メルクマニュアル18版 日本語版
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ミュンヒハウゼン症候群

ミュンヒハウゼン症候群は,重症慢性型の虚偽性障害であり,外的誘因のないところで身体症状が反復的にねつ造されるものである;この行動の動機は病人の役割を引き受けることにある。通常,症状は急性で大げさでもっともらしく,治療を求めて医師から医師へ,病院から病院へと渡り歩く傾向をもつ。ストレスおよび境界性人格障害がしばしば関連があるとされるが,正確な原因は不明である。

ミュンヒハウゼン症候群患者は様々な身体症状や病状を模倣することがある(例,心筋梗塞,吐血,喀血,下痢,FUO)。患者の腹壁には縦横に傷痕が走っていたり,指や手足が切断されていることもある。発熱は自分でバクテリアを注入したことが原因の場合もしばしばある; 大腸菌 がしばしば感染菌である。ミュンヒハウゼン症候群患者は最初,ときには長期にわたり内科または外科診療所で治療を受けることになる。それにもかかわらず,この障害は精神的な問題で,単に症状を偽るという以上に複雑であり,深刻な情緒的問題と関連している。患者は演技性人格または境界性人格の顕著な特徴を有することがあるが,通常は知的で機略に富む。彼らは疾患を模倣する方法を知っており,医療に関する知識も豊富である。彼らが詐病者と違う点は,その嘘や模倣が意識的で意図的であっても,彼らの苦しみに対する医学的注意以上にどんな得るものがあるのかが明確でないこと,その動機と注意を引きつけたいという欲求がほとんど無意識であいまいなことである。

幼い頃に情動的・身体的虐待を経験している場合もある。また,小児期に重い病気にかかった,または重病の身内がいたという経験をもつ場合もある。患者は同一性の問題や,衝動抑制不良,現実感覚の欠如,そして不安定な対人関係といった問題を有しているように思われる。病気を装うのは,失敗を病気のせいにし,一流の医師や医療センターと関係があると見せ,自分が特別な,英雄的な,または医学的知識とセンスをもつ人間であるかのように見せることで,自尊心を高めたり保とうとする方法であるとも思われる。

診断は,身体疾患を除外するために必要なあらゆる検査を含め,病歴と診察に基づいて行う。虚偽性障害で重症度がより低い慢性の型では,身体症状の発現もまた関わることがある。虚偽性障害の他の型では,(身体的というよりも)精神的な徴候および症状の見せかけ,例えば抑うつ,幻覚,および妄想,または心的外傷後ストレス障害の症状を装うことがある。これらの症例においても,患者の明らかな目的は病人の役割を引き受けることである。他の症例では,患者は精神的症状と身体的症状の両方を作り出すことがある。

治療

治療が成功することはまれである。患者は,治療への要求が満たされることによって最初は症状緩和をみるが,その挑発はエスカレートするのが典型であり,ついには医師の意思や能力の範囲を超えてしまう。治療の要求に正面から対決したり拒否したりするとしばしば怒りの反応を導くことがあり,一般には医師や病院を替えてしまう。精神科治療は通常拒否されたり避けられたりするが,危機打開の最低限の手助けとして,助言とフォローアップケアは受け入れられることがある。しかしながら,一般的に管理は障害の早期認識と,危険な処置および過剰または不要な薬物の使用を避けることに限定される。

ミュンヒハウゼン症候群患者やより限定的な虚偽性障害を有する患者は,それを助けを求める叫びとして定義しなおすことにより,罪悪感や非難をほのめかすことなく,攻撃的・懲罰的にならずに診断に対峙させることができる。あるいは,その原因における患者の役割を認めることなく,病気から回復する方法を患者に提示する非対峙的アプローチ法を推奨する専門家もいる。いずれの場合でも,医師と患者が協力して問題を解決できるということを伝えるのが有益である。

代理によるミュンヒハウゼン症候群

代理によるミュンヒハウゼン症候群は一種の変種で,成人(通常は両親)が彼らの庇護下にあるもの(通常は子供)に意図的に症状を作り出したり,そう見せかけたりするものである。

大人が病歴を偽り,子供を薬物やその他の物質で傷つけたり,尿試料に血液や細菌汚染物を加えたりして病気を装う。親は子供の治療を求め,子供のことを深く心配し,守ろうとするかのようにみえる。子供は頻繁な入院歴をもつのが典型で,通常は様々な非特異的症状があるが,確定的な診断には至らない。被害を蒙る子供は重篤な状態になり,死亡することもある。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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