バルトリン腺嚢胞

(バルトリン腺嚢胞)

執筆者:Kilpatrick, MD, MEd, Baylor College of Medicine
レビュー/改訂 2021年 3月
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バルトリン腺嚢胞は粘液が貯留した嚢胞であり,腟開口部のいずれかの側に生じる。バルトリン腺嚢胞は最も頻度の高い大型の外陰嚢胞である。大型の嚢胞による症状としては,外陰の刺激症状,性交痛,歩行時の疼痛,外陰の左右非対称性などがある。バルトリン腺嚢胞は膿瘍(痛みがあり通常は赤色)を形成することがある。診断は身体診察による。大型の嚢胞および膿瘍には排膿とときに切除が必要である;膿瘍には抗菌薬が必要である。

バルトリン腺は丸くて非常に小さく,触知不能であり,腟口の後側方深部に位置する。バルトリン管の閉塞により,粘液で腺が増大し,結果的に嚢胞となる。閉塞の原因は通常不明である。まれに,嚢胞が性感染症(例,淋菌感染症)により起こる。

バルトリン腺嚢胞は約2%の女性に,通常20代で生じる。加齢とともに嚢胞が発生する可能性は低下する。

嚢胞が感染を起こし,膿瘍を形成することがある。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)がこのような感染(および他の外陰感染)でより一般的になっている。

まれにバルトリン腺由来の外陰がんが発生する。

症状と徴候

大部分のバルトリン腺嚢胞は無症状であるが,大型の嚢胞は刺激性となり,性交や歩行を妨げる場合がある。ほとんどの嚢胞は圧痛がなく,片側性で,腟口近くに触知可能である。嚢胞により罹患大陰唇は膨らみ,外陰は左右非対称となる。

限局性紅斑と圧痛を伴う蜂窩織炎が発生する場合がある。膿瘍により重度の外陰痛やときに発熱が生じる;圧痛があり,典型的には発赤を認める。帯下を認めることがある。性感染症を伴うことがある。

診断

  • 臨床的評価

バルトリン腺嚢胞の診断は通常,身体診察による。分泌物の検体(存在する場合)に対し,性感染症の検査を行うことがある。膿瘍の液体は培養を行うべきである。

40歳以上の女性では,外陰がんを除外するための生検が一部の専門家により推奨されている。

治療

  • 軽度の症状には坐浴

  • より重度の症状および40歳以上の女性では全ての嚢胞に対して手術

40歳未満の女性では,無症状の嚢胞については治療を必要としない。軽度の症状は坐浴を用いることで解消することがある。そうでなければ,症候性の嚢胞には手術が必要なことがある。

膿瘍もまた手術が必要である。嚢胞は単純な排膿後にしばしば再発するため,手術では管から外部までの永久的な開口形成を目標とする。通常,以下のいずれかが行われる:

  • カテーテル挿入:小さなバルーンカテーテルを嚢胞に挿入し,膨らませ,4~6週間嚢胞内に留置する;この処置により線維形成が促進され,永久的な開口が形成される。

  • 造袋術:嚢胞の端を反転させ外部に縫合する。

再発性嚢胞では切除を必要とする場合がある。

40歳以上の女性では,新たに発生した嚢胞は外科的生検を行うか(外陰がんを除外するために)切除すべきである。何年にもわたり存在していて,外観に変化のみられない嚢胞には,症状を伴わない限り,生検も外科的切除も不要である。

膿瘍はときに,MRSAを対象とする経口抗菌薬レジメン(例,トリメトプリム160mg/スルファメトキサゾール800mg,1日2回またはアモキシシリン/クラブラン酸875mg,1日2回,1週間)+ クリンダマイシン(300mg,1日4回,1週間)によっても治療する。蜂窩織炎もみられる場合,経口抗菌薬を使用すべきである;抗菌薬はその地域のアンチバイオグラムに基づいて選択すべきである。患者がコントロール不良の糖尿病であるか,易感染状態にある場合には,抗菌薬の静脈内投与のために入院を積極的に考慮すべきである。

要点

  • 大部分のバルトリン腺嚢胞で腺閉塞の原因は不明である;まれに嚢胞が性感染症により生じることがある。

  • 嚢胞は感染することがあり(しばしばMRSAによる),膿瘍を形成する。

  • 40歳以上の女性では,外陰がんを除外するために新たに発生した嚢胞の生検を行うか,それらの嚢胞を切除する。

  • 嚢胞が煩わしい症状を引き起こしている場合は,外科的に治療(例,カテーテル挿入,造袋術,および/または切除による)する。

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