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クリプトコッカス症(ヨーロッパブラストミセス症;トルラ症)

クリプトコッカス症は,莢膜を有する酵母のCryptococcus neoformansで汚染された土壌の吸入により罹患する肺感染症または播種性感染症である。症状は肺炎,髄膜炎の症状,または皮膚,骨,内臓の病変である。診断は臨床的および顕微鏡的に行い,培養により確定する。治療はアゾール,アムホテリシンBまたはフルシトシンで行う。

分布は世界的である。クリプトコッカス症はAIDSを定義する日和見感染症であるが,ホジキンリンパ腫その他のリンパ腫またはサルコイドーシス患者および長期コルチコステロイド療法を受けている患者もリスクが高い。免疫能正常患者における感染症は自己限定性で,亜急性または慢性経過をたどる。進行播種性クリプトコッカス症は,免疫抑制が明らかでない人における発生はきわめてまれで,40歳を超える男性により多くみられる。

症状と徴候

クリプトコッカス症は典型的には髄膜または肺を侵す。髄膜の炎症は,典型例では微細な多巣性脳内病変を示す。髄膜の肉芽腫および大型の巣状脳病変が明らかとなりうる。炎症は広範囲には及ばず,発熱は通常軽微で発熱しないこともある。AIDS患者におけるクリプトコッカス性髄膜炎は症状が最小限かまたは無症状のことがあり,脳脊髄液所見は多数の酵母の存在を除き正常である。クリプトコッカス性髄膜炎のほとんどの症状は脳浮腫に帰せられ,通常は非特異的で,頭痛,霧視,錯乱,抑うつ,興奮,または他の行動変化などがある。眼および顔麻痺を除いて,感染経過の比較的後期になるまで局所徴候はまれである。脳浮腫または視索の直接的病変により失明が生じうる。

肺のクリプトコッカス症はしばしば無症候性かつ自己限定性の一次肺病変を示す。免疫能正常な人においては,これらの孤立性肺病変はときに抗真菌治療を施さなくても播種することなく自然治癒する。肺炎は通常,咳その他の非特異的呼吸器症状を引き起こす。しかしながら,AIDSに関連したクリプトコッカス性肺感染症は,急性呼吸困難およびニューモシスチス感染を示唆するX線像を伴う重度の進行性肺炎を呈することがある。

いかなる感染患者においても播種性病変が起こりうる。皮膚への拡大が最も一般的であり,膿疱性,丘疹性,小結節性または潰瘍化病変を呈し,ときに座瘡,伝染性軟属腫または基底細胞癌に類似する。播種の病巣部は皮下小結節,長骨骨端,関節,肝臓,脾臓,腎臓,前立腺および他の組織においても生じうる。これらの病変は通常,症状をほとんど,または全く引き起こさない。病変組織は,典型的にはクリプトコッカスの莢膜多糖体集積によりゼラチン様を呈する嚢胞性の酵母塊を含むが,急性炎症性変化は最小限であるか,または全く示さない(特に脳において)。まれに,腎乳頭壊死を伴う腎盂腎炎が起こる。

診断

培養が確定的である。脳脊髄液,痰,尿からは最も高頻度に菌が回収され,血液培養は重症感染症,特にAIDSに伴う症例において陽性となりうる。髄膜炎を伴う播種性クリプトコッカス症では,C. neoformansが尿から高頻度に培養され,中枢神経系からの菌の排除の成功にもかかわらず,ときに前立腺の感染病巣が持続する。体液,分泌物,滲出液その他検体の塗抹において,経験豊かな検査師により莢膜を有する発芽酵母が同定されれば診断が強く示唆される。固定組織検体においては,陽性ムチカルミンまたはマッソン-フォンタナ染色法によっても,莢膜を有する酵母をC. neoformansとして同定,確認しうる。

クリプトコッカス性髄膜炎においては,脳脊髄液蛋白の増加および単核細胞増加が通常みられるが,ときに好中球増加が優勢である。ブドウ糖は高頻度に低濃度であり,ほとんどの症例において基底部の狭い出芽を形成する有莢膜酵母が墨汁塗抹標本上で確認できる。クリプトコッカス莢膜抗原のラテックステストは髄膜炎患者の90%を超える脳脊髄液および/または血液検体において陽性であり,概して特異的であるが,抗原力価が通常1:8以下で偽陽性結果が生じうる(特にリウマチ因子が存在する場合)。

治療

非AIDS患者: 限局性肺病変の患者(正常脳脊髄液所見,脳脊髄液および尿培養陰性,ならびに皮膚,骨または他の肺外性病変が示唆されないことから確認される)には治療の必要はないと考えられるが,一部の専門家は血行性播種を回避する目的でフルコナゾールを(毒性が極めて低いことから)1クール投与する。

髄膜炎がみられない場合,皮膚,骨または他の部位の限局性病変には全身性抗真菌治療を必要とし,典型例はフルコナゾール400mg,経口,1日1回,3〜6カ月である。より重度の疾患に対しては,アムホテリシンB,0.5〜1.0mg/kg,1日1回,6〜10週間を使用する。

髄膜炎に対しては,標準レジメンはアムホテリシンB,0.7〜1.0mg/kg,静注,1日1回と,フルシトシン25mg/kg,経口,6時間毎の併用を6〜10週であるが,代わりにこのレジメンを2週間実施してからフルコナゾール400mg,経口,1日1回,10週間投与してもよい。これらのレジメンの後に,フルコナゾールを200mg,1日1回,10カ月投与する。フルシトシン添加の必要性に関しては一般的意見の一致をみていない。

抗原価は治療が奏効中に着実に低下するはずである。一般に,治療終了の少なくとも2週間前には培養が陰性となり維持されているべきである。

AIDS患者: 全ての患者が治療を必要とする。限局性の肺または尿路疾患においては,フルコナゾール400mg,経口,1日1回を投与する。さらに重度の疾患に対しては,フルコナゾール400mg,経口,1日1回およびフルシトシン25〜37.5mg/kg,1日4回を10週間併用する。髄膜炎に対する標準レジメンは,アムホテリシンB,0.7〜1.0mg/kg,静注,1日1回およびフルシトシン25mg,経口,6時間毎の併用を6〜10週間続ける;代わりに,このレジメンを2週間実施後,フルコナゾール400mg,経口,1日1回を投与して合計10週間としてもよい。

ほぼ全てのAIDS患者は生涯にわたる維持療法が必要である。フルコナゾール200mg,経口,1日1回が選択されるが,同一用量のイトラコナゾールも容認できる。週1回用量の静注アムホテリシンBも使用できる。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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