メルクマニュアル18版 日本語版
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黄熱病

黄熱病は,南米の熱帯地域およびサハラ以南のアフリカの風土病で,蚊を媒介とするフラビウイルス感染症である。症状としては,突然の発熱,相対的徐脈,頭痛,重症であれば黄疸,出血,および多臓器不全が含まれる。診断はウイルス培養および血清学的検査による。予防にはワクチン接種および蚊の駆除がある。治療は支持的である。

都市型黄熱病では,約2週間前にウイルス血症患者から血を吸ったことにより感染した熱帯シマカの刺し傷によってウイルスが伝播される。ジャングル(森林)型黄熱病では,野生の霊長類からウイルスを獲得したヘマゴグス属などの林冠部に生息する蚊によりウイルスは伝播される。発生率が最高となるのは,南米においては降雨量,湿度,および気温が最高となる数カ月間,およびアフリカでは雨期の末期から乾期の初期までの間である。

症状と徴候

感染は,無症候性(症例の5〜50%)から死亡率が50%である出血熱までの範囲がある。潜伏期は3〜6日続く。発症は突然で,39〜40°Cの発熱,悪寒,頭痛,めまい,および筋肉痛を伴う。脈拍は通常,最初のうちは速く,2日目までに熱が高い割には遅くなる(ファジェ徴候)。顔面は紅潮し,眼は充血する。悪心,嘔吐,便秘,重度の疲はい,不隠,および過敏性がよくみられる。軽症では1〜3日後に消散しうる。中等症から重症の症例においては,しかしながら,発病から2〜5日後に熱は突然下がり,数時間から数日の寛解期が続く。熱は再発するが,脈は遅いままである。黄疸,強いアルブミン尿症,および吐血を伴う上腹部圧痛が,発症5日後にしばしば同時に起きる。乏尿,点状出血,粘膜出血,錯乱,および無関心がみられることがある。

疾患は1週間以上続くこともあるが,急速に回復し後遺症も残らない。最も重度の(悪性の)症例では,せん妄,難治性しゃっくり,発作,昏睡,および多臓器不全が最終的に起こりうる。回復期には,特に肺炎などの細菌性重複感染が生じることがある。

診断

黄熱病が疑われるのは,風土病地域の患者が,相対的徐脈および黄疸を伴う突然の発熱を起こした場合である;軽度の症例はしばしば診断を免れる。全血球計算,尿検査,肝機能検査,凝固検査,ウイルスの血液培養,および血清学的検査が行われるべきである。相対的な好中球減少を伴う白血球減少症はよくみられ,血小板減少,凝固時間の延長,およびプロトロンビン時間の延長なども同様にみられる。ビリルビンおよびアミノトランスフェラーゼ値は急激に上昇し,数カ月間続く場合がある。アルブミン尿症が患者の90%で起こり,20g/Lに達することがある;これは黄熱病と肝炎との鑑別に役立つ。悪性黄熱病と呼ばれる最重症型においては,最終的に低血糖症および高カリウム血症が起こりうる。

診断は,培養,血清学的検査,PCRにより,または剖検での特徴的な中間部の肝細胞壊死の発見により確定される。疑わしい症例または確認された症例は,隔離される必要がある。症状のあるときに肝臓の針生検をすることは,出血のリスクのため禁忌である。

予後と治療

診断が下されるほど重症な患者のうち,最大10%が死亡する。

治療は主に支持的である。出血は,グルコン酸カルシウム1g,静注にて1〜2回/日,またはフィトナジオンにより治療されうる。入院を要するほど重症な全患者において,消化管出血に対する予防薬としてプロトンポンプ阻害薬またはH2ブロッカーが使用されるべきである。

予防

流行を予防する最も効果的な方法は,蚊の数を減らすこと,ならびにジエチルトルアミド(商品名DEET),蚊帳,および防護服などを使用して,蚊に刺されないようにすることである。ジャングルでの流行中は,予防接種を受けて蚊が駆除されるまで,そういった地域からは避難するべきである。風土病となっている地域への旅行者については,17D株を用いた弱毒化黄熱病生ワクチンによる能動免疫(0.5mL,皮下注射にて10年毎)が適応となり,95%で有効である。米国では,米国公衆衛生局認定の黄熱病予防接種センターでのみワクチンが接種される。ワクチンは妊婦および免疫力の低下した人においては禁忌である。

蚊によるさらなる伝播を防ぐために,感染患者は網戸がきちんと張られ,殺虫剤を散布された部屋に隔離されるべきである。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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