|
神経線維腫症は,神経走行に沿って腫瘍を生じさせる常染色体優性遺伝疾患であり,ときに軟部組織や骨の著明な変形を引き起こす。診断は臨床的に行われる。特異的な治療法はないが,腫瘍は外科的に除去できる。
神経線維腫症には2つの病型がある。1型(フォン・レックリングハウゼン病)が最も多く,神経および皮膚症状,そしてときに整形外科的症状をもたらす。2型は症例の10%を占め,主に先天的な両側性聴神経腫瘍として発現する。
神経線維腫は,シュワン細胞と神経線維芽細胞から成る良性腫瘍である。末梢神経の神経線維腫は末梢神経走行に沿ってどこででも発生する。大抵は青年期に発現する。4つの病型に分けられる。皮膚の神経線維腫は軟らかく肉質で,皮下の神経線維腫は硬く結節性である。結節性の蔓状神経線維腫は脊髄神経根を侵し,典型的には椎間孔を通って脊柱内外に腫瘤(亜鈴腫瘍)を形成する。脊柱管内の部分が脊髄を圧迫することがある。びまん性の叢状神経線維腫は外観を損なう可能性があり,神経腫より遠位部に異常が生じることがある。蔓状神経線維腫は悪性化を来しうる。中枢性(脳神経)神経線維腫症には2つのタイプがある:進行性失明の原因を引き起こしうる視神経膠腫と,眩暈,運動失調,難聴,耳鳴を引き起こしうる聴神経腫(前庭シュワン細胞腫)である。視神経膠腫は1型神経線維腫症において発生し,聴神経腫は2型の神経線維腫症において発生する。
症状と徴候
1型:
1型の場合,大抵の患者は無症状で,定期健診,美容上の愁訴に対する診察,または陽性の家族歴の評価の際に発見される。一部には神経症状や骨性異常がみられるものもある。90%以上では,特徴的皮膚病変が出生時から明らかであるか,または乳児期に発現する。病変は,体幹,骨盤,肘や膝の屈曲部に最も多く分布するそばかす様のやや薄めの褐色(カフェオレ)斑である。小児期の後期に,肉色をした様々な大きさと形の皮膚腫瘍が,数個から数千個単位で現れる。まれに,叢状神経腫(皮下結節またはその下にある骨やシュワン細胞の不定形な過形成)が生じ,グロテスクな変形を伴う不規則で厚く歪んだ構造を作る。
神経症状は様々であるが,神経線維腫の発生部位と数が関与する。骨格異常には,線維性異形成,骨膜下骨嚢胞,脊椎波形形成,脊柱側弯,長管骨皮質の菲薄化,偽関節,拍動する眼球突出を伴う蝶形骨大翼(眼窩壁)の欠損などがある。視神経膠腫および虹彩小結節(虹彩過誤腫)が一部の患児に発生する。一部の患児は,学習に問題を抱え,頭部がやや大きめとなる。
2型:
2型の場合,両側性聴神経腫が発現し,小児期または成人期早期に症状が現れる。この神経腫は難聴および聴覚の不安定性を引き起こし,ときに頭痛や顔面筋筋力低下をもたらす。両側性の第8脳神経(前庭蝸牛神経)の腫瘤がみられることがある。家族内に神経膠腫,髄膜腫,またはシュワン細胞腫をもつ者がいる場合がある。
診断と治療
診断は臨床的に行われる(小児における神経疾患: 神経線維腫症の診断表 1: 参照)。CTまたはMRIにより2型の第8脳神経腫瘤が検出されることがあり,またMRIで1型の局所的な密度変化が分かることがある。遺伝子検査はルーチンには利用できない。
|
表 1
|
 |  |  |
|
神経線維腫症の診断
|
|
病型
|
基準
|
|
1
|
以下の2つ以上が存在しなければならない:
思春期前の患者で5mm以上,思春期以降の患者で15mm以上の最大径をもつカフェオレ斑6個以上
いずれかの型の神経線維腫2つ以上または蔓状神経線維腫1つ
特徴的な骨病変(例,蝶形骨異形成または長管骨皮質の菲薄化),偽関節を伴うまたは伴わない
親,兄弟,児に1型神経線維腫症の診断を受けた者がいる
|
|
2
|
以下のうち1つが存在しなければならない:
CTまたはMRIで認められる両側性の第8脳神経腫瘤
親,兄弟,または児が2型神経線維腫症で,片側性の第8脳神経腫瘤または以下の2つを有する:神経線維腫,髄膜腫,神経膠腫,シュワン細胞腫,若年性水晶体後嚢下混濁
|
|
Adapted from Martuza RL, Eldredge
R: Neurofibromatosis 2 (bilateral acoustic neurofibromatosis). Reprinted
by permission of The New England Journal of Medicine 318:684-688,
1988.
|
|
全般的な治療法はない。重度の症状を引き起こす神経線維腫では外科的切除または放射線照射が必要となることがあるが,その場合手術により該当神経の機能を喪失してしまうこともある。遺伝カウンセリングの実施が望ましい。両親のどちらかが神経線維腫症の場合の児のリスクは50%であり,両親とも罹患していない場合のリスクは,新規の変異が多く発生することから不明である。
最終改訂月 2005年11月
最終更新月 2005年11月
|