メルクマニュアル18版 日本語版
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はじめに

せん妄(ときに急性混乱状態と称される)および認知症は,認知障害の最も一般的な原因であるが,感情障害(例,抑うつ)も認知に障害を与えうる。せん妄と認知症は異なる疾患だが,ときに鑑別は困難である。両疾患とも認知が障害されるが,認知症では主に記憶が,せん妄では主に注意力が侵される。

その他の特異的な特徴がこの2疾患の鑑別に役立つ( せん妄と認知症: せん妄と認知症の違い*表 1: 表参照)。せん妄は典型的には,急性疾患あるいは薬物毒性(ときに生命にかかわる)によって引き起こされ,しばしば可逆的であるのに対し,認知症は典型的には,脳の解剖学的変化によって生じ,発症がより緩徐で,一般に非可逆的である。しばしば認知症の患者にせん妄が起こる。高齢の患者では,特にせん妄が慢性の認知症に併発している場合,せん妄と認知症とを間違えるような一般的な臨床判断の誤りは避けなければならない。臨床検査では認知障害の原因を確定できないため,詳細な病歴および身体診察,ならびにもともとの機能に関する情報が不可欠である。

表 1

せん妄と認知症の違い*

特徴

せん妄

認知症

発生

突然で,明確な開始点をもつ

緩徐で漸進的であり,開始点は不明瞭

症状の持続時間

数日から数週間だが,それより長くなりうる

通常は永続的

原因

ほとんど常に,他の病態(例,感染,脱水,ある種の薬物の使用または中止)

通常は,慢性脳疾患(例,アルツハイマー病,レーヴィ体認知症,脳血管性認知症)

経過

通常は可逆的

緩徐進行性

夜間の影響

ほとんど常に悪化

しばしば悪化

注意力への影響

高度に障害される

認知症が重度になるまで影響なし

意識レベルへの影響

鈍麻から清明まで様々

認知症が重度になるまで影響なし

時間と場所の見当識

様々

障害される

言語使用

ゆっくり,しばしば支離滅裂で不適切

ときに正しい単語の発見が困難

記憶

様々

喪失する,特に最近の出来事について

医療の必要性

直ちに必要

必要とするが,緊急性は低い

*これらの違いは一般的には正しく診断に役立つが,例外もまれではない。例えば,外傷性脳損傷は突然起こるが,結果として重度の永久的な認知症をもたらすことがある;甲状腺機能低下症は緩徐進行性の認知症の症状を引き起こすことがあるが,治療によって完全に回復する。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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