メルクマニュアル18版 日本語版
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尿路結石(腎結石症;結石;尿石症)

尿路結石は,尿路系に存在する固形の粒子である。それらは疼痛,悪心,嘔吐,血尿,また二次感染による悪寒と発熱を引き起こす場合がある。診断は,尿検査および非造影らせんCTに基づく。治療は鎮痛薬,感染のための抗生物質療法,ときに,器具使用,衝撃波砕石術または内視鏡下外科手術を行う。

米国では毎年成人約1000人に1人が尿路結石のために入院しており,全剖検例の約1%にも尿路結石がみられる。結石は,顕微鏡的微結晶から直径数cmの結石まで様々である。サンゴ状結石と呼ばれる大きな結石は,腎杯系全体を占めるようになることがある。

病因

米国では,結石の約80%はCa,主にシュウ酸カルシウムから成り,10%は尿酸,2%はシスチン,残りはリン酸マグネシウムアンモニウムである。

一般的な危険因子は,Caまたは尿酸塩の排泄量増加,または尿量の減少によって尿中塩濃度の上昇をもたらす疾患である。

米国におけるCa結石の主な危険因子は遺伝性の高カルシウム尿症で,Ca結石を有する男性の50%,女性の75%にみられる。患者の血清Caは正常であるが,尿中Caが高値を示す:男性では尿中Ca300mg/日超(7.5mmol/日超),女性では250mg/日超(6.2mmol/日超)。Ca結石を有する患者の約5%に原発性副甲状腺機能亢進症がみられる。まれな原因には,サルコイドーシス,ビタミンD中毒,甲状腺機能亢進症,尿細管性アシドーシス,発性骨髄腫,転移癌,高シュウ酸尿症がある。高シュウ酸尿症(尿中シュウ酸40mg/日超[440μmol/日超])は原発性であるか,またはシュウ酸塩を含む食物(例,ダイオウ,ホウレンソウ,ココア,ナッツ,コショウ,茶)の過剰摂取,様々な腸の病気(例,腸内細菌異常増殖症候群,慢性の膵または胆嚢疾患)や回空腸手術によるシュウ酸の過剰吸収により起こる。低クエン酸尿症(尿中クエン酸塩350mg/日[1820μmol/日]未満)はCa結石を有する患者の40〜50%にみられるが,これはクエン酸が正常では尿中Caと結合してCa塩の結晶化を阻害するためである。

尿酸結石は尿の酸性度の上昇(尿pH5.5未満)とともに発現し,解離していない尿酸を結晶化する。尿酸結晶は結石全体を構成する場合もあるが,Ca結石またはCaと尿酸の混合結石の結晶核となる場合の方がより一般的である。高尿酸尿症(女性では尿中尿酸750mg/日超[4mmol/日超],男性では800mg/日超[5mmol/日超])は,ほぼ常にプリン基(肉,魚,家禽に存在)の過剰摂取に起因する。

シスチン結石は,シスチン尿症の存在下でのみで起こる(腎輸送異常: シスチン尿症を参照 )。

リン酸マグネシウムアンモニウム結石(スツルバイト,感染結石)は,尿素分解菌に起因するUTIの存在を示す。結石は感染した異物として取り扱わねばならない。その他の型の結石とは異なり,リン酸マグネシウムアンモニウム結石は女性で3倍多く認められる。

病態生理

尿路結石は,腎実質または腎盂内にとどまる場合,または尿管や膀胱に排出される場合がある。通過の際には尿管を刺激したりとどまる場合があり,尿流を妨げ,水尿管症や,ときに水腎症の原因となる。閉塞が起きやすい領域は,腎盂尿管移行部,遠位尿管(腸骨血管のレベル),尿管膀胱移行部である。典型的には直径5mmを超える結石がとどまり,5mm以下の結石は自然に通過することが多い。

部分的な閉塞であっても糸球体ろ過の低下を招き,結石の排出後も一時的に持続する場合がある。水腎症および糸球体内圧の上昇に伴い,腎血流量は減少し,腎機能がさらに悪化する。しかしながら,通常,永久的な腎機能不全は,完全な閉塞後約28日経過した場合にのみ起こる。

二次感染は長期の閉塞で起こりうるが,Caを含有する結石を有する患者の大部分の患者では尿の感染が認められない。

症状と徴候

腎実質または腎盂に大きな結石がとどまっている場合であっても,通常は無症候性である。しかしながら,小さな結石が通過する際には,特に閉塞を伴う場合は激痛と,多くの場合悪心,嘔吐,ときに肉眼的血尿を伴う著明な症状が起こりうる。疼痛(腎疝痛)は,典型的には耐え難い間欠性のもので,通常は側腹部や腎領域に始まり,尿管に沿って腹部を縦断し,しばしば性器に放散する。遠位尿管または膀胱内の結石は,恥骨上の疼痛に加えて尿意切迫や頻尿を起こすことがある。頻尿と尿意切迫は,結石が遠位尿管を通過する際に特に一般的である。

診察時には,患者は明らかに極度の苦痛を示し,多くの場合蒼白で発汗が認められる。安静に横臥していることができず,歩き回る,身をよじる,または常に姿勢を変えることがある。触診によって,拡張している尿管の圧力が上昇すると,患部側の腹部に多少圧痛が認められることがあるが,腹膜徴候(防御,反跳,固縮)は欠如している。

診断

症状と徴候から診断が示唆される。類似の症状は,虫垂炎,胆嚢炎,消化性潰瘍,膵臓炎,子宮外妊娠および解離性大動脈瘤から生じうる。

腎疝痛が推測される患者に対しては,尿検査と画像診断検査を行い,結石が確認された場合は基礎原因の評価が必要となるため結石の成分検査を行う。急性腹症の一般的な評価は急性腹症と消化器外科: 評価を参照 。

尿検査: 肉眼的または顕微鏡的血尿が一般的にみられるが,結石が複数存在しても尿が正常である場合がある。細菌を伴うまたは伴わない膿尿が存在する場合がある。結石や種々の結晶性物質が沈渣中に存在する場合もあるが,結石の組成は結晶学的分析で判定すべきである。唯一の例外は,濃縮酸性化検体中にシスチンの典型的六方晶が存在する場合で,それによりシスチン尿症が強く示唆される。

画像診断法: 非造影らせんCTを実施すべきである。非造影腎CTは,閉塞の程度と同様に結石の位置を検出しうる。さらに,らせんCTによって疼痛の他の原因が明らかになる場合がある(例,大動脈瘤)。

大部分の尿結石は単純X線で示されるが,結石の有無にかかわらず,より決定的な画像診断が必要であるため,単純X線は省略してもよい。腎超音波検査およびIVUのいずれも,結石と水腎症を同定しうるが,超音波は水腎症を伴わない小型結石に対しては感度が高くない,またIVUが時間がかかり,患者を静注造影剤のリスクに曝すため,これらの検査はらせんCTの実施が不可能な場合にのみ行われる。

基礎原因の同定: 結石は,手術による摘出,または尿をこして採取され,結晶学的分析のために検査室に送られる。患者が持ち込むこともある。追加的な危険因子を持たない単純なCa結石患者に対しては,副甲状腺機能亢進症を除外するための尿検査と血漿Ca濃度の測定のみを2回実施する。高蛋白食,ビタミンCまたはDサプリメントなどの素因を探すべきである。しかしながら,患者が結石に関する有力な家族歴,結石形成の素因となりうる関連疾患(例,サルコイドーシス,骨疾患),または結石の治療に困難を来す病態(例,単腎,尿路奇形)を有する場合は,完全な代謝評価を行う根拠となる。

治療

疝痛はオピオイドで軽減しうるが,ケトロラク30mg,静脈内投与は急速に奏効し,鎮静作用も少ない。嘔吐は通常疼痛とともに回復するが,持続する場合は制吐剤(例,メトクロプラミド10mg,静脈内投与)で治療することも可能である。

水分摂取量の増加(経口または静脈内のいずれも)は伝統的に推奨されてきたが,結石の排出速度の上昇は証明されていない。直径5mm未満の結石および直径5mm超で水腎症を伴わない結石は,鎮痛薬で治療する場合があり,患者の苦痛が治まり飲水が可能な場合は,帰宅して結石の排出を待つこともある。6週以内に排出されない大きな結石は,典型的には摘出が必要である。感染性結石は,常に,直ちに摘出すべきである。衝撃波砕石術は,腎盂または近位尿管内にある直径1.5cm未満の症候性の結石に対する通常の療法である。より大きな結石を除去するには,腎臓の結石には経皮的腎切石術を行い,尿管の結石には尿管鏡検査を行う場合もある。腎盂または尿管内に生じた結石は,特に感染が関連する場合には内視鏡的な除去が必要となることがある。尿管全体にわたる結石は,下方から(尿管鏡的に)または上方から(経皮的に)内視鏡的なアプローチを行う場合がある。結石がそのまま除去できる程度に小さい場合は,尿管鏡の制御のもとに,直視下でバスケットカテーテルを用いて除去することもある。しかしながら,大部分の尿管結石に対しては結石破砕を伴うある種の体腔鏡的砕石術(電気水圧衝撃砕石術,レーザー,空気衝撃砕石術)により結石を摘出可能な大きさの小片に断片化できる。上部または下部尿路の尿酸結石は,長期にわたる尿のアルカリ化によってHCO3またはクエン酸塩20mEq,経口にて1日2〜3回により,ときとして溶解されうるが,それ以外の結石の化学溶解は不可能である。

予防

最初のCa結石を排出した患者のうち,2度目に結石が形成される可能性は1年で15%,5年で約40%,そして10年で約80%である。予防法の計画には,結石の回収と分析,尿中の結石形成物質の測定および臨床歴が必要である。3%未満の患者では,代謝異常がみられない。これらの患者は,正常量の結石形成塩を尿中で結晶化させずに保つ耐性がないようである。サイアザイド系利尿薬,クエン酸カリウムおよび水分摂取量の増加によって,結石生成率を減少しうる。

高カルシウム尿症の患者に対しては,尿中Ca排泄量とシュウ酸カルシウム過飽和を減少させるために,サイアザイド系利尿薬(例,クロルタリドン25mg,経口にて1日1回,またはインダパミド1.25mg,経口にて1日1回)を投与する場合がある。患者は,水分摂取量を3L/日以上に増やすよう推奨される。クエン酸カリウム(20mEq,1日2回)によるK補充は,低カリウム血症のリスクを低下させ,低クエン酸尿症患者におけるクエン酸塩排泄を補充する。低Ca食やリン酸ナトリウムセルロースは,慢性的な負Caバランスまたは高シュウ酸尿症をもたらす場合があるため慎重に用いるべきである。“正常な”Ca摂取が推奨される。経口のオルトリン酸塩は,十分には研究されていない。

高シュウ酸尿症には種々の予防法がある。小腸疾患の患者は,Ca負荷(通常クエン酸カルシウムとして400mg,経口にて1日2回),コレスチラミンおよび低シュウ酸塩,低脂肪の食事を併用して治療しうる。高シュウ酸尿症は,ピリドキシン5〜500mg,経口にて1日1回に反応する場合があるが,おそらくグリシンのシュウ酸塩直接前駆体であるグリオキシル酸の転化に関与するトランスアミナーゼ活性の上昇によるためと思われる。

高尿酸尿症では,肉,魚および家禽の摂取を減らすべきである。もし食事を変えられないならば,アロプリノール300mg,毎朝服用で尿酸生成が減少する。尿酸結石に対しては,尿pHを6〜6.5に上昇させる必要があるため,水分摂取量の増加に加えて経口的なKアルカリ化薬(例,上記のようにクエン酸カリウム)を用いる。

尿素分解菌感染には,抗生物質療法(例,ニトロフラントイン)が必要である。もし感染の根絶が不可能ならば,長期の抑制療法が必要となることがある。さらに,アセトヒドロキサム酸を用いてスツルバイト結石の再発を減少しうる。

尿中シスチン濃度は,シスチン結石の再発を防ぐためには尿1リットル当たりのシスチンを250mg未満に低下させなくてはならない。シスチン排泄量の減少に加えて尿量を増加させる何らかの併用(α-mecaptopropionyl-glycineまたはdペニシラミン)により,尿中シスチン濃度を低下させるべきである。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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