メルクマニュアル18版 日本語版
検索のヒント
ABCDEFGHI
JKLMNOPQR
STUVWXYZ
記号

セクション

トピック

はじめに

(男性の性機能不全については男性の生殖内分泌学: 男性の性機能不全を参照 ;女性の性機能不全については女性における性機能不全を参照 。)

性的行動および態度に関する容認の規準は,文化によっても,また同じ文化の中でも実に様々である。医療従事者は,たとえ社会的に強い圧力があっても,性的行動を善悪で判断すべきでない。一般に,何が正常で何が異常かは医療従事者の決めることではない。性的行動または性的問題が患者または患者のパートナーを苦しめたり,そのために害が生じている場合に,治療が正当化される。

かつては一種の倒錯で精神疾患の原因のひとつと広くみなされていたマスターベーションは,今では生涯を通して正常な性的営みであると考えられている;マスターべーションが異常とみなされるのは,それがパートナーに向けられる行動を抑制したり,公衆の面前で行われたり,苦痛をもたらすほど強迫的である場合に限られる。男性の97%,女性の80%程度がマスターベーションを行う。マスターベーション自体に害はないが,それを非難し罰しようとする他者の態度によってもたらされる罪悪感が大きな悩みとなり,性的能力が損なわれることがある。

米国精神医学会は30年以上,同性愛を障害とみなしていない。人口の約4〜5%は,生涯にわたって自分を完全な同性愛者であると考えている。異性愛と同様に,同性愛は複雑な生物学的因子と環境因子の働きにより,同性の相手によって性的に興奮する能力が芽生えるものである。異性愛と同じく,同性愛は選択肢の問題ではない。

しばしば名前も分からない相手や一度きりの相手を含む,多数のパートナーとの頻繁な性行為は,親密な関係を結ぶ能力の減退を示すものと考えられる。しかし,相手を特定しない性行為それ自身は精神性的障害の証拠ではない。AIDSの恐怖により減少はしたものの,不特定多数の相手とのセックスは一般的である。ほとんどの文化が婚外交渉は認めていないが,婚前交渉や未婚での性交渉は正常なものとして受け入れている。米国では,大多数の人が婚前交渉や非婚での性交渉をもつが,これは先進諸国における性の自由化傾向の一部である。婚外交渉は社会的タブーであるにもかかわらず,既婚者に頻繁にみられる。

性的行動および態度に関する容認の規準は,両親の影響を大きく受ける。接触を含む肉体的な性の表出を親がきびしく禁欲的に拒絶することで,小児に罪と恥の感覚が植え付けられ,性を享受し,成人として健全な愛情関係を育む能力が阻止される。両親との関係は,大きな感情的距離,懲罰行動,またはあからさまな誘惑的態度と性的搾取により損なわれることがある。言葉や物理的力による敵意,拒絶,そして虐待に曝された小児は,性的・情緒的な愛情関係に問題が生じやすい。例えば,愛情と性的興奮が解離し,同じ社会階級や知的集団の人とは情緒的なきずなを築くことができるが,性的関係は売春婦のような,本人が自分より劣っているとみなしている,情緒的な愛情関係のない相手としか築けないという場合がある。

医師が十分な知識をもっていれば,性に関するデリケートなアドバイスをきちんと与えることができることから,有益な介入の機会は逃すべきではない。患者を性行為感染のリスクに曝すような行動については注意を払う必要がある。医師には,性機能不全(男性の生殖内分泌学: 男性の性機能不全を参照 ,女性における性機能不全を参照 ),性同一性障害,パラフィリアを含む精神的な性の問題を認識し,それに取り組む機会がある。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

ページの先頭へ

次へ: 性同一性障害および性転換症

イラスト
個人情報の取扱いご利用条件