メルクマニュアル18版 日本語版
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はじめに

誰もが定期的に恐怖および不安を経験する。恐怖は,直ちに認識可能な外部からの脅威(例,侵入者,暴走車)に対する情緒的,身体的および行動的反応である。不安は,神経過敏と心配による苦しく不快な感情状態であり,その原因は恐怖ほど明らかではない。脅威が存在した正確な時間と不安との間に強い結びつきはない;不安は,脅威の前に予期的に起こることもあれば,脅威が去った後に持続することも,あるいは特定可能な脅威なしに起こることもありうる。不安はしばしば,恐怖によって引き起こされるのに似た身体的変化および行動を伴う。

ある程度の不安は適応的なものである;それによって準備,練習,およびリハーサルができるため,機能的能力が向上し,潜在的に危険な状況で適切に注意を払うのに役立つ。しかしながら,一定のレベルを超えると,不安は機能障害や過度の苦しみをもたらすようになる。この時点で,不安は不適応となり,障害とみなされる。

不安は,様々な身体疾患および精神疾患で起こり,一部では支配的な症状となる。不安障害は,他のどの種類の精神疾患よりも多くみられる。しかしながら,不安障害はしばしば認識されず,結果として治療が行われないことがある。未治療のまま放置された慢性的で不適応的な不安は,身体疾患の治療に貢献することもあれば,妨げとなることもある。

病因

不安障害の原因は十分に分かっていないが,心身両面の要因が関与している。多くの人において,不安障害は特定可能な誘因の先行なしに生じる。不安は,重要な関係の破綻または生命を脅かす災難への暴露など,環境ストレス因子に対する反応として起こることもある。身体疾患には直接不安を引き起こすものがあり,その中には甲状腺機能亢進症,褐色細胞腫,副腎皮質機能亢進症,心不全,不整脈,喘息,およびCOPDなどがある。他の身体的原因には薬物使用がある;コルチコステロイド,コカイン,アンフェタミン,そしてカフェインの作用により,不安障害に類似した症状を呈することがある。アルコールや鎮静薬,一部の違法薬物からの離脱も不安を引き起こすことがある。

症状,徴候,診断

不安は,パニックの場合のように突然起こることもあれば,何分も,何時間も,何日もかかって徐々に生じることもある。不安の持続時間は数秒のこともあれば,何年にも及ぶこともある;持続時間が長いほど,不安障害の特徴をよく表している。不安は,ほとんど気づかない程度の懸念から完全なパニックまで幅広い。不安の強さにどの程度耐えうるかは,人によって異なる。

不安障害がきわめて苦痛で破壊的なものになると,その結果としてうつ病が生じることがある。他方で,不安障害とうつ病性障害は併存することがあり,あるいはうつ病が最初に起こった後,不安障害の症状および徴候が発現することがある。

どの段階で,障害となるほどの支配的または重度の不安と判断するかは,複数の要因に依存しており,どの時点で診断を下すかは医師によって異なる。医師はまず病歴を聴取し,身体診察と適切な臨床検査を行い,不安が身体疾患または薬物によるものであるかどうかを判断しなければならない。また,不安が別の精神疾患により適切にあてはまるかどうかも判断しなければならない。他の原因が見つからず,不安が非常な苦痛を伴い,機能を妨げ,数日以内に自然に消退しない場合には,それは不安障害であり,治療が必要となる。

具体的な不安障害の診断は,その特徴的な症状および徴候に基づいて行う。不安障害の家族歴(急性および心的外傷後ストレス障害を除く)は診断に有用であるが,これは,親族と同じ不安障害の素因だけでなく,概して他の不安障害にもなりやすい傾向を遺伝的に受け継いでいると思われる患者がいるからである。しかしながら,患者の中には,学習した行動を通じて親族と同じ障害を生じる者もいると考えられる。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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