scapularis(シカダニ)が主要な媒介生物である。

  • 米国では,シロアシネズミがBorrelia burgdorferiの主要な病原体保有生物であり,シカダニの若虫および幼虫が好む宿主である;シカはダニ成虫の宿主であるが,Borreliaを保菌していない。

  • ライム病には,早期(限局期),早期(播種期),および晩期の3つの病期がある。

  • 遊走性紅斑は最初にして最良の臨床指標であり,75%以上の患者で出現する。

  • 流行地域では,関節痛,疲労,集中困難,その他の非特異的症状がみられるが,遊走性紅斑の既往も早期(限局性)および早期(播種期)ライム病の他の症状の既往もない患者が実際にライム病に罹患している例はほとんどない。

  • 典型的な発疹がみられる場合は臨床的に診断し,そうでない場合は,急性期および回復期血清での血清学的検査(C6 ELISAとその結果を確認する酵素免疫測定またはウェスタンブロット法)を施行する。

  • 症状に応じて抗菌薬の経口剤または注射剤で治療する。

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