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子宮内膜癌(子宮体がん)

(子宮体がん)

執筆者:

Pedro T. Ramirez

, MD, Houston Methodist Hospital;


Gloria Salvo

, MD, MD Anderson Cancer Center

レビュー/改訂 2020年 9月
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本ページのリソース

子宮内膜癌(子宮体癌)の大部分は類内膜腺癌である。典型的には,閉経後に性器出血が起こる。診断は生検による。進行期診断は手術進行期分類である。治療には,子宮摘出術,両側卵管卵巣摘出術が必要であり,高リスクの患者では通常,骨盤および傍大動脈リンパ節郭清術を必要とする。進行例には通常,放射線療法,ホルモン療法または化学療法が適応となる。

子宮内膜癌は主に閉経後女性に生じる。診断時の平均年齢は61歳である。大部分の症例は50歳から60歳の女性において診断される;92%の症例は50歳以上の女性で生じる。

病因

子宮内膜癌の主な危険因子は以下の通りである:

  • 黄体ホルモン拮抗のないエストロゲン曝露(unopposed estrogen)

  • 年齢50歳以上

  • 肥満

  • 糖尿病

その他の危険因子としては以下のものがある:

  • 5年を超えるタモキシフェン使用

  • 骨盤放射線療法の既往

  • 乳癌または卵巣がんの既往歴や家族歴

  • 遺伝性非ポリポーシス大腸癌または,場合により第1度近親者に子宮内膜癌の家族歴

  • 高血圧

黄体ホルモン拮抗のないエストロゲン曝露(血中プロゲステロン濃度が低いかゼロで,かつエストロゲン濃度が高い状態)は以下と関連していることがある:

  • 肥満

  • 多嚢胞性卵巣症候群

  • 未経産

  • 早い初経

  • 閉経の遅れ

  • エストロゲン産生腫瘍

  • 無排卵(排卵障害)

  • プロゲステロンを併用しないエストロゲン療法

ほとんどの子宮内膜癌の原因は,散発性の遺伝子変異である。しかしながら,約5%の患者では遺伝性の変異が子宮内膜癌の原因になっており,遺伝性変異による子宮内膜癌は若年で発生する傾向があり,散発性のがんよりもしばしば10~20年早く診断される。遺伝が関与する症例の約半数は遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC;リンチ症候群)の家系に生じる。HNPCCの患者では,2つ目のがん(例, 大腸癌 大腸癌 大腸癌は極めてよくみられる。症状としては血便や排便習慣の変化などがある。いくつかある方法のうち1つを用いたスクリーニングを,適切な集団に対して行うことが推奨される。診断は大腸内視鏡検査による。治療は外科的切除とリンパ節転移に対する化学療法である。 米国では,大腸癌の年間症例数は推定147,950例,年間死亡数は53,200例である( 1)。およそ40~50歳で発生率が急激に高まる。全症例の半数以上が直腸およびS状結腸で発生し,95%は腺... さらに読む 大腸癌 卵巣がん 卵巣がん 卵巣がんは通常,診断時には進行しているため,致死的となることが多い。通常,症状は早期にはなく,進行期にも非特異的である。評価として通常,超音波検査,CTまたはMRI,および腫瘍マーカー(例,CA125)の測定を行う。診断は組織学的分析による。進行期診断は外科的に行う。治療として,子宮摘出術,両側卵管卵巣摘出術,浸潤病変の可能な限りの切除(腫瘍減量手術)が必要であり,がんが限局性である場合を除き,化学療法が必要である。... さらに読む )を発症するリスクが高い。

病理

子宮内膜癌では通常,子宮内膜増殖症が先行する。子宮内膜癌は一般的に2種類に分類される。

I型の腫瘍はより頻度が高く,多くはエストロゲンに反応し,通常は若年,肥満,または閉経期の女性で診断される。子宮内膜増殖症が先行する。この種の腫瘍は通常,悪性度が低く,予後良好である。最も頻度の高い組織型は類内膜腺癌(グレード1および2)である。この腫瘍はマイクロサテライト不安定性を示す場合があり,PTENPIK3CAKRAS,およびCTNNBIに変異を有することがある。

II型の腫瘍は通常,悪性度が高く,グレード3の類内膜癌と類内膜癌以外の組織型(例,漿液性癌,明細胞癌,混合癌,未分化癌,癌肉腫)が含まれる。これらは高齢女性に発生する傾向にある。約10~30%にp53変異がみられる。最大10%の子宮内膜癌がII型である。予後は不良である。

類内膜腺癌は子宮内膜癌の約75~80%を占める。

子宮体部漿液性癌(10%),明細胞癌(< 5%),および癌肉腫(< 5%)はより悪性度が高く,高リスクの組織型と考えられており,初診時に子宮外病変がみられる頻度が高い。

粘液癌は典型的に低悪性度である;予後は良好である。この腫瘍ではKRAS変異がよくみられる。

子宮内膜癌は以下のように進展する:

  • 子宮腔の表面から子宮頸管へ

  • 子宮筋層を通り,漿膜や腹腔へ

  • 卵管内腔を経由して卵巣,子宮広間膜,腹膜表面へ

  • 血流を経由して遠隔転移

  • リンパ管を経由して

腫瘍のグレードが高く(より未分化に)なるほど,より深い筋層浸潤,骨盤または傍大動脈リンパ節転移,および子宮外進展の可能性が大きくなる。

症状と徴候

子宮内膜癌の大部分の患者(> 90%)に異常子宮出血がみられる(例,閉経後出血,閉経前の反復性子宮出血);閉経後出血のある女性の3分の1は子宮内膜癌である。閉経後出血の数週間前または数カ月前に帯下が生じることがある。

診断

  • 子宮内膜生検

  • 外科的な進行期診断

以下の所見は子宮内膜癌を示唆する:

  • 閉経後の出血

  • 閉経前の女性における異常出血

  • ルーチンのパパニコロウ(Pap)検査で閉経後女性に子宮内膜細胞を認める

  • ルーチンのPap検査で異型子宮内膜細胞を認める全ての女性

子宮内膜癌が疑われる場合には,外来で子宮内膜生検を施行する;精度は90%を超える。異常出血を認める,特に40歳以上の女性では子宮内膜採取も推奨される。

結果が確定的でない場合や,がんが示唆される場合(例,異型を伴う複雑型増殖症)には,外来で子宮鏡検査と併せて部分的頸管拡張・内膜掻爬(D&C)を実施する。代替法として経腟超音波検査があるが,組織学的診断が必要である。

子宮内膜癌と診断したら,治療前評価として血清電解質測定,腎・肝機能検査,血算,胸部X線撮影,心電図などを行う。

子宮内膜癌はときに遺伝性変異に起因することがあるため,患者が50歳未満であるか,子宮内膜癌および/またはHNPCCの顕著な家族歴を有する場合,遺伝カウンセリングおよび/または遺伝子検査を考慮すべきである。

以下のいずれかを認める患者では,子宮外進展および遠隔転移の有無を確認するために骨盤および腹部CTも施行する:

  • 身体診察で腹部腫瘤または肝腫大を検出

  • 肝機能検査の異常結果

  • 高リスクの組織型(例,漿液性癌,明細胞癌,癌肉腫)

ゲノムサブタイプ

子宮内膜癌には4つの主要なゲノムサブタイプがある(1 診断に関する参考文献 子宮内膜癌(子宮体癌)の大部分は類内膜腺癌である。典型的には,閉経後に性器出血が起こる。診断は生検による。進行期診断は手術進行期分類である。治療には,子宮摘出術,両側卵管卵巣摘出術が必要であり,高リスクの患者では通常,骨盤および傍大動脈リンパ節郭清術を必要とする。進行例には通常,放射線療法,ホルモン療法または化学療法が適応となる。 子宮内膜癌は,脂肪の多い食事を摂る先進国においてより頻度が高く,... さらに読む , 2 診断に関する参考文献 子宮内膜癌(子宮体癌)の大部分は類内膜腺癌である。典型的には,閉経後に性器出血が起こる。診断は生検による。進行期診断は手術進行期分類である。治療には,子宮摘出術,両側卵管卵巣摘出術が必要であり,高リスクの患者では通常,骨盤および傍大動脈リンパ節郭清術を必要とする。進行例には通常,放射線療法,ホルモン療法または化学療法が適応となる。 子宮内膜癌は,脂肪の多い食事を摂る先進国においてより頻度が高く,... さらに読む , 3 診断に関する参考文献 子宮内膜癌(子宮体癌)の大部分は類内膜腺癌である。典型的には,閉経後に性器出血が起こる。診断は生検による。進行期診断は手術進行期分類である。治療には,子宮摘出術,両側卵管卵巣摘出術が必要であり,高リスクの患者では通常,骨盤および傍大動脈リンパ節郭清術を必要とする。進行例には通常,放射線療法,ホルモン療法または化学療法が適応となる。 子宮内膜癌は,脂肪の多い食事を摂る先進国においてより頻度が高く,... さらに読む ):

  • POLE(DNAポリメラーゼε)ultramutated群:この群の類内膜腫瘍は,POLEエキソヌクレアーゼドメインに多数の変異を有する。低異型度類内膜癌の6%,高異型度類内膜癌の17%を占める。POLE変異を有する腫瘍はより若年(60歳未満)で発生する。この種の腫瘍を有する女性の予後がより良好とした報告には矛盾がみられる。

  • Hypermutated/マイクロサテライト不安定(MSI)群:この群の腫瘍ではRTK(受容体型チロシンキナーゼ)/RAS/β-カテニン経路およびPIK3CA/PIK3R1-PTEN経路に変異がみられ,MLH1プロモーターの高頻度のメチル化とMLH1遺伝子の発現低下がみられる。この群は低異型度類内膜癌の29%,高異型度類内膜癌の54%を占める。

  • 低コピー数/マイクロサテライト安定群:この群の腫瘍はPI3K経路およびRTK/RAS/β-カテニン経路に変異を,CTNNB1に体細胞変異を有する。この群は低異型度類内膜癌の60%,高異型度類内膜癌の約9%,漿液性癌の約2%,混合癌の25%を占める。

  • 高コピー数(漿液性様)群:この群の腫瘍では,p53変異とがん遺伝子MYCおよびERBB2HER2)の増幅がよくみられる。この群は漿液性癌の約98%,混合癌の75%,低異型度類内膜癌の5%,グレード3の類内膜癌の約20%を占める。この群の腫瘍を有する患者の無増悪生存期間は,他の群の患者よりも不良である。

ゲノムタイプの同定は,進行の速い腫瘍を有する患者の術後補助療法に有用となりうる。

進行期診断

子宮内膜癌の進行期診断は,腫瘍の組織学的分化度(グレード1[最も悪性度が低い]~3[最も悪性度が高い])と,浸潤深度,子宮頸部浸潤,子宮外転移などの進展範囲に基づく(子宮内膜癌のFIGO進行期分類 子宮内膜癌のFIGO進行期分類 子宮内膜癌のFIGO進行期分類 の表を参照)。

進行期診断は外科的に行い,腹部および骨盤内の検索,疑わしい子宮外病変の生検や切除,腹式子宮全摘出術を含み,高リスクの特徴(グレード1または2かつ筋層浸潤の深いがん,グレード3のがん,高リスクの組織型のがん全て)を有する患者では,骨盤および傍大動脈リンパ節郭清術を含む。進行期診断は開腹術,腹腔鏡手術,またはロボット補助下手術により行いうる。がんが子宮に限局しているとみられる場合は,骨盤リンパ節および傍大動脈リンパ節郭清術の代替としてセンチネルリンパ節マッピングがある(以下参照)。

子宮内膜癌に対するセンチネルリンパ節マッピング

センチネルリンパ節(SLN)マッピングは,子宮に限局しているとみられるがん(I期)の外科的な進行期診断に考慮することができる。SLNマッピングは現在,多くの施設においてリスクの高い組織型(漿液性癌,明細胞癌,癌肉腫)に対する標準となっている。

子宮内膜癌に対するSLNマッピングの役割が,複数の研究において評価されている。FIRES試験では,臨床進行期I期の子宮内膜癌患者において,インドシアニングリーン(ICG)を用いたSLNマッピングが子宮内膜癌転移の診断に極めて正確であることが示され,完全なリンパ節郭清の代替として推奨された(4 診断に関する参考文献 子宮内膜癌(子宮体癌)の大部分は類内膜腺癌である。典型的には,閉経後に性器出血が起こる。診断は生検による。進行期診断は手術進行期分類である。治療には,子宮摘出術,両側卵管卵巣摘出術が必要であり,高リスクの患者では通常,骨盤および傍大動脈リンパ節郭清術を必要とする。進行例には通常,放射線療法,ホルモン療法または化学療法が適応となる。 子宮内膜癌は,脂肪の多い食事を摂る先進国においてより頻度が高く,... さらに読む )。SLNマッピングは, 子宮頸癌 子宮頸癌 子宮頸癌は,多くは扁平上皮癌であり,ヒトパピローマウイルス感染により引き起こされる;頻度は低いが腺癌であることもある。子宮頸部腫瘍は無症状である;早期子宮頸癌の最初の症状は通常,不正性器出血,しばしば性交後の性器出血である。診断は,頸部パパニコロウ検査および生検による。進行期診断は臨床所見のほか,利用可能であれば画像検査および病理検査の結果も踏まえて行う。治療は通常,早期疾患に対しては外科的切除,局所進行例には放射線療法に加え化学療法が... さらに読む 子宮頸癌 と同様に,同じトレーサー(青色色素,テクネチウム99[99Tc],ICG)を用いて行われる。

子宮内膜癌の患者においてトレーサーを注射する部位については議論がある。最近のエビデンスから,子宮内膜癌ではICGの子宮頸部への注入は子宮鏡下での注入よりも検出率が高く,解剖学的なリンパ節の分布も同様に得られることが示唆されている(5 診断に関する参考文献 子宮内膜癌(子宮体癌)の大部分は類内膜腺癌である。典型的には,閉経後に性器出血が起こる。診断は生検による。進行期診断は手術進行期分類である。治療には,子宮摘出術,両側卵管卵巣摘出術が必要であり,高リスクの患者では通常,骨盤および傍大動脈リンパ節郭清術を必要とする。進行例には通常,放射線療法,ホルモン療法または化学療法が適応となる。 子宮内膜癌は,脂肪の多い食事を摂る先進国においてより頻度が高く,... さらに読む )。色素は通常,子宮頸部の表層(1~3mm)および深層(1~2cm)に,3時と9時方向に注射する。この手技では,色素は子宮のリンパ本幹(子宮傍組織で合流する)に浸透し,骨盤およびときに傍大動脈領域のSLNへとつながる子宮広間膜に現れる。

センチネルリンパ節が両側に同定された場合,腫瘍の特徴にかかわらずリンパ節郭清は適応とならない。片側(または両側)でセンチネルリンパ節が同定されない場合,その側の完全なリンパ節郭清が必要である。傍大動脈リンパ節の切除が必要かどうかは,外科医の裁量に委ねられる。

骨盤SLNの最も一般的な位置は以下の通りである:

  • 外腸骨動静脈の内側

  • 内腸骨動静脈の腹側

  • 閉鎖領域の中の頭側

あまり一般的でない位置は,総腸骨領域および/または仙骨前方部である。

以下のいずれかの状況では,完全な骨盤リンパ節郭清を行うべきである:

  • 高リスク腫瘍がある患者においてマッピングによりSLNが全く検出されない

  • 片側骨盤内にマッピングを認めない

  • マッピングの結果にかかわらず,疑わしいまたは著しく腫大したリンパ節がある

診断に関する参考文献

  • 1.Levine, DA, The Cancer Genome Atlas Research Network: Integrated genomic characterization of endometrial carcinoma.Nature 497:67–73, 2013.doi: 10.1038/nature12113

  • 2.McConechy MK, Ding J, Cheang MC, et al: Use of mutation profiles to refine the classification of endometrial carcinomas.J Pathol 228 (1):20–30, 2012.doi: 10.1002/path.4056.Epub 2012 Jul 18.

  • 3.Le Gallo M, Bell DW: The emerging genomic landscape of endometrial cancer.Clin Chem 60 (1): 98–110, 2014.Published online 2013 Oct 29.doi: 10.1373/clinchem.2013.205740

  • 4.Rossi EC, Kowalski LD, Scalici J, et al: A comparison of sentinel lymph node biopsy to lymphadenectomy for endometrial cancer staging (FIRES trial): A multicentre, prospective, cohort study.Lancet Oncol 18 (3):384–392, 2017.doi: 10.1016/S1470-2045(17)30068-2

  • 5.Rossi EC, Jackson A, Ivanova A, Boggess JF: Detection of sentinel nodes for endometrial cancer with robotic assisted fluorescence imaging: cervical versus hysteroscopic injection.Int J Gynecol Cancer 23 (9):1704–1711, 2013.doi: 10.1097/IGC.0b013e3182a616f6

予後

予後は,腫瘍のグレードが高いほど,進展が広範なほど,および患者の年齢が高くなるほど不良となる。

子宮内膜癌患者の平均5年生存率は以下の通りである:

  • I 期またはII期:70~95%

  • III期またはIV期:10~60%

全体では,63%の患者が治療後5年以上にわたり,がんがみられない状態となる。

治療

  • 通常,子宮全摘出術および両側卵管卵巣摘出術。

  • グレード1または2で筋層浸潤の深い(> 50%)もの,全てのグレード3のがん,および全ての高リスクの組織型のがんでは,骨盤および傍大動脈リンパ節郭清術

  • II期またはIII期には骨盤放射線療法および化学療法を併用または非併用

  • IV期には通常,集学的治療が勧められる

National Comprehensive Cancer Network (NCCN): NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology: Uterine Neoplasms[NCCN腫瘍学臨床診療ガイドライン:子宮体がん]も参照のこと。)

子宮内膜癌は一塊で切除すべきであり,通常は子宮全摘出術および両側卵管卵巣摘出術の施行による。腹腔内での腫瘍の断片化やモルセレーションは避けなければならない。

手術はあらゆる経路(経腟,開腹,ロボット支援下,腹腔鏡下)で行える。腫瘍が子宮に限局している患者では,周術期および術後の合併症発生率が低く,入院期間が短く(1 治療に関する参考文献 子宮内膜癌(子宮体癌)の大部分は類内膜腺癌である。典型的には,閉経後に性器出血が起こる。診断は生検による。進行期診断は手術進行期分類である。治療には,子宮摘出術,両側卵管卵巣摘出術が必要であり,高リスクの患者では通常,骨盤および傍大動脈リンパ節郭清術を必要とする。進行例には通常,放射線療法,ホルモン療法または化学療法が適応となる。 子宮内膜癌は,脂肪の多い食事を摂る先進国においてより頻度が高く,... さらに読む ),費用が安く,腫瘍学的転帰が同等(2 治療に関する参考文献 子宮内膜癌(子宮体癌)の大部分は類内膜腺癌である。典型的には,閉経後に性器出血が起こる。診断は生検による。進行期診断は手術進行期分類である。治療には,子宮摘出術,両側卵管卵巣摘出術が必要であり,高リスクの患者では通常,骨盤および傍大動脈リンパ節郭清術を必要とする。進行例には通常,放射線療法,ホルモン療法または化学療法が適応となる。 子宮内膜癌は,脂肪の多い食事を摂る先進国においてより頻度が高く,... さらに読む )であることから,低侵襲手術が望ましいアプローチである。

エビデンスは総じて,腹腔鏡手術と開腹術で腫瘍学的成績が同等であることを支持している。Gynecologic Oncology GroupのLAP2 Studyでは,臨床進行期がI期からIIA期の子宮体がんの女性が2:1の比で腹腔鏡手術群または開腹術群にランダムに割り付けられた。この研究では,腹腔鏡下アプローチの統計学的な非劣性が実証されなかった。しかしながら,追跡期間中央値59カ月後の生存率は両アプローチとも同程度であり,5年全生存率は両群ともに90%であった。推定された5年再発率も同程度であった(14% vs 12%[ 3 治療に関する参考文献 子宮内膜癌(子宮体癌)の大部分は類内膜腺癌である。典型的には,閉経後に性器出血が起こる。診断は生検による。進行期診断は手術進行期分類である。治療には,子宮摘出術,両側卵管卵巣摘出術が必要であり,高リスクの患者では通常,骨盤および傍大動脈リンパ節郭清術を必要とする。進行例には通常,放射線療法,ホルモン療法または化学療法が適応となる。 子宮内膜癌は,脂肪の多い食事を摂る先進国においてより頻度が高く,... さらに読む ])。Laparoscopic Approach to Cancer of the Endoplasmic(LACE)試験は,I期の類内膜癌患者760人を対象とした国際ランダム化試験であった。患者は腹腔鏡下子宮摘出術または開腹子宮摘出術にランダムに割り付けられた。4.5年時点での無病生存率(82% vs 81%)および全生存率(死亡率:7.4% vs 6.8%)は同程度であった(4 治療に関する参考文献 子宮内膜癌(子宮体癌)の大部分は類内膜腺癌である。典型的には,閉経後に性器出血が起こる。診断は生検による。進行期診断は手術進行期分類である。治療には,子宮摘出術,両側卵管卵巣摘出術が必要であり,高リスクの患者では通常,骨盤および傍大動脈リンパ節郭清術を必要とする。進行例には通常,放射線療法,ホルモン療法または化学療法が適応となる。 子宮内膜癌は,脂肪の多い食事を摂る先進国においてより頻度が高く,... さらに読む )。

グレード1または2の子宮内膜癌患者で浸潤が50%以下の患者では,リンパ節転移がある確率は2%未満である。これらの患者では,治療は通常,開腹,腹腔鏡,またはロボット補助下手術による子宮全摘出術および両側卵管卵巣摘出術である。しかし,IA期またはIB期の類内膜腺癌の若年女性では,卵巣温存は通常安全であり,卵巣機能を温存するために推奨される。

  • 深い(> 50%)筋層浸潤を伴うグレード1または2のがん

  • グレード3のがん

  • 高リスクの組織型の全てのがん(漿液性癌,明細胞癌,癌肉腫)

  • マッピングの結果にかかわらず,疑わしいまたは著しく腫大したリンパ節がある

SLNが両側に同定された場合,腫瘍の特徴にかかわらずリンパ節郭清は適応とならない。片側でセンチネルリンパ節が同定されない場合,その側の完全なリンパ節郭清が必要である。

II期またはIII期の子宮内膜癌には,化学療法を併用または併用しない骨盤放射線療法が必要である。III期の治療は個別に検討しなければならないが,手術が1つの選択肢となる;一般に,手術と放射線療法を併用して受ける患者では予後が良好である。大きな子宮傍組織病変のある患者を除き,腹式子宮全摘出術および両側卵管卵巣摘出術を実施すべきである。

IV期の子宮内膜癌の治療は様々で患者によって異なるが,典型的には手術,放射線療法,および化学療法を併用する。場合によっては,ホルモン療法も考慮すべきである。

20~25%の患者において,腫瘍がプロゲスチンによるホルモン療法に反応する。

数種の細胞傷害性薬剤(特にカルボプラチンとパクリタキセルの併用)が効果的である。これらは主に転移例または再発例の女性に投与される。他の選択肢としてドキソルビシンがある。

進行例に対しては,カルボプラチンおよびパクリタキセルによる化学療法が標準となっている。しかしながら,最近のデータでは,VEGF(血管内皮増殖因子)受容体を阻害するマルチキナーゼ阻害薬であるレンバチニブとPD-1(programmed cell death-1)活性を阻害するモノクローナル抗体であるペムブロリズマブの使用が支持されている。最近の第II相試験では,この併用療法を受けた患者における39.6%の客観的奏効率が示された(5 治療に関する参考文献 子宮内膜癌(子宮体癌)の大部分は類内膜腺癌である。典型的には,閉経後に性器出血が起こる。診断は生検による。進行期診断は手術進行期分類である。治療には,子宮摘出術,両側卵管卵巣摘出術が必要であり,高リスクの患者では通常,骨盤および傍大動脈リンパ節郭清術を必要とする。進行例には通常,放射線療法,ホルモン療法または化学療法が適応となる。 子宮内膜癌は,脂肪の多い食事を摂る先進国においてより頻度が高く,... さらに読む )。

再発がん

最近のいくつかの研究により,再発がんに対しては,標準化学療法(通常カルボプラチンとパクリタキセル)の代替として,より標的を絞った治療の便益が示されている。再発子宮内膜癌患者を対象とした最近の第II相試験では,エベロリムス(mTOR阻害薬)とレトロゾール(アロマターゼ阻害薬)の併用で,40%の臨床的有用率と32%の客観的奏効率が示された(6 治療に関する参考文献 子宮内膜癌(子宮体癌)の大部分は類内膜腺癌である。典型的には,閉経後に性器出血が起こる。診断は生検による。進行期診断は手術進行期分類である。治療には,子宮摘出術,両側卵管卵巣摘出術が必要であり,高リスクの患者では通常,骨盤および傍大動脈リンパ節郭清術を必要とする。進行例には通常,放射線療法,ホルモン療法または化学療法が適応となる。 子宮内膜癌は,脂肪の多い食事を摂る先進国においてより頻度が高く,... さらに読む )。

再発子宮体部漿液性癌の患者では,カルボプラチンとパクリタキセルによる標準化学療法がルーチンの推奨とされてきた。しかしながら,最近得られた第II相試験の前向きデータでは,トラスツズマブの追加でさらなる便益がもたらされる可能性が示唆されている。この試験では,検査でHER2(human epidermal growth factor receptor 2)/neu陽性と判定された子宮体部漿液性癌の患者が,6サイクルのカルボプラチン + パクリタキセル(対照群)またはカルボプラチン + パクリタキセル + トラスツズマブ静注(実験群)のいずれかにランダムに割り付けられた。トラスツズマブの追加により,無増悪生存期間が8カ月から12.6カ月に延長した(7 治療に関する参考文献 子宮内膜癌(子宮体癌)の大部分は類内膜腺癌である。典型的には,閉経後に性器出血が起こる。診断は生検による。進行期診断は手術進行期分類である。治療には,子宮摘出術,両側卵管卵巣摘出術が必要であり,高リスクの患者では通常,骨盤および傍大動脈リンパ節郭清術を必要とする。進行例には通常,放射線療法,ホルモン療法または化学療法が適応となる。 子宮内膜癌は,脂肪の多い食事を摂る先進国においてより頻度が高く,... さらに読む )。

子宮内膜増殖症および初期の子宮内膜癌における妊孕性温存

複雑型子宮内膜異型増殖症の患者において子宮内膜癌が併存するリスクは最大50%である。子宮内膜増殖症の治療は,病変の複雑度および患者の妊孕性温存の希望に応じて,プロゲスチンまたは根治手術により行う。

グレード1の腫瘍で筋層浸潤がなく(MRIで確認),妊孕性温存を望む若年患者では,プロゲスチン単独での治療も選択肢の1つである。治療開始から3カ月以内に約46~80%の患者で完全奏効が得られる。3カ月後,子宮内膜生検よりも頸管拡張・内膜掻爬(D&C)により評価を行うべきである。

代わりに,複雑型異型増殖症またはグレード1の子宮内膜癌患者の治療に,レボノルゲストレル放出子宮内避妊器具(IUD)が使用されることが多くなってきている。

保存的治療が効果的でない場合(6~9カ月間の治療後に子宮内膜癌が依然として存在する)や,挙児希望がない場合には手術が推奨される。高異型度類内膜腺癌,漿液性癌,明細胞癌,および癌肉腫の患者では妊孕性温存治療は禁忌である。

若年女性のIA期またはIB期の類内膜腺癌では,卵巣温存は安全であり,勧められる。

一般的な対策

肥満および高血圧は子宮内膜癌のリスクを上昇させ,特定の生活習慣の選択が子宮内膜癌の予防に役立つ可能性があることをエビデンスが示唆しているため,運動,減量,および適切な食事の重要性について患者にカウンセリングを行うべきである。

高リスクの組織型

漿液性癌,明細胞癌,または癌肉腫は悪性度の高い組織型で,高リスクのがんであると考えられているため,初診時にすでに子宮外進展している可能性が高い。

これらの悪性度の高い組織型の子宮内膜腫瘍では,一般に集学的治療が勧められる。初回治療には,腹式子宮摘出術,骨盤および傍大動脈リンパ節郭清術を併用した両側卵管卵巣摘出術,ならびに大網および腹膜生検が含まれる。

肉眼的子宮外病変のある患者では,腫瘍の量を減らし,肉眼的残存病変をなくすための腫瘍減量手術を行うべきである。

漿液性癌および明細胞癌に対する術後補助療法は進行期に依存する:

  • IA期で子宮摘出標本で筋層浸潤を認めず,残存病変がみられない:経過観察および綿密なフォローアップ(許容可能なアプローチ)

  • その他のIA期およびIB期またはII期:通常は腟内密封小線源治療に続いてカルボプラチンとパクリタキセルによる全身化学療法

  • より進行した例:カルボプラチンおよびパクリタキセルによる標準化学療法

癌肉腫に対する術後補助療法も進行期による:

  • IA期で子宮摘出標本で筋層浸潤を認めず,残存病変がみられない:経過観察および綿密なフォローアップ(許容可能なアプローチ)

  • その他全ての進行期:通常,イホスファミド + パクリタキセルによる全身化学療法

治療に関する参考文献

  • 1.Walker JL, Piedmonte MR, Spirtos NM, et al: Laparoscopy compared with laparotomy for comprehensive surgical staging of uterine cancer: Gynecologic Oncology Group Study LAP2. Clin Oncol 27 (32):5331-5336, 2009.doi: 10.1200/JCO.2009.22.3248.Epub 2009 Oct 5.

  • 2.Galaal K, Donkers H, Bryant A, Lopes AD: Laparoscopy versus laparotomy for the management of early stage endometrial cancer.Cochrane Database Syst Rev 10 (10):CD006655, 2018.doi: 10.1002/14651858.CD006655.pub3

  • 3.Walker JL, Piedmonte MR, Spirtos NM, et al: Recurrence and survival after random assignment to laparoscopy versus laparotomy for comprehensive surgical staging of uterine cancer: Gynecologic Oncology Group LAP2 Study.J Clin Oncol 30 (7):695–700, 2012.doi: 10.1200/JCO.2011.38.8645.Epub 2012 Jan 30.

  • 4.Janda M, Gebski V, Davies LC, et al: Effect of total laparoscopic hysterectomy vs total abdominal hysterectomy on disease-free survival among women with stage I endometrial cancer: A randomized clinical trial.JAMA 317 (12):1224-1233, 2017.doi: 10.1001/jama.2017.2068

  • 5.Makker V, Rasco D, Vogelzang NJ, et al: Lenvatinib plus pembrolizumab in patients with advanced endometrial cancer: An interim analysis of a multicentre, open-label, single-arm, phase 2 trial.Lancet Oncol 20 (5):711–718, 2019.doi: 10.1016/S1470-2045(19)30020-8.Epub 2019 Mar 25.

  • 6.Slomovitz BM, Jiang Y, Yates MS, et al: Phase II study of everolimus and letrozole in patients with recurrent endometrial carcinoma. J Clin Oncol33 (8):930–936, 2015.doi: 10.1200/JCO.2014.58.3401.Epub 2015 Jan 26.

  • 7.Fader AN, Roque DM, Siegel E, et al: Randomized phase II trial of carboplatin-paclitaxel versus carboplatin-paclitaxel-trastuzumab in uterine serous carcinomas that overexpress human epidermal growth factor receptor 2/neu. J Clin Oncol 36 (20):2044–2051, 2018.doi: 10.1200/JCO.2017.76.5966.Epub 2018 Mar 27.

要点

  • 子宮内膜癌(子宮体癌)は,女性で最も頻度の高い悪性腫瘍の1つであり,メタボリックシンドロームの有病率が高まるにつれ,さらに増加する可能性がある。

  • I型の腫瘍の方が予後が良好で,若年または閉経期の女性で診断され,エストロゲンに反応し,より良性の組織学的特徴をもつ傾向がある。

  • 異常出血を認める,特に40歳以上の女性では子宮内膜採取が推奨される。

  • 開腹,腹腔鏡手術,またはロボット補助下手術により外科的に子宮内膜癌の進行期診断を行う。

  • 治療は通常,子宮全摘出術,両側卵管卵巣摘出術,およびリンパ節郭清術ならびにときに放射線療法および/または化学療法を行う。

  • 子宮に限局しているとみられる場合はセンチネルリンパ節マッピングを考慮する。

  • グレード1の類内膜腺癌または複雑型異型増殖症の特定の患者において,妊孕性を温存する治療を考慮する。

  • 50歳未満の患者ならびに子宮内膜癌および/または大腸癌(遺伝性非ポリポーシス大腸癌)の顕著な家族歴を有する患者において,遺伝カウンセリングおよび遺伝子検査を考慮する。

より詳細な情報

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