腎皮質壊死

執筆者:Zhiwei Zhang, MD, Loma Linda University School of Medicine
レビュー/改訂 2021年 3月
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腎皮質壊死は,腎細動脈の損傷により皮質組織が破壊され,慢性腎臓病に至る病態である。このまれな疾患は,新生児や敗血症または妊娠合併症を起こした妊婦または褥婦に発生するのが典型的である。症状と徴候は肉眼的血尿,側腹部痛,尿量低下,発熱,尿毒症の症状である。基礎疾患の症状が優勢の場合がある。診断はMRI,CT,腎シンチグラフィー,または腎生検による。1年死亡率は20%を超える。治療は基礎疾患および腎機能の維持に向けられる。

腎皮質壊死は斑状またはびまん性の場合があり,両側性の腎細動脈障害が皮質組織の破壊および急性腎障害をもたらす。腎皮質組織は最終的には石灰化する。傍髄質部の皮質,髄質,および被膜直下の領域は保存される。

病因

損傷は,通常,血管攣縮,微小血管障害または血管内凝固に続発する腎動脈灌流低下に起因する。

症例の約10%は乳児および小児である。妊娠合併症は,敗血症と同様に,本疾患のリスクを新生児および妊婦で上昇させる。その他の原因(例,播種性血管内凝固症候群[DIC])は,頻度がより低い(腎皮質壊死の原因を参照)。

表&コラム

症状と徴候

肉眼的血尿,側腹部痛,ときに尿量低下または突然の無尿が起こる。発熱は一般的であり,高血圧を伴う慢性腎臓病が発生する。しかしながら,これらの症状はしばしば基礎疾患の症状の陰に隠れて目立たない。

診断

  • 画像検査,通常はCT血管造影

診断は,潜在的原因を有する患者で典型的な症状が発生した場合に疑われる。

画像検査でときに診断を確定することができる。CT血管造影はヨード造影剤を用いることのリスクにもかかわらず通常好まれる。これらの患者は通常重度の腎機能障害を有しており,ガドリニウム造影剤を用いたMRアンギオグラフィーの使用は腎性全身性線維症のリスクがあることから,推奨されない。

代替の選択肢は,ジエチレントリアミン五酢酸を使用する腎シンチグラフィーである。腫大し非閉塞性の腎が示され,腎血流はわずかか,または全く認められない。腎生検は診断が不明でかつ禁忌が存在しない場合にのみ行われる。腎生検により確定診断および予後に関する情報が得られる。

尿検査,血算,血清電解質,肝機能検査,および腎機能検査がルーチンに施行される。これらの検査により,しばしば腎機能障害が確認され(例,クレアチニンおよび血中尿素窒素の上昇ならびに高カリウム血症により示唆),原因が示唆される場合がある。重度の電解質異常も原因によっては存在する場合がある(例,高カリウム血症高リン血症低カルシウム血症)。血算では,しばしば白血球増多が検出され(敗血症が原因ではない場合にも),また溶血播種性血管内凝固症候群(DIC),敗血症が原因の場合には,貧血および血小板減少症が検出されることがある。トランスアミナーゼは,相対的な血液量減少状態(例,敗血症性ショック分娩後出血)で上昇する場合がある。DICが疑われる場合は,凝固検査を施行する。凝固検査でフィブリノーゲン濃度低値,フィブリン分解生成物の増加,プロトロンビン時間(PT)/INRおよび部分トロンボプラスチン時間(PTT)の上昇を検出しうる。尿検査では典型的にタンパク尿および血尿を検出する。

予後

腎皮質壊死の予後はこれまで不良であり,最初の1年の死亡率は50%を超えていた。しかしながら,より最近では積極的な支持療法により1年死亡率は約20%の可能性があり,生存者の最大20%は一部の腎機能を回復することがある。

治療

治療は基礎疾患および腎機能の維持に向けられる(例,早期の透析)。

要点

  • 腎皮質壊死はまれな疾患で,新生児や敗血症または妊娠合併症を起こした妊婦または褥婦に発生するのが典型的である。

  • 診断は,リスクを有し典型的な症状(例,肉眼的血尿,側腹部痛,尿量低下,発熱,高血圧)を発症する患者で疑う。

  • 診断は腎血管の画像検査,通常はCT血管造影で確定する。

  • 基礎疾患を治療する。

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