メルクマニュアル18版 日本語版
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アスペルギルス症

アスペルギルス症は,糸状菌であるアスペルギルスの胞子の吸入に起因する日和見感染症であり,アスペルギルスは血管に侵入して出血性壊死や梗塞を引き起こす。喘息,肺炎,副鼻腔炎または急速進行性の全身疾患の症状を呈しうる。診断は主として臨床的に行われるが,画像検査,組織病理,検体の染色および培養が役立つことがある。治療はボリコナゾール,アムホテリシンB(またはその脂質製剤),カスポファンギン,イトラコナゾール,フルシトシンで行う。真菌球は外科的切除が必要かもしれない。再発がよくみられる。

アスペルギルス種は環境中で最もよくみられる糸状菌の1つで,腐敗植物(堆肥),断熱材,エアコンまたはヒーターの吹出し口,手術病棟および病室,病院の備品,浮遊粉塵などに高頻度に存在する。侵襲性感染症は通常,胞子の吸入,ときに損傷皮膚を介する直接侵入により起こる。主要な危険因子として,好中球減少,長期の高用量コルチコステロイド療法,臓器移植(特に骨髄移植),慢性肉芽腫症のような好中球機能の遺伝的障害,ときにAIDSなどがある。アレルギー性気管支肺アスペルギルス症は,真菌の組織侵入に無関係の肺炎症を来す(喘息: アレルギー性気管支肺アスペルギルス症を参照 )。

アスペルギルスは,既往肺疾患(例,気管支拡張症,腫瘍,結核)に由来する肺の空洞,副鼻腔または外耳道(耳真菌症)などの開放腔に感染する傾向がある。そのような感染は局所侵襲性かつ破壊性の傾向があるが,ときに全身への播種が生じる(特に免疫不全患者において)。Aspergillus fumigatusは最も一般的な侵襲性肺疾患の原因であり,A.flavusは最も頻繁に侵襲性肺外性疾患を引き起こす。

局所感染はときに真菌球(アスペルギルス腫)を形成するが,真菌球とは,もつれた菌糸塊の特徴的増殖であり,フィブリン滲出物および少数の炎症細胞を伴い,典型的には線維組織に覆われる。

ときに侵襲性アスペルギルス症の慢性型が,先天的な食細胞欠損,慢性肉芽腫症患者において顕著に発生する。 アスペルギルス種はまた,眼の外傷または外科手術後の(または血行性播種による)眼内炎ならびに血管内および心臓内の人工器官の感染を引き起こすこともある。

原発性表在性アスペルギルス症はまれであるが,熱傷,閉鎖包帯の下,角膜外傷(角膜炎)後,または副鼻腔,口,鼻,外耳道などにおいて起こりうる。

症状と徴候

慢性肺アスペルギルス症は咳を発現し,しばしば喀血および息切れを伴う。侵襲性肺アスペルギルス症は,もし未治療ならば,通常は急速進行性で最終的に致死性の呼吸不全を引き起こす。

肺外性侵襲性アスペルギルス症は,皮膚病変,副鼻腔炎または肺炎で始まり,肝臓,腎臓,脳および他の組織を侵すことがあり,しばしば急速に致死的となる。

副鼻腔におけるアスペルギルス症は,アスペルギルス腫,アレルギー性真菌性副鼻腔炎または発熱,鼻炎,頭痛を伴う慢性で緩徐に浸潤する肉芽腫性炎の形態となりうる。鼻または副鼻腔における壊死性皮膚病変の発生,口蓋または歯肉の潰瘍化の出現,海綿静脈洞血栓症の徴候の発現,肺病変または播種性病変の発現などが起こりうる。

診断

アスペルギルス種は環境中によくみられることから,痰の培養陽性は環境汚染または慢性肺疾患患者における非侵襲的定着に起因することがあり,陽性培養が有意となるのは,主として免疫抑制による感受性増大患者,または典型的な画像所見に基づき強く疑われる患者から得られた場合である。これとは逆に,アスペルギルス腫または侵襲性肺アスペルギルス症患者に由来する痰の培養はしばしば陰性である;空洞はしばしば気道から遮断され,侵襲性疾患は主として血管侵襲および組織梗塞によって進行する。

胸部X線および,もし副鼻腔感染が疑われるなら,副鼻腔のCTを実施する。いずれにおいても空洞性病変内の移動性真菌球が特徴的であるが,ほとんどの病変は巣状かつ充実性である。ときに画像検査により暈徴候(壊死性病変内の空洞化を示す小結節を薄い空気の陰影が取り囲む)が検出される。びまん性汎発性肺浸潤が一部の患者に生じる。

確認のためには通常,培養および組織病理学的検査用の組織標本が必要であり,典型的には気管支鏡検査法により肺から,および前検鼻法により副鼻腔から採取する。培養には有意な時間を要し,組織病理学的には偽陰性を生じることがあるため,治療に関する決定のほとんどは強力な推定的臨床証拠に基づく。大きな病的増殖体から,しばしばかなりの大きさの栓子(血管を閉塞することがある)が放出され,その栓子が診断検体となりうる。

種々の血清学的定量法があるが,急性で生命を脅かす侵襲性アスペルギルス症の迅速診断用としての有用性は限られている。ガラクトマンナンなどの抗原の検出は特異的であるが,ほとんどの症例において早期に確認するには感度が不十分である。血液培養は,まれな心内膜炎症例であってもほぼ必ず陰性である。

治療

真菌球は全身的抗真菌治療に反応せずその必要もないが,局所的な作用,特に喀血があるため切除が必要とされることがある。侵襲性感染は通常,静注アムホテリシンBまたはボリコナゾールによる積極的治療を必要とする(現在ではほぼ常にこれを第1選択と考える)。経口イトラコナゾール(フルコナゾールではない)が一部の症例で有効である。カスポファンギンをサルベージ療法として使用してもよい。通常,完全な治癒には免疫抑制の逆転が必要である(例,好中球減少の消散,コルチコステロイドの中止)。もし好中球減少が再発生すると,再発がよくみられる。一次療法またはサルベージ療法のいずれかとしての抗真菌薬併用の役割を,さらに評価する必要がある。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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