メルクマニュアル18版 日本語版
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クロストリジウム-ディフィシル誘発性下痢(偽膜性大腸炎)

胃腸管内のクロストリジウム-ディフィシル(Clostridium difficile)株によって産生される毒素は偽膜性大腸炎を引き起こす(典型例では抗生物質の使用後)。症状は下痢であり,ときに血性,まれに敗血症および急性腹症に進行する。診断は,糞便中にディフィシル毒素の同定より行う。治療は,経口メトロニダゾールまたはバンコマイシンである。

C. difficileは,最も一般的な抗生物質関連大腸炎の原因であり,典型的には院内感染性である。C. difficile誘発性下痢は,入院患者の最大8%に起こり,院内感染性下痢症例の20〜30%の原因である。高齢,重度の基礎疾患,長期入院,ナーシングホーム居住などは危険因子である。

C. difficileは,新生児の15〜70%,および健康な成人の3〜8%に無症候性保菌がみられ,環境中(土壌,水,家庭のペット)によくみられる。疾患は,内在性細菌の異常繁殖または外部感染源からの感染に起因すると思われる。医療従事者はしばしば感染源となる。

抗生物質誘発性の消化管内細菌叢の変化が主要な素因である。ほとんどの抗生物質が関係しているが,セファロスポリン系(特に第3世代),ペニシリン系(特にアンピシリン,アモキシシリン)およびクリンダマイシンは最もリスクが高い。C. difficile大腸炎は,特定の抗腫瘍薬の使用後にも発症しうる。

この細菌は細胞毒とエンテロトキシンの両方を分泌する。主に結腸を侵し,結腸は液体を分泌して特徴的な偽膜(容易に除去される孤立性,黄白色のプラーク)を生じる。重度症例ではプラークが癒合することがある。中毒性巨大結腸症はめったに発現しないが,腸運動抑制薬の使用後に幾分多いようである。

症状と徴候

症状は典型例では抗生物質開始5〜10日後に始まるが,初日に発症したり2カ月も経過してから発症したりする。下痢は軽度で半固形便のこともあれば,頻繁で水様便のこともある。痙攣または疼痛は一般的であるが,悪心および嘔吐はまれである。敗血症および急性腹症と同様に,限局性の組織内播種が極めてまれに起こる。C. difficile誘発性下痢の後に反応性関節炎が発生している。

診断と治療

診断は,抗生物質使用後2カ月以内,または入院72時間以内に下痢を発症している全ての患者において疑うべきである。ディフィシル毒素に対する糞便(拭き取り検体ではなく,糞便サンプル)検査により診断を確定する。通常は1回のサンプルで十分であるが,疑いが強く,かつ初回サンプルが陰性の場合はサンプルを繰り返し提出するべきである。糞便中にしばしば白血球を認めらるが,特異的ではない。

メトロニダゾール250mg,経口,6時間毎,または500mg,経口,8時間毎の10日間投与が選択すべき治療である。患者が反応しないか,または再発する場合は,メトロニダゾールを上記の用量で21日間反復するか,あるいはバンコマイシン125〜500mgを,経口,6時間毎,10日間投与する。患者によっては,バシトラシン500mg,経口,6時間毎,10日間か,コレスチラミン樹脂,またはサッカロミセス-ボラルディ酵母を必要とする。再発は患者の15〜20%で起こる。少数の患者が治癒のために全結腸切除を必要としている。

C. difficileが患者および医療従事者に広まるのを防ぐためには,院内感染対策が必須である。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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