妊娠性類天疱瘡

(妊娠性疱疹)

執筆者:Antonette T. Dulay, MD, Main Line Health System
レビュー/改訂 2020年 10月
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妊娠性類天疱瘡とは,妊娠中または分娩後に起こるかゆみを伴う丘疹および水疱性の発疹である。診断は臨床的にまたは皮膚生検により行う。治療はコルチコステロイドの外用または全身投与による。

妊娠性類天疱瘡は自己免疫現象と考えられ,おそらく表皮の基底膜部にある180kD抗原に対するIgG抗体により引き起こされる。以前は妊娠性疱疹(herpes gestationis)と呼ばれていたが(発疹が単純ヘルペスウイルスの感染による水疱性の発疹に類似するため),この疾患はヘルペスウイルスが原因ではない。

妊娠性類天疱瘡は妊娠2000~50,000例当たり1例の割合で起こる;通常は第2または第3トリメスターに始まるが,第1トリメスターまたは分娩直後に始まることもある。約25%の女性で以降の妊娠および経口避妊薬の使用後に通常,再発する。急性増悪(flare-up)は分娩後24~48時間によくみられ,次の月経または排卵の間に起こりうる。

大部分の胎児は影響を受けない;しかしながら妊娠性類天疱瘡の母親から生まれる新生児の5%未満に一過性の病変が認められる。乳児死亡を含むリスクは早産後および在胎不当過小児(SGA児)で上昇する。

症状と徴候

発疹は著しいそう痒を伴う。病変はしばしば臍周辺から始まり,その後広がっていく。小水疱および水疱が最も特異的な病変であるが,紅色局面が生じることもある。手掌,足底,体幹,殿部および四肢が侵されることがあるが,通常顔面や粘膜は侵されない。

発疹は,分娩中または分娩直後に最大75%の女性において悪化し,典型的には数週間から数カ月以内に軽快する。

新生児に紅斑性の局面または小水疱が生じることがあり,数週間で自然に消退する。

診断

  • 臨床的評価

  • ときに生検および直接蛍光抗体法

妊娠性類天疱瘡は,妊娠中に現れる他のいくつかのそう痒性発疹と臨床的に混同されることがあり,特にPUPPP(pruritic urticarial papules and plaques of pregnancy)との混同が多くみられる。妊娠性類天疱瘡は一般的に臍周囲から始まる一方,PUPPPは皮膚線条から始まるのが一般的であるため,両者は鑑別できる場合が多い。

病変部周囲の皮膚検体を用いた直接蛍光抗体法により診断できる。基底膜部にC3の線状沈着を検出する。

胎児リスクが上昇するため,出生前検査(例,ノンストレステスト)が推奨される。

治療

  • 外用コルチコステロイドまたは,重度の症状に対しては経口投与

  • 経口の非鎮静性抗ヒスタミン薬

症状が軽度の場合は,外用コルチコステロイド(例,トリアムシノロンアセトニド0.1%クリームを1日6回まで)が効果的であろう。プレドニゾン(例,40mg,経口,1日1回)により中等度または重度のそう痒が緩和し,新たな病変が予防される;用量は新たな病変がほとんど出現しなくなるまで斬減するが,症状がより重症になれば(例,分娩中)増量が必要になることがある。妊娠後期における,short burstでのコルチコステロイドの全身投与は胎児に有害ではないようである。

経口の非鎮静性抗ヒスタミン薬もそう痒の軽減のために使用できる。

要点

  • 妊娠性類天疱瘡は,発疹は単純ヘルペスウイルスの感染による水疱性の発疹に類似するものの,ヘルペスウイルスは原因ではなく,その病因はおそらく自己免疫である。

  • 大部分の胎児は影響を受けない。

  • 臨床基準に基づき発疹を鑑別するようにする(例,最初の発現が臍周囲部)。

  • 外用コルチコステロイド,または症状が重度の場合は経口コルチコステロイドで治療する。

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