メルクマニュアル18版 日本語版
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妊娠悪阻

妊娠悪阻は,妊娠中におけるコントロール不能な嘔吐であり,脱水症状およびケトーシスを招く。診断は尿中ケトン体検査,血清電解質,および腎機能の測定により臨床的に行われる。治療は,輸液,制吐薬,および経口摂取の一時停止による。

妊娠は頻繁に悪心および嘔吐を引き起こす;原因は,エストロゲンまたはヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニット(β-hCG)レベルの急激な上昇であると考えられる。大部分の症例はつわりである;すなわち,妊婦では体重は増え続け,脱水状態となることはない。妊娠悪阻は,体重減少(体重の5%を超える)と,脱水症およびケトアシドーシスの発症により,つわりと区別される。心理的要因(例,アンビバレンス,不安)は妊娠悪阻を誘発しうる。妊娠16〜18週を過ぎても持続する妊娠悪阻はまれであるが,肝臓に著しい損傷を与え,重度の小葉中心部の壊死,広範な脂肪変性,ウェルニッケ脳症,または食道破裂を引き起こすことがある。

診断

妊娠悪阻が疑われる場合,尿中ケトン体,甲状腺刺激ホルモン,血清電解質,AST,ALT,BUN,血清クレアチニン,Mg,P,およびときに体重を測定する。産科的な超音波検査を行い,胞状奇胎および多胎妊娠の可能性を除外すべきである。嘔吐を引き起こすことがあり,妊娠中の診断が困難となりうる他の疾患を考慮すべきである:例,肝炎,腎盂腎炎,膵炎,腸閉塞,胃腸管の病変,甲状腺機能亢進,妊娠性絨毛性疾患,および頭蓋内圧亢進。これらの疾患に対する検査を,検査所見,臨床所見,または超音波所見に基づき実施する。

治療

5%ブドウ糖を含む0.9%生理食塩水を静注するが,典型的には2時間かけて約2Lとし,最初の1Lにはチアミン100mgを入れておく;その後に要する補液速度は患者の反応によって変わるが,約4時間毎に1L程度,最高でも3日間までとなろう。この用量のチアミンを3日間毎日投与すべきである。電解質の欠乏を治療する;K,Mg,およびPを必要に応じて補充する。橋中心髄鞘崩壊を起こすことがあるため,低い血漿Na濃度をあまりにも急速に補正しないよう注意が必要である。最初は,患者には経口的に何も与えない。初期輸液および電解質補充後に持続する嘔吐は,制吐薬(例,ピリドキシン10〜25mg,経口,1日3回;プロメタジン12.5〜25mg,経口,筋注,または直腸内,4〜8時間毎;メトクロプラミド5〜10mg,静注または経口,8時間毎;オンダンセトロン8mg,経口または筋注,12時間毎;プロクロルペラジン5〜10mg,経口または筋注,3〜4時間毎)を用いて治療する。

脱水症および急性嘔吐が治まった後,少量の経口液を投与する。経静脈的補液や制吐薬を投与しても経口液を受けつけられない患者は,入院するか在宅静注療法を受け,長期間(ときとして数日またはそれ以上)経口摂取しないようにする必要があるかもしれない。患者がいったん経口液を受けつけるようになれば,少量で薄味の食事の摂取も可能で,摂取できる程度に合わせて食事の幅を拡げていく。ビタミン静注療法は,初期から,ビタミンが経口摂取できるようになるまで必要である。治療の効果がない場合は,完全静脈栄養やコルチコステロイドが必要となることがある。治療にもかかわらず,体重減少の進行,黄疸,または持続性の頻脈が起こる場合は,人工中絶を考慮するべきである。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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