メルクマニュアル18版 日本語版
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発作性疾患

小児における神経疾患: 熱性痙攣も参照 ,および小児における神経疾患: 新生児痙攣性疾患を参照 。)

てんかん発作は,脳皮質灰白質内で発生し,脳の正常機能を一過性に妨げる異常で無秩序な放電である。発作は典型的には,意識の変化,知覚異常,不随意運動,痙攣を引き起こす。

単発の発作が可逆的ストレッサー(例,低酸素症,低血糖,子供では発熱)により正常な脳で誘発されることがある。発作性疾患(てんかん)と診断されるのは,患者が,可逆的ストレッサーとは無関係の発作を2回以上起こした場合である。

病因と分類

発作性疾患は,症候性(すなわち,脳腫瘍や脳卒中といった既知の原因による症状―発作性疾患: 発作の原因表 1: 表参照)または特発性(原因不明)と考えられる。特発性発作性疾患はおそらく,なんらかの遺伝的基礎を有する。

表 1

発作の原因

状態

自己免疫疾患

脳血管炎,多発性硬化症(まれ)

脳浮腫

子癇,高血圧性脳症,脳室閉塞

脳虚血

アダムス-ストークス症候群,脳静脈血栓症,塞栓性脳梗塞,血管炎

脳外傷

出生時損傷,頭蓋骨骨折,穿通性外傷

中枢神経系感染症

AIDS,脳膿瘍,熱帯熱マラリア,髄膜炎,神経嚢虫症,神経梅毒,狂犬病,トキソプラズマ症,ウイルス性脳炎

先天性異常または発生異常

遺伝性疾患(例,5日目発作*,テイ-サックス病のような脂質蓄積症),神経細胞移動障害(例,異所形成)

薬物

発作を引き起こす:コカイン,その他の中枢神経刺激薬,シクロスポリン,タクロリムス,ペンチレンテトラゾール,ピクロトキシン,ストリキニーネ

発作閾値を低下させる:アミノフィリン,抗うつ薬,鎮静性抗ヒスタミン薬,抗マラリア薬,一部の抗精神病薬(例,クロザピン),ブスピロン,フルオロキノロン系,テオフィリン

拡大する脳病変

頭蓋内出血,腫瘍

異常高熱

発熱,熱射病

代謝障害

よくある,低カルシウム血症,低血糖,低ナトリウム血症;さほど多くないが,アミノ酸尿,高血糖,低マグネシウム血症,高ナトリウム血症

圧力関連性

減圧症,高圧酸素治療

離脱症候群

アルコール,麻酔薬,バルビツール酸,ベンゾジアゼピン類

*5日目発作(良性新生児痙攣)は,それ以外は健康な4〜6日齢の乳児に起こる強直間代発作である;1病型は遺伝性である。

てんかん発作は全般発作または部分発作に分類される。全般発作では,発症時から異常放電が両側大脳半球皮質全体にびまん性に起こり,通常,意識は消失する。全般発作は最も多くは代謝障害に起因するが,ときに遺伝性疾患に起因する。全般発作には,点頭てんかん,欠神発作,強直間代発作,脱力発作,ミオクロニー発作が含まれる。

部分発作(焦点性起始の)は,しばしば構造異常が原因である。ニューロンの過剰な発射が大脳皮質の1カ所で始まる。部分発作は,単純部分発作(意識障害なし)か,複雑部分発作(意識は低下するが完全に消失しない)である。部分発作が広がって大脳全体を両側性に活性化し,全般発作として現れることがある。活性化が非常に急速に起こるために,初期の部分発作が臨床的に明白ではないか,あるいは,短い部分発作後に全般発作が続くことがある(二次性全般化と呼ばれる)。

特発性てんかんは一般に2〜14歳の間に始まる。症候性てんかんの発生率は出生時および高齢者で最も高い。2歳以前の発作は通常,発達障害,出生時損傷,代謝障害が原因である。成人後に始まる多くのてんかん発作は脳外傷,アルコール離脱,腫瘍,あるいは脳血管疾患に続発するが,発作の50%では原因不明である。高齢者における発作性疾患は,しばしば腫瘍あるいは脳卒中による。外傷後てんかんは,頭蓋骨骨折,頭蓋内出血,あるいは局所神経障害を来す頭部外傷後,その25〜75%に起こる。

ときに,精神疾患患者はてんかん発作に類似した症状を示す(非てんかん性発作,あるいは偽発作と呼ばれる)。

症状と徴候

感覚症状または精神症状の前兆(例,腐った肉の臭い,腹部不快感)が発作に先行することがある。ほとんどの発作は1〜2分で自然終息する。発作後状態が発作(最も多くは全般発作)に続いて起こることがあり,深睡眠,頭痛,錯乱,筋肉痛を特徴とする;この状態は数分ないし数時間持続する。ときに発作後状態で,発作焦点と対側の一過性神経障害であるトッド麻痺が起こる。

ほとんどの患者は,発作と発作の間は神経学的に正常にみえるが,高用量の抗痙攣薬が覚醒を低下させることがある。進行性の精神機能低下はいずれも,通常は発作そのものではなく,その発作の原因となった神経疾患に関係している。まれに,発作が間断なく起こる。

単純部分発作: 運動症状,感覚症状,精神運動症状が,意識消失を伴わずに起こる。特異的症状は脳の罹患部を反映する(発作性疾患: 部位による部分発作の症状表 2: 表参照)。ジャクソン発作では,局所的な運動症状が片手から始まり,その後上肢を上行していく。その他の焦点発作はまず顔面を侵し,その後上肢へ,ときには下肢へと広がる。ある部分運動発作は,上肢の挙上と,運動中の上肢側への頭部の回転に始まる。全身性痙攣に進行する場合もある。

表 2

部位による部分発作の症状

焦点症状

機能障害の部位

両側性強直姿勢

前頭葉(補足運動野)

単純対側性運動(例,四肢の単収縮,ジャクソン行進)

前頭葉

姿勢を伴う頭部および目の回旋

補足運動野

異常な味覚(味覚不全)

内臓あるいは自律神経系(例,心窩部前兆,流涎)

島-眼窩-前頭皮質

幻嗅

前内側側頭葉

咀嚼運動,流涎,会話中断

扁桃体,弁蓋部

複雑な自動運動症

側頭葉

幻視(有形像)

後側頭葉または扁桃体-海馬

局所性感覚障害(例,肢あるいは半身の刺痛またはしびれ)

頭頂葉(感覚野)

幻視(無形像)

後頭葉

複雑部分発作: しばしば前兆が発作に先行する。発作中,患者は目が据わり,無目的な自動運動を行い,言われることを理解せずにでたらめな音声を発し,介助に抵抗することがある。意識は障害されるが,患者はある程度環境を認識している(例,意図的に侵害刺激から遠ざかる)。運動症状は1〜2分後に沈静化するが,錯乱および見当識障害はさらに1〜2分間続くことがある。

発作中に拘束された場合や全般発作後の意識回復中に,患者が殴りかかってくることがある。しかしながら,理由のない攻撃行動はまれである。

左側頭葉てんかんは言語記憶の異常を引き起こし,右側頭葉てんかんは視空間記憶異常を引き起こすことがある。精神疾患の発生率は,一般人口よりも側頭葉てんかん患者において高い:33%が心理的問題を,10%が統合失調症様障害あるいは抑うつを有する。

発作と発作の間,多くの患者は,宗教への傾倒,過剰書字(おびただしく書く強迫行為),他者への過度の依存,性欲の変化といった新しい行動を起こす。

持続性部分てんかん: このまれな病型の焦点性運動発作は,通常,手あるいは顔面半側を侵す;発作が数秒から数分間隔で繰り返し,数日間からときには数年間続く。成人においては,通常,原因は構造的病変である(例,脳卒中)。小児では,通常,限局性の大脳皮質炎症過程(例,ラスムッセン脳炎)が原因であり,おそらく慢性ウイルス性感染過程あるいは自己免疫過程によって引き起こされる。

全般発作: 意識は通常消失し,運動機能は発症時から異常である。

点頭てんかんは,突然の両上肢の屈曲,体幹の前屈,下肢の伸展が特徴である。発作は数秒間続き,1日に何回も繰り返す。生後5年間だけ発症し,その後は他の発作型に移行する。通常,発達障害が認められる。

欠神発作(以前は小発作と称された)は,10〜30秒間の意識消失と眼瞼のピクピクした動きがみられる;体軸筋の筋緊張は消失したりしなかったりする。患者は転倒や痙攣を起こさない;突如活動を中止すると,また同じように突如活動を再開するが,発作後症状はないか,発作が起こったという認識がない。欠神発作は遺伝性で,圧倒的に小児に発症する。治療しないと,このような発作は1日に何回も起こりやすい。発作は,患者が静かに座っているときにしばしば発現し,過呼吸により誘発されることがあるが,運動中にはめったに起こらない。非定型欠神発作はより長く持続し,より重度の攣縮あるいは自動運動が随伴し,さほど完全ではない意識消失を引き起こす。多くの患者は,神経系の損傷,発達遅延,他の発作型の病歴がある。非定型欠神発作は通常,成人しても続く。

脱力発作は小児で起こる。これは,筋緊張および意識の短時間の完全な消失を特徴とする。小児は転倒あるいは卒倒するため,外傷,特に頭部外傷の危険性がある。

全般性強直間代発作(ときに,原発性全般発作と称する)は,典型的には叫び声とともに始まる;発作は,意識消失および転倒の後,四肢,体幹,頭部の筋肉の強直性痙攣が起こり,その後,間代性痙攣となって続く。尿便失禁や,口から泡を吹くことがある。発作は通常1〜2分続く。単純部分発作または複雑部分発作から,二次性全般化強直間代発作が始まる。

ミオクロニー発作は,一肢,数肢,あるいは体幹の短時間の電撃的収縮である。これは反復性で,強直間代発作になることがある。両側性運動動作を伴う他の発作と異なり,全般発作が起こらない限り,意識は消失しない。

若年性ミオクローヌスてんかんは小児あるいは青年期に出現する。発作は,数回の両側性同期性のミオクロニー発作で始まり,90%ではその後に全般性強直間代発作が続く。しばしば,朝目覚めるとき,特に,睡眠遮断またはアルコール使用後に起こる。

熱性痙攣は,発熱を伴うが頭蓋内感染はみられず,誘発性てんかんの一型とみなすべきである。3カ月〜5歳齢の小児の約4%が罹患する(小児における神経疾患: 熱性痙攣を参照 )。良性熱性痙攣は,短期,単発性の全般性強直間代発作のようにみえる。複雑性熱性痙攣は焦点性で,15分を超えて続くか,24時間以内に2回以上再発する。総じて,熱性痙攣患者の2%は続発性発作性疾患を来す。しかしながら,複雑性熱性痙攣,既存の神経学的異常,1歳以前の発症,あるいは発作性疾患の家族歴を有する小児では,発作性疾患の発生率および再発性熱性痙攣のリスクははるかに高い。

てんかん重積状態: 全般性痙攣性てんかん重積状態(全般性強直間代発作重積状態)は,強直間代発作活動が5〜10分間を超えて持続するか,2回以上の発作が起こってその間患者の意識が完全に回復しない状態をいう。持続時間が30分を超えるという以前の定義は,より迅速な確認と治療を勧めるように改定された。60分を超えて続く未治療の全般発作は,永続的な脳損傷につながりうる;長く続く発作ほど致死的になる。抗痙攣薬の急激な投薬中止など,原因は多い。複雑部分発作重積および欠神発作重積は,しばしば遷延性錯乱として出現する。

診断

評価では,発作(それとも,例えば,失神,心不整脈,あるいは薬物過剰投与)が起こったのかどうかを判断した後,考えられる原因あるいは誘因を特定しなければならない。新たに発作が発症した患者は,救急室で評価を受ける;患者は完全な評価後に退室できることもある。発作性疾患を有すると分かっている患者は診察室での評価でもよい。

病歴: 古典的発作活動,咬舌,失禁,遷延性の意識消失とその後の錯乱,または前兆の存在は,てんかん発作を示唆する。病歴は,1回目とその後の発作についての情報を含むべきである(例,持続時間,頻度,一連の展開,発作間の最長および最短間隔,前兆,発作後状態,促進因子)。発作の危険因子(例,過去の頭部外傷あるいは中枢神経系感染,既知の神経疾患,薬物使用あるいは中止,抗痙攣薬のノンコンプライアンス,てんかん発作または神経疾患の家族歴)を確認すべきである。

身体診察: 身体診察は,発作が特発性ならほぼ常に正常であるが,発作が症候性である場合は有意な所見をもたらすことがある。発熱および項部硬直は髄膜炎,クモ膜下出血あるいは脳炎を示唆する。乳頭浮腫は頭蓋内圧亢進を示唆する。局所神経障害(例,反射および筋力の非対称性)は構造異常(例,腫瘍)を示唆することがある。皮膚病変は,神経皮膚疾患(例,神経線維腫症における腋窩部のしみまたはカフェオレ斑点,結節性硬化症における低メラニン性皮膚斑または粒起革様皮)を示唆することがある。

検査: 発作性疾患は既知だが神経学的診察所見は正常か変化なしの患者には,外傷または代謝障害の症状や徴候がみられなければ,薬血中濃度以外の検査はほとんど必要がない。

新たに発症した発作,または神経学的診察所見で新たな異常がみられる患者には,腫瘤あるいは出血を除外するために,頭部CTが直ちに必要である。CTが陰性の場合,フォローアップのMRIが推奨される;MRIは,脳腫瘍および脳膿瘍に対する分解能が優れ,大脳静脈血栓症およびヘルペス脳炎を検出できる。代謝障害に関する臨床検査を行うべきで,これにはCBC;血清グルコース,BUN,クレアチニン,Na,Ca,Mg,P;肝機能検査が含まれる。いずれの患者も髄膜炎あるいは中枢神経系感染が疑われるなら,頭部CTを実施し,正常であれば腰椎穿刺が必要となる。脳波検査を行う;複雑部分発作重積あるいは欠神発作重積の診断に必要となることがある。画像診断と臨床検査が正常で,覚醒し見当識がある患者では,外来患者として脳波検査を実施できる。

側頭葉起始の複雑部分発作では,側頭葉焦点(棘波や徐波)が発作と発作の間(発作間欠期)に発生する。全般起始強直間代発作では,発作間欠期の脳波異常が,4〜7Hzの鋭徐波活性の対称性バーストとして出現することがある。二次性全般発作では,脳波は焦点性放電を示すことがある。欠神発作では,棘徐波放電が3/秒の頻度で出現する。若年性ミオクローヌスてんかんでは,4〜6Hzの多棘徐波異常が特徴的である。

しかしながら,診断は臨床的に行い,脳波正常により除外はできない。脳波検査では,発作が頻繁でない場合は異常を検出しにくい。発作性疾患と最終的に確認された患者の30%では,初回脳波検査は正常である;睡眠遮断後に実施される2回目の脳波検査で半数に異常が検出される。一部の患者は異常脳波が認められない。

1〜5日間入院して行うビデオ脳波モニタリングは,発作型と頻度の判定(例,前頭葉てんかんか,偽発作か),および治療指針に役立つことがある。

予後と治療

治療によって,患者の3分の1で発作がなくなり,さらに3分の1で発作頻度が50%以上減少する。抗痙攣薬で発作が十分制御される患者の約60%は,最終的には投薬を中止し,無発作状態を維持できる。

最適な治療は,可能な限り原因の除去を行うことである(本書の別の個所を参照)。原因が是正できないか特定できない場合は,抗痙攣薬がしばしば必要となる(特に2回目の発作後に);1回の発作後の抗痙攣薬の有用性については意見が分かれるため,リスクおよび利益について患者と話し合うべきである。

発作の間は,首周囲の衣服をゆるめて頭の下に枕をあてがい,損傷を予防すべきである。舌を保護しようとするのは無意味で,患者の歯,または救助者の指を傷つける可能性が高い。誤嚥の予防に患者の向きを横臥にする。これらの措置を患者の家族や仕事の同僚に教えるべきである。

患者は発作が制御されるまで,意識消失が命にかかわる恐れがある活動(例,運転,水泳,登山,浴槽での入浴)を控えるべきである。発作が完全に制御されたら(典型例では6カ月を超える),このような活動の多くは,適切な安全策(例,救助員)が講じられるなら実施可能であり,患者は,運動および社会活動を含めた正常な生活を送るように勧められるべきである。米国のいくつかの州では,医師が車両管理局(DMV)にてんかん患者を報告しなければならない。しかしながら,ほとんどの州は6カ月〜1年間発作がなければ自動車の運転を許可している。

コカインやその他一部の違法薬物(例,フェンシクリジン,アンフェタミン)は発作を誘発するので,回避すべきである。アルコール摂取は最小限にすべきである。一部の薬物(例,ハロペリドール,フェノチアジン系)は発作閾値を低下させうるため,できる限り回避すべきである。

家族には,患者に対する良識ある接し方を教えなければならない。過保護ではなく,マイナスの感情(例,劣等感や自意識について)を弱めるような思いやりのある支援を行うべきである;長患いさせないようにする。施設保護はめったに勧められず,重度精神遅滞者や,薬物療法にもかかわらず発作があまりにも頻繁かつ暴力的であるために他の場所では介護できない患者のためのものとすべきである。

急性てんかん発作およびてんかん重積状態: ほとんどの発作は数分以内に自然終息し,緊急薬物治療を必要としない。てんかん重積状態および5分を超えて持続するほとんどのてんかん発作では,発作を終息させる薬物,ならびに呼吸状態のモニタリングを必要とする。気道になんらかの問題が示唆されるならば,気管挿管が必要である。静脈ラインを迅速に確保し,ロラゼパム0.05〜0.1mg/kg静注を2mg/分の速度で投与する。ときに大用量が必要となる。しかしながら,約8mgを投与後も発作が継続するなら,ホスフェニトイン10〜20PE(フェニトインナトリウム当量)/kg,静注を100〜150PE/分の速度で投与する;フェニトイン15〜20mg/kg,静注,50mg/分が第2選択である。さらなる発作には,追加でホスフェニトイン5〜10PE/kgあるいはフェニトイン5〜10mg/kgが必要となる。ロラゼパムおよびフェニトイン投与後の持続性発作は,難治性てんかん重積状態と定義される。3剤目の抗痙攣薬の推奨は様々で,フェノバルビタール,プロポフォール,ミダゾラム,バルプロ酸を含む。フェノバルビタール15〜20mg/kg静注を100mg/分(小児では3mg/kg/分)で投与し,継続する発作はさらに5〜10mg/kg必要とする。バルプロ酸負荷投与量10〜15mg/kg静注が代替法である。この時点で,もしてんかん重積状態が鎮静化していないなら,気管挿管および全身麻酔が必要である。使用に最適な麻酔薬は,意見が分かれるが,多くの医師は,プロポフォール15〜20mg/kgを100mg/分で投与,あるいはペントバルビタール5〜8mg/kg(負荷投与量)投与後,2〜4mg/kg/時の注入を,発作活動の脳波検査所見が抑制されるまで行う。吸入麻酔薬はめったに使用されない。初期治療後,てんかん重積状態の原因を特定し,治療しなければならない。

外傷後てんかん: 頭部外傷が頭蓋骨骨折,頭蓋内出血,または局所神経障害を引き起こすなら,予防的に抗痙攣薬を投与する。これらの薬物は,受傷後1週間は発作リスクを軽減するが,数カ月後あるいは数年後の永続的な外傷後てんかんは予防しない。発作が生じない限り,1週間たてば投薬を中止すべきである。

長期治療: 1種類の抗痙攣薬で全ての発作型が制御されることはなく,また,患者によって異なる薬物を必要とする。ときには多剤投与が必要である。

特定の発作性疾患に対する選択薬は,比較的低用量で開始し,1〜2週間かけて患者の除脂肪体重に基づく標準的治療量まで漸増する。用量は,患者の薬物に対する忍容性に合わせて調整すべきである。目標とする用量範囲に達した後,薬物の血中トラフ値を測定する。発作が継続するか血中濃度が治療量以下なら,1日量を少量ずつ増量する。発作が制御される前に毒性が生じるなら,用量を中毒前の用量に減じる。その後,別の抗痙攣薬を発作が制御されるまで徐々に追加する。薬物相互作用がいずれかの薬物の代謝分解速度を妨げうるため,患者を綿密にモニターすべきである。初期に投与した無効な抗痙攣薬は,その後ゆっくり減量して,最終的には完全に中止する。抗痙攣薬の多剤併用は,副作用発生率および薬物相互作用が有意に増大するため,回避すべきである;2剤目の追加は患者の約10%で有用だが,副作用発生率は2倍以上になる。多くの薬物は抗痙攣薬の血中濃度を変化させ,その逆もまた同じである。医師は新たな薬物を処方する前に,全ての可能性のある薬物-薬物相互作用を認識しておくべきである。

いったん発作が制御されたのちは,無発作状態が少なくとも1〜2年間持続するまで,その薬を中断せずに継続すべきである。それから,投薬中止を検討すべきである。ほとんどの抗痙攣薬は2週間毎に10%ずつ減量できる。小児期から発作性疾患を有している患者,無発作になるまでに2剤以上の抗痙攣薬を必要とする患者,抗痙攣薬服用中に発作がみられた患者,部分発作あるいはミオクロニー発作の患者,基礎疾患として固定した脳障害を有する患者,あるいは前年に脳波に異常がみられたことがある患者では,再発しやすい。再発する患者の約60%は1年以内に,また80%は2年以内に再発する。抗痙攣薬を服用していないと再発がみられる患者,発作を避ける重要な社会的理由がある患者は,無期限に治療されるべきである。

長期使用に最も有効な抗痙攣薬,および小児と成人に対するそれらの初期投与量を発作性疾患: 発作性疾患に使用される薬物表 3: 表に示す。薬物反応が分かれば,血中濃度の観察は臨床経過ほどの有用性はない。低用量で毒性症状を示す場合もあれば,無症状で高用量に耐えられる場合もある。薬物血中濃度は指針にすぎない。どの抗痙攣薬でも適量とは,あらゆる発作を止め,かつ薬物血中濃度にかかわらず副作用が最少の最低用量である。

表 3

PDF 発作性疾患に使用される薬物

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全般性強直間代発作には,フェニトイン,カルバマゼピン,バルプロ酸が優先される。成人には,フェニトインを分割投与か,就寝時に1回投与できる。発作が持続するなら,総1日量を,血中トラフ値をモニターしながら600mgまで注意深く増量してもよい。高用量では,1日量を分割投与することが毒性症状を軽減しうる。

部分発作には,カルバマゼピン,カルバマゼピン誘導体(例,オクスカルバゼピン),フェニトインによる治療を始める。バルプロ酸は一般に有効性が劣るが,考慮に入れてもよい。新しい薬物(例,ガバペンチン,ラモトリジン,チアガビン,トピラメート,ビガバトリン,ゾニサミド)は有効なようだが,それらの有効性と標準的抗痙攣薬の有効性の比較はまだ確立されていない。

純粋な欠神発作には,エトスクシミドが優先される。非定型欠神発作,または他の発作型と関連した欠神発作には,バルプロ酸が優先される。クロナゼパムは有効だが,本剤に対する薬物耐性がしばしば生じる。アセタゾラミドは難治例に対するものとする。

点頭てんかん,脱力発作,およびミオクロニー発作は治療が難しい。バルプロ酸を優先し,その後クロナゼパムを投与する。エトスクシミドはときに有効であり,アセタゾラミド(欠神発作での用量と同じ)も同様である。ラモトリジンはある程度有効かもしれないが,他の抗痙攣薬としばしば併用され,その併用薬がラモトリジン用量に影響する。フェニトインの有効性は限られている。点頭てんかんには,コルチコステロイド8〜10週間投与がしばしば奏効する。最適な治療法は,意見が分かれる。ACTH 20〜60単位,筋注,1日1回を行ってもよい。ケトン産生食は有用だが,持続が困難である。カルバマゼピンは,原発性全般てんかんおよび複数の発作型を有する一部の患者を悪化させうる。

若年性ミオクローヌスてんかんは,一部の抗痙攣薬(例,バルプロ酸)にしか反応せず,また,他の薬物(例,カルバマゼピン)で悪化することがある;通常は生涯にわたる治療が推奨される。

熱性痙攣に対する抗痙攣薬は,患児が熱性疾患のない場合に引き続いて発作を起こさない限り,推奨されない。以前は多くの医師が,複雑熱性痙攣の小児に対して,非熱性痙攣予防を目的に抗痙攣薬を投与したが,この治療法は奏効するようではなく,また,フェノバルビタールの長期使用は学習能力を低下させる。

副作用: 全ての抗痙攣薬は,アレルギー性の猩紅熱様発疹あるいは麻疹様発疹の原因となる可能性があり,どれも妊娠中完全に安全ではない(発作性疾患: 発作性疾患に使用される薬物表 3: 表参照)。

カルバマゼピン服用中の患者では,治療開始1年間はCBCをルーチンにモニターすべきである。白血球数が著しく減少するなら,投薬を中止する。用量依存性の好中球減少症(すなわち,好中球数1000/μL未満)はよくみられるが,容易に他の抗痙攣薬に替えることができないなら,減量することで対処できる。バルプロ酸を服用している患者は,1年間は3カ月毎に肝機能検査を受けるべきである;もし血清トランスアミナーゼ濃度やアンモニア濃度が著しく上昇(正常値上限の2倍を超える)するなら,投薬を中止すべきである。正常値上限の1.5倍までのアンモニア上昇は安全に耐えられる。

胎児性抗てんかん薬症候群(口唇裂,口蓋裂,心奇形,小頭症,発育遅延,発達遅延,顔面の異常,指形成不全)は,妊娠中に抗痙攣薬を服用した女性の子供の4%に生じる。一般的に用いられている抗痙攣薬のうちカルバマゼピンの催奇形性は最小であるようだが,わずかにはある;バルプロ酸は最も催奇形性が強いと考えられる。しかし,妊娠中,全般発作が制御されないと,胎児の傷害および死を招きうるため,抗痙攣薬による継続治療が一般に勧められている(妊娠中の合併症: 妊娠中の発作障害を参照 )。リスクを正しく見直すべきである:エチルアルコールはどの抗痙攣薬よりも,発達中の胎児に対して毒性が強い。葉酸補充は神経管欠損症のリスク軽減に役立つので,行うべきである。

手術: 患者の約10〜20%は,薬物治療に反応しない発作を有する。発作が局所的な異常な脳から起始する患者のほとんどでは,てんかん焦点を切除すれば機能が顕著に改善する。患者の一部は無発作状態を維持するが,ほとんどの場合,なお抗痙攣薬が必要である。手術には広範な検査とモニタリングが必要となるので,こうした患者は発作性疾患専門センターで治療を受けるのが最善である。

迷走神経刺激: 埋め込み型ペースメーカー様装置による左側迷走神経の断続的電気刺激は,部分発作を3分の1減少させる。装置がプログラムされた後,患者は発作が起こりそうな感じがしたら,磁石で装置を始動させることができる。抗痙攣薬の補助療法として迷走神経刺激が行われる。副作用には,刺激中声が低くなること,咳,嗄声がある。合併症は最小である。効果持続期間は不明である。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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