メルクマニュアル18版 日本語版
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先天性トキソプラズマ症

腸外原虫: トキソプラズマ症も参照 。)

先天性トキソプラズマ症は,トキソプラズマ原虫の経胎盤的獲得により生じる。徴候は,存在する場合,未熟性,子宮内発育制限,黄疸,肝脾腫,心筋炎,肺臓炎,発疹,脈絡網膜炎,水頭症,頭蓋内石灰化,小頭症,痙攣である。診断は血清学的に行う。治療には,ピリメタミン,スルファジアジン,ロイコボリンを用いる。

トキソプラズマ原虫は世界中にいる寄生虫で,1/10,000〜80/10,000出生の頻度で先天性感染を生じさせる。

病因

まれな例外はあるが,先天性トキソプラズマ症は妊娠中の母親の初感染に起因する。トキソプラズマ原虫感染は主に,不適切に調理された嚢子を含んだ肉の摂取,あるいはネコの糞便に由来する接合子嚢の摂取により生じる。胎児に対する感染率は,妊娠期間のより後期に感染した女性ほど高い。しかしながら,妊娠初期に感染した胎児の方が疾患は一般に,より重症となる。全体で,妊娠中に感染した女性の30〜40%で先天性感染児が生まれる。

症状と徴候

トキソプラズマ原虫に感染した妊婦は一般に臨床的な徴候を示さない。同様に,感染した新生児は出生時には通常無症候性であるが,徴候が未熟性,子宮内発育制限,黄疸,肝脾腫,心筋炎,肺臓炎,様々な発疹といった形で現れることがある。神経学的症状がしばしば顕著となる場合があり,これには,脈絡網膜炎,水頭症,脳内石灰化,小頭症および痙攣などがある。

診断

血清学的検査は母親の感染および先天性感染を診断するのに重要である;多くの検査があり,それらのうちの一部は委託検査室でのみ実施される。最も信頼性が高いのは,セービン-フェルドマン色素試験,間接蛍光抗体(IFA)試験,直接凝集反応試験である。母親の急性感染は,セロコンバージョンまたは急性期と回復期のIgG抗体価で4倍以上の上昇を認めることにより示唆される。しかしながら,母親由来のIgG抗体が乳児において生後1年間検出されることがある。胎児の血液および羊水のPCR分析がより優れた方法であろう。この寄生虫を分離する試験として,マウスおよび組織培養への接種がある。

先天性トキソプラズマ症の疑いがあれば,血清学的検査,MRIまたはCTによる脳の画像診断,髄液検査,眼科医による徹底的な眼検査を実施するべきである。髄液異常には,キサントクロミー,髄液細胞増加症,蛋白濃度上昇がある。胎盤も,トキソプラズマ原虫感染の特徴的徴候がないか検査する。非特異的な検査所見として,血小板減少,リンパ球増加,単球増加,好酸球増加,トランスアミナーゼ値上昇などがある。

予後と治療

激症の経過をたどり早期に死亡する者もある一方,長期の神経学的後遺症を残す者もある。ときとして,神経学的徴候(例,脈絡網膜炎,精神遅滞,難聴,痙攣)が,出生時は正常にみえた小児において数年後に発現する。したがって,先天性トキソプラズマ症の小児は新生児期を過ぎても綿密に観察されるべきである。

データは少ないが,妊娠中における感染女性の治療が胎児に有益でありうるとの指摘がある。スピラマイシン(米国ではFDAから入手可能)が母子間感染を防ぐのに使用されている。ピリメタミンとスルホンアミド系は,感染した胎児の治療のために妊娠後期に使用されている。

症候性および無症候性の新生児の治療は転帰を改善しうる。したがって,ピリメタミン(初回負荷量として2mg/kg,経口投与,1日1回,2日間,その後1mg/kg,経口投与,1日1回,最高25mg),スルファジアジン(42.5〜50mg/kg,経口投与,1日2回,最高4g),およびロイコボリン(10mg,経口投与,週3回)による治療が推奨される。最初の6カ月の投与後,スルファジアジンとロイコボリンは前述のように継続するが,ピリメタミンは回数を減らして投与する(月,水,金のみ投与)。専門家が全ての治療を監視するべきである。コルチコステロイドの使用については議論があり,個々の症例によって決定するべきである。

予防

妊婦は,ネコのトイレやネコの糞便で汚染されている他の場所に触れないようにすべきである。肉は食べる前に完全に火を通し,生肉や未洗浄の農産物を扱った後は手を洗うようにすべきである。初感染のリスクがある女性を,妊娠中にスクリーニングするべきである。第1または第2トライメスター中に感染した者には,可能な治療手段について助言を与えるべきである。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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