小児および青年における強迫症 (OCD) および関連症群

執筆者:Josephine Elia, MD, Sidney Kimmel Medical College of Thomas Jefferson University
レビュー/改訂 2019年 5月
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強迫症は,強迫観念もしくは強迫行為またはその両方によって特徴づけられる。強迫観念とは,抑えがたく持続的な考え,イメージ,または何かを行いたいという衝動である。強迫行為とは,衝動に基づく行為に対する病的な強い衝動で,それを抵抗すると過度の不安および苦痛を来すものである。強迫観念および強迫行為は,多大な苦悩を引き起こし,さらに学業や社会的機能に干渉する。診断は病歴に基づいて行う。治療は行動療法とSSRIによる。

(成人における強迫症も参照のこと。)

強迫症(OCD)の平均発症年齢は19~20歳であり,約25%は14歳までに発症する。

OCDは以下を含むいくつかの関連症群を包含する:

一部の小児,特に男児でチック症もみられる。

病因

研究で家族性の要素の存在が示唆されている。しかしながら,具体的な遺伝子は同定されていないものの,動物研究ではミクログリアの機能に影響する遺伝子の異常が示唆されている。

納得していない専門家もいるが,急性(一晩での)発症の症例の一部は感染と関連しているというエビデンスがある(1, 2)。A群β溶血性レンサ球菌に関連性があるものはPANDAS(pediatric autoimmune neuropsychiatric disorder associated with streptococcus)と呼ばれる。その他の感染症に関連性があるものはPANS(小児急性発症神経精神症候群)と呼ばれる。

この分野は研究が進行中のため,PANDASまたはPANSが疑われた場合にはこれらの疾患の専門医へのコンサルテーションが推奨される。

病因論に関する参考文献

  1. 1.Murphy TK, Roger Kurlan R, James Leckman J: The immunobiology of Tourette's disorder, pediatric autoimmune neuropsychiatric disorders associated with Streptococcus, and related disorders: A way forward.J Child Adolesc Psychopharmacol 20 (4):317–331, 2010. doi: 10.1089/cap.2010.0043.

  2. 2.Esposito S, Bianchini S, Baggi E, Fattizzo M, Rigante D: Pediatric autoimmune neuropsychiatric disorders associated with streptococcal infections: An overview.Eur J Clin Microbiol Infect Dis 33 (12):2105–2109, 2014.

症状と徴候

典型例では,OCDは緩徐で潜行性に発症する。大半の患児は,初期には自身の症状を隠し,その後症状に苦悩していることを告白し,それから数年経ってから確定診断が下される。

強迫観念は,害悪に対する心配または恐怖(例,命にかかわる病気にかかる,悪いことをして地獄に落ちる,自傷または他者の負傷)として経験されるのが典型的である。強迫行為は意図的かつ随意的な行為であり,通常は強迫的な恐怖を中和または相殺することを目的に行われ,具体的には確認行動,過度の手洗い,数を数える,整頓,その他にも多くのものがある。強迫観念と強迫行為は,ある程度の論理的関係(例,疾患を避けるため手洗いを行う)があることも,関係が非論理的で特異である(例,祖父の心臓発作を予防するために50まで数えることを何度も繰り返す)こともある。強迫行為を行わせないようにすると,患児は過度の不安および心配を覚える。

大半の患児が自身の強迫観念や強迫行為が異常であることをある程度認識している。そして患児の多くが当惑し,秘密主義になる。一般的な症状として以下のものがある:

  • 荒れてひび割れした手(強迫的手洗いの患児で現れる症状)

  • 異常に長い入浴時間

  • 学業の進行が非常に遅い(間違いに関する強迫観念が原因)

  • 学業で修正箇所が多い

  • ドアのロックを点検する,食べ物を特定の回数だけ噛む,特定の物に触れるのを避けるなど,反復的な行動や奇妙な行動がみられる

  • 保証の要求を幾度となく繰り返し,ときにこれが1日に数十回さらには数百回となる―例えば以下などを尋ねる:私,熱出てない?竜巻が来るんじゃない?この車,走ると思う?遅刻したらどうなるの?このミルク腐ってたらどうする?強盗が来たらどうするの?

診断

  • 臨床的評価

OCDの診断は病歴に基づいて行う。中立的な療法士と信頼関係が確立されれば,OCD患児は通常,多くの強迫観念と関連する強迫行為を明らかにする。しかし,信頼を最初に築くには通常数回の診察が必要である。

OCDと診断するには,強迫観念および強迫行為が,多大な苦悩を引き起こし,さらに学業や社会的機能に支障を来している必要がある。

OCD患児には,パニック発作,分離に伴う問題,限局性恐怖症など,他の不安症の症状がしばしばみられる。このような症状の重複はときに診断を混乱させる。

PANDASおよびPANSの診断基準が開発されている(1, 2)。

診断に関する参考文献

  1. 1.Chang K, Frankovich J, Cooperstock M, et al: Clinical evaluation of youth with pediatric acute-onset neuropsychiatric syndrome (PANS): Recommendations from the 2013 PANS Consensus Conference.J Child Adolesc Psychopharmacol 25 (1):3–13, 2015. doi: 10.1089/cap.2014.0084.

  2. 2.Swedo S, Leckman J, Rose N: From research subgroup to clinical syndrome: Modifying the PANDAS criteria to describe PANS (pediatric acute-onset neuropsychiatric syndrome).Pediatr Therapeutics 2:1–8, 2012.

予後

症例の約5%は,数年すると障害が寛解し,約40%は成人期早期までに寛解する。治療を中断することも可能である。残りの症例では慢性化する傾向にあるが,治療の継続により正常な機能を通常は維持できる。約5%の小児は治療に反応せず,重度の機能障害をもち続ける。

治療

  • 認知行動療法

  • 通常は選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)

患児が意欲的で課題を行える場合は,認知行動療法が役立つ。

SSRIは最も効果的な薬剤であり一般に忍容性は良好で(不安症および関連症群の長期治療に使用される薬剤の表を参照),いずれも等しく効果的である。しかしながら,約50%の患者は部分的にしかSSRIに反応せず,SSRIに加えてセロトニン作動性(例,リチウム)またはグルタミン酸作動性(例,リルゾール)の他の薬剤が必要である。代替薬は三環系抗うつ薬のクロミプラミンで,SSRIより効果的な場合があり,奏効率はより良好であるが,心臓への有害作用および痙攣発作を起こすリスクが高い。最近,経頭蓋磁気刺激療法が成人を対象にFDAの承認を受け,小児への使用の検討が進められている。

PANS/PANDASの基準を満たす場合,臨床医は抗菌薬(グルタミン酸活性を低下させるβ-ラクタム系など)を試みる。しかしながら,症状が持続する場合はOCDに対する典型的な治療法が助けになり,これを実施すべきである。

要点

  • 小児は一般に,強迫観念を害悪への懸念または恐怖(例,命にかかわる病気にかかる,悪いことをして地獄に落ちる,自傷)として経験する。

  • 強迫行為(例,過度の手洗い,数を数える,整頓)は意図的に行われ,通常は強迫的な恐怖を中和または相殺することを目的とする。

  • 強迫行為を行えないと,患児は過度の不安および心配を覚える。

  • 患児が強迫観念と関連する強迫行為を告白できるよう,患児と信頼関係を確立し,非批判的な態度を維持する。

  • 患児が意欲的で課題を行える場合は,認知行動療法を試みるが,薬剤(通常はSSRI)が必要となることもある。

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